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魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編

作者:blueocean
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第19話 バルトの悩み、なのはの思い

 
前書き
こんにちはblueoceanです。

ただいま絶賛風邪気味中。
喉と鼻水が酷いです………


皆さんも体調に気を付けて……… 

 
「大変やったね2人共。だけど何で報告がこんな時間なんや………?」

はやてにそう言われ時計を見ると、夜の10時少し前。
門限が10時までなのでかなりギリギリだ。
帰って早々はやてに呼び出しを受けた2人は、疲れて帰る途中眠ってしまったヴィヴィオをバルトがおんぶし、部屋で寝かせそのまま部隊長室へとやって来ていた。

「おかげさんでレジアス中将直々に連絡を受けたとき大恥かいたで………『部下の管理も出来んとは………やはり貴様では部隊長など………』って具合にや」
「そりゃあお疲れさん~」
「はぁ………………」

バルトの反省0の発言に頭を抱えながらため息を吐くはやて。

「バルトさん………?」
「睨むなはやて。だが俺は休暇を有意義に使っただけだ。文句を言われる筋合いはない。それになのはだってすっかり忘れていただろうが」
「うっ!?………だってちょっと考え事してて………」
「だったら人の事言えねえだろ」
「私はちゃんと反省してます!!」

「ハイハイ、夫婦喧嘩はその辺で終わりや!!」

パンパンと手を叩き、2人の口論を止めるはやて。

「私が不機嫌なのはあの髭面親父に好き勝手言われた事やない。事件の情報が全くと言って良いほど入って来ない事に腹を立てているんや」

機動六課のメンバーが事件に巻き込まれていながらも、レジアスは『管轄が違う』とはやてに公開することはなかった。

「私が知っとるのは、新人で形成された対バリアアーマー部隊、『ベーオウルブズ』が犠牲者を出さず事件の場を鎮圧したとしか教えられてへん。いったい何があったんや?」

真剣な表情で言うはやて。

「はやてちゃん、実は………」

そんなはやてになのはも口を開いた………










「なるほど、そんなことがあったんか………」

なのはの説明を受け、腕を組んで深く自分の椅子に座り込むはやて。

「はやて、今までの報告にバリアアーマーの人工知能ロボットとかあったか?」
「無いで。全部人間が乗ってて全員自害したとなっとる。ちゃんとその当人も確認できたし間違いないで」
「じゃあやっぱり人員が少なかったからロボットに?」
「なのはちゃん、違うで。確率的にはありえへんことは無いけど、恐らく違う」
「何で………?」
「色んな場所でテロを起こし、簡単に切り捨ててきた奴等が人が少なくなって仕方がなく………何てすると思うか?」

バルトに言われ考え込むなのは。

「………思わない」
「まあ可能性は0とは限らへんし憶測なのは確かやけど、あまりにも不自然過ぎるからなぁ………」
「それに奴等ベーオウルブズが現れた途端奴等しか狙ってこなかった。それこそおかしいだろうが」
「あっ………」

思い出したかのように手をポンと合わせた。

「お前な………」
「ごめんなさい………」

うなだれながら謝るなのは。

「まあ所詮証拠も無いし騒いだところで何も変わらん」
「せやけど機動七課には注意した方がええね」

そう言って互いに頷くバルトとはやてだった。

「………そう言えばはやてちゃん、ベーオウルブズの隊長、桐谷君だったよ!!」
「私もびっくりやったわ………機動七課に所属している事は部隊紹介で知っとったけどまさか隊長をやっとるとはなぁ………」
「桐谷君から何か聞けないかな………?」
「まあある程度は聞けそうだが、深いところはまで知らないんじゃねえのか?」
「そうですね………隊長って言ってもまだ新人ですし、本当に重要な事を話されてるとは思えないですね………」

バルトの言葉に納得するなのは。

「まあ憶測の話は終いや。とりあえず明日からまた訓練なんやから今日はしっかり休んでな2人共」
「うん」
「うぃ~っす」

はやてにそう言われ、バルトとなのははそれぞれ部屋を出ていこうとする。

「あっ、ちょっとなのはちゃんは残ってな」
「えっ、うん」
「そんじゃお先」

手を振りながら出ていくバルトを見送り、はやてはニヤリと笑った。

「それじゃあなのはちゃん、その後はどうやった?」
「ど、どうって?」
「デートやデート!なのはちゃんもそのつもりで行ったんやろ?」
「わ、私はヴィヴィオちゃんの為に行っただけで………」

