インフィニット・ストラトス ~天才は天災を呼ぶ~
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第6話
みんなおはよう。 織斑一夏だ。 今、俺はとても疲弊している。 なぜなら……。
――……結局一睡もできなかったからである。
昨日急遽決まった寮への入寮。 しかも女子と同室と言う、正直、世界の男子からすれば『羨ましすぎるぞコノヤロー』な状況な訳だが、年頃の男女が同室で一夜を過ごすとなれば意識しないほうがおかしい。
これが、幼馴染の箒なら何の問題もなく眠れただろう。 しかし、同室になったのは、昨日初めてあった女子であり、しかも学園でもトップ3には入る、いや、なんなら世界でもトップ3に入るであろう美少女なのである。
だからといって、眠れない訳では無い。 相手がまったく気にした様子もなく眠りに入ったことから、俺も気にしているのが間違いかと思い、眠りにつこうとしたわけだ。 こっちだけドキドキしてるのもおかしな話だろう?
そうして、ウトウトしだした頃に、急に同室の女子、『友永 風音』が寝言を言い始めた。 まぁ、寝言を呟くなんて可愛いものである。 逆に微笑ましいとさえ思ったぐらいだ。
ゴニョゴニョ言っていたのが次第に大きくなり、俺の耳を打つ。 それぐらいでは普段の俺は動じもしなかっただろう。
しかし、問題はその内容だった。
「あ、ダメッ、い、一夏……。 こ、こんなところでぇ」
ウトウトしていた俺の耳に飛び込んできたのはそんな風音の声だった。
今日あったばかりの人物の夢に出てきたというのも意外ではあったが、風音のような美少女が俺の事を考えてくれているのかと思うと嬉しくもあった。
さらに何やらちょっといやらしい雰囲気の漂う寝言である。 寝言と同時に動いたのか、少し布団が乱れ、風音の太ももや首筋が布団からあらわになってより一層いやらしさが増しているところもやばかった。
ウトウトが一気に吹き飛び、意識が覚醒してしまうのは仕方がないことだろう。 せめて太ももだけでも視界の外に追い出すことができれば、理性を保てそうであったので、布団をかけ直してやろうと風音に近づく。
「本当にダメだって……。 い、一夏ァ」
甘えたような声で名前を呼ばれ、寝言とわかっていてもくるものがあった。 何度も重ねていうが、風音は超が付くほどの美少女である。 そんな子の口から飛び出す甘えたような声。 しかも自分の名前を呼ばれるオプション付き。 破壊力抜群だろう?
もう少しだけ続きを聞いてもいいかなぁと思い、逆に聞き耳を立ててしまう。 というより、人の夢が覗ける機械があるとすれば今すぐ欲しいとさえ思ったぐらいだ。
静かに次の言葉を待つ俺。 そして、
「あぁ、ダメェ、一夏ぁ。 こんなところでぇ……。
こんなところで、オリハルコンなんて!!!!」
……。
……。
……。
正直、開いた口がふさがらなかった。 いや、逆に夢の内容が気になったわ!!!
「ほら、すぐそこまでオリハルコンバウアーが来ているのよ!!! すぐに逃げないと!!!」
どうやら、オリハルコンバウアーとやらに追われているらしいことはわかった。
「ちぃ!! こんなところでエビフライか!!! しかし、氾濫した長良川が相手になってやる!!! 一夏!!! オリハルコンは女神像の右腕に!!! 早く!!!」
「やはり、地上最後の砦と言われるだけはあるわね。 トランポリンの跳躍力が二倍になっているなんて。 く!! この私が苦戦しているだと!!? 一夏は何をしているの!? 早くヒヒイロカネを星の屑鉄と混ぜ合わせないと地球が第二の火星になってしまうというのに!!!」
「まさか、こんなところで春巻きを使うことになるとは……。 でも、出し惜しみしていたらやられる!!! 靴下のみんな力をかして!!!」
場面が飛びまくりで、まさにカオス。 地球が危ないことだけはわかったが……。
その後も、「ミートスパゲッティを1人前だと!!?」とか、「一夏の左手に込められた力を開放するのよ!!!」とか、カオスな展開は続いた。
そして、
「やった。 やったわ。 ついに!!! ……」
ここで寝言が終了した。
気になって眠れねー!!!! なんだ今の夢はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!
