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八条学園怪異譚

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第二十五話 飛ぶ魚その二

「同じキリスト教でしょ」
「同じキリスト教だからですよ」
 ろく子が愛実に首を伸ばして言ってきた。
「だからなんです」
「同じだから?」
「人は遠い相手より近い相手を見ます」
 その知的な美貌の顔で語る。
「そして嫌い憎むものです」
「だからなの」
「はい、イギリスでも国教会とカトリックの対立があるのです」
 そうなっているというのだ。
「これには政治的な事情も絡み合いまして」
「ううん、ややこしいのね」
「宗教の問題はどうしても複雑になります」
 ろく子はまた話す。
「そこに政治も関わりますから」
「だからなのね」
「そうです、こうしたことは世界史の授業でも習いますので」
「ううん、お勉強でも」
「頭に入れておくといいですよ」
「ええ、わかったわ」
 愛実はろく子のその言葉に頷いた、そしてだった。
 学園の中の教会についてこんなことも言ったのだった。
「幾つかあるわよね」
「カトリックにプロテスタントに正教じゃよ」
 大きく分けられたこの三つの宗派の名前が出る。
「正教はギリシアとロシアじゃな」
「結構複雑ですよね」
 愛実は博士の説明を受けてぽつりとした感じで返した。
「キリスト教も」
「時代と共に分かれたのじゃよ」
「学校の授業で教わったままで」
「そうじゃ」
「それでうちの学園の中の教会もなんですね」
「幾つかあるのじゃよ」
 小さい教会だがそれでも幾つかあるというのだ。
「神社は大きめのが一つ、道観もあるのう」
 中国の道教のものもあった。
「お寺も幾つかじゃな」
「お寺の宗派も多いですよね」
 聖花がそのことを言う。
「そうですよね」
「うむ、主な宗派の僧侶の資格は大抵取れる」
 この学園の大学の特徴の一つだ、各宗教、各宗派の僧侶や神父、神主が来てそのうえで講義を持っているからである。
 だからそれでなのだ。
「浄土宗でも真言宗でも臨済宗でもあるぞ」
「本当に何でもなんですね」
「あと天理教もあるぞ」
 奈良に本拠があるこの宗教もだった。
「八条家は天理教じゃしな」
「そうらしいですね、何か」
「八条分教会の信者さんですよね」
「そうなのじゃよ、信仰は古いぞ」
 このことも話される。
「その縁で天理教の教会長さんの資格も得られるのじゃよ」
「それで天理教の教会もあって」
「そうなっているんですね」
「それも結界の一環の様じゃな」
 学園全体に張られているそれがだというのだ。
「邪悪な妖怪や幽霊が入ることを防いでおるな」
「僕達はお寺に入っても何ともないよ」
 一つ目小僧が言う、今もお寺の小僧の服を着ている。
「悪くない妖怪はね」
「そういえばあんたお寺に出る妖怪よね」
「そこに来た子供達を驚かせるこことが趣味だよ」
 それで知られている妖怪である。 
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