連邦の朝
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第11話 授業
前書き
お読み頂き有難う御座います。
ワイアットは、古びた館に居た。
そうここは、トリステイン魔法学院の男子寮。
ワイアットが、思っているよりも学院と寮は老朽化しており、ジョージ二世が行く前に言った「グリーン、余り高くを希望を持つなよ。特に、学生と学院の内装な。」
ジョージ二世は、外交の一環で学院を訪れたことがある。
内装は、ひどく外装は、内装よりはまし程度の設備だったからだ。
これは、内部と外部の設備投資費、修繕費等の引き締め策の一環で、改修は見送られたのだ。
このトリステインの引き締め策とは、前宰相エスターシュの肝いりで行われた活動で、軍事基地や経済拠点以外の重要度の低い場所や施設への投資を減らした。
それにより、重要度の高い金融策や減税と増税にかかる費用を捻り出す為に、行われた苦肉の策だが、エスターシュが去った後も宮廷の利権や腐敗に染まった官吏達は、未だに続けていた。
その結果、国庫に集まった富は分配されずに、新たな事にも投資されず貯まっていくばかりで、国民の生活は苦しくなっていった。
その上に、元々他国とは、国力差が存在したが更に、その差が拡大した。
トリステイン国民を苦しめるのは、そればかりではなかった。
エスターシュが、トリステイン近代化策に、必要な資金源とトリステインの荒れ地に入植者を送り込むために、外資獲得策としてアルビヨンやロマリア、軍事力競争中のゲルマニアの中の都市国家等に、日用品や鉄だけではなく、小型帆船(空を飛ぶ船両用ではない)を増産と共に輸出した。
この事から、木材や燃料(薪や木炭)が値上がりした。
結果、パンまで値上がりして、これによりトリステイン国民は、暮らせないことはないが、昔と比べかなり厳しい生活を強いられていた。
特に、冬場は顕著だった。
ブリミルの教えに反する貴族達の領土と王国直轄地に、越冬準備の干し肉や薪、雪に対しての補強材、野菜、ワイン等が軒並み値上がりして、ビタミン欠乏症、欠食からくる風邪、栄養失調の流行により、トリステイン病と呼ばれ恐怖される事態となった。
エスターシュが、宮廷にいない今、トリステイン王国と言う名の船のバランスをとる舵取り役も調整役も、居なくなった。
居るのは、リッシュモンなどの少数の真面目な官吏と老いて病気になった艦長たる国王、数は多いが汚職すらできない無能官吏、腐敗した官僚と政治家、水夫たる元気のなくなった国民。
最早、誰が見ても斜陽の国だが、乗組員たるトリステイン国王、貴族、国民は知らないのだ。
自分達の乗った船は、沈みかけていることを一番、知らない。
当事者だからこそ、外から見えず盲目となりやすい事を……。
ワイアットは、学院のホールへ歩いてきた。
学院のホールの中は閑散としていた。
私の高度な戦略が崩れた。
だが、まだまだ私の私の高度な戦略は、修正が効く範囲だ。
紳士は常に冷静に、冷静にして考えれば、戦略も戦術も更には開発まで良くできるとあの時に、私は知ったはずだ。
ワイアットが、自身の考えに浸っていると後ろから声をかけられた。
「ワイアット君、こんにちは。ワイアットは、どちらへ行くのかな?」
マルティネスが聞く。
「マルティネスは私よりも、女の子を追いかける方が得意ではないのかな?」
ワイアットは、マルティネスに苦言を、マルティネスはワイアットに対して
「ははっ、これは、手厳しいな。僕は君見たいに枯れていないからな。」
ニヤリと笑いワイアットに皮肉を吐き、両者は笑う。
「腕を上げたな。マルティネスだが、若い娘の方が口はうまいぞ。」
ワイアットは、マルティネスに笑いかけた。
「ワイアットの方こそ、僕が笑いそうになるので笑いそうになっていたぞ。」
マルティネスは、ワイアットにそう言うとさらに笑う。
この二人出会いは、ワイアットの入学時まで遡る。
ワイアットは、廊下をある人物と二人で一緒に歩いていた。
ワイアットの連れは、アルビヨンから来た中小貴族ながらも、アルビヨンで貴族としてはかなり古い名門貴族な子爵家の令嬢であるハンナ・マーベリック、詰まるところマーベリックの娘と歩いていた。
そんな中で、ワイアットはチラチラ見てくるハンナを放っておいて、考えをまとめていた。
私の高度な戦略では 、そろそろ結婚しないと困る。
ハンナは、駄目だ。
何故ならマーベリックの娘だからな。それにしても貴族は、早婚と聞いていたが、私には何も話は来ていないぞ、このような差は一体?
ワイアットが、考え事をする中で、ハンナはワイアットに話しかけた。
「グリーン様、これからどうします?」
ワイアットに、問いかける。
「グリーンではない、ワイアットと呼べアルビヨン男爵家ワイアットの嫡男だ。今の私は。」
ワイアットは、力説する。
「では、ワイアットの件は良いとして、私達の関係性は?」
ハンナは、ワイアットに問う。
「ハンナは私の従妹で、私と仲が良くハンナと私の名ハンスと呼び合う位には、仲が良い間柄と言う設定だ。」
ワイアットは、ハンナにそう言った。
「ハンス、教室が見えて来ましたね!」
さっそくワイアットの考えた設定に乗っかるハンナ。
「そうだな、ハンナ。」
ワイアットは、教室の戸を軽く叩いた。乾いた音が聞こえ、教室内からそう若くはない中年の教師が現れた。
「君たちが、新入生かな、教室で自己紹介をしたまえ。」
中年の言う通りの事をして、1日を終えた。
「ワイアット君、私がマルティネスだ。」
そんな言葉から始まり気が付くとかなり時間が過ぎていた。
「マルティネスは、今日から友だな。」
二人は、こういった関係だった。
この世界で、初めての友ができて、友と過ごしたワイアットは、学院で今後何を見るのかなど、わからない事だ。
後書き
感想よろしくお願いいたします。
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