そんななのはのはやては答えに額を押さえ呆れた様子でため息を吐いた。

「本当にそんなんでええんか?バルトさん、度々聖王教会に顔出しているみたいやで」
「聖王教会………?何でバルトさんにとって無縁そうな場所に………」
「それでな、更に興味深い話をヴァロッサに聞いたんや。『最近良く男の人とお茶会をしてて、姉さんはそれをとても楽しみにしてるって』そんな内容や。さてその男の人は誰やと思う?」
「えっ………まさかバルトさん!?」
「そうや!!バルトさんや!!」
「うそぉー!?」

思わずはやてに身を乗りだし声を上げるなのは。

「う、嘘や無いで。カリムにも直接聞いたこともあるし………それにバルトさんのドストライクやろ?金髪美人でスタイル抜群、しかも性格が良くておしとやかな大人の女性」
「か、勝てる要素皆無なの………はやてちゃんどうしよう!!」

すがるようにはやてに聞くなのは。

「私に言えることは1つ!!なのはちゃん、既成事実を作るんや!!」
「えっ!?でもそれは………」
「その年になってなに純情ぶってるんや!!ええんか?カリムにバルトさんを取られても、ヴィヴィオちゃんを取られても!!」

はやてに力強く言われ、握っていた手に力がこもる。

「………それは嫌だ。3人一緒がいい」

そしてなのはも力強くそう答えた。

「なら勇気を出すんや!!バルトさんは経験豊富そうだし、優しくしてくれるはずや」
「はやてちゃん………」

俯いて考えるなのは。
そんな様子を見て、はやてはこれでいいかと一回咳払いした。

「なんて冗談や。流石にそこまでせえへんでも………」
「うん………そうだね、私に勇気を出すよはやてちゃん!!」
「えっ?なのはちゃん………?」
「ありがとう、早速行ってくる!!」

はやての言葉をろくに聞かず、部隊長室から出ていくなのは。

「………どうないしよう」

残されたはやての言葉に答える者は誰もいなかった………









「ほら、約束の物だ」
「「おおっ~!!!」」

バルトの広げた写真に食いつくように見るヴァイスとエローシュ。

なのはが駆け出した同時刻、バルトはエローシュの部屋へとやって来ていた。

「しかしちゃっかりしてますねバルトさん。あんな状態でちゃんと撮ったデータを持って帰るなんて………」
「当たり前だ。でなきゃ休みを潰すかっての!!しかしエローシュ、お前の情報は間違ってなかった。中々良かったぜ!レベルが高い女が多かったから余計にな」
「………因みにバルトさん、みんなどんな格好してるか分かります?」
「全く分からん」

「純粋にエロだけを楽しんでたんだ………」
「ある意味俺以上にエロに貪欲だ………」

そんなバルトの答えを聞いて背を向けて話し合う2人。

「何か言ったかお前等………?」

バルトを睨まれ、そっぽを向く2人。

「テメェら………」
「まあまあ。でも俺の言う通りだったでしょ?」
「ああ、流石エローシュ、エロ紳士の名は伊達じゃねえ」
「バルトさんもかなりのベストアングルですよ。後はロングアーチの男達にうまく売りさばいておきます」
「分け前は7・3でいいか?」
「あざーす!!」

