魔法少女リリカルなのはGK《ガイキング》 ~炎の魔竜伝説~
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第5話 居候-今日から新しい家族なの!-
前書き
久々に投稿・・・ていうか修正
では、( ^ω^)_凵 どうぞ。
(どうしてこうなった?)
今の自分の状況を再度確認して太陽は考える。
昨日はなかなかハードな一日だった。気がつけば異世界に放り出され、魔法少女と共に怪物退治。フェレット(イタチだと思っていたが後で訂正された)のユーノと魔法少女(太陽と出会う10分くらい前になったばかりの初心者)のなのは、二人とお互いの状況を説明し協力関係を結ぶ。
その結果、とりあえず行き場のなかった太陽とユーノをなのはは自分の家へと招いた。
なのはの家ではそのことで一悶着あったが、紆余曲折の末しばらくの間置いてもらえる事となった。
その後、太陽はシャワーを借り、割り当てられた部屋で床につきそのまま寝てしまった。そして早朝に目が覚めたので、少し庭を借りて日課の鍛錬をしていた。
そこへさらに早くから家の外で鍛錬していたなのはの兄・高町恭也、姉・美由希の二人が現れた。
高町恭也 高町家の長男で大学1年生、顔立ちの整った美青年である。
高町美由希 高町家の長女の高校2年、恭也と同じく顔立ちが整っており長い髪を黄色いリボンでまとめ少し大きめの丸眼鏡をかけた美少女である。
聞いてみると二人は剣術をやっているようでいつも早朝から鍛錬しているらしい。
そんな武術家の二人も太陽の鍛錬に興味を示し話が弾み、その流れで『じゃあ、軽く手合わせしないか?』という恭也の誘いに『はい、お願いします』と軽い気持ちで返事をした太陽。
この時、よく相手を見ていれば気づいたかも知れない・・・誘った恭也の目に危ない光が宿っているのに・・・・・。
そこまで思い返して太陽は思考を止め逃避していた現実に目を向けた。
太陽side
「さあ、どうしたんだい?太陽君・・・まだ始まったばかりだよ・・・・サア・・ドンドン逝コウカ?」
「・・・・・・」
ヤバイ・・・いや、何がヤバイって恭也さんの目・・・っていうか雰囲気そのものがヤバイ・・・。
昨日スライムもどきに襲われたことが小さいことに思えるほどに・・。
昔、リー先生が言っていた。
『強い相手と闘う時はそれに勝てる自分をイメージしろ』
そのイメージに追いつくように考えてみるのもひとつの手だと。
だからイメージしてみた・・・・結果、
剣を右に避けて・・・・腹が捌かれた。
左に避けて・・・・・・右の手足が宙を舞った。
決死の突貫・・・・・・首が飛んだ。
・・・・・・碌なイメージができねー!?・・・たぶん、あの人の殺気の所為だと思うけど・・・というか、なんで殺気向けられなきゃなんないんだ!?
「・・・うわ~・・恭ちゃん・・大人気ないでしょ・・・」
<マスター・・・本当に短い付き合いでしたねー(笑)・・遺言記録します?>
気楽だな外野は!・・ってか美由紀さん!お兄さんヤバイって!止めて!・・あと、そこのポンコツ!後で覚えてろよ!
<テンパってますねーマスター・・・あのー、美由紀さん・・・>
「ん?なに?アルちゃん」
<これってやっぱり昨日のことが原因ですかね?>
「・・・・まあ、それしかないよね~・・・恭ちゃん、なのはの事になるとね~」
・・?・・昨日?・・なのはちゃんの事?・・・どういうこと?
「・・他所見かい?アブナイヨ?」
「!?・・おわっ!」
・・・あっぶねー・・・今もろに首狙わなかった?・・いかん、余計なこと考えてる暇ないじゃん!
