万華鏡
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第二十四話 難波その三
「そういうの?」
「そう、どっちかにするのは」
「その時に決めてなのね」
「後はね」
「後は?」
景子は里香に問うた。
「その晩御飯の後?」
「飲む?それとも帰る?」
「飲まないと駄目なんじゃないの?」
ここでこう言ったのは彩夏だった。
「そして飲むのなら。難波だったら」
「串カツっていうのね」
「それでしょ」
これもまた大阪名物だ、キャベツは食べ放題でソースの二度漬けは何があろうとも絶対に許されない行為だ。
「大阪だし」
「それじゃあ飲むのね」
「その分のお金もね」
やはりあった。
「お母さん出してくれたから。難波に行ったら徹底して食べろって言ってくれて」
「私も」
「私もなの」
「あたしもよ」
「私もだけれど」
五人共だった、大阪に行ったならば食え、それが人生の学問だというのだ。名物を食べていくのも人生の勉強なのだ。
「人生の勉強になるからお金は出すって言ってくれて」
「難波ってそこまで凄い場所なのね」
「そうみたいね」
まだ高校一年ではわからないことだった、里香も今一つわからない顔でそのうえで琴乃に対して返したのである。
「この難波ってね」
「ううん、難波ってそうなの」
「確かに治安はよくないけれど」
所謂ヤクザな仕事の人が多い場所でもある。
「それでも吉本も絶対に行けって」
「言われたわよね」
「そこで勉強して来いって言われたわ」
「人生のね」
「そう言ってくれてね」
親は子供に金を出してくれたというのだ。
「とにかく食べてこいってね」
「そうよね。ただ気合入れて食べないとね」
この問題があった、食べるのはいいが。
「量がね」
「それね」
「とにかく詰め込まないと」
彩夏は実際はそのことを楽しみにしながら言うのだった。
「駄目よね」
「そこは頑張ってね」
「お昼は豚饅に餃子にラーメン、それにカレーとたこ焼き」
まずはこれだけだった。
「おやつは善哉」
「晩御飯は鰻丼におうどんかお好み焼き」
「そして串カツで飲む」
相当な量である、女の子にとっては。
「やっぱりよね」
「相当な量になるわね」
里香もこのことは否定しない。
「考えてみれば」
「けれどよね」
「そう、それでもね」
量は多い、だがそれでもだった。
「食べていかないとね」
「折角難波に来たから」
それならというのだ。
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