「でエローシュ、お前は今日何してたんだ?何か1人で出掛けてたみたいだけど」
「ああ、ちょっと野暮用ですよ………」

そう言ってヴァイスの質問を濁すエローシュだった………











「どうだ?」
「………変わったな、全然面影がない」

バルトが襲撃を受けていた同時刻、エローシュはエクスと共にとある場所へと来ていた。

第9管理世界ロストレイ。
緑が多い自然豊かな世界でもあり、珍しい生物や綺麗な花などを見に多くの観光客がやって来る。

「ここにお前の国が?」
「まあ色んな領主が手を結んで出来た同盟国なんだけど、自然が多くてな。緑が多いのは相変わらずみたいだ………」

ここ一帯を見渡せる丘の上から暖かな風に揺れる木々を見つめる2人。

「だけどここにはお前の言う同盟国についての資料はほぼ無かった………」
「むしろ無さすぎておかしいくらいだな。まるで意図して消したような………」

2人はこの丘に来る前にロストレイの歴史史料館に立ち寄ったのだが、残っていた史料の中にエクスほど昔の史料が残っている物は無かった。

「お前の時の記憶でもその痕跡も見つけられなかったもんな………」
「と言っても俺達は時の記憶の5%も使えていない。こんな状態では使っていると言えるものか………」

エローシュの言う“時の記憶”とは元々エクスにあったレアスキルであり、繋げば膨大な情報の集合体を利用する事が出来る。それは無限書庫にもあるような情報だけでなく、現在増え続ける新しいデータまで含み、無限書庫よりも膨大である。
その膨大過ぎる情報はエクスおろか、エローシュにも処理出来ない程で、未だに分かっていない情報が多く、過去のものほど処理が難しい。
更に使い続ければ脳への負担がかかり、エローシュもエクスも30分が今の所限界である。そして30分ではどうしてもここ10年の内容がまでしか探れず、その全てを把握する事も出来ていない。

今の状態では宝の持ち腐れとなっていた。

「ってか追加される情報を止められないのか?」
「無理だ。俺にはどうしようも無い」
「自動更新されるから整理しても本当にキリがないんだよな………どうにかならないものかね………」
「無理だ」
「ちぇ………」

丘の草原に寝っ転がるエローシュ。その横にエクスも座った。

「完全に使いこなせれば、色んな事が分かるのだがな………」
「………やっぱり気になるよな」
「………実を言うと俺の祖国の事はそこまで気にしていない。俺が気にしているのは滅びる結果になった“ゆりかご”について引っかかるんだ」
「確かお前の親父が最後に言っていた事か」
「天使の歌声………名前からして物騒な事では無いと思うんだが、とても父上の様子からそうは思えなかった」
「だけど今はゆりかごは動かないんだろ?聖王家の血筋はいないみたいだし、ゆりかごの場所も分かっていない。だったら気にしなくていいだろ」
「………まあそうだな」

そんな呟きを聞いてエローシュは体を起こす。

「さて、次は何処へ行く?今日は付き合うって言ったからとことん付き合うぞ」
「そうだな………」

その後もエローシュとエクスは時間になるまで様々な世界を見て回ったのだった………













「ふぁ~あ………さて、明日も早いんだっけな………」

深夜1時頃。
エローシュの部屋を後にしたバルトはあくびをしながら深夜の宿舎の通路を歩いていた。

「ったく、色々あった1日だぜ………」

そう呟きながら今日の出来事を思い出す。
3人で回ったイベント会場、コスプレ撮影、戦闘、そしてその後回った買い物や食事。

「………」

そんなことを思っているとバルトの顔が段々険しくなっていく。

「俺は………」

今の生活をバルト自身気に入っている。
ヴィヴィオがいてなのはがいて、機動六課のみんながいる。
かつてのバルトマン・ゲーハルトには何も無かった。ただ強い者と戦い続けるのみ。
そして今では敵だった管理局に協力している。

「何やっているんだかな………」

この悩みはずっと前からも感じてはいた。
前こそ零治やウォーレンの様に守るものがあれば更に強くなれると思っていたバルトだが、その実感が無い事に疑問に思っていた。
しかし思ってはいたのだが、それを気にしないほど今のバルト・ベルバインとしての生活に馴染んでいた。