・・・・集中しないと・・・
太陽side out
ーーーーーーーーーーー
尋常ではないやり取りをしている二人を観戦しながら外野のアルと美由紀は会話を続けていた。
「だいじょうぶかな?太陽君・・」
<ま、殺しても死にそうにない子ですから大丈夫でしょ・・・というか、そっちのシスコンの方は・・・大丈夫ですか?>
「・・・普段なら大丈夫だけど・・・なのは絡みじゃね~・・・」
<昨日の『アレ』がよっぽど効いたみたいですねー>
「・・・・ああいうなのは滅多に見れないしね~・・・それでかも・・」
そう言って二人は昨日の出来事を思い返した。
ーーーーーーーーーーーーー
・・・なのはの提案を受けたところまで時間を遡る・・・
なのはの案内で高町家に着いた太陽達はその家を見て、
「・・おお~立派な家だな~・・・なのはちゃんってもしかしてお嬢様だったりする?」
周りの塀の規模から見ても結構な広さの日本家屋。
自分の実家と比べて立派過ぎる外観に驚く太陽。
「え?・・お嬢様なんて・・・そういうのはアリサちゃん達のことだし・・・ウチはただ古いだけだよ!」
慌てて訂正するなのは。
「・・・そうなのか?・・・でもまあ、立派なもんだな・・・」
「とにかく、ここがわたしんち・・・・なんだけど・・・」
そこまで言って困り顔になるなのは。
それを見て太陽は、
「・・・なのはちゃん、無理しなくても俺達大丈夫だぞ。別に野宿でも・・「それはダメ」・・はあ・・そうですか・・」
どうやら太陽達を泊めることはなのはにとって決定事項のようでここに来るまでにも何度か問答したがまったく譲らなかった。
<(意外に頑固ですよね・・この子)・・じゃあ、他に心配事が?>
アルがそう尋ねると、
「・・・・たぶん、私の帰りが遅いことみんな心配してると思うんだ・・・どうしようかなって・・」
<ああ、なるほど>
普通、9歳の子供が夜に外に出て夜中まで帰ってこなければ当然ながら親は心配する。
場合によっては警察などに通報した大事になるかもしれない。
ただ、それ以前になのはが困っているのは家族に迷惑をかけて叱られる事なのだが・・。
「・・・・まあ、素直に謝るしかないんじゃないか?」
<そうですねー>
「・・なのはの両親ってそんなに厳しい人なの?」
ユーノの言葉にフルフルと首を横に振るなのは。
「お父さんもお母さんもお兄ちゃんもお姉ちゃんもみんな優しいよ・・・だから、あんまり心配させたくないんだ・・」
そう言って落ち込むなのは。
それを見て、
「ま、やっちゃったものは仕方ないんだし、別に悪いことしてたんじゃないんだ・・・あれなら俺も一緒に謝るから・・元気出せ!」
そう言って励ます太陽。
「そ・・そうだよ!なのはが助けてくれなかったら僕は無事でここにいないんだし・・」
<そのとおりです、マスター。マスターの判断に間違いはありません。胸を張ってください>
続くようにユーノとレイジングハートが励ます。
<うちのマスターが言ったとおり今更ですからね、少なくともなのはさんの行動が正しいと支持する人がここにいるんです・・・それだけじゃ足りません?>
アルがそう尋ねたとき、なのはの顔に先程までの影はなかった。
「・・・そう・・だよね!うん!・・・ありがとう、太陽君、ユーノ君、レイジングハート、アルちゃん」
元気になったなのはを見てみんなで笑いあう・・そして、
「・・・よし!それじゃあ・・」
「お!行くか?」
気合を入れて門に向かうなのは。
それを見た太陽達も気合を入れたところで・・
「・・・・とりあえず、コッソリ私の部屋まで言って様子を見よう!」
<<「「は?」」>>
胸を張って後ろ向きな発言をするなのはにその気合が霧散した。
「・・・・・だめ?」
そう言って自信なさげに聞いてくるなのはに、
「・・・あのな・・」
「・・・・え~と・・」
<・・・マスター・・それはちょっと・・>
<私達の良い台詞台無しですね・・・・>
「あ~・・・やっぱり・・?」
そんなやり取りをしているなのは達。
そこに、
「・・・こんな夜遅くに家の前で楽しそうだな・・・なのは?」
そんな声が掛かったのはその時だった。
<<「「「!?」」」>>
驚いて声のした方を見るとそこには、なのはのよく知る人物、兄・恭也と姉・美由紀が立っていた。
「!?・・お・・お兄ちゃん!お姉ちゃん!」
「え?この人たちが?」
