その答えを探すため(リリなの×デビサバ2)
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第34話 海鳴市に正義降臨!(2)
前書き
更新遅くなり、申し訳ございませんでした。そして祝!アニメでの純吾君初登場!!
「――悪魔の集いし、邪教の館にようこそ」
場所は移って月村邸の裏庭。先ほどまでマハカーラと恭也が試合っていたそこには、月村邸にいる人物全員が集まっていた。
悪魔合体という、これから起こる未知への興味を持ったからだ。そんな興奮と、少しばかりの不安を抱えた様子で全員がどこか落ち着きがなく、隣近所でひそひそと小さく話し合っている。
そんな興奮冷めやらぬ観衆へ向けて、少し皆と離れた位置に立っているリリーがそう宣言をした。
……いや、今のリリーを素直にリリーと認めていいものか?
なぜなら、今の彼女はどこから持ってきたのか青い帽子をかぶり、サングラスと白く長いつけ髭をつけ、体の方も青いローブですっぽりと覆っていたからだ。
先程の言葉と同時に、すずか達へ右の手をいざなう様に伸ばすその姿は、とても胡散臭い。夜出会ったら、まず通報をせざるを得ない容態だ。
「いや、ここそんな怪しい呼ばれ方されていないわよ」
そんな彼女に忍がハイと手を挙げて苦情を呈す。けれども、軽くそれを流して取り合わないリリー。
「あら、これが悪魔合体をする時の形式美ってやつだから、心配しないでも大丈夫よ」
小芝居に飽きたのか、ぽいぽいとリリーが着ていたローブやらを脱ぎ散らす。そして、ねーと覗き込むようにリリーは隣に立つ純吾に同意を求めたのだが、
「……そうなの?」
その返答は首をかしげて聞き返す、というものだった。にやにやと忍が「違うみたいじゃない」とまた野次を飛ばす。
「ほ、ほんとうよっ! 明らかに場違いな渋谷のディスコに併設された時だって主さんはこの格好と台詞を欠かさなかったんだから」
「ま、まぁ、それは置いておくとして」
孤立無援に焦ったリリーを丁重に無視しつつ、すずかが純吾の方を向いた。「このままだと私滑ったみたいじゃないっ!」そうリリーが焦っているのが聞こえるが、もう一回聞えないふりをして話を続ける。
「純吾君、本当に大丈夫なの? その…」
「ん…」
そして、確認のために言葉を発するのだが、一番聞きたかった事がどうしても純吾にとって辛い事であると分かり、続く言葉を口ごもってしまう。
そんなすずかを見て、純吾は何について心配をされているかを察す。少し考え込むように俯いた。
「ん…、大丈夫。変わっても、みんなと一緒」
それから、小さく口元に笑みを浮かべてそう答える。
すずかの心配した事は、純吾が後悔していないかという事だ。誰が合体するかは聞いていないが、すずか達よりも純吾の方が仲魔としての付き合いは長く、思い入れは深いはずだ。
しかし、純吾には分かれる事の未練も自身の決断への後悔も見せない。
「まぁ、すずちゃんの心配はジュンゴが向こうで悪魔合体をした時に通った事なのよねぇ。けど、一度決心をしたのなら、その為の力を得ることを躊躇っちゃいけないわ。前の世界ではそれが生死を分けることになるし、ここでもそれは一緒。
それに前に言った通り、思いは受け継がれる。例え私が消えたとしても、私の記録、経験、思いを持った新しい仲魔があなた達の傍にいるんだから、寂しくなんてならないわよ」
その時、混乱から回復したリリーが純吾の隣に移動しつつそう補足を加えた。
最後の言葉を聞いて、純吾が形態を握る手に力を込める。そこにどんな意図があったか、自分自身でも分からなかったが、それが妙に気恥ずかしい。
誰にもそんな感情のざわめきを悟らせないままに、地面に立っているユーノへと声をかける。
「じゃあ、ユーノ」
「うん、封時結界…展開っ!」
ユーノの言葉と共に手を振り下ろす。緑色の魔法陣が地面に展開され、そこを中心として封時結界が裏庭に歪んだ空間を形成した。
初めて魔法を見る恭也達大人組みが空を見上げ、「ほぉ」や「わぁ…」といった感嘆を漏らす。