「ふぅ………」

そんな事を考えながらバルトは自室に入った。
今日着ていた上着を脱ぎ、自分のベットに座り込む。

「ん?」

ベットに座ると誰もいないはずの自分のベットに人の足があった。

「ああ、ヴィヴィオか?全くあれほどベットを間違えるなって言っても分からねえんだから………!?」

呟きながら寝ている者の姿を見てバルトは愕然とした。

「何やってんだ?このバカは………」

ワンピース姿で気持ちよさそうに寝ているのだが、寝返りを何回かしたせいかはだけてブラジャーやパンツが見え放題となっていた。

「しかし何で俺の部屋に居るんだコイツ………」

バルトは叩き起こそうと動くが気持ち良さそうな寝顔を見て、流石のバルトもその気も削がれてしまった。

「運ぶにしても今忍び込んだら完全に変態扱いだよな………だがフェイトの寝顔を見るのも………」
「う~ん………」

そんな考えをしていると再び寝返りをするなのは。

「………まあ良いか。今日だけはこのままにしといてやるよ」

そう言ってバルトはなのはに毛布をかけてあげる。

「いつもありがとななのは」

そう言って頭を撫で、バルトは近くの椅子に座って眠りにつくのだった………












「う、う~ん………」

次の日の早朝。なのはが半分寝ぼけた状態で体を起こした。

「………トイレ」

立ち上がり、フラフラとトイレに向かうなのは。

「………昨日お風呂入り忘れちゃったんだっけ?………まあ昨日も色々あったもんね………」

そう言いながらなのはは部屋に完備されている風呂場に向かう。
小さい風呂だが、はやてのこだわりでどの部屋にもシャワーだけでなく風呂も付いていた。

「………汗臭い、シャワー浴びよう」

そう言ってなのははそのまま風呂場へと向かった………







「バルト!!」
「おおっ!?どうしたんだヴィヴィオ?」

椅子に座りながら眠っていたバルト。
ヴィヴィオに揺らされて目を覚ました。

「こっちの台詞だよ。椅子に座って眠ってて体痛くないの?」
「何処でも寝れるから問題ない。それよりなのはは帰ったのか?」
「なのはお姉ちゃん?なのはお姉ちゃん来てたの?」
「ああ、なぜか俺の布団で眠ってたから昨日は椅子で寝てたんだが………まあ流石に帰ったか。男の部屋に泊まっていましたなんてバレたら大変だしな」

そう呟いて自分が昨日の服のままだということに気がついた。

「さて、訓練前にシャワーでも浴びてくるかな。………ヴィヴィオ、確かお前も昨日入ってないよな?ついでに頭洗ってやるよ」
「………痛くしないでね?」
「任せな」

バルトのニヤついた顔を見て、一層に不安が増すヴィヴィオ。
そんな感じで2人は風呂場へと向かった。
そして………

「えっ?」
「あ?」

扉を開けるとそこには裸で濡れた髪をバスタオルで拭いているなのはがいたのだった………







「ううっ………」
「全く、そんなに睨むなよ………」
「バルト、大丈夫?」

赤く手の痕が残るほっぺたを抑えながらバルトが呟く。
あの後、悲鳴をあげそうになったなのはの口を抑え、何とか悲鳴をあげさせずにすんだが、その時の勢いで、バルトがなのはを押し倒すような形で密着してしまった。
そして落ち着かせた後、なのはにビンタを食らってしまい、今に至る。

「いい加減睨むの止めろって。どう考えても自業自得だろ。人の部屋のベットで寝てて、勝手にシャワーまで使って。それで何で俺が叩かれなくちゃならないんだよ………」
「バ、バルトさんがいきなり押し倒すから………」
「捏造するな!!それじゃあまるで飢えた男じゃねえか!!」
「ちゃっかり胸触りましたよね?」
「事故だし、別に触られても減るもんじゃねえだろうが………」
「バルトさん!!!」

「あの………」

更にヒートアップしそうななのはとバルトの間に、 申し訳なさそうに声をかけるフェイトがいた………









「でも何でなのははバルトさんの部屋にいたの?」
「えっ!?えっと………何でだっけ?」

朝の訓練。
時間がギリギリな為、騒動については一旦保留となってなのははフェイトと共に部屋を後にした。
フェイトに関してはバルトが騒動後に直ぐに着替えと迎えに来てもらえるように頼んだのだ。
なのはは自分の着ていた服を洗濯機に全て突っ込み洗ってしまったためである。

「覚えてないの?」
「うん………確かはやてちゃんに話を聞いて私その後………」

そう呟きながら思い出すと突然顔が真っ赤になるなのは。

「な、なのは!?」
「そうだ。私はやてちゃんに言われて既成事実を………」
「?はやてに何を言われたの?」
「言えない!フェイトちゃんでも言えない事なの!!昨日の私は疲れて少しおかしかったんだ、きっとそうだ………」

そう自分に言い聞かせるように呟くなのは。

「一体何があったの………?」

そう呟くフェイトに答える人物はいなかった………









「なあなあバルトさん、昨日あの後どうやった?」
「あ?」

昼休憩。
ヴィヴィオと一緒に昼食を食べていたバルトの机にはやてが座った。

「昨日何やけど………ゆっくり休めたん?」
「ああ………いや、久しぶりだったからな。ゆっくりって訳にはいかなかったな」

(な、長い時間やっとったんや………)

「そ、そんなに凄かったんか?」
「凄かった?そこまでじゃねえが、ちょっとキツい体勢だったからな」

(ど、どんなマニアックなプレイをしたんや!?)

「なのはちゃん、気持ち良さそうやった?」
「………何だ、やっぱりなのはから聞いてたか。アイツ俺のベットで寝やがってよ。だが気持ち良さそうに寝ていやがったから起こそうと思ったんだが、流石に起こせなくてな。仕方がねえから椅子で寝てたよ昨日は」

(そ、それほど果てるたんやな………なのはちゃんって実はドM?しかしなのはちゃんしっかり既成事実作ったんやなぁ~カリムには悪いけどこれで結果オーライやな!)