突然の家族登場に慌てる太陽となのは。
ユーノ達はばれる前に会話をやめ沈黙する。
そうしている内に恭也達は続ける。
「おかえり・・・こんな夜遅く何処にお出かけだったんだ?」
「・・・あ~・・え~と・・・その・・」
咄嗟過ぎて言い訳を思いつかずしどろもどろになるなのは。
太陽もどうしようかと考えていると、別のところから救いの手が来た。
「あら?・・可愛い♪・・・もしかしてこのコがなのはの言ってたフェレット?」
美由紀が抱えていたユーノを覗き込む。
「え?・・う・・うん。そうだけど・・」
どういっていいのか思いつかないなのはを見て
「ん~・・なんかこのコ元気ないね?・・そっか・・なのは、このコが心配で様子見に行ったんだ」
「・・・え・・っと・・うん、じつは・・」
ユーノと美由紀を交互に見ながら同意するなのは。
それを見た恭也は溜息をつきながら、
「・・・だからと言ってないしょで・・しかもこんな夜遅くまでというのはいただけない・・」
「・・・う・・ん・・」
恭也の言葉に俯くなのは、それを見た美由紀は
「まあまあ、いいじゃない!こうして無事戻ってきたんだし・・・それになのははいい子だからもうこんなことしないもんね?」
そう言ってウインクする美由紀。
「・・・あのね、お兄ちゃん・・・ないしょで出かけて・・心配かけて、ゴメンナサイ・・」
そう言って謝るなのはを見て
「・・・うん・・」
「はい!これで解決!・・・・・で?」
「え?」
きれいに締めた美由紀がなのはに尋ねる。
一瞬、理解できなかったなのはだが続く美由紀の言葉でそれを思い出す。
「この男の子・・・誰?・・友達?」
そこまで聞いてなのはは慌てて
「あ!・そうなの!・・あのね、太陽君をうちに泊まらせてあげて!」
「「は?」」
爆弾発言を投下した。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
高町家 リビング
ソファーに座るなのはと太陽。
その対面に座るなのはの両親。
高町士朗 なのはの父親で恭也と似た顔立ちで穏やかな目をした男性
高町桃子 なのはの母親で優しげな雰囲気を醸し出す女性
そしてその横に恭也と美由紀が座り自己紹介と事情説明が開始された。
なのはが夜出かけた理由と連れていたユーノについては割りとあっさりと済んだ。
なのはは少し注意を受け、ユーノは飼い主が見つかるまで高町家で預かることになった。
そして残る最大の問題は・・・・
「・・・というわけで、太陽君をうちに泊めてあげてほしいの!」
「・・いや、なにが『というわけ』なのかわからないんだが?」
そのままの流れで強引に押し切るつもりだったらしいなのはの目論見は崩れた。
これが、犬猫などの話なら通るかもしれないがさすがに人間の子供では無理がある。
「・・・・太陽君・・だったね。君、おうちの人はどうしてるのかな?」
「・・あ~・・・え~と・・・」
士朗がそう太陽に問うが、太陽もどう答えるべきか決めあぐねていた。
正直、話せないことが多すぎるのだ。
○なのはは家族に心配させたくないし、ユーノとしても色々と問題があるので魔法の事は話せない。
○だが、『異世界から来ました』と自分の事を話せばおそらく『そういう専門』の病院に連れて行かれる可能性がある。
○・・かと言って何も話さなければ警察、あるいは施設へご案内・・・・。
さらに言えば、太陽は基本的に嘘の類が苦手で良い言い訳も浮かばない。
八方塞の状況に困っている彼らに意外な所から救いの手が出てきた・・・それは、
<・・・・あー・・すいません>
「「「「「「「!?」」」」」」」
声の主に視線が集まる。
それは、太陽の首に掛かったペンダント・・・・
<マスターは、こういうのが苦手ですからねー、状況説明は私が行います>
アルだった。
----------------
<(さーて、ここからは私の腕の見せ所ですよー!!)>
「・・!?・・しゃ・・喋った!」
「なんだこれは!」
「あらあら・・」
「・・・ほう・・」
高町家の面々はいきなり喋りだしたペンダントに驚いており、
「「「・・・・・」」」
アルを知るなのは達は固まっていた。
<さて、では改めまして・・・私は主・石蕗 太陽の補佐をさせて貰っております・・アルと申します。高町家の方々、初めまして・・・以後お見知りおきを・・」
