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トーゴの異世界無双

作者:シャン翠
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第十四話 一パーセントなんだけどなぁ

 ギルバニアの開始の声で、場が緊張に包まれる。
 ミラニがとんでもない殺気を飛ばしてくる。
 あの……ホントに殺し合いじゃないよな?
 ミラニが地面を蹴ってこちらに向かって来る。
 物凄い速さだ。
 剣で薙ぎ払うように切りかかってくる。
 闘悟はそれを紙一重で避ける。
 風切り音が耳を刺激する。
 おいおい、ていうか、今の普通に当たってたら即死レベルだぞ? 


「お、おい! アイツ、団長の攻撃を避けたぞ!?」
「嘘だろ!?」


 騎士達が思い思いの言葉を放つ。
 どうやらミラニの攻撃を避けるのは難しいらしい。
 ということは、ミラニは相当の実力の持ち主だということだ。


「はあっ!」


 ミラニは第二撃を加えてくる。
 闘悟はまたも軽く避ける。
 ミラニは舌打ちをして、今度は足元を狙って来る。
 それも見えていたので闘悟はサッと避わす。
 周囲の目には、ミラニの攻撃は電光石火に見えているだろう。
 事実、ここまでの攻防は一秒程度。
 並みの者ならこの三撃の間に仕留められているだろう。
 それを難なくクリアした闘悟の動きに、周りはキョトンとしている。
 ミラニでさえ警戒心を強めたように一歩下がる。


「少しはやるな」
「まあな」
「だったらこれだ!」


 すると、ミラニの右手から炎が立ち昇る。
 へぇ、あれが魔法か。
 興味津々(きょうみしんしん)の目で闘悟は炎を見つめる。


「『火の矢(ファイアアロー)』っ!」


 数本の矢形(やがた)の火がこちらに向かって来る。
 それを見ながら闘悟は魔力を込め始める。
 すると、大気が震える。
 ミラニはタイガラスに勝ったことがある。
 ということは、魔力はタイガラスを倒した時と同じくらいで一応様子を見ることにする。
 以前のように一パーセント程度の魔力で体を強化する。
 すると、どうしてか周囲の人達が口を開けたまま硬直している。
 ミラニも同様に驚愕している。
 一体どうしたんだろうか?
 とにかく今はあの炎だ。
 闘悟は強化した拳で火を払う。
 すると、弾かれた炎は足元に落ちる。


「す、素手で弾いたっ!?」


 場にいた全員が口を揃(そろ)えて叫ぶ。
 ミラニは唖然としていたが、すぐに歯を食いしばる。
 さすがは団長の地位に位置する者だ。


「ぐっ……こ、このぉっ!」


 ミラニが全力で剣を振るう。
 上空から切り降ろされる刃。
 そのまま当たれば、左半身と右半身が綺麗に離別することになるだろう。
 だから普通なら剣から距離をとるはずだ。
 しかし、闘悟は刃を見つめたまま動かない。


「もらったぁっ!!!」


 ミラニは勝負が決したかのように声を出す。


「甘いな」


 闘悟はそれを指二本で真剣白刃(しらは)取りを行い、そのまま力任せに捻(ひね)り剣を折る。
 カランと折れた刃が落ちる。


「なっ!?」


 ミラニは声を張り上げる。
 闘悟はすかさず背後に回り込み、彼女の後ろ首を掴(つか)む。
 ミラニはそれに気づき抜け出そうとするが体が動かない。


「動けないだろ? こんなふうに完全に決まればもう終わりだ」


 ミラニの額から大粒の汗が落ちる。
 気が付けば、自分は今にも倒れそうなほど息を乱している。
 しかし、闘悟は準備運動でもするかのような感じで大いに余力を残している。
 次元が違う。
 そう思ってしまったのは、決して彼女のせいではなかった。
 それだけ闘悟の強さが異質過ぎたからだ。
 彼女はゆっくりと目を閉じた。


「…………ま……まいった……」


 闘悟はその言葉を聞き首から手を離した。
 すると、その様子を見ていたギルバニアが正気に戻ったように声を出す。


「そ、それまで!」


 ま、こんなもんかな。
 闘悟は首を掴んでいた手をひらひらさせた。


「す……すごい……です」


 クィルが呟くように言う。
 周りの人達も何かブツブツ言っている。
 ミラニは未だに負けたことが理解できていないのか、落ちた剣の一部を呆然と見つめている。


「この勝負、トーゴの勝利だ!」


 ギルバニアの声にようやく気づいたのか、ミラニがこちらに視線を向ける。


「よ、ケガは無いはずだけど、大丈夫か?」


 すると、顔を俯(うつむ)かせて震え出した。


「ん? ど、どうしたんだ?」
「……んだ」
「はい?」
「何だ!」
「はあ?」


 いきなり詰め寄って来た。
 他の者もミラニの行動に目を見張っている。


「だから、それは何だ!」
「そ、それって?」
「だから、その魔力だっ!」


 ミラニは闘悟を指差しながら言い放つ。
 魔力? 何かおかしいのか? 


「魔力って……何が?」


 すると、今度はギルバニアが横に入ってくる。


「量だよ量」
「量?」
「そうだ。異常過ぎるぞ、お前の魔力量は」


 あれ? そんなに多いのか?
 これでも一パーセント程度に抑えたはずなんだけど? 


「ま、まさかそれは全力じゃないのか?」
「はい。全体の一パーセントくらいです」


 それが何か?
 あ、そう言えばトビラもオレの魔力量は異常みたいなこと言ってたっけか? 


「い、一パーセントォッ!?」


 その場にいた全員がそれぞれに声を上げる。


 
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