そう思ったはやては思わず笑みがこぼれた。

「何ニヤニヤしてんだ気持ち悪ぃ………」
「だって私立派なキューピットやないか。2人が結婚したら私が仲人をやることになるんやろうな………」
「誰が結婚するんだ?」
「何を言っとるん。ゴールは目の前やんか!!」
「………お前、更に頭おかしくなったか?」

肩を叩かれご機嫌なはやてを心から心配するバルト。

「決まったらいつでも言ってな。喜んで仲人をやらしてもらうで!!」

「………ヴィヴィオ、どう思う?」
「今日のスパゲッティおいしい」
「………お前に聞いた俺がバカだったよ」

ヴィヴィオの口元を拭ってやりため息を吐くバルトだった………











「それじゃあ今日は回避トレーニングをやるぞ」
「………ってヴィータ、なのははどうしたの?」
「いやな加奈、何か調子悪いから少し休むって今は医務室で休んでるぞ」
「………おい、何で全員で俺を見る?」

スターズの全員に見つめられ、逆に睨みつけるバルト。

「いや、バルトさんなら何か知ってるかなって………」
「バルトさんいつも一緒にいるじゃないですか~」

ナカジマ姉妹、ギンガが申し訳なさそうに、スバルは少しからかい気味に聞いてきた。

「………まあそれなりにあったが、体調を崩すほどじゃ無かったんじゃないか?」
「私もそうだと思ったけど、フェイトも心配してたし間違いじゃないだろ」

ヴィータの答えになるほどと納得する面々。

「………もしや、あのバスタオル姿で風邪引いたか………?全く、あのバカは………」











「なのは、落ち着いた?」
「うん、ありがとうフェイトちゃん」

フェイトからコーヒーを受け取り、お礼を言うなのは。
なのはは医務室で寝ており………というわけでは無く、普通に自分の部屋にいた。
ライトニングの面々が学校であり、執務官の仕事も無いフェイトも一緒である。

「でもそこまで気にしなくて良いんじゃない?バルトさんもあの様子じゃ、寝ぼけて来ただけとしか見てないみたいだし………」
「それはそれで悔しいの………!!これでも覚悟を決めて来たのに、バルトさんったら、先に戻った筈なのに全然帰って来なくて、結構疲れてたからそのまま寝ちゃって………」
「でもなのはよく男の人の布団で寝れたね。普通の人なら緊張しちゃって無理だと思うけど………」
「緊張疲れってやつかな?何か最初こそドキドキしてたけど、それが続いて逆に疲れちゃったとか………」
「でも大胆な事したね。私なら多分出来ないよ………」

なのはは昨日の事をフェイトに話した。
流石のフェイトもなのはの行動に驚いたが、それでも真摯に相談に乗ってあげている。

但し、両隊長が部隊訓練をサボっているのだが………

「私も何であんな行動しちゃったかな………あんな話、絶対にはやてちゃんの冗談だよ………」
「でも私もクロノから聞いたことがあるんだ。『最近カリムがよく男性とお茶をしている』って」

フェイトの言葉を聞いてコーヒーを飲もうとしたところで固まるなのは。

「それって嘘じゃ無いんだ………」
「シスターシャッハもそう言ってたって聞いたし間違い無いと思うよ」

そう言われてなのははゆっくりとコーヒーを近くの机に置く。

「………やっぱり既成事実を!!」
「なのは落ち着いて!!」

部屋の外に駆け出そうとするなのはを何とか抑えるフェイト。

「止めないでフェイトちゃん、カリムさんに勝つためにはこれしかないの!!」
「なのは落ち着いて考えてみて!!バルトさんがそんな事でぐらつくと思う?バルトさん
なら女の人を妊娠させても普通に『堕ろせ』って言いそうな人だよ!!」
「た、確かに………」

本人がいないところで言いたい放題である。

「落ち着こうなのは。取り敢えずバルトさんはカリムの事をどう思っているか確認しないと」
「そ、そうだね………でももしバルトさんがカリムさんに気があったら………」
「でも聞かなくちゃ。でないとずっとなのはこのままだよ?例え嫌な結果になっても聞かないよりは絶対にスッキリするよ」