「あらあら、ご丁寧に・・こちらこそよろしくね・・アルちゃん?」
自己紹介を始めたアルに呑気に返事する桃子。
「いや、母さん!?・・挨拶の前に首飾りが喋ったことに疑問を持て!」
そんな恭也の当然のツッコミは、
「あら?・・でも、『ア〇モ』みたいにロボットが踊る時代なんだから・・・これくらいは・・・ねえ?」
という桃子の意見で一蹴され、
「・・だが・・・」
それでも拭えない不安を、
<いやいや、お兄さん。・・意見するならこちらの話を聞いてからでもいいじゃないですかー。・・あんまり細かいことばっかり言ってると禿げますよ?>
アルがきっちりと封殺する。
「・・・・」
<では、説明始めまーす!>
恭也が何も言えなくなったところでアルは説明を開始した。
_____________
太陽side
とりあえず、結果だけいえば俺は暫くの間高町家に置いてもらえることになった・・・・ただ・・・。
「・・・グスッ・・大丈夫よ太陽君。私達が力になるわ!・・・寂しかったら『お母さん』って呼んでもいいからね?」
「・・・うん・・・私も『お姉ちゃん』って思ってくれていいから・・・・」
涙ぐみながらそう言ってくれる桃子さんと美由紀さん・・・・ううぅ・・・ざ・・罪悪感が・・・。
何故こうなったかというと・・・全部アルの口八丁の所為なのだが・・・。
簡単にまとめると俺の状況は以下のようになった。
1・昔、事故にあい記憶が曖昧
2・それにより天涯孤独
3・引取り先で酷い扱いを受け、耐えられずに親の形見(アルなど)を持って逃亡
4・夢中で逃げて気がつくと海鳴にいた
5・そして、偶々野犬に襲われていたなのはちゃんを助けて、そのお礼にと高町家に招待され今に至る
と、こんな具合でアルが説明(という名の捏造)を行いあまつさえ居候させてもらえる事になった。
コイツが話し出したときはどうなるかと思ったが終わってみればこの結果・・・・とんでもない口達者だな・・・しかし・・こんな優しい人たちを騙す事になってるのは気分よくないんだよな・・・。
しかも、
「もう、なのはもなのはよ?助けてもらったんならその事を言わなきゃダメじゃない」
「・・え?・・う・・うん、ゴメンなさい・・」
<すみません、桃子様。マスターは、御家族に心配を掛けたくないご様子でしたので私がそう提案しました。お叱りがあれば私が・・・>
「・・ん~・・レイハちゃんがそういうなら・・・でも、今度からはちゃんと言いなさい?・・いい?」
<「はい」>
「よろしい♪」
説明の過程でちゃっかりレイジングハートまで入ってきてアル同様自分を認めさせてるし・・・ちなみにレイジングハートの扱いは俺の両親が遺した形見の一つという設定で気が合ったからあげた事になっている。
ま、なんとかなった・・・でいいのか?・・これ・・?
太陽side out
--------------------
・・・さて、ここまでなら冒頭のような状況にはまだ繋がらない。
その原因はここからだった・・・・
話が進み状況がよくなったことを太陽となのはは喜び笑い合っていた。
そしてそれを見た美由紀は、
「・・・・なんか、なのはと太陽君って仲良いね・・今日会ったばかりでしょ?」
「え?・・そうですか?・・・・変・・ですかね?」
「いや、そういうんじゃなくて・・・なのはって結構人見知りなところあるからちょっと意外かなって・・」
「あー!お姉ちゃんヒドイよ!・・なのはそんなに人見知りとかじゃないもん!」
美由紀の言葉に頬を膨らませて抗議するなのは。
それを見て笑う桃子と美由紀、その横で茶をすする士朗と恭也。
そんなアットホームな雰囲気の中にご立腹のなのはは、
「いいじゃない、仲良しで・・・太陽君ははじめてのひとなんだから!」
「「ゴブゥッ!?」」
再び爆弾発言を投下し父兄は揃って茶を吹き出し、母姉は目を丸くした。
そんな家族の反応に「?」っと首を傾げるなのは。
当然、同い年の太陽とユーノも『おかしな事があったか?』と首を傾げている。
「・・げほっ・・な・・なのは!?・・は・・初めてって!?」
「・・ごほっ!?・・ど・・どういうこと・・げほッ・げほッ・・だ!?」
見るからにうろたえている親バカとシスコン。
そんな二人を押し退け
「あれ、そうなの?それはよかったわね」
「うん!」
姉妹の会話は続く。