てな具合さ。
もう、展開を色々考えたね!!! それはもう考えまくったさ。 エビフライがどうなったんだろうとか、ホント色々考えた。 一番気になる俺の左手の力については、今流行りの厨二病とやらだろう。 そうじゃなければ、小学生の時によく遊んだ『ゴットハンドライダー』の必殺技だろう。 などと、自分の左腕と格闘さえしていた。 あぁ、寝もせずに左腕と格闘していた自分を思い出すだけで悲しくなってきた。
そんな訳で、結局一睡もできていない。 目の下には隈が出来ているだろう。
「ふぁ~。 よく寝た。 あれ? どうしたの一夏? すごい隈だよ?」
俺が寝れない原因を作り出した張本人が、あくびと共に目を覚ました。 コノヤロゥ。 考えまくったせいで寝れなかったのは俺のせいかもしれないが、原因の一端は風音にもあるはずだ。 あんな夢、気にならない方がおかしい。
それなのに原因の本人は、さわやかな目覚めを演出……、
たゆん
ベッドの上で伸びをする風音。 素晴らしき女性の象徴が一つ跳ねる。
えんしゅt…………まぁ、いいか。 あれを朝一で拝めるのに贅沢は言っていられない。 というより、あの跳ね方は贅沢だな。 うん、一日の寝不足程度ならお釣りを払わなければいけないだろう。
「ふぅ……、よし!! 一夏、着替えたら朝ごはん食べに行こう!!」
「お、おう」
朝飯を一緒に食うことになった。 まぁ、俺一人だと多分食堂でも好奇の視線にさらされることになっただろうから、ちょうどいいかな?
「おっはよ~」
「おはよう、箒」
「……うむ」
食堂に向けて歩いているとき、見知った顔を見つけた。
「箒もこれから飯か? よかったら一緒にどうだ?」
「む? お前がいいというなら行くが……」
そう言って俺の隣に視線を向ける。 あぁ、風音を気にしてるのか。
「あっと、わりぃわりぃ。 こいつは友永 風音……って同じクラスだし知ってるよな? 風音、こいつは幼馴染の篠ノ之 箒だ。 って、こっちも知ってるか、コイツも一緒だから気にすんなよ」
「おぅ。 知ってるよぉ。 よろしく箒っち」
「ほ、箒っち!?」
「うん? 篠ノ之 箒ちゃんだから箒っち。 安直だけどそれが最善。 あだ名の基本だよん 今ならしののん、しのの~んにも変更可」
「そ、そうか、いや、箒っちでいい。 か、風音っち///」
「ちッちッちッ! 箒っち、惜しいけど違うなぁ。 私のことはカザネルリアン2世と呼びたまへ」
「安直じゃねぇ!!!」
思わずツッコミを入れてしまう。 安直が最善と言っておきながらそれは無いだろう。
結構人見知りするタイプ(だったはず)の箒が、意外に打ち解けている。 やっぱり人と仲良くなるのが得意みたいだな、風音は。 本人は「ナ~イスツッコミだよ一夏!!! 箒っちもあれぐらいのツッコミを目指そう!!!」とか、言ってるけどな。
箒を仲間に加え、馬鹿なやりとりを行いながら食堂までやってきた。 すげぇ広いな。
「すっっっっっごい広ぉぉぉぉぉぉぉぉぉい」
となりで風音が叫んでいる。 やめろ恥ずかしい。 そして耳がイタイ。
風音の声で注目を集めたのか、目前までぺちゃくちゃとうるさかった食堂内部は、ヒソヒソとささやきあう声に満たされた。 やっぱり俺が注目を浴びているらしい。 物凄く視線が刺さる。 ちょっと痛いぐらいである。
「うわぁ、色々あるよぉ、一夏、箒っち!!! 何食べる? おすすめはB定食と見たね!!!」
「私は蕎麦だな」
おぅ、箒がもう風音に慣れている。 あれぐらいの絶叫は普通だと、この短時間で理解したのか……やるな!!
