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剣の丘に花は咲く 

作者:5朗
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第七章 銀の降臨祭
  第四話 貫かれる剣

 
前書き
 や、やっと……書きあがった。

 二万字の半分以上が戦闘……戦闘むずい……。

 それでは、お待たせして申し訳ありません。

 第四話 貫かれる剣 です。

  

 
「前衛にいるのは反乱軍か」
「……この距離で良く見えるな相棒」

 シティオブサウスゴーダから南西に百五十リーグ離れた位置にある小高い丘の上。朝日が昇り世界に光が満ちていく中、士郎の強化した視力は、遥か彼方遠くから迫る軍勢をその視界に収めていた。
 更には、常人ではその姿どころか、軍勢が揺らす地の轟きすら届かない距離でありながら、迫るアルビオン軍の前衛を構成する反乱軍の虚ろな瞳さえ、士郎の視力は捕えていた。

 反乱軍の様子は、明らかに普通ではなかった。意思を感じさせない虚ろな目や足取り。シティオブサウスゴーダから休みなくここまで来たのか、全身が泥や埃で黒ずんでいた。 
 驚異の視力を持って三万の『反乱軍』を俯瞰する士郎の視界に、反乱軍ではない者の姿が映る。
 それはアルビオン軍の士官だった。
 徒歩での進軍を行う反乱軍の中で、馬に乗って指示をする姿は目立っていた。

 指示は奴らが出しているようだな。
 数は五十六。
 距離は約十キロか。
 問題は―――ない。

投影開始(トレース・オン)」 

 士郎の左手に、漆黒に染まった弓が現れる。

投影開始(トレース・オン)

 次の詠唱により現れたのは剣。
 柄が短く刀身が長い……黒鍵と呼ばれる剣が、士郎を囲むように虚空から現れ地面に突き刺さる。
 士郎の目の前に、測ったように等間隔で突き刺さる剣の姿は、まるで王の前で頭を垂れる騎士の如くで。
 その数は反乱軍を指揮するアルビオン軍兵士と同じ五十六。
 士郎はその内の一振りを掴みとり弓につがえる。

「……相棒……ちょっと聞きたいんだが」
「……何だ?」

 ギリギリと弦を引き絞る士郎に対し、腰にはいたデルフリンガーが声を掛けた。
 限界まで引き絞った姿のままの士郎に、デルフリンガーの躊躇いがちの言葉が掛けられる。

「……相棒って……その……」
「……どうした?」

 ズケズケとした物言いのデルフリンガーが口篭る様子に、士郎の視線が下に移動する。

「……いや、何でもねえ」
「何だ。気になるだろ」

 尻すぼみに消えていくデルフリンガーの声に、眉根を寄せる士郎。
 訝しげに濁る士郎に、デルフリンガーの苦笑混じりの返事が向けられる。

「……この戦いが終わってからでいいや」
「……分かった。この戦いが終わってからだな」

 小さく頷いた士郎は、視線を下から前へと移動させる。
 視線の先には、

「……さあ」

 反乱軍の中に混じる

「……戦争を」

 ()の姿。

「始めよう」 













「一体何処から飛んでくるんだっ!?」
「うるせえっ! それより早く水の使い手を呼べッ!! このままだと死ぬぞコイツッ!」
「エア・シールドが破られた?! 何の魔法だ!」
「クソックソッ! 一体何だこれは! 聞いてねえぞこんなの!」

 アルビオン軍の前面を構成している反乱軍の中から、悲鳴混じりの怒声が響く。悲鳴や怒声を上げているのは反乱軍ではなく、それを指揮するアルビオン軍兵士。血を吹き出しながら地面を転がる兵士の身体は、手足の一部がかけていた。
 血を流し、泣き叫ぶアルビオン軍の兵士を治療しようとした水の使い手の腕が杖と共に吹き飛んだ。

 悲鳴と混乱が渦巻く七万のアルビオン軍は、姿を見せない謎の敵の攻撃により、

「もうっ! もう嫌だっ!! 一体何が起こっているんだっ!? これは一体何なんっぎゅビッ?!」
「ヒッ! ……どうなってるんだよ……何が……何が起きてんだよ一体ッ!?」

 その歩みを止めていた。

 











「……何とか足を止めることは出来たか」
「有り得ねえだろ」
「何がだ?」

 小さく頷きながら黒弓を下ろす士郎に、えらく平淡な声でデルフリンガーが呟く。
 津波や地震のように止めることが出来ない存在の如き七万の軍勢が、混乱し動きを止める様を丘の上から見下ろしながら、士郎がデルフリンガーに声を向ける。

「この距離で、しかも一本も外さず当てるなんて有り得ねえだろ」
「何も難しい事じゃないぞ。中るのが見えたからな」
「……意味わからん」
「……良く言われる」

 デルフリンガーの突っこみに、何処か肩を落とす仕草を見せる士郎。

「しかしまあ、何時もながら……っていうか何時も以上にスゲエな相棒。この調子なら何とか逃げきれるかもしれねえな」
「……っ……いや、やはりそう簡単にはいかないようだ」
「あん? どういうこと……って。あちゃ~やっぱそう簡単じゃねえよな」

 デルフリンガーから明るい口調で励まされていた士郎だったが、混乱状態だったアルビオン軍の変化に気付き表情を厳しく引き締める。
 ただならない士郎の様子に戸惑うデルフリンガーだったが、反乱軍を置いて(・・・)進軍を再開させたアルビオン軍に気付くと、苦々しい声を上げた。

「どうする相棒? 結構時間稼げたけど逃げるかい?」
「いや。まだ駄目だ」

 撤退を進言するデルフリンガーに、士郎は首を横に振る。
 逡巡することなく撤退を拒否する士郎に、デルフリンガーはアルビオン軍四万に対する対処を聞く。

「駄目って言うがな、どうすんだ相棒? また指揮官を狙って足止めするのか?」
「いや、進軍速度が速過ぎる。例え支持する者を除いても、この勢いを止めることは出来そうにない」
「随分ハッキリ言うな」

 あっさりと降参する士郎に、デルフリンガーは意外そうに声を上げた。
 しかし、士郎の顔に諦めの色はなく。逆にその顔には、不敵な笑みが浮かんでいた。

「だが、想定内だ」
「なに?」

 最悪な状況を想定内だと言う士郎に、怪訝な様子を見せるデルフリンガー。

「どうやらアルビオン軍を指揮している者はなかなか優秀のようだな。確かにこの選択は間違いではない。動きの鈍い反乱軍を捨てての突撃。肉を切らせて骨を断つか……確かにそれは間違いではない……しかしそれは……」

 黒弓を握る手に力を込め、再度迫るアルビオン軍に向ける。
 士郎の前には、先ほどと同じように、虚空から現れた百を超える剣が突き刺さっている。

「相手が俺でなかったなら……な」















「よろしいのですか! あれ(・・)を捨ててしまって!」
「構わん! アレは動きが鈍すぎる。あれに合わせれば、また同じことの繰り返しになる。ならば、多少の犠牲は覚悟し、突撃を持ってこの場を突破する。幸いあの攻撃をする敵はそう多くはないだろう。いくら障壁が意味をなさない攻撃手段を持つものであっても、四万の突撃を止められる筈がない!」 