桃子と美由紀はなのはの発言が『はじめての男の子の友達』という意味なのにすぐに気がついたが、おかしなフィルターの掛かった士朗と恭也には通じないと判断しなにかする前に子供達を避難させようと動いた。
「なのは、太陽君をお風呂に案内してあげて、美由紀は上の物置部屋から恭也の昔の服をいくつか出してきてね」
「「はーい」」
桃子の指示を受け移動し始める姉妹。
「ま・・まて・・」
「ちょ・・ちょっと・・」
「士朗さんと恭也はここで私とお話ね?・・わかった?」
「いや待て、母さん!・・それどころじゃ・・」
「そ・・そうだよ、すぐ対策を・・」
慌てて何かしようとする二人は、
「O☆HA☆NA☆SI・・・ね?」
「「・・・・・はい・・」」
高町家の頂点により封殺された。
そして時間が過ぎ・・・深夜・・
「・・・・桃子が決めたんならもう俺達に反論はできない・・・」
「・・・・だが、家族として確かめないといけない・・・」
「「なのはに相応しいかどうか俺達が抹殺しようじゃないか!!」」
夜の闇の中密かに物騒な会話が交わされ・・・・そして、舞台は冒頭へ繋がる・・・
ーーーーーーーーーーーーーー
繰り返される攻防の中最初こそ物騒な雰囲気の恭也だったがその気配は既に霧散していた。
その理由は・・・
恭也 side
大したものだ・・・・この歳でこれほどの『武』を持っているとは・・・
この子の年齢でここまでの強者は本当にごく僅か・・・いや、皆無といっていい。
「フッ!」
「・・!?・・ッグ!」
また防がれた・・俺の小太刀の攻撃を少々無骨な手甲で受け流し、弾く。
言葉にすれば簡単だがそれを『簡単』にできない速度と軌道の攻撃をこの子は既に三度防いでいる。
自惚れている訳ではないが自分の力量は一般からすれば達人の域、『裏』に措いてもそれなりに名は通っている。
そんな自分と手を抜いているとはいえ此処まで打ち合える少年・・・。
身のこなしや技の錬度から相当の修羅場を乗り越えてきたことが感じられる。
なのはと同い年の少年が?・・・普通じゃない・・。
だからこそ『裏』の人間か?・・そう思った。
だとすれば、たとえなのはに恨まれたとしても排除しなければならない・・・そう考えた・・・だが、
「・・・・ハアッ・・・・ハアッ・・・・・フゥゥゥ・・・フッ!」
「・・・・・・」
純粋に目の前の相手に打ち勝とうとする闘志を見たときその考えは崩れて消えた。
真っ直ぐで曇りのない瞳、そして、そこに秘められた熱い闘志・・・気がつけばこの試合を純粋に楽しんでいる自分に気がついた。
・・・・つくづく母さんの人を見る眼には感心させられる・・・・なのはが信頼するわけだ・・・・。
「・・・・強いな・・・君は・・」
「・・・・恭也さんこそ・・・」
そんな君だからこそ・・・
「だが、ここまでだ!」
大切なものを託せるか見極める!
恭也 side out
-------------------------------
恭也の宣言と共に放たれた気迫に押され後ずさりする太陽。
だが、次の瞬間起こった事は想像の外だった。
消えた
文字どおり『消えた』
恭也の姿、気配、音、全てが一瞬で消失し・・・
「こっちだ」
「!?」
後ろから聞こえた声に慌てて振り向くとそこに消えた恭也がいた。
そう、認識することすらできず後ろを取られた。
「・・・・・い・・いまのは・・」
何が起こったのかわからず混乱する太陽。
その時、外野では、
<・・・・・な・・・なんですか!?・・今の動き・・・人間技じゃないですよ!>
恭也の技に驚愕するアル。
「・・・・ちょっ・・・嘘でしょ・・・【神速】使うなんて・・・恭ちゃん何考えて・・・」
<【神速】?・・・なんですかソレ?>
美由紀の呟きを聞いて質問するアル。
「え?・・あ、・・・えーと、簡単に言えばうちの流派の奥義みたいなものだけど・・・」
<・・・うちのマスターも結構とんでもないと思ってたんですけど・・・そちらも大概ですねー>
そんな外野を他所に睨み合う太陽と恭也。
「・・・・次は当てる・・・覚悟はいいか?」
静かにそう言って構える恭也。
太陽も構えるが、
(・・・なんだよ今の!・・見えないどころか気配すら感じなかったぞ!?・・・・どうする?・・・)
内心はパニック状態だった。
(消えた!・・・・完全に消えてたよな!?・・・どうやって・・・ってかどうする?・・・やばい・・ヤバイヤバイヤバイ(×8)・・・・・・・あ!)
そんな中、ふと思い出したのは・・・・
-------------------------------
大空魔竜・格納庫内訓練スペース
「ふん」
「ふぎゃ!?」
バンッ!
そんな音と共に床に叩きつけられる太陽。
それを鷹のような目で見下ろすノーザ。
「・・・痛っって~!!・・・ううう、少しは加減してよ、ノーザさん・・」
そう言いながら打ちつけた背をさすりながら起き上がる太陽。
それを聞いたノーザは呆れた溜息をついて
「阿呆が、手加減などして訓練になるか!・・なまっちょろい事言う気力があるならさっさと起きろ!」
「・・・んなこと言ったって、ノーザさん動きが速くて着いていけないし・・・」
そう言って不貞腐れる太陽を見てノーザは、
「それは集中力が足りないからだ」
「・・・・かなり集中してるつもりなんだけど・・・」
起き上がりながらノーザに反論する太陽。
そんな彼にノーザはこう問いかけた。
「太陽、お前は集中してるとき何を考えていた?」
「・・・・・そりゃあ・・・次どう来るとか・・・攻撃の事とか・・・」
「その時点で話にならん」
「え?」
答えた太陽にそう即答するノーザ。
「あれこれ考えている時点で集中しきれてない証拠だ」
「・・・・でも考えないと・・・勝てないんじゃ・・・」
そう言う太陽にノーザは問いかける。
「走馬灯・・・というのを知ってるか?」
ノーザの問いに首を横に振る太陽。
「自分の死の寸前に己の人生を振り返るという現象だ」
「・・・?・・それで?振り返ることと集中力ってなんか関係あるの?」
ノーザは再び溜息をつき続ける。
「振り返ることが重要なんじゃない、死の直前・・・つまり極限状態において人生を振り返るほどの猶予を作り出す・・・体感時間を引き伸ばすことができるということだ」
「???」
まるで理解できてない太陽、それを見たノーザは軽く苦笑し
「・・・まあ、今のお前に理解できるとも思ってない・・・ただ、頭の隅においておけ。極限まで集中を高めた人間は信じられないようなことを可能にするという事を・・・」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(雑念を捨てて集中・・・・・できるか?・・・・・でも・・・たぶん・・・・って!考えてちゃできないって言ってたじゃん・・・あ~!だめだ!なんか余計にゴチャゴチャしてきたぁぁぁ!?)
大事なことを思い出したのはいいのだが余計に混乱しパニックになる太陽。
そんな太陽が咄嗟に思いついたのは『型』だった。
「・・・なんだ?」
太陽の行動に警戒する恭也。
「なに?・・・あれは・・・何かの『型』?・・・分かる?アルちゃん?」
<・・・・いや、私のデータにはないんですが・・・・>
外野の美由紀とアルも疑問に思う。
そんな周りの反応をまったく意に介さず太陽は型(それ)を繰り返す。
両拳を腰溜めに構え、そこから拳を開き大きく両腕で円を描き、その手を胸元へ引き寄せ両手の拳を胸の前で打ち合わせる。
これを何度も繰り返す。
【真龍の型】
師であるリーから伝授され自分の父が最も得意とした型。
真龍拳の秘伝とも言うべきそれを父親と同じく太陽も得意としていた。
己の中の【炎】を一点に収束していく感覚は、同時に内在する雑念などを振り払い意識を限りなく純化していく。
今の太陽には周りの音も景色も映らない。
分かるのは一点に集まっていく赤い炎と自分の周りの全てが白い場所へと変わっていくイメージだけだった。
無心で型を続ける太陽、それに対峙し構える恭也。
このまま続くかと思われた膠着を破ったのは・・・・恭也だった。
(・・・・型の意味は分からないが、このままでは埒が明かない・・・・一気に決める!)
そう考えた恭也は体を引き絞る様に構え・・・・・『消えた』
『消えた』・・・というと語弊がある。
正確には消えたように見えるほどの『目にも映らぬ高速移動』が正しい。
-御神流奥義之歩法-【神速】
自らの五感全てで普段感じている『感覚時間』を引き延ばす極限領域。
生命の危機に直面した際に見せる奇跡・・・火事場の馬鹿力。それは、人間の心理的限界というリミッターが外れ、本来使う事が出来ないはずの肉体のポテンシャルを全て引き出すという、極限にまで追い込まれた人間の無意識の奥の手。
だが、この『神速』はその奥の手を極限にまで高めた集中力によって意識的に引き出すという、御神流に伝わる奥義。
極限まで引き伸ばされた『時』の世界・・・・それは、人も景色も自分以外の全てがモノクロームに彩られ他のものが緩やかに動いている世界。
その中で、恭也のみが普通に動いている。
だがそれは恭也の感覚であって、実際は人間の限界を超えた速度で動いている。
恭也はそのまま太陽に近づき小太刀を振りかぶり・・振り下ろす。
なのはを任せられるか確かめる意味での一撃。
この攻撃で太陽を起きあがれる程度に打ち倒し、【神速】での攻撃を受けて尚立ち向かう気概があるのかを確かめるつもりだった。
【神速】の世界の外にいたはずの太陽が唐突に剣を回避し、あまつさえ拳を振りかざして反撃してこなければ・・・・
(!!??・・・バカな!この領域に・・・・っく!?・・まずい!)
咄嗟の事で回避ができなくなっている恭也。
ただ真っ直ぐに拳を突き出す太陽・・・・そして、
ドガガガッ!!
音のないはずの世界に音が響いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
太陽side
・・・・・・う・・・・う~ん・・・ん?
目を覚ますといつの間にかベッドで寝ていた・・・・・いつの間に?
・・・・とりあえず起きてから考えるか・・・そう思って起きようとした時ベットの横にもたれ掛かり座ったまま寝ているなのはちゃんがいた。
・・・・・ほんとに何があったんだ?
「・・・ん・・・あ!?・・よかった!太陽、気がついたんだね!」
声と共に枕元に駆け上ってくるユーノ。
・・・ユーノ?・・・・気がついたってどういう・・・・・!?・・イタッ!・・・イテテテテっ!!
「痛ぅぅぅう~!?・・・・なんだ!?・・動こうとしたら・・体があちこち・・・」
「!?・・大丈夫、太陽!?・・・まだ寝てなきゃダメだよ・・・君は半日以上気を失ってたんだし・・」
・・・・・は?
「・・ちょっ・・ちょっと待てユーノ!・・・半日?・・気を失ってたってどういう・・」
<マスター、ちょっと落ち着いた方がいいですよー?>
アル!?
<とりあえず説明しますから落ち着いてください、説明はそれからですよー>
・・・・・まあそのとおりか・・・・
「・・・・・よし、アル説明してくれ」
太陽side out
------------------------------------
<とりあえずマスターは何処まで覚えてますか?>
「・・・・真龍の型はじめたあたりからは・・・あんまり・・」
<・・・・・ってことは『アレ』無意識でやってたんですか?>
「『アレ』って?」
あるの質問に首を傾げる太陽。
<ん~と・・・まあ簡単に言うとマスターは恭也さんの技と同じようなモノを使って反撃して、それを恭也さんが咄嗟のカウンターで返した・・・・って所なんですけど・・>
アルの話に目を丸くして驚く太陽。
「同じって・・・・あの消えてたやつか?」
<はい・・・・恭也さん達も驚いてましたよ・・・ただ・・・>
「?」
少し言いよどむアル。
<・・・マスター・・今、体はどうですか?>
そう神妙に聞いてくるアルの言葉に自分の体を確かめるように動かす・・・すると、
「・・っっっ!・・・痛ぅぅぅ!?」
全身に鈍い痛みが駆け巡りその痛みに顔を歪める太陽。
それを見たアルは、
<・・・士朗さんの言ってたとおりですねー>
「・・・うぅ・・・アル・・こ・・これは・・」
少し涙目で太陽が聞くと、
<まあ、少し重い筋肉痛・・・って所ですねー・・・無茶な動きをした反動ですよ>
そう言って溜息を付くアルは更に続ける。
<明らかに人間離れした動きでしたからねー・・・むしろ、その程度で済んだ事に皆さん驚いてましたけど・・・・」
「・・・・その程度って・・メチャクチャ身体が痛いんだけど・・・・」
呻く太陽にアルは、
<訓練を受けてない人間がやった場合、良くて筋断裂・・・悪くて関節などの破壊・・・・ね?・・筋肉痛くらいなら『その程度』でしょ?>
それを聞い太陽は、
「そうだな・・・・」
ただ、冷や汗を流して呟くしか なかった。
<それにユーノさんにも感謝してくださいね。なけなしの魔力使って治癒魔法かけてくれたんですから・・・でなきゃ起き上がれもしなかったんですから>
「・・!?・・ユーノ・・・ゴメン・・・俺の所為で・・・」
魔力を回復させる為に療養していたユーノに力を使わせてしまったことを悔やみ表情を曇らせる太陽。
するとユーノは太陽の顔をのぞきこむと、
「えい!」
「ふが!?」
小さな両手で挟み込むように鼻を摘んだ。
驚く太陽にユーノは、
「そんな顔しないでよ。僕がそうしたいと思ったからやっただけなんだから」
「・・・でも・・」
「・・・・友達を助けたかったんだ・・・余計だった?」
「!?」
-『友達』助けたいってそんなにおかしなことか?-
自分がユーノに言った言葉・・・それを思い出し太陽は苦笑する。
「・・・・いいや・・・ユーノ、ありがとう・・」
「はは・・どういたしまして!」
そう笑いあう二人。
そこに、
<とりあえず話が済んだところで今後の予定ですけど・・>
そう言ってアルが話し始めた。
太陽の回復には最低でも2、3日掛かる為その間は無理しない範囲でなのはのみで回収を行い、アルはその期間を機能の復旧に費やし、終わり次第合流するという方針になった。
その後、ベッドにもたれ掛かったまま寝ていたなのはを起こし起きたなのはが太陽を見て大丈夫なのかと体をゆすりその結果太陽は激痛に悶える事になるのだがそれは割愛する。
何とか上半身を起き上がらせた太陽が部屋の窓から『ソレ』を見たのは偶然だった。
高町家の庭には小さな池といくつかの樹木がある。
そして、その中で一番大きな木の枝に蓑虫のようなモノがぶら下がっていた。
不思議に思い目を凝らすとソレは・・・・、
縄で簀巻きにされ逆吊りにされた・・士朗と恭也
さすがに驚いてなのはに伝えると、
「なんでもないよ?」
流れるような動きでカーテンを閉めそう言った。
そんなバカなと食い下がっても
「なんでもないよ?」
と、同じ返答。
さすがに絶句している太陽が何かを言う前に、
「な・ん・で・も・な・い・よ・?・・・ネ?」
笑顔でそう言われた太陽達は震えながらただ頷くだけだった。
こうして、太陽の居候生活初日は終わりを告げた。
教訓 『高町家の女性は怒らせてはならない』
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・・・・太陽達の知らない所で・・静かに・・確実に・・物語は動いていた・・。
それは、月の昇る風の強い高層ビルの上で・・・
「・・・ック・・・ここはどこだ?・・」
逆立てた赤毛と浅黒い肌に鋭い目をした少年・・
その手には淡く光うを放つ・・・宝石・・
その場所よりさらに高い場所・・・空中に佇む二つの影・・
「・・・まちがいない!・・・アイツが持ってるよ!」
一人は朱色のロングヘヤーとしなやかな肢体、強気な瞳の女性・・
「・・・ジュエルシード・・・」
もう一人は黒を基調とする服に月明かりに映える金色の髪をツインテールにした少し冷たい瞳をした少女・・・精巧な人形のようにも見える少女はそう呟き、手にした黒い杖を握りなおす・・・そして、
「・・・いこう・・・・母さんが待ってる・・」
「・・・・・ああ・・」
二つの影は少年に向けて降下し始めた。
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それは、とある一軒の住宅で・・・・
その家は屋根の一部に今あきましたと言わんばかりの様子の穴があいており、穴の先には、
「っっっっ~~~~!・・・おもいっきり打ったァァー!?・・・イタタタタ~・・」
崩れた屋根の破片と共に倒れている14,5歳くらいの少女で、前髪が目元まで覆い被さり後ろ髪を尻尾のように縛った胸の大きいツナギを着た人物。
「・・・・・・・」
ソレを見て開いたドアの前で目を丸くして固まっている車椅子に乗ったボブカットの少女
そして、二人の目が合い・・・・
「美・少・女!キタ━(゚∀゚)━!」
「ひゃわぁぁぁぁぁあー!?」
ツナギの少女は車椅子の少女に抱きついた・・・・
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それぞれの出会いを経て、物語は動き出す。
それは、長い長い物語・・・
この日・・・・運命(さだめ)の歯車は回りだした・・・・・
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