「じゃあ俺はA定食ごはん大盛りだな。 風音はやっぱりB定食か?」
「私? 私はねぇ。 カツ丼と、回鍋肉、酢豚に焼売、生姜焼きと若鶏のから揚げにもやし炒め、おおぅ、忘れちゃいけないサラダ、ドレッシングは……青じそだね!!! テッパンだよ!!! それから……納豆!! 冷奴!!!! 冷奴!!!! 大事だから二回言ったよ!!! テストに出るレベルだね!!。 当然、全部大盛りで!! ん? 焼きそばも捨てがたいね。 それも追加しよう!! 豚汁は標準装備なのかな? 変更必要? じゃ、豚汁だね。 あ、カツ丼は特盛とかあるんだって!! じゃぁ特盛で!!!」
「え……!?」
食いすぎじゃね……?
「やっぱり時間がかかるみたいだな」
「そりゃそうだろう。 どんだけ食うんだあいつは?」
箒と一緒に先に席を取り、ついでに朝食も取る。 ぷ、傑作だな。
「今、変なことを考えなかったか?」
「い、いや……、考えてないけど」
「そうか」
まさか箒も人の心を読める人種なのか!? 気をつけておこう。
そんなことより、俺も朝はしっかり取る方だが、風音のは取りすぎじゃないか? もしかして、栄養は全て女性のシンボルに向かっているのだろうか? ならあの大きさは納得だな。
「やっぱり今、変なことを考えただろう?」
箒から圧力がかかる。 やっぱり思考を読んでくる人種だったみたいだ。 新人類か!?
「イエ、カンガエテオリマセン」
「そうか、だが、私の人種はお前と同じだ。 別に新人類ではないぞ」
やっぱり読んでんじゃねえか!!!
「お前の顔に書いてあるだけだ、だかr「私たちも一緒に食べていい!?」……む?」
箒から指摘を受けている最中、三人組の女子が声をかけてきた。 あ、なんか見覚えある。 多分同じクラスの子だと思う。
「あぁ、いいぞ」
「む!」
「ん? ダメだったか、箒?」
「……ふん、別に構わん」
「だってさ、別にいいぞ。 あ、座るならそこ、スペースを空けといてくれ」
なんか微妙に機嫌が悪くなってないか? 箒のやつ。 微妙に蕎麦をすするスピードが早くなってるし……。
「うん、ありがと。 スペースってこんなかんじ?」
「おう、それでいいわ。 じゃ食おうぜ」
そう言って食事を再開する。
「うわぁ、やっぱり男の子だねぇ、いっぱい食べるんだぁ」
「うん? いや、俺なんてまだまだだと思うぞ? それよりお前らだってそんなんで足りるのか?」
「あははぁ、いや、私達ダイエット中で……」
「そうそう、おりむ~は男の子だからわかんないかもしれないけど、女の子は結構大変なんだよぉ」
いや、朝食を少なくするのって、かえってダイエットに良くないって聞いたことがあるんだけど……。 というよりもおりむ~って?