 馬を走らせながら、アルビオン軍の将軍たるホーキンスは、部下の質問に声を張り上げながら答える。
 全軍の指揮をするホーキンスがいるのは、アルビオン軍の最後部。目の前に広がるのは、砂埃を上げ全力を持って進撃するアルビオン軍の姿。その威容は、まさに人が創り上げた災害と言えた。
 これを止めれる者などいない。
 そう断言出来る。
 しかし、馬の背の上。
 手綱をしっかりと握り締め、全力で馬を走らせるホーキンスは、何やら言い様のない予感がゆっくりと全身を侵食してくるのを感じていた。
 何せ相手は防ぐことの出来ない攻撃により、反乱軍を指揮していたアルビオン軍の兵士を打倒したのだ。その攻撃手段どころか、相手の姿すら見つけていない。部下にはあの攻撃が出来る者は多くないと言ったが、それは推測でしかないのだ。
 だが、ぐずぐずしている暇などない。
 謎の攻撃により、既に予定の進行速度は大幅に遅れている。あのままでは、確実に連合軍に逃げられてしまっていた。ならば、これ以上時間を無駄にすることなど出来はしない。
 そうだ。
 どんな敵だとしても。
 四万の軍勢の突撃を止めることなど出来はしない。
 例え先程のように指揮官を狙われたとしても、既に動き出した軍勢を止めることなど出来ん……!!

 湧き上がる不安を押し殺すように、ホーキンスは心の中で自分を叱咤する。

 確かにホーキンスの考えは間違いではない。
 四万の軍勢による突撃は、もはや天災に近い。
 これを止めるには、同数以上の軍勢の力が必要だろう。
 だから、ホーキンスの選択は間違いではなかった……筈であった。













「やはり止めれないか」
「まあしょうがねえや。四万の軍勢だ。いくら指揮するものを倒しても、四万の軍にとっちゃ微々たるもんだ。それで止められるようなもんじゃねえよ」

 休みなく弓を射っていた士郎だが、迫るアルビオン軍の攻撃が自分が立つ丘に向かって飛んでくると、弓を下ろした。

「……逃げるかい相棒」
「いや」
「やっぱそうか」

 弓を下ろす士郎に、デルフリンガーは二度目の逃走の提案するが、士郎はまたも一瞬も逡巡することなくそれを否定する。敢え無く提案を否定されたデルフリンガーだが、特に動揺することはなかった。

「んじゃ。どうする? 相手は四万だぜ」
「問題はない」

 軽く聞くデルフリンガーに、腰に佩いたデルフリンガーに握った拳でコツンと叩き、

「こちらは――」

 士郎は笑った。

「――無限だ」

















 『正義の味方』



 ……それは目標……。

 ……それは目的……。

 ……それは理想……。

 ……それは憧れ……。

 ……見果てぬ夢であり……。

 ……手の届かない幻想……。 



―― I am the bone of my sword(体は剣で出来ている) ――





 『誰も彼も救おうとすれば、いずれ君は必ず死ぬよ』

 『いいじゃないか、死んだのはたった四人だろ。残りは全員救ったんだ。これだけでも十分すぎるほどだよ』

 『『正義の味方』になる? それを本当にあなたは望んでいるの?』

 『君は確かに彼女の命を救った。だけど、『彼女』は未だ救われてはいない……それなのに、君は彼女を置いていくのかい?』

 『あんたは強い。それは認めるよ。だけどな、それ以上にあんたは優しすぎる。それじゃあ、遠くないうちに壊れてしまうよ』






―― Steel is my body,and fire is my blood(血潮は鉄で心は硝子) ――





 英霊。

 死徒。

 魔術師。

 真祖。

 魔法使い。

 殺人貴。

 代行者。

 混血。

 超能力者。

 軍人。

 傭兵。

 ……世界の表、裏を問わず……。

 ……人、化物を問わず……。

 ……戦い……殺しあった……。

 ……命を狙われ……命を狙った……。

 ……傷つき倒したことがある……傷つき倒れたこともある……。

 ……殺したことがある……殺されたこともある……。



 しかし



 一度も負けた(諦めた)ことはない。






―― I have created over a thousand blades(幾たびの戦場を越えて不敗) ――





 『行くな士郎ッ!! 行くんじゃないッ!! お前が死んだら誰があいつを守るんだッ!!』

 『ニゲ……ろ……はや……く……ニゲテ……クレ』

 『何で……何でだよッ!? 何で逃げてくれないんだよッ!! あんたが死んだらっ! あいつはどうなるんだよっ!!?』

 『ねぇ……いいじゃない……私と一緒に逃げよ。誰も……私たちのことを知らない遠くまで……一緒に……逃げ……よ……ねぇ……逃げよ……ねぇ』

 『あんたが戦う必要なんかねえだろっ!! 何で戦うんだよ!? 何で逃げないんだよっ!? いいじゃないかたった一度……一回ぐらい逃げたって!! あんたを責める奴なんか絶対誰もいないんだからッ!!』






―― Unaware of loss(ただ一度の敗走もなく) ――





 『……何がしたいんだあんたは』

 報酬を求めなかった。

 『気味が悪いんだよ。一体何考えてんだ』

 男女少年少女善人悪人……誰彼構うことなく救った。

 『感謝はしている。だが、オレはあんたと関わり合いになりたくない』

 命の危機に陥っている者がいれば、これを全て救おうとした。

 『出て行けッ!! 俺の目の前からさっさと消えろッ!!!』

 全てを救おうとするが、何時も何時も……何かを取り零してしまう。






―― Nor aware of gain(ただ一度の勝利もなし) ――





 『私も行くッ!』

 ――駄目だ――

 『一人じゃ無理だ。……しょうがないな、俺も手伝ってやる』

 ――必要ない――

 『死にに行くようなもんだぞ。ワシも一緒に行こう。何、もうそろそろお迎えが来そうじゃしな。誤差の範囲じゃて』

 ――足でまといだ――

 『殺される前に、わたしがあなたを殺してあげる……だから……わたしも一緒に行くから』

 ――なら、ここで俺を殺せばいい――

 『何で……何で一人で行くのよ……確かに危ないけど……一人だけじゃ、絶対に死ぬわよ……ッ!!』

 ――……死ぬのは……一人で十分だ――






―― Withstood pain to create weapons(担い手はここに独り ) ――





 

 宝剣。

 名剣。

 真剣。

 魔剣。

 聖剣。

 神剣。

 妖刀。

 名刀。

 真刀。



 ……赤き荒野。

 ……そこには無限の剣が存在し。

 ……しかし一つも本物はない。

 ……荒野に突きたつ剣は墓標の如く。

 ……王の前に跪く騎士の如く……

 赤の世界にて主を待つ。






―― waiting for one's arrival(剣の丘で鉄を鍛つ) ――
 




 いいのかい? 

 もう行ってしまうの?

 何も言わずにいなくなるつもり?

 誰にも知られないままでいいの?

 記録も記憶も残さないつもり?

 それで君にどんなメリットがあるんだ? 

 そんなんで人生楽しいのあんた?