フェイトの言葉に暫く黙るなのはだったが………

「………フェイトちゃん、私聞いてみるよ!!」

言葉が届いたのかなのははそう決断したのだった………










「バルトさん!!」
「今度は何だ………」
「ちょっと話があります!!」

夕食後。
ヴァイスと共に喫煙所へ向かおうとしていたバルトはなのはによって止められた。

「後にしろっての。これからヴァイスと煙草吸いに………」

と、隣のヴァイスを見るバルトだったが、既にヴァイスはその場にいなかった。

「どうぞごゆっくりだって」
「あのヤロウ………」

ヴァイスの残したメモ書きを握りしめるバルト。

「じゃあバルトさん、静かな場所で話そう」
「静かな場所………?ってことは結構大事な話か?」
「………はい」
「………なら仕方がねえか。それじゃあ外で話すか」
「はい」

そう話した2人は並んで歩いていく。

「行ったな………」
「こ、これはもしかしてなのはさん愛の告白!?」
「確かに2人で密会となったら………」

「なのは、頑張れ………」
「フェイトちゃん、大丈夫や。バルトさんと必ずうまくいくで」

そんな2人を物陰から見つめる5人。
先ほどまで一緒にいたヴァイス。
ちょうど通りかかったスバルとティアナ。
ヴァイス達とは別う場所から見つめるフェイトとはやて。

それぞれがなのはとバルトの様子を眺めていた。

そんな色んな人が見ている状況で2人の密会が始まった………











「で、話って何だ………?」
「えっと………」

近くのベンチに互いに座って話を聞くバルト。
しかしなのはの方は近くに座るバルトに緊張して縮こまってしまっている。

それほど密着するかと思えるほどの距離に2人はいた。

「えっとね………あのね………」
「何だよ煮えきらねえな………」

モジモジとしながら本題が中々出ないなのはにバルトはため息を吐いた。

「バルトさん、煙草は駄目!!」
「それくらい多目に見てくれって。お前に付き合う為にこうやって一服する時間を割いてるんだからよ………」
「………でも私煙草の臭い嫌いです」
「ちっ、分かったよ………」

上目遣いで睨まれバルトは出した煙草を懐にしまった。

「で、話は?」
「あっ………えっと………あの………バルトさん!!」
「お、おう………」
「カリムさんとはどんな関係なんですか!!!」
「はぁ?」

まるで告白するような勢いで言うなのはに押されてしまったバルトだが、質問を聞いて思わずいつもなら出さない様な声をあげてしまった。

「関係もなにも、ただ単に知り合いって感じだ」
「………本当に只の知り合いですか?」
「………そうだ」

(嘘はついていない。バルト・ベルバインにとってカリムは只の知り合いだ)

心の中でそう言い聞かせながら表では何とも無いような様に装いそう告げた。

「でも良く2人っきりでお茶会しているみたいじゃないですか」
「そりゃ、カリムの入れるお茶は旨いからな」
「………カリムさんも楽しみにしているみたいですけど?」
「それは俺の知った事じゃない。それに………」
「それに………」
「アイツはただ単に懐かしんでるだけなんだよ………」
「どういう意味です?」

「懐かしの亡霊に会うことにな………」

なのはにとってその言葉の意味は当然分からない。
ただその物言いがカリムの事を深く理解しているように聞こえて無性に腹が立った。

そしてそれと同時に感づいてしまった。
バルトが無意識ながらもカリムの事を大事に思っていることを………

「分かりました、もういいです」

そう言って立ち上がるなのは。

「なのは?どうしたんだいきなり?」

流石のバルトもそんななのはの行動を不審に思い取り敢えず腕を掴んだ。

「………離してください」
「一体何なんだ。呼び出したかと思えば勝手に帰ろうとするし………最近のお前はどこかおかしいぞ?昨日の事もそうだ、一体どうしたんだ?」
「もういいです。私がバカだったんです。分かっていた事なのに期待して………」
「期待………?」
「もういいです、今日は付き合っていただきありがとうございました」

そう言ってなのははバルトの手を払い、走り去ってしまった。

「何だったんだ?………それに………」

バルトは気がついていた。
走り去る直前にたまたま見えた瞳に小さく光る雫に………

「泣いていたのか………?」

バルトの問いに答えるものは誰もいなかった………








「あれ?何かなのはさん走り去っていったけど………」
「何かあったのかしら………?」
「確認したいが、これ以上近づいたらバルトさん気がつくからな………」

「はやて、何か走り去ってるけど………」
「あり?うまくいっていたんちゃうの?」

この5人には会話は聞こえておらず、悶々としたまま各々の部屋に戻るのだった………  
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