なんでもないやりとりが続く。 箒もクラスの女子と少しづつだが話しているようだ。 というより、のほほんさんの力が偉大だな。 箒がいつの間にか絡め取られていた。 風音と同レベルの友達製造機かもしれない。
「お待たせ~」
「おう、遅かったn……」
そう言って現れた風音の姿にみんな絶句してしまった。
某海賊漫画の女好きコックのように、頭、肩、腕などなどに大量の食事を乗せ、まったくバランスを崩すことなく運んできたのである。 好きなものがたくさんあって嬉しいのかその顔はホクホク顔である。 実に幸せそうだ。
「……えっと、友永さんだっけ? そんなに食べるの?」
「んぁ? おおぅ、クラスメイツの鷹月さんじゃないいか!! 布仏さんと清川さんまで。 おはよぉ。 で、問の答えはイエッス!! 朝はしっかり食べるほうが体にいいのさ。 ダイエットにも効果的だよん。 それっと、私のことは風音でいいよ。 もしくはふーちゃんでも可。 あれ? これ、一夏にも言わなかったっけ?」
鷹月さん(そうだったのか!!)からの質問に、テーブルに料理を並べながら風音が答える。
それは知らなかった。 朝食を食べるとダイエットに効果があったのか。 でも、風音は食べ過ぎだけどな。
「まぁ、ダイエット云々は効果があるかわからないけどねぇ。 じゃ、いっただっきま~す!!!」
ダイエット云々は嘘かい!!!! 昨日のオルコットとのやりとりといい、コイツ微妙に信憑性のある嘘をつくよな。
なんて思いながら、カツにかぶりつく風音を見る。 実に美味そうである。 今度はカツ丼にしよう。
そのあとも、箒、風音を交え、鷹月さん、清川さん、のほほんさん(本名を教えてもらったが、のほほんさんが妙にしっくりきてしまい、変えるに変えれないのである)と世間話をしながら食事を続ける。
みんな和気藹々と楽しくおしゃべりを続けながら食事していると、
「お前たち!! いつまで食べているつもりだ!!! 時計を確認しているのか! もう、始業まで時間がないぞ! 遅刻をしたらグラウンドを10周走ってもらうからな。 そのつもりでいろよ」
食堂に響く千冬姉の声。 慌てて時計を見ると結構ヤバめだった。
やべ、しゃべるのに夢中で全然食ってねぇ!! くそ! 間に合うか!?
周りを見ると周囲の女生徒たちも皆大急ぎで残りをかき込んでいるところだった。 そりゃあ、1周5キロもあるグラウンドを10周もしたくは無いだろう。 単純計算で、フルマラソンより多く走ることになるのだからなぁ。
急いで食事をかき込む面々。 それは、のほほんさんたちも例外ではない。 ほんとにのほほんさんなのかというぐらい素早い動作で、残りの食事を口に運んで行くのである。
「一夏、私は先に行くぞ?」
食べ終わったのか、箒が席を立つ。 蕎麦をすするだけなので、早く食べ終われたみたいだ。
おい、箒、この薄情者が、一緒に食ってたんだからちょっとぐらい待ってくれてもいいだろ? そんなに走るのが嫌か!! まぁ、俺も嫌だけども……。
「ごっちそ~さま!!! あまりにも美味しくてゆっくり味わって食べちゃったよ。 ……あれ? 一夏も早く食べなよ。 遅刻しちゃうよ?」
「え……!?」
風音が箒とほぼ同タイミングで食べ終わっている。
いやいやいやいや、おかしいだろ。 俺らより大量で、しかもあとから来て、んで、会話にも参加しながら食ってたよな? なんで、量が少なくても一生懸命食べないと間に合わなくなりそうなのほほんさんたちより早く食い終わってんだよ!!
俺の周り(周囲の聞き耳を立てていた女生徒含む)はあまりの早業に驚き、箸を止めてしまった。
この日、大量の遅刻者が出たため、グラウンド10周は、行われなかった。 その代わり出席簿が遅刻者全員に振舞われたのである。
朝食を食っていて遅刻し、説教をくらうか……。 う~ん微妙だな。 もう少しひねりたいところだな。
「説教中にいらんことを考えるな馬鹿者」