 人助けばっかりして……傷ついて……死にかけて……  




―― I have no regrets.This is the only path(ならば我が生涯に意味は不要ず) ――





 ……ギチギチ……と…………



 ………何処からか…………



 …………………音が聞こえる……



 軋みを上げる音が…………



 …………幾百……幾千ものナニ(・・)かが互いに削り合うような音が…………



 ブツリ、ブツリとナニカを切り裂く音が…………





 …………削られ……切り裂かれ……貫かれ……犯され……侵食される……






―― My whole life was(この体は)――





 欲なく


 意思なく


 望みなく


 希望なく


 絶望なく



 ただ……


 理想のみがある


 故にその者は人に非ず   


 ただ一振りの剣にして……





―― "unlimited blade works" (無限の剣で出来ていた) ――





 無限の剣であった。













「進めッ! 進めッ!! 立ちふさがるものは全て踏みつぶせッ!!」

 総司令官たるホーキンスは、声よ渇れろとばかりに叱咤の声を上げ、四万の軍勢と共に朝露に濡れる草原を駆けていた。
 激流のような四万の軍による進撃の中。この勢いならば、何が立ちふさがろうとも、その全てを蹂躙できると、そう確信を抱いていたホーキンスの声が、

「イケッ!! イケッ!! 決して止まるな! 駆け抜けろ!! このま――ッ?!」

 熱狂に侵された思考と共に凍りついた。

 ……凍りついたのは声だけでなく……全てであった。

 鬣を振り乱し、全力で駆け抜けていた馬も。

 その馬の手綱を握るホーキンスの身体も……。


 ……ホーキンスだけではない。

 副官も。

 近衛隊も。

 兵士も……。

 その全ての思考と身体が凍りつき。



 四万の軍勢が(天災)……止まった。  




 

 乾いた風が吹き。

 ホーキンスの汗に濡れた身体がブルリと震えた。



 始めに……炎が走った。

 次に……白い閃光が視界を侵し。

 視界が戻った時……そこには赤い荒野が広がっていた。




 朝露に濡れた草原を、空に昇る日が照らす。

 明るき陽の世界が消え……。

「ここは……何処だ……?」

 目の前に広がるのは、数え切れぬ剣が突き立つ赤い荒野。

 空は赤く染まり。

 吹きすさぶ風は痛いほど乾き。

 視界を侵す赤き荒野には果てが無い。

「幻術……か?」

 連合軍には、本物と見紛うばかりの幻術の使い手がいると聞く。もしやそれかと思ったホーキンスだったが、直ぐにその考えを打ち消した。

 荒野に突き立つ剣。

 その一つ一つが……寒気のするほどの魔力を秘めていた。

 これが幻術な筈がない。

 だが、それならばこれは一体何なんだッ!?

 幻術ではないと確信を抱くホーキンスだったが、まるで世界が塗り変わったかのような目の前の現実に対し明確な答えが出ず、ただただ混乱するだけ。

 ホーキンスだけではない。

 アルビオン軍の全てが、目の前に広がる非現実的な光景を受け止められていなかった。
 一声さえ上げることが出来ず、四万の軍勢が立ち尽くす赤き荒野には、時折吹きすさぶ乾いた風の音のみが響く。

 五秒……十秒……。

 静まり返っていたアルビオン軍だったが、時間と共に異常な状況により積もる焦り、混乱し、恐怖が限界を越え……悲鳴じみた疑問の声が上がろうとした時、



 ――アルビオンの将兵よ御覧じろッ!!!――




 天から声が降ってきた。




 ――赤き荒野に突き立ちし剣は無限――



 いや、違う。
 天ではない。
 遥か前方、微かに見える丘の上。
 そこに誰かがいる。



 ――ただの一振りも鈍らはなくッ!! その全てが名剣神剣魔剣聖剣宝剣なりッ!!――



 この赤い世界全てに響き渡るかのような大音声による宣言は、前触れなく見知らぬ世界に放り込まれ混乱するアルビオン軍を打ちのめす。言葉の一つ一つに力が満ち。全身が細かく震えだす。
 荒野に突き立つ剣は、剣の鑑定眼が特にあるわけではないホーキンスであっても、一目見て分かる程の力を感じる。
 それが無限。
 例えそれが嘘だとしても、果てない荒野に突き立つ剣は、百や千では足らないだろう。



 ――引くは攻めずッ! 逃げるは追わずッ!――



 乾いた土が擦れる音が聞こえる。
 視界の端に、兵士たちが後ずさる姿が見えた。
 手綱を握る手に力が入り、思わず後ろに下がりそうになったホーキンスだったが、震える身体を歯を噛み締め耐える。
 逃げるわけにはいかない。
 例えこれが幻術であろうとなかろうが、ここで逃げれば、唯一の好機を逃すことになる。



 ――それでも攻めるというのならばッ!! 無限の剣からなる無限の剣戟ッ!!――



 そうだ、例えこの無限の剣が相手だろうと、使い手がいなければただの宝の持ち腐れでしかない。
 確かに男の言葉通り剣は凄いだろう。
 だが、それを振るう者がそれに見合うほどの力の持ち主とは限らない。
 戦力が分からない敵。
 ならば先程と違いはない。
 ならばッ!!



 ――恐れずにして掛かってこいッ!!!!――



 世界を震わす男の声により、アルビオン軍の意識が逃走に傾きそうになった時。
 ホーキンスの声がそれに対抗するように、アルビオン軍全軍に響き渡る。

「アルビオン軍の将兵よッ!! 恐れることはない!! 例え無限の剣が相手となろうともッ!! それを振るう者がいなければものの数ではないッ!! さあッ!! 勇敢なるアルビオン軍兵士たちよッ!! 恐ることなくッ突撃をもってここを突破せよッ!!」

 ホーキンスの声が荒野に轟き。
 逃走しかかった兵士たちの意識を呼び止める。
 ホーキンスの言葉と共に、兵士たちの身体の震えが止まり、眼に力が漲る。
 そして、

「全軍ッ!! 突撃いいいいいィィッ!!!」

 ホーキンスの号令と共に、丘の上に立つ男に向かって突撃を開始した。















 砂塵を舞い上げ、地を震わせ、雄叫びと嘶きを轟かせながら四万の軍勢が迫ってくる。
 士郎の瞳は、強化せずとも迫り来るアルビオン軍の前衛を構成する騎兵隊の闘志に燃える顔をハッキリと映していた。
 距離は既に五百メイルを切っている。
 魔法が矢が銃弾が、士郎が立つ丘の蹂躙を始めた。

「……相棒……こりゃ……」

 デルフリンガーのか細く震える声が聞こえる。

 先程の声。
 ……どうやらこのアルビオン軍を率いる指揮官は、『なかなか優秀』どころではないようだ。
 逃げ出そうとした兵士の意識を、この指揮官は見事に逆転させた。
 焦りと動揺を怒りに。
 混乱と恐怖を敵意に。
 そして、怒りと敵意を殺意に。
 しかし、これも予想の内だ。
 最悪のだが、な。

 だが、これでいい。
 今、この場にいる者たちの全ての怒りが、敵意が、殺意が俺だけに向けられている。
 ……俺一人に。





「もう……どうしようも、ねえんじゃ」

 物理的な圧力さえ感じさせる程の敵意を殺意を向けられ、流石のデルフリンガーの声も震えている。
 それも仕方がないことだろう。
 四万の敵意。
 四万の殺意。
 これを向けられれば、例えただの鉄の塊である剣であっても、意識があれば、自己があれば、心があれば、ただ震え、惑い、絶望に落ち入るしかない。
 だが、

「……頃合か」  

 それならばこれ(・・)は一体何だ?