「へぇ、確かにここなら仮にどんな事が起きても大丈夫ね」
「まぁ、転ばぬ先の杖ね。アプリの優秀性は折り紙つきだけど、ここでは初めての試みになるし」
こちらもゆらゆらと揺らめく結界を見上げながらアリサと、観衆の方へ下がったリリーが呟く。今までの様子を見る限り、アプリが暴走すると言う事はまずないだろうが、初めての事には慎重になりすぎる位が丁度いい。
そんな会話を聞き流しながら純吾もそれを見上げる。そして、無事結界が展開されたのを確認すると一つ頷き、アプリを起動した。
「ヒーホーッ! お久しぶりホー」
「お初にお目にかかる。天使パワー、仰せによりただ今罷り越しました」
操作を終えると同時、まばゆい光の中から雪だるまのような悪魔のジャックフロストが元気よく、紅い鎧を着込み、大盾と槍を持った天使パワーが厳かな雰囲気を纏って現れた。
「ん…、久しぶり」
純吾も小さく口元を嬉しそうに持ち上げて返事をする。けれども、それから二柱と一人はしばし無言で対峙するだけだった。
純吾が二柱に「悪魔合体をする」そう言えばいいだけなのだが、当人たちを目の前にするとやはり、その決心が少し鈍ってしまうのだ。
どうしても、思ってしまうのだ。前と比べて平和なこの世界なのだから、やはり誰もいなくなることなく、彼女と対する事はできないだろうか? と。
だが、その少しばかりの弱気を、力を司る天使が察した。
「して召喚師殿。本日我らを呼んだのは、我らを合体するためだと愚考致しますが。何を躊躇われますか」
その問いに、純吾は咄嗟に答える事ができない。考え込むように、追求から逃れる様に視線を逸らす様に俯いた純吾に、能天使は続ける。
「我らへの気遣いは無用です。主は仰られました。『明日の事を誇ってはならない。一日のうちに何が起こるか、知る事はできないからだ』と。
今、召喚師殿には身命を賭して為さねばならぬ事がお有りのはず。されど、明日の事は分からぬもの。もし明日、召喚師殿に今までにない艱難が降り注いだなら?
……その時、この躊躇いが取り返しのつかない事を生むのやもしれません」
純吾の後ろへと、パワーは視線をやる。純吾もつられて視線を追うと、そこにはリリーや、すずか達の姿があった。
パワーが何を言いたいのかを悟り、純吾は慌てて能天使に向き直る。パワーの顔の下半分を覆う仮面の上にある目が、出来の良い生徒を褒めるかのような、そんな風に微笑むかのように形を変えていた。
「パワー、ありがとう。ジュンゴ、もう迷わない」
「えぇ、『汝ら世にありては艱難あり、されど雄々しかれ』
我が後進が、召喚師殿の艱難を払う手助けにならんことを」
パワーはそこまで言うと深々と頭を下げ、一歩下がる。純吾も迷いを覚ましてくれた事への感謝を込め一礼すると、今度はジャックフロストと向き合う。
「ヒホー、難しいことパワーのおっちゃんは言ってたけど。オイラはジュンゴのしたい事ができる様におーえんするだけホー」
「ん…。ありがと、ジャックフロスト」
先ほどとは打って変わって、とても呑気な言い方で合体への了承を貰い、純吾は顔をほころばす。勿論、自分の思惑通りに事が運んだからなどではない。舌っ足らずな言葉の裏に、自身への深い信頼を感じたからだ。
「ただ…」
「?」
何かを決めかねているのか。もじもじと、ジャックフロストが顔を俯かせ、人さし指同士をつっつきあう。それから意を決したのか、もう一回純吾を見上げて言った。
「さ、最後にぎゅーってしてほしいホッ!」
「なっ、なんだってェーーー!!」
ジャックフロストの言葉が聞こえるや否や、後ろからリリーの素っとん狂な声が上がる。それから「おま、あざとっ」とか、「そこ代われっ」とか聞え、一緒に「さ、最後何だから」「おい止めろっ」など懸命の努力も聞えてきた。
そんな騒々しいBGMをバックにしながら、純吾は膝をついてジャックフロストを抱きしめた。
「ホー、あったかいのは苦手だけど、こうやってされるのは嬉しくなるホ」
「ん…。ジャックフロストは、ひんやり」
