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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)

作者:BK201
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第三十四話 真の歌劇

 
前書き
またまた二話連続投稿です。風邪が治ってから体の調子がいいのでずいぶん楽です。このままの更新ペースを保てたらいいな。多分無理だけど。 

 
「妬けるか、カールよ」

ラインハルトは盟友にたいしてそう語り掛ける。返答は忍び笑いだった。そして二人は同時に詩を吟じる。

「Oh! Welchen Wunders höchstes Glück! (おお 至福もたらす奇跡の御業よ)」

「Der deine Wunde durfte Schließen, (汝の傷を塞いだ槍から 聖なる血が流れ出す) 」

そう、偶然などという生易しいものではない。それらは全くの同時に起こったこと。故に、今この時にこそ、

「この既知感(ゲットー)は破壊され」

「次なる新世界へと超越するのだ」

総てはそうなるように仕組まれた“必然/偶然”。神の見えざる手はこの世には存在しない。ここに強く言っておくべきだ。人の意志。そは不可侵。

私は何もしていない(・・・・・・・・・)

例え、その過程にそれを知りながら壇上の上で小細工を行う輩がいようとも、それは彼の関与するところではない。何故なら彼は何もしないことを選択したのだ。故にカール・クラフトはそう呟いて微笑した。

そして、決着はついた。

「―――見事」

「ああ、素晴らしい」

笑う水銀の超越と、遥か天の方陣から、黄金の破壊も愉悦の相を隠さない。

「では、いよいよ始めようか」

全くの想定外ともいえることは多く起きた。赤騎士(ルベド)の魂こそ身の内に戻った。白騎士(アルベド)の代替色である水騎士(アグレド)とてそれは同じ。白皙の魔人もその魂を捧げた。しかし、黒騎士(ニグレド)と影の魔女、雷の戦乙女(ヴァルキュリア)はこちらへと来ることがなかった。
だが、それに怒りを見せる様子も、それどころか愉悦の表情すらラインハルトは浮かべる。全くもって面白いではないか。

「ならば私はこれで―――我が友と共にあなた方の戦いを見物させてもらうとしよう」

「そうだな待っているがいい。なに、すぐに会えることだろう」

新世界の海で。

「故に私の覇道で塗りつぶそう。どちらが新世界のミチを開くか」

胸が躍る。ああ、こうでなくてはならない。何をやってもつまらない。何をしていても満ち足りない。人の満足とやらを味わったことすらない。それを今ならば気にすることなどなく開放できる。ああ、なんと喜ばしいことだ。
であれば、よし。我が条理を全として、破壊の君たる本分を魅せよう。故に貴様も魅せるがいい。今このとき、鬩ぎ合う覇道と覇道の戦争こそが我が全力を示す時なのだ。

「では、いざ参らん。新たなる祝福の天地へ」

瞬間、幾千の死者が道を織りなす。(まなじり)を決してこちらへと向ける青年。年長のつとめを果たさねばな。

「来い」

最後の、そして最大にして最高の戦をしようではないか。

「メリー・クリスマス (Frohe Weihnachten)」



******



これが、これこそが最終決戦なのだろう。残る敵はラインハルト一人だけ。

「ヴァルハラだと…」

グラズヘイムだと。そんなにずっと戦いたけりゃ、本当の地獄に落ちやがれ。

「俺がそれを創ってやる」

私はここだ。待ちきれんぞ。と言わんばかりに表情を緩めるラインハルトを見ながら、俺は天へと続く道を超疾走で駆け上がっていった。




******



「怒りの日 終末の時 天地万物は灰燼と化し (Dies irae, dies illa, solvet saeclum in favilla.) 」

回れ契約の壷中聖櫃(ハイリヒ・アルヒェ)―――我が総軍を流れ出させろ。総て私の色に染まるがいい。

「海は幅広く 無限に広がって流れ出すもの 水底の輝きこそが永久不変 (Es schaeumt das Meer in breiten Fluessen Am tiefen Grund der Felsen auf, )」