 震えることなく。

 迷うことなく。

 絶望することなく。

 目の前に突き立つ黒と白の剣を引き抜く男は。

 目の前に迫る大瀑布の如き軍勢を目にし、決して揺るがぬ意志を見せるこの男は。

「終わらせるぞ」

 躊躇することなく。

 それに飛び込む男は、一体何なのであろうか?


 











「ウオオオオオオオオッ!!」

 汗を撒き散らし、左手にしっかと手綱を握り締め、右手に剣を把持した騎兵隊が雄叫びを上げながら馬を駆る。騎兵隊の先頭にたつ男は雄叫びを上げ、丘の上に立つ男目掛け馬を走らせ、興奮と熱気が入り混じる思考の中、このまま全てを蹂躙できると確信していた。
 視線の先には、丘に突き立つ剣を引き抜く男の姿が。男の思考には、その男が何者かなど関係なかった。目の前に立ちふさがるものがいるならば、ただ蹂躙するだけ。
 例えメイジであろうとも、この距離で騎馬の突撃をどうすることなど出来はしない。
 男は確信を持って、馬を走らせる。

 邪魔だッ!!

 それが男の最後の思考。 
 次の瞬間。
 男は自身の両腕に熱を感じた。
 その源に気付くより先に。
 男の視界に闇が染まり始める。
 意識が遠ざかり。

 闇が男の全てを覆い尽くす直前。

 遥か彼方に、赤い光りが見えた。














 枯れた大地が抉れ。

 砂塵が舞い上がる。

 荒野を踏み砕く音が聞こえた時、そこには何もない。

 ただ、赤い残光が残るのみ。

 切る。

 斬る。

 刃る。

 目の前に立ち塞がる者を切り裂く。

 声を張り上げ走る兵士を斬る。

 馬に騎乗し駆ける騎士を切る。

 魔法を放とうと杖を向けるメイジを刄る。

 誰も彼もが気付かない。

 気付いた時には既に斬られている。

 騎兵隊を壊滅させたナニかは、止まることなく進む。

 それはまるで、熱したナイフでバターを切り裂くかのようで。

 騎兵隊を切り裂いたナニかは、そのまま槍隊に突き進む。

 槍隊を指揮するメイジは、目の前で騎兵隊が馬から吹き飛ぶのを目にしたが、何が起きたのか理解する前に、杖を握る腕に喪失感を感じた瞬間、視界が闇に染まった。

 騎兵隊と槍隊が切り払われるのを見た弓兵隊の若い指揮官は、目の前で起きた出来事が信じられず、部下に一言も命令を発する間もなく、何かが肩に突き刺さるのを感じながら馬の上から落ちた。




 何時の間にか……四万の軍勢による突撃が止まっていた。

 前衛の崩壊により、アルビオン軍の進撃は止まった。

 自分の元に届いた報告により、ホーキンスは前衛が崩壊したことは理解していた。

 謎の敵による手により、僅かな時間で前衛が壊滅させられた。

 それがメイジの精鋭部隊によるものであれば、驚きはすれ納得出来る。

 それがエルフの魔法戦士によるものであれば、恐怖するが理解は出来る。

 しかし、ホーキンスは知っている。

 いや、ホーキンスだけではない。

 このアルビオン軍を構成する四万の兵士全てが知っている

 四万の軍勢を止めたものは、たった一人の男。

 この世界を生み出した男。

 果て無き荒野に突き立つ剣の担い手。

 赤い騎士を。








 前衛を壊滅させた男は、止まることなく中衛を切り裂き始めた。
 このままであれば、間もなく中衛さえ切り裂き、男はここまで来るだろう。
 あの男は、アルビオン軍を割るように真っ直ぐに進んでいるため、中央の損害は甚大であるが、右翼と左翼の被害は皆無であった。しかし、単騎により、前衛を突破されたという事実は、熱狂と共に進軍する軍勢の勢いする殺し。被害を受けていない筈の右翼と左翼の部隊を崩壊させた。
 たった一人の男の手により二度も四万の軍の進行を止められたという現実を前に、総司令官たるホーキンスの前でありながら、兵士たちは取り乱し狼狽し右往左往していた。
 一般の兵士だけでなく、指揮官たるメイジも同じく。
 驚愕と悲鳴の声が微かに聞こえる中、ただ一人冷静な顔を見せるホーキンスは副官に指示する。

「……中衛はもうもたんな」
「ッ?! ……では、どういたしますか?」
「全戦力を持って奴を潰す」

 声を張り上げることなく淡々と呟くように、ホーキンスは命令する。

「亜人どもの生き残りを集め、奴にぶつけろ。時間稼ぎ程度にはなるだろう。その間に、集められるだけメイジを集め、その後方に配置しろ。奴が亜人の集団から抜け出た瞬間に全力で魔法を放て」
「ハッ!」

 淀みなく命令するホーキンスの姿に冷静さを取り戻した副官は、声を張り上げ敬礼する。

「まて」

 命令を実行するため後ろを向いた副官を、ホーキンスの声が呼び止めた。

「竜騎士は何人残っている」













 中衛の指揮官の杖を握る腕を肩ごと切り落とした士郎は、止まることなく突き進む。立つ塞がるのならば、剣を握る歳若き少年であっても、杖を握る若き少女であっても、躊躇うことなく剣を振るう。剣が、杖が、血が、肉が空を舞う。赤い世界を更に紅く染め上げる。
 そして、遂に中衛を構成する最後の部隊を切り払った士郎の前に、次に立ち塞がったものは、

――ガアアアアアアアアァァァァッ!!!――

 数百に及ぶ亜人の集団。
 唾液に濡れる牙をむき出しにし吠える身の丈五メイルは優に超えるオグル鬼。
 同じく身の丈五メイルを超えるまるで岩の塊が動いているかの如きトロール鬼。
 豚の顔と、豚の如き肥満体を揺らしながら甲高い鳴き声を張り上げるオーク鬼。
 地を震わせ迫るその姿を見れば、恐怖に身動きが取れなくなるのは必定。
 だがしかし、それは士郎の顔を一ミリも動かすことも出来はしなかった。
 人の身体を軽く超える亜人の突撃を止めるには、さすがの士郎も己の身一つで止めることは出来はしない。避けるにしても、距離が近すぎる。しかし士郎は足を止めるどころか、更に加速する。
 左手に刻まれたルーンの輝きが、一際強まる。
 もはや士郎の動きを捉えられる者など誰もいない。
 その姿は、まるで赤い閃光。
 士郎は駆ける。
 地を揺るがせ迫る亜人の集団に向け。
 警告を上げるデルフリンガーの声を無視し駆け抜ける。
 眼前に迫るは亜人の集団。
 しかし、士郎の視線は亜人のではなく、その手前。
 赤い荒野に突き立ちし数多の剣の中でも、一際異様を誇る。

 それは剣に非ず。

 槍であった。

 果てなく広がる赤い荒野よりも更に紅い。

 血で出来たのごとき紅きその身を荒野に突き立てる槍に向け、士郎は駆ける。

 両手に握った黒と白の双剣を離し、士郎は紅き槍を握りしめる。

投影(トレース)開始(オン)

 脳裏に過ぎるは、かつて見た青き残光。

 早く!