片方の手で特徴的な二角のとんがり帽子をなでる。本当は、ジャックフロストの体はひんやりどころか凍ってしまいそうなほど冷たい。けれども、それをやめはしない。体は冷たいが、どこか心は温かい。
しばらくそうしていたが、やがてジャックフロストの方から離れた。
「うん。ジュンゴ、オイラの事冷たかったのにこうしてくれてありがとうホ。
…こうしてもらえて、ジュンゴって何だかお兄ちゃんみたいだホ」
純吾も立ちあって、もう一度頭を撫でてそれに答えた。わしわしと頭を撫でられ、くすぐったそうにするジャックフロスト。
「…じゃあ、合体お願いするホ」
「ん…、分かった」
最後にそう言葉を交わすと、ジャックフロストも一歩後ずさり、パワーと並ぶ。純吾が【邪教の館.exe】を起動する。そして二柱に携帯を向け、決定ボタンを押した。
「では、天の回廊へと戻ります。願わくは、あなたとの再会が幾世の後となる事を…」
「ジュンゴ、できた後の仲魔の事、よろしく頼むホー」
パワーとジャックフロストの足元に、白い光でできた魔法陣の様な、ゲートの様なものが現れ光を立ち昇らせる。白く丸いそれは段々と上へせり上がって行き、それと同時に二柱の体を解き、マグネタイトへと還元していく。
「綺麗…」
純吾の後ろで、誰とはなしにそう言葉が漏れた。
二柱の体を構成していたマグネタイトは、空へ舞い上がる。封時空間がうす暗いのも相まって、夜空の星が間近で瞬いている様に見えたからだ。
二柱のマグネタイトは少しの間空中にとどまった後、二柱が立っていた間に注ぎ込まれる。その注ぎ込まれたマグネタイトを基にして、一つのゲートが出来上がった。先ほどと同様に段々とせり上がっていくゲート。
だが、その役割は違う。先ほどは仲魔をマグネタイトへと還元するためにせり上がって行ったが、今はせり上がると同時に段々と二柱のどちらとも違う悪魔を構成していく。
「集いし思いが、ここに新たな力となる…」
完全にゲートがせり上がる事でできた光の柱の中から、ジャックフロストに似た、だが、パワーの様な厳格さを併せ持った声が聞こえてくる。
「ホーゥッ!」という掛け声とともに、光の柱から、その新しい仲魔が飛び出してきた。
白い、尖った二本角を持つ兜をかぶり、胸部を守る白銀の鎧の下に「A」をかたどったラインを持つ、黒いスーツを着た新しい純吾の仲魔。
着地すると同時に純白の手袋に覆われた右拳を高く掲げ、彼は、己の現界を高らかに宣言した。
「今、光さす道とならんっ! 幻魔、フロストエース! ここに見参っ、ホーー!!」
後書き
~仲魔紹介~
【鬼女】“家政婦は一騎当千”のキキーモラ(Lv11)
力:5 魔:10 体:6 速:6
スキル:ディア、ザン、ニガヨモギ(相手一体に毒)
魔無効、火炎耐性、衝撃弱点
ロシアに伝わる、働き者の味方とされる妖精。狼の顔に白鳥のくちばし、熊の胴体に鶏の足という姿をするとされたり、普通の少女の姿だとされたりなど、謎が多い。
【天使】パワー(Lv24)
力:15 魔:7 体:13 速:5
スキル:エクスムーブ、見覚えの急成長、耐電撃
電撃耐性、魔弱点
神の教えを守り実行させ、それに違反するものと戦う役目を負った、位階第6位の能天使。
補足として、作中で言った言葉は一つ目が旧約聖書 箴言 27章1節の言葉であり、二つ目は新約聖書ヨハネ伝第16章33節の言葉である。良い言葉を探していたら、新旧ごちゃ混ぜにしてしまいました。
【幻魔】フロストエース(Lv28、原作末登場悪魔)
力:13 魔:15 体:13 速:11
(ジャックフロスト、パワーの成長分、能力値に合計8補正)
スキル:マハブフ、氷の乱舞、絶妙打、氷結強化、三分の魔脈、電撃耐性
氷結反射、火炎・電撃耐性(電撃はスキルによる)
アリサとの絆から生まれた、フロスト界のヒーロー。逸話には事欠かさず、仲間のピンチに駆けつける正義の味方とも、復讐に燃えるダークヒーローとも言われる。
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