転生者拾いました。
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家出姫
キャットファイト
クスィー伯の使者がオレを訪ねた翌日、情報屋から手にいれた情報をもとに西部王国の高難度フィールド「蒼風の谷」に向けて家を出た。
そして国境付近で休憩していると茶屋の店主が話しかけてきた。
曰くこの先の街道で盗賊が出るらしく「死神」の二つ名を持つオレに討伐してほしいとのこと。それを二つ返事で返し、片手間ついでに討伐に出る。
「おいおい、こんなもんか?」
「う、うぅ……。」
盗賊自体はすぐに見つかり、即座に無力化した。三分も経たず12人の盗賊が行動不能になった。
しかし店主の話に出たリーダーらしき奴がいない。
「おい、お前等のリーダーはどこだ?」
「そんなもん言うかよ、バーカ。」
ゴッ!!!
「リーダーはドコにいる?」
「ひぃ!!?」
「アンタねぇ……。」
しゃべらなかったヤツに頭突きを炸裂させるとそいつは白眼をむいて気絶してしまった。
そのまますぐ隣にいたヤツの胸倉を掴むと訊いてもいない事まで答えてくれた。
そして盗賊連中を警察的組織の騎士団に引渡し、したっぱBの言ったポイントへ向かう。
「ここか。」
「いかにもなところねぇ。」
やってきたのはとある洞窟。盗賊のアジトらしい。変なにおいもすることだし間違いないだろう。それに入り口に「ようこそ、ヘッボン盗賊団へ!」なんて書いた看板があるし。
ぷぷっ、ヘッボン……。ヘボ…。
「どこまでヘボなのか見に行きますか。」
洞窟は長くしばらくは何もない廊下だったが1分ほど歩くと光が見えた。
そこから笑い声が聞こえる。
「だはははは!!サイコーだぜ!」
(なんだ?)
(随分盛り上がっているね。)
小声で話し合い、突入のタイミングを計る。
(3、2、1、GO!)
合図と同時に岩影から飛び出し室に突入する。
中には盗賊と思われる二人の男と縄につながれた華麗な女の子がいた。
オレたちはそれぞれ利き手の手刀に魔力を集め、勢いをつけて叩き込む。オレたちが速すぎたせいか盗賊は抵抗する間もなくうめき声をあげて無力化された。
「ふぅ。セリナ、その子を頼む。」
「わかった、カズヤ。」
「カズヤ?」
「ん?」
盗賊を担いで外に出ようとしたとき縄につながれた女の子が何か言った。
「カズヤってあの『死神』の?」
「まあそうだが。」
セリナが彼女の縄を解き、自由になった女の子は目を輝かせオレを見た。
「カズヤ様!」
「のわっ!?」
あろう事かたかが1m程の距離をものすごく勢いでこっちに突っ込んできた。
流石に回避できず彼女の突撃を腹部に受け仰け反り、洞窟の岩壁に背中をぶつけた。それによって肺の空気が吐き出され一瞬目がくらむ。
そのおかげで掴んでいた盗賊を勢いよく落としてしまった。
「お会いしたかったですわ。カズヤ様!」
「お会いしたかったって、君誰?」
「お忘れですか?あたくしです、エリザ・K・クスィーです!」
「なにぃ!?」
よく見ればそんな気がしてきた。緑に近い白銀の髪、薄く紅の差す肌。見れば見るほどエリザに見えてきた。
しかしこんなところにエリザがいる訳がない。
「ああ、カズヤ様…、カズヤ様…。」
「あ、おい!止めろ!」
「いいえ、止めませんわ。」
「でぇぇぃ!止めんか!」
オレが止めろと言ってもエリザはオレの胸の上で頬ずりをし、光悦の表情を浮かべる。そんなにいいのか?オレは。
「カーズーヤー?」
「な、何でしょうか、セリナ様……。」
「うふふ。」
何かうすら寒いものを感じると背中を嫌な汗が流れ落ちる。そしてその後の記憶がない。
後書き
湧き上がる鼓動、吹きすさぶ感情
愛するものを賭け二人の姫が立ち向かう
次回 才姫戦争
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