 速くッ!

 疾くッ!!

 ただ……ただ捷くッ!!!

「――――憑依経験、共感終了――――ッ!!」

 まだ……。

 まだ遅いッ!!

 あの男は……もっと疾かったッ!!

 枯れた大地を踏み砕き、砂塵が舞い上がるより先に駆け抜ける。  

 まだだッ!!

 まだ……遅いッ!!

 士郎の身体の形が歪む。

 やがて左手に輝く光が全身を照らし出す。

 音を越え……光の速度に指が届き。

 赤い光りがそこに生まれた。 

 次の瞬間。

 赤く輝く士郎の身体は大地を離れ、朱く染め上げられた空に向かい飛ぶ。

 荒野の枯れた大地を破壊し、飛び上がる士郎。

 高く高く高く……それはもはや跳躍ではなく飛翔。

 翼あるもののみが辿り着ける筈の遥か高みに辿りついた士郎は、右手に掴む槍を手放す。

 槍は地に向かって落ち始める。

 その柄に、士郎の足が掛かる。

 それはまるで、弓の弦に矢を掛けるかのようで。

 士郎の身体が文字通り弓なりにしなる。

 そして、ギリギリと弦が引き絞られる音さえ聞こえそう程、限界まで逸らした身体を、

突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルグ)ッッ!!!」

 解き放つ。





 解き放たれた槍は紅き閃光となり、突撃する亜人の集団に突き刺さり。

 瞬間。

 轟音と共に紅い華が花開く。

 華は異様なまでに赤く朱く紅く。

 花びらの如く空から降ってくるそれは、赤く朱く紅く……吐き気をもよおすほどに緋い……。

 びちゃびちゃと、濡れた音とともに大地に降り注ぐ紅いそれが、枯れた地を潤す音を背に、士郎は大地に降り立つ。

 膝を曲げ衝撃を逃した姿のまま、大地に踞る士郎が顔を上げる。

「相棒ッ!!」

 悲鳴のようなデルフリンガーの警告の声が響く。

 顔を上げた士郎の眼前に、万色の輝きが迫る。

 巨大な紅い炎弾が飛ぶ。

 鋭い青い水の槍が空を切り裂く。

 硬い岩弾が抉り飛ぶ。

 不可視の鋭き風が無音で迫る。

 空を覆う万色の光りに隙間なく。

 避けることなど不可能。

 士郎は大地に膝をついた姿勢のまま、左手で腰のデルフリンガーを引き抜く。

「無理だッ?!」

 悲鳴じみた声を上げるデルフリンガーを無視し、空いた右手で荒野に突き立つ紅い槍を引き抜く。

 紅い槍。

 それは先程のゲイボルグに勝るとも劣らない槍。

 名を破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)

投影(トレース)開始(オン)

 フィオナ騎士団輝く貌の騎士ディルムッド・オディナが振るいし紅槍。

 かの英雄は、二刀流ならぬ二槍流の槍使い手。

 右手に赤き槍破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)を、左手に黄の短槍必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)を握り、戦陣を駆る騎士。

「――――憑依経験、共感終了――――ッ!!」

 右手に破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)を、左手にデルフリンガーを掴み、士郎は立ち上がる。

 いや、駆け出す。

 視界を埋め尽くす魔法の雨の中に向かって。

 頼るのは両手に握る武器のみ。

 槍と剣。

 破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)とデルフリンガー。

 その二つの共通点は――。













 亜人の後方に配置された、急遽集められたメイジの部隊。
 突然の招集であったが、軽く千を超えるメイジが集まっていた。そのメイジの部隊の目の前で、

「っ……ぁ……」

 亜人の集団が爆発した。

 千人からなるメイジの部隊。その最前衛に位置していた男は、亜人が赤い華になる瞬間を目にしていたにもかかわらず、その出来事を理解出来なかった。後ろにいるだけでも膝が震えるほど恐ろしい亜人の突撃。
 亜人の集団を突破してくる敵に向かって魔法を放てとの命令を聞き。最初はこれを突破出来るものなどいはしないと、男は内心で笑っていた。男がいた部隊は、後衛に配置されていたため。男は未だ何が起きているのかを知らなかった。そのため、他のメイジたちが前に行くことを嫌がっているのを見て、臆病者がと笑い、自分から前に配置されにいったのだが。

 これは何だ?

 空から紅い光りが落ちてきたかと思った瞬間。目の前を走る亜人の集団が臓物を散らし弾けた。むせ返るほどの血の臭いが、三百メイル以上離れたここまで届いてくる。
 身体が震え、乾いた歯が鳴る音が五月蝿い。
 目の前で起きた出来事を理解できずとも、恐怖は感じている。
 赤い荒野の中、更に赤黒く染まった大地の先に、空から男が降りてきた。

「ひッ……ぁ……」

 悲鳴が漏れる。
 赤い……紅い……緋い……男。
 赤い騎士の姿。
 それを目にし、悲鳴が上がりかけた時、

「う、撃てッ!! 撃てッ!! 撃ちまくれえええええええぇぇッ!!!」

 悲鳴が聞こえた。
 いや、悲鳴ではなくそれは命令。
 千のメイジからなる大部隊の指揮官が、女のような甲高い声を上げている。
 魔法が一斉に放たれた。
 背後から、左右から様々な魔法が放たれる。
 風が火が水が土が……デタラメに空に放たれる。
 向かう先は地に膝をつく騎士。
 男も未だ混乱した頭のまま魔法を放つ。

 数秒の後、魔法が着弾する。
 炎が吹き上がり、砂塵が舞い上がる。
 地響きが轟くのを感じながら、男は恐怖に引き攣った顔を奇妙に歪ませた。
 何者であろうとも、これだけの魔法による攻撃を受けて無事で済むわけがない。
 杖を握る手を、のろのろと下ろしかけた男の手が、

「……な……ぁ……」

 ピタリと止まる。
 男の視線の先。砂塵が晴れたそこに、槍と長剣を握る騎士の姿が。

「あ、あ……ひぃッ」

 目を見開き、湧き上がる恐怖に戦慄く男が、今度こそ悲鳴を上げようとしたが、

「なぁッ?!!」

 再度止められた。
 止めたのは赤い騎士。
 気付けば直ぐ目の前に迫った赤い騎士が、右手に握る槍を振りかぶっていた。

 右手に槍を、左手に大剣。

 ああ、これではまるで……。

 杖を握る右手に激痛が走るのを感じながら、闇に染まる視界の端で、自分の横を駆け抜ける赤い騎士を追う。微かに残る思考に、かつて聞いた歌が流れる。

 ―――神の左手ガンダールヴ―――

 ……そう、かの伝説の使い魔ではないか……

 ―――勇猛果敢な神の盾―――

 ……いや、違う……この男は伝説の使い魔でも及ばないだろう…… 

 ―――左に握った大剣と、右に掴んだ長槍で、導きし我を守りきる―――

 ……何せこの男は……万の軍勢をも打倒するのだから……











 魔法による絨毯爆撃を、両手に持つ破魔の力を持つ槍と剣によって切り裂いた士郎は、外れた魔法により舞い上がった砂塵が晴れるのに合わせ、メイジの部隊目掛け駆け出した。
 先頭に立つ男の腕を右手に握る槍で切り飛ばすと、今だ状況が把握出来ていないメイジの部隊の蹂躙を始める。剣の、槍の間合いに入る端から、杖を握る手を腕ごと切り落とす。
 まるで草を刈るように腕を足を切り飛ばす士郎の姿に、メイジたちが蜘蛛の子を散らすように逃げ出す。士郎は逃げ出すメイジたちの隙間を縫うように駆け抜ける。視線の先には、逃げ惑うメイジたちを何とか立ち直らせようと声を張り上げる指揮官と思しき男の姿。指揮官がこちらに気付き、恐怖に歪んだ顔を見せる。杖を持つ手をこちらに向け始めたが、遅すぎる。
 士郎の左手が振るわれ。
 デルフリンガーの剣身が杖を握る指揮官の腕を宙に飛ばす。
 おまけとばかりに、驚愕に顔を染め上げる指揮官の頭を蹴りつけ昏倒させた士郎が、次の獲物を探すかのように顔を巡らした時、

「相棒ッ! 上だッ!!」

 デルフリンガーの警告の声が響き渡る。
 促されるまま顔を上げた士郎の視線の先に、竜を駆る騎士の姿が。
 六十八騎の竜騎士が迫って来る。
 赤く染まる空を飛ぶ六十八の機影。
 士郎の強化した視力は、竜がその足に掴む樽の姿を捕えていた。この状況で何かを抱えた竜の姿。士郎の頭にいくつもの考えが同時に浮かぶ。その中で、最もこの状況でありそうな考えに思い至った瞬間。士郎はデルフリンガーを鞘に戻すと同時に、右手に握った槍を今まさに魔法を放とうとしたメイジ目掛け投擲する。投擲された槍は、狙い違わず杖ごとメイジの腕を破壊するが。士郎はその結果を見届けることなく、目的のモノめがけ走り出す。

 士郎の走る先には、一つの塊。

 それは岩にしては、形が整いすぎていた。

 柱にしては、余りにも武威に満ちていた。

 だが、武器にしては余りにも巨大すぎた。

 しかし、士郎は知っている。

 それを振るう英雄の姿を。

 まるで小枝のようにそれを振い。

 暴風の如く暴れまわるその姿を。

 最強の英雄を。

 地を蹴り。

 柱と見紛う巨大な斧剣の柄を握り締め。

 荒野から引き抜く。

 肩に鈍い痛みが走る。

 ギリッと歯を鳴らし痛みに耐え、それを肩越しに構える。

 脳裏を過る巨大な影。

 ギリシャ神話の大英雄。

 かの英雄が振るいし九つ首の水蛇ヒュドラを殲滅した宝具を模した武技。

 かの英雄に手が届くはずもなく。

 真似て振るう技は、模倣と言うよりもただの物真似。

 しかし、それでは足りない。

 迫る竜騎士は遥か遠く、物真似では届かない。

 経験憑依だけでは足りない。

 これを振るうには、この身体では脆すぎる。

 あの鋼の如き肉体をも投影しなければならない。

 大英雄そのものをこの身に|投影(憑依)させる。

 それには投影(トレース)では届かない。

 才なきこの身では、百年の修練を持ってしても決して届かぬ高み。

 ならば相応の代価を持ってその頂きに指を掛ける。

「――――投影(トリガー)装填(オフ)――――ッ!!」

 ギチリと肉が裂ける音が響く。噛み砕かんばかりに歯を噛み締め。

 肩に担いだ剣を振るう。 

是、射殺す百頭(ナインライブスブレイドワークス)ッ!!」

 刹那。

 ひび割れた大地を切り裂き九つの光りが空を駆け抜けた。













「……信じられん」

 呆然と呟くホーキンスの目の前で、竜騎士が空から降ってくる。
 九つの光りが空を走ったかと思った瞬間。六十八騎の竜騎士を九つの光りが切り裂いた。
 逃げる暇なく光に貫かれた竜騎士が、火薬が詰め込まれた樽と共に地に落ちる。
 アルビオン軍の端に墜落した瞬間、鈍い爆音が響く。
 衝撃にビリビリと身体が揺れるのを感じながら、ホーキンスは血が滲むほど唇を噛み締める。
 用心に用心を重ねた。
 有り得ないと考えながらも、あの魔法の雨さえ潜り抜けられた時のため、竜騎士に持たせた爆薬を持って、配置したメイジの部隊ごと吹き飛ばそうとしたそれが、まさか破られようとは。味方を犠牲にする作戦など、死んでもせんと誓っていたが。そうも言っていられなかった。軍全体で言えば、損害自体はそこまで酷くはない。奴は変わらず真っ直ぐに進んでくるため、被害自体は千を超えるか超えないかくらいだろう。一人の手によってもたらされた被害だと考えれば、途方もない被害であるが。七万、いや、四万の軍勢から見てみれば、四十分の一の被害でしかない。
 しかし、それをやったものがたった一人だと言うのが問題だ。
 未知の魔法。
 圧倒的な力を持つ武器。
 極限まで研ぎ澄まされた武技の数々。
 そして、たった一人の手により、七万の軍が止められ、更には押し返されるというこの事実。
 更にはダメ押しとばかりに、アルビオン軍が誇る竜騎士を、地上から撃ち落とすという有り得ない光景。
 ここに至り、アルビオン軍の士気は崩壊した。
 逃走を始める者が現れるのも時間の問題か。
 いや、見えないだけで、もう始まっているのかもしれない。
 顔を下ろし、首を巡らせるホーキンス。竜騎士の力を知っているが故、この世界よりも現実味が感じられない光景を前に、副官を含む兵士たちが竜騎士が堕ちる姿を一声も上げることなく見上げている。亜人は鏖殺され、千を超えるメイジの魔法が破られ、竜騎士が落とされた。兵士たちが、この事実を理解し、現実に戻って来た時、アルビオン軍は崩壊する。

「これは……覚悟を決めなければいけないかもしれないな」

 ホーキンスは腰から杖を引き抜く。

 もはや打つ手はない。
 士気は崩壊し、恐怖と混乱に染め上げられた兵士たちは逃走を始めるだろう。
 それを止める手立てはなどない。

 いや、それよりも早く。

「……来たか」

 あの男により、崩壊させられるのが先だろうか。

「……貴様が総司令官か」
「だとすればどうする」

 震えそうになる声を必死に抑え込み、強ばる顔を無理矢理笑みに変える。視線の先には、赤い騎士の姿。
 ホーキンスにとって。いや、今ではもうアルビオン軍全員にとって化物にしか思えない男だが、やはり信じられないことに、血の通った人間であったらしい。身に纏う赤い外套よりも赤い血で、全身を濡らしている。男が歩く度に、湿った音が響き、乾いた荒野に赤い血に染み渡る。
 この出血量からして相当な苦痛があるはずだろう。しかし、男の顔は苦痛に歪むことなく、ホーキンスを睨み付けている。
 男が腰から剣を引き抜いた。

「斬る」
「ァアアアアアアアアアアッ!!!」

 恐怖混じりの雄叫びと共に、護衛の騎士たちがマジック・ミサイルを飛ばした。
 赤い騎士を取り囲むように位置していた護衛の騎士から放たれる魔法。炎弾、氷の矢、石礫、四方から迫る様々な魔法の数は軽く二十は超える。それを目にしたホーキンスが、殺れると確信した瞬間。

 赤い騎士が右手に握る剣を振るった。

 ホーキンスはその瞬間、士郎の身体が三重にも四重にも見えた。身体がぶれると言う有り得ない現象を前に、目を見開くホーキンスの見開いた目に、襲い来る魔法の群れを、一つも受けることなく全て切り捨てた士郎の姿が映る。
 歴戦の騎士たる護衛の騎士たちでさえ、信じられない光景を前に、思わず追撃の手を止めてしまっていた。そして、そんな隙を見逃す士郎ではない。
 右手に持つデルフリンガーを地面に突き立て、両腕を交差させた。握られた拳の指の隙間には、黒鍵が挟まれている。士郎が身体を微かに丸めると、背中からミシリと肉が締まる音が聞こえた。

「ハッ!!」

 破裂音のような掛け声と共に、士郎が弾けるように両腕を開き、黒鍵が投擲される。
 それは狙い違わず、護衛の騎士に迫る。そして、音速を越え飛ぶ合計六本の黒鍵は、その衝撃波だけで護衛の騎士全てを、まるで風に舞う木の葉のように吹き飛ばした。
 これで士郎とホーキンスを阻む者はいなくなった。ホーキンスとの距離は約三十メートル。今の士郎にとって、それを制覇するのに三秒もいらない。
 突き立てたデルフリンガーを引き抜く。
 ホーキンスが士郎に杖を向け詠唱を始めた。
 士郎が地を蹴りホーキンスに迫る。

 迫る死を目前に、ホーキンスは生涯最高の集中力を見せた。目にも止まらない筈の士郎の姿を、ホーキンスの目は捕えていた。
 だが、口が重い。
 腕が上がらない。
 迫り来る士郎を前に、ただ、その姿を見ていることしか出来ないでいた。
 死を前に、しかし、ホーキンスの心を染め上げるのは恐怖ではなかった。
 それは憧憬。
 何故ならば、目前に迫るそれは、ホーキンスにとってもはや死の象徴等ではなく。
 歴史の彼方に消えた筈のもの。
 夢であり憧れである。
 『英雄』。
 それであるが故に。
 単騎をもって、万の軍勢を打ち倒す。
 過去のどんな英雄、勇者であれ成し遂げられぬ程の偉業。
 それを成し遂げた男が目の前にいる。
 眩しいものを見るかのように、ホーキンスの目が細まる。

 『英雄』が両手で握る長剣を振りかぶる。 

 その左手に眩いほど輝くルーンが見える。
 鎧はところどころ欠け落ち。
 身に纏う赤い外套は、己が流す血で更に紅く染まり。
 白髪と浅黒い肌を血と泥が斑に汚している。
 肉体を、精神を、限界を越えて酷使されているだろうに、こちらを射抜くように向けられる目に陰りは一切見えない。

 刀身の周りの空間を歪ませながら、血で濡れる長剣が迫る。

 痛みより。

 熱さより。

 冷たさを先に感じながら、ホーキンスは剣を振り下ろした『英雄』の姿を追う。

 右腕に感じる喪失感を無視し、暗闇に堕ちる意識を必死に振り払いながら、万の軍勢を打ち破った英雄の姿を追う。

 意識が消える間際。

 ホーキンスの胸に去来した思いは、この『英雄』と共に戦場を駆けてみたかったという未練だった。




 

 






 デルフリンガーは、一言も声を上げることも出来ず。ただ、目の前の光景を目のない身体で見ていた。 七万の大軍。
 それが、まるで蜘蛛の子が散るように逃げ出している。剣を杖を銃を放り捨て、我武者羅になって逃げている。
 最初に逃げ出したのは、アルビオン軍の一番端を構成する部隊だった。彼らは士郎と直接相対はしていない。ただ、士郎が作り出す悲鳴と破壊音を遠くに聞いていただけであった。しかし、だからこそ、その心に積もる恐怖は大きかった。
 たった一人の男の手により、七万の軍の突撃を二度に渡り止められたどころか、逆に攻められているという現実。
 未知の魔法により、この数え切れぬ剣が突き立つ果て無き荒野の出現。
 遠くに咲く臓物の芳香を香らせた赤黒い大輪の華。
 天を覆い尽くす程の魔法の輝き。
 着弾と共に響く爆音と地響き。
 決着が着いたと思いきや、響くメイジの悲鳴。
 そして、無双を誇る筈のアルビオン軍自慢の竜騎士を撃ち落とした、空を切り裂き飛ぶ九つの光。
 それを前に、アルビオン軍の士気は完全に崩壊した。
 削られるように、軍の端を構成する兵士が逃走を始めた。それを止めるべき指揮官も、止めるどころか一緒になって逃げる始末。一旦崩れ始めた軍の崩壊は、止まることなく、更にその崩壊の速度を早めていく。
 果てない赤い荒野。
 何処へ逃げればいいか分からないまま、ただ、一刻も早くあの男から離れたいという思いに駆られながら、アルビオン軍は走っていた。






 士郎に腕を切り飛ばされ倒れたホーキンスに、副官と思われる男が駆け寄っていった。副官はホーキンスがまだ生きていることに気付くと、「撤退」を命じながら逃げ出していった。それを切っ掛けに、士郎から離れるようにアルビオン軍が逃走を始めた。士郎は逃げるアルビオン軍の背中を切りつけることなく。最初に宣言した通り。デルフリンガーを右手に引っ掛けるようにして持ちながら、逃げるアルビオン軍を攻めることなく、ただ見つめるだけであった。

 不意に、何かが割れる音が響き。
 赤い世界が崩壊を始めた。
 ひび割れた世界の隙間から、青々と茂る草原の姿が見える。
 アルビオン軍が唐突に始まった世界の崩壊に足を止めるよりも先に、世界が白く染まり。

「……戻っ……た?」

 デルフリンガーのポツリと呟かれた言葉通り、無限の剣が突き立つ果て無き赤い荒野の世界から、明るい日に照らされる世界に戻っていた。
 微かに残る朝霧の向こうに、逃走するアルビオン軍の姿が見える。元の世界に戻ってこれた安堵よりも、士郎に対する恐怖が勝っているのか、足を止めることなく逃げ続けている。微かに見えていたアルビオン軍の姿が、陽光に照らされる草原の彼方に消えいていく。
 残滓のように感じる振動さえ感じなくなった頃、恐る恐るといった風に、デルフリンガーが声を上げる。

「……やった……のか」

 言葉にしても、未だ信じらない。
 しかし、段々と実感が湧き上がってくる。
 七万の軍。
 それを足止めするどころか、打ち破り、撤退に追いやった。
 目の前にしても、信じられない。
 だが、やったのだ。
 相棒はやったのだ。
 七万の軍を打ち破ったのだ。
 凄げぇ。
 凄げぇ!。
 凄すぎるぜ……ッ!!。

「なあっ! 相棒っ!」

 湧き上がる思いに押さえる、デルフリンガーが声を上げる。
 喜色が混じった声は、並ぶものがない成し遂げた功績の大きさに震えていた。早く士郎と会話をしたい。これを成し遂げた男と話しがしたい。驚く程に強い思いが自分にあることに戸惑いを感じながらも、デルフリンガーは士郎に話しかける。

「おい、相棒っ! 聞こえねえのかよ」

 だが、士郎は何も答えない。

「おい……なあ……相棒?」

 敵がいるわけではないにも関わらず、士郎から返事が返ってこない。たまにわざと無視される時があるが、そんな感じではない。
 デルフリンガーは、何やら言い様のない恐ろしさに襲われた。
 血の通わぬ身体に寒気を感じる。
 先ほどとは別の理由で震える声で、デルフリンガーは士郎に声を掛ける。

「っ、お、おい……あ、相棒……?」

 デルフリンガーの震える声に応えたのは、

「ッ……ァ……」

 声のない悲鳴、

「―――は?」

 そして、士郎の身体を突き破り現れた。

「け、ん?」

 降り注ぐ陽光を反射させ煌めく、血で濡れる刀身だった。

「あ―――……ッッ?! 相棒おおオオオオオォォォォォォッ!!?」









 何だ?
 ナンだ?
 なんだ?
 これは一体何なんだ?

 デルフリンガーは、今起きていることを理解出来ず、ただただ呆然としていた。
 士郎の身体から剣が突き出ている。
 血に濡れる剣は、士郎の肉を突き破り、腕から、足から、腹から、背中から現れる。
 敵?
 いや違う。
 士郎の周りに人の姿はない。
 何が起きているか全く理解出来ず、デルフリンガーは悲鳴のような声を上げながら、剣に貫かれ続ける士郎をただ見ているしかなかった。
 立っていることさえままならない筈の士郎を支えるのは、身体から突き出る剣だった。
 倒れそうになる度に、剣が身体を突き破り、その反動で士郎が倒れるのを防ぐ。



 それはまるで、

 ―――倒れることさえ許さないとの何者かの怒りの発露―――

 ―――罪人に下る罰―――

 ―――身に余る力を行使したことへの代償―――



 声を上げることも出来ず、士郎は剣に貫かれ続けている。
 悲鳴と変わらない声で、デルフリンガーは必死に呼び掛け続けるが、士郎からの返事はない。士郎の身体を突き破り現れる剣は、現れた唐突さと同じように、士郎の身体の中に戻っていく。
 どれだけの時間それが続いたのか。士郎の身体から現れる剣の数と速度が明らかに減ってきた。

 どさりと、士郎の身体が朝露に濡れる草原の上に転がる。

「相棒ッ! おいッ!! 相棒一体どうした! こりゃ一体何なんだッ!!」

 デルフリンガーの声に士郎は全く反応しない。微かに身体が動いているため、まだ死んではいないだろうが、それも時間の問題だろう。倒れ伏す士郎の身体から、赤い血が大量に流れ出ている。

「相棒ッ!! くそッ! このままじゃ……ちくしょう……どうすりゃいいんだよ」

 このままだと確実に士郎は死ぬ。
 どうすればいいか分からず、苛立ち怒声を上げるデルフリンガーだったが、まずは落ち着けと自分にいい聞かせ、何とか落ち着きを取り戻そうとする。

「まずは……ここから離れねぇと」

 アルビオン軍が撤退したとは言え、また戻ってくる可能性もなくはない。こんな見晴らしのいいところでは、直ぐに見つかってしまう。デルフリンガーは、まずはここから離れようと考えた。

「……『使い手』を動かすなんざどれぐらいぶりだ?」

 ぶつぶつと呟きながら、デルフリンガーは自分の力を行使する。吸い込んだ魔法の分だけ使い手の身体を動かすことが出来る能力。先程の戦いで、吐くほど魔法を吸い込んだため、それなりの距離は動けるだろう。
 倒れ伏していた士郎の身体が跳ねた。
 意志を感じさせない様子で立ち上がった士郎が、近くの森目掛け走り出した。戦闘中の士郎の動きには劣るが、それは十分に早いものであった。
 昇る日に追われるように、デルフリンガーが操る士郎の身体が、森の奥へと消えていく。




























    
 なあ、相棒。


 ―――森の奥―――


 お前さん、本当に何者なんだよ?
 ずっとお前さんのことを見ていたが、未だに良く分かんねぇ……。


 ―――生い茂る木々の隙間から微かに光が溢れる森の中―――


 恐ろしい程冷静かと思えば、燃えるような激情を見せたり。
 氷の如き冷酷さを見せたかと思えば、包み込むような優しさを見せたり。


 ―――一際巨大な木の根元に、士郎が寄りかかるように倒れている―――


 残酷なほど現実主義者かと思えば、愚かしいまでの夢想家であったり。
 全くと言っていい程あんたのことが分かんねぇよオイラには……。


 ―――鷹の如き眼光を放つ目は、瞼が落ち見えない―――


 なあ、相棒?
 この戦いで、ルーンはオイラが今まで見たことがねえ程輝いていたけどよ。
 相棒の心を震わせていたのは、一体何だったんだ?


 ―――強き意志滲む顔は、力なく垂れ俯かれている―――


 怒り?
 悲しみ?
 恐怖?
 悦び?
 それとも愛?


 ―――鋼の如き身体は、ぴくりとも動く様子が見えない―――


 なぁ……相棒……。
 実はな、お前さんと初めて会った時な、何だかお前さんとは長い付き合いになりそうな気がしたんだよ。
 オイラはずっと一人だった、いや、剣だから一本かね。何千年もず~と一本だった。オイラにとっちゃ、人の寿命なんて星が瞬く時間程度にしか感じちゃいなかった。そんなオイラがよ。長い付き合いになりそうだなんて思っちまったんだ。


 ―――風が吹き、木の葉が揺れる音が森に響き―――


 はは……。
 オイラの勘も、やっぱ錆び付いちまってるのかね……。


 ―――士郎の手から握力が消え。デルフリンガーが士郎の手から零れ落ち―――


 なあ……相棒……。




 ―――森の中に静寂が満ちた―――






 
 

 
後書き
 お待たせして申し訳ありません。

 難産だった……っていうかめちゃくちゃトラブルに見舞われました。

 ネットが切れて、四〇〇〇字が消えることが二回。

 流石に絶望しました。


 夜中の三時に起きたそれ。

 深夜にも関わらず、悲鳴を上げました。
 

 色々とありましたが、何とか書き上げました。

 しかし……文章能力がない自分が恨めしい……。

 まだまだ続きますので、見捨てることなく、色々とご指摘ご鞭撻の程お願いいたします。

 


 感想ご指摘お待ちしてます。
 
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