いいや違うぞ。まだ始まってもいない。マリィは宝石だ。広がっていくのはその欠片。彼女の世界はお前の色に染まりはしない。

「ダビデとシビラの予言のごとくに砕け散る (Teste David cum Sybilla. )
たとえどれほどの戦慄が待ちうけようとも 審判者が来たり (Quantus tremor est futurus, Quando judex est venturus, )
厳しく糾され 一つ余さず燃え去り消える (Cuncta stricte discussurus. )」

壊したことがないものを見つけるまで。森羅万象、三千大千世界の悉くを。

「永劫たる星の速さと共に 今こそ疾走して駆け抜けよう (Und Fels und Meer wird fortgerissen In ewig schnellem sphaerenlauf. )」

駆け抜けるんだ、何処までも――――――俺と一緒に走った仲間を、今この時だって感じているから――――――

『藤井君、勝って……』

ああ、だから先輩も。

『絶対、お願い負けないで』

言われるまでもないだろ、櫻井。

『ここで待ってるから、帰ってきてよ』

帰るさ、お前が待ってる所に。

『ねえ、今でも刹那が愛しいの』

ああ、お前は変な奴だって思うかもしれないけど俺はこういうやつだよ。

『私は死人で出来た道なんか照らしたくない』

わかっています、だから手伝ってほしいんです。

『彼女を頼む……』

面倒くさいけど、約束しますよ。だから、ぜひ二人にも打ち上げは来てほしいです。

『お前は夢見がちな男だ。そんなお前だからこそ俺は敗北(なっとく)したのだ。そんなお前が認めぬという。ならば俺も認めんよ』

ああ、そうだ。お前の意思は俺の意志だ。だから俺について来い。

『こりゃ大変だね、蓮くんも』

だから手伝ってくれるよな。

『勝手にやれよ、マジどうでもいいし』

この馬鹿、相変わらずやる気ねえけど。
今、俺たちの思いは一つだ。

「どうか聞き届けて欲しい 世界は穏やかに安らげる日々を願っている (Doch deine Bnten,Herr, verehren Das sanfte Wandeln deines Tags. )」

故、なればこそ、私の安らぎのために戦火よ起これ。総てを破壊しつくすのだ。

「我が総軍に響き渡れ 妙なる調べ 開戦の号砲よ (Tube, mirum spargens sonum Per sepulcra regionum, )
皆すべからく 玉座の下に集うべし (Coget omnes ante thronum. )」

集え、集え、満ちて溢れよ戦鬼の海(ヴェルトール)

「彼の日 涙と罪の裁きを 卿ら 灰より 蘇らん (Lacrimosa dies illa, Qua resurget ex favilla )
されば天主よ その時彼らを許したまえ (Judicandus homo reus Huic ergo parce, Deus. )」

『ねえレン、わたしあなたに逢えてよかった』

俺も君に出会わなければただのガキで、それはそれで幸せだったのだろうけど―――こんなにも強く思える気持ちなんて知らなかったと断言できる。だから――――――

「自由な民と自由な世界で どうかこの瞬間に言わせてほしい (Auf freiem Grund mit freiem Volke stehn.Zum Augenblicke duerft ich sagen )」

『大好きだよ。離れたくない』

そうだ俺は彼女を愛してる。

「時よ止まれ 君は誰よりも美しいから (Verweile doch du bist so schon― )」

今度こそ、一緒にラインハルトをぶっ斃そう。

「永遠の君に願う 俺を高みへと導いてくれ (Das Ewig-Weibliche Zieht uns hinan.)」

「慈悲深き者よ 今永遠の死を与える エィメン (Pie Jesu Domine, dona eis requiem. Amen. )」


では一つ、皆様私の歌劇をご観覧あれ。


「「Atziluth――(流出)」」

その筋書きはありきたりだが。役者が良い。至高と信ずる。

Du-sollst(混沌より溢れよ)―――」

Res novae(新世界へ)―――」

故に面白くなると思うよ。

Dies irae(怒りの日)

Also(語れ) sprach(超越) Z()arathustra(物語)

ついに駆け上がったその場所で、火蓋は切って落とされる。

《ああ、やはりどうしようもなく至高だ。偏に惜しいと思うよ。これを覆すことになるのだとすれば》
 
 

 
後書き
流★出!!現状では蓮の方がステータス的に有利でしょうかね?マッキーとアンナとベアトリスがこっちにいるんだから。 
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