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形而下の神々

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Green Bullet

 例の村では明らかに小さな村の住民の量の倍くらいの人間と、それと同じくらいの量の死体が転がっていた。


「おいおい、予想以上だぞこりゃあ……」

 俺の呟きにサンソンが返す。

「こりゃあ近隣の村々からも増援が来てるな。多分敵はスティグマの奴らだ」
「で、俺達はどうするんだ?」

 頼む、逃げると言ってくれぇ……

「スティグマと戦う。と、うちのボスは言ってる」

 現実とは無慈悲な物なんだな……。
 と、サンソンが謎の忠告をしてくる。

「スティグマは俺達と同じで生きた神器と言っても過言ではない。気は抜くなよ?」

 どうやらサンソンは俺もグランシェと同じくらい戦えると思ってるらしい。


 その時、肩にポンと手がおかれた。

「まぁ、俺から離れんなって事だ」
 振り向けばグランシェの笑顔。

「くそったれ!!」

 どうやら腹をくくるしかない様だった。しかしそれはレミングスも同じで、スティグマを全滅させるのは彼らでも難しいらしい。

 だから俺達は作戦を練った。

「その名もスティグマ追い出し大作戦!!」

 そのまんまだなぁって思ったが、そこは突っ込まない事にしておく。サンソンが続ける。

「スティグマは一人一人は強いが団結力は無い。要するに自分勝手な奴らなんだ。そんな奴らを率いてるボスが必ず居る。というか居ないとまとまらないんだ」

 ……どんな奴らだよ。ガキかスティグマは。

「そのボスを叩く。俺達はレミングスとして自分の仲間を守らなきゃならない。あとはこの村の人間達を助ける。そして敵のボスへの道を空ける。だからボスはグランシェ、タイチ、お前達が倒してくれ」

「リョーカイ!! しかし俺達は公式を持ってないから弱いよ?」

 グランシェはさも「ちょっと大変カモ」くらいの勢いで公式が無いとかぬかしているが、これは命に関わる大問題だ。リョーカイ!! とか元気良く返事してる場合じゃねぇ。

「あぁ、だからこれを貸してやる」

 が、サンソンは事の重大さが分かっているのか、腰くらいまでの大きさの盾を持ってきた。

「こいつは神器オルガフ。敵の攻撃から100%対象の身を守る盾だ。まぁ使えば分かる」

「え、良いのか?」

 サンソンがグランシェに手渡したのでグランシェが聞いた。

「あぁ、俺達は神器は使わない。だから持ってても意味ないから基本的には売却するんだ。
それをお前に貸すだけだからな」

「た、助かるよ……」

 グランシェは重そうにその盾を受け取った。

「じゃあ、健闘を祈るよ!!」
 そう言ってサンソンは去って行く。
 適当な返事を返し、俺たちも戦場に向かった。

「なぁタイチ」
「あ?なんだ?」

 グランシェがなにやら真剣な顔でこちらを向く。

「そのグローブと俺の盾、交換しないか?」
「なんでまた?」

「俺は盾なんて使わないんだ。だから力持ちのグローブの方がよっぽど役に立つ。
タイチも、盾の方がいいだろう?」

 確かにグランシェの言う通り、少なくとも今はまだ俺は攻撃に回らないだろうからこのグローブは必要ない。
 やはりここはグランシェの盾、オルガフが俺にお似合いな神器だろう。

「そうだな、俺としてもその方が助かるよ」


 こうして、一時的にだがオルガフは俺の神器になった。変わりにグローブはグランシェに手渡したが、グランシェが攻撃、俺が防御役だと考えればそれはそれでありかも知れない。


「グランシェっ!!スティグマのボスは一人で原子球の保管庫へ行ったらしい!!」
 サンソンの叫び声だ。彼の声は良く通る。これも筋力の流動と関係しているのだろうか?

 グランシェはあらかじめ貰っていた地図を見る。

「保管庫は……神殿の隣だな」

 そう言うが早いか迷いなく走るグランシェ。必死について走る俺。

 不思議と自分達のリーダーを守りにすら来ないスティグマ達。目先のレミングスの相手で精一杯なのか、はたまたリーダーが相当嫌いなのか……。

 2分ほど全力疾走した先に、神殿らしき白く綺麗な建物と併設された頑強な石の建物を発見した。
 その扉の前には一人の人間。いや、一人のスティグマが居た。

「あいつがスティグマのボスか?」

 分かりきった事だが、確認を取る。

「あぁ……しかしどこかで見たことがある気がするんだよな、あのシルエット」

 良く分からないグランシェの話は置いといて、俺達は俺達の任務を果たそう。
 そう思い、俺は大きく声を上げた。

「おい!! そこの赤髪の女!!」
「……あぁ?」

 どんな返事だよ……なんて態度の悪い奴だ。人の事は言えないケド。


 その女は黒く薄い、動き易そうな服を着て、真っ赤なストレートを腰まで垂らしていた。
 返事をしながら上目遣いに振り向く彼女。

 が、一瞬にしてその上目遣いな目は驚きの目へと変わった。

「グ……グリーンバレット!?」
 女が素っ頓狂な声を上げる。

「緑の弾丸?」
「いやいや、大自然の弾道と訳せよ」

 俺が呟いた解釈が気に入らなかったのか、グランシェが訂正してくる。

「お前……トゥーハンドか」
 グランシェが女に聞く。

「え?まさかの知り合い?トゥーハンド?二本腕?」
「違う違う。しいて言うなら『二流兵器』だ」

 さっきからの感じだと、グリーンバレットというのはグランシェの事らしい。
 それにしても二流って……。

「なんか弱そうだな」
「違う違う。二流ってのは奴の武器を指すんだ。ホラ、2つ銃を持ってるだろ?奴は片手撃ちの天才なんだ」


 なんだか良く分からん展開になってきた……何故グランシェの知り合いがここに居るんだ?

「おいグリーンバレット!! お前なんでここに居る!!」
 トゥーハンドとやらがグランシェに叫んだ。

「うっせぇカス!! てめぇこそ何故こんな世界に居る!!」
 グランシェも負けずに声を張っている。

 ……もしかしたらこの二人は仲良しなのかも知れない。
 
 

 
後書き
 今日は調子が良いので2話更新しました。

 結構行き当たりばったりで進んじゃってますが、実はここまでで5つくらい伏線を引いています。探してみて、読み進めた時に考えていた事と同じだったらそれはそれで楽しいかも知れませんね。
 僕としては予測を当てられたりしたらたまったもんじゃありませんが(汗)


 ──2013年05月02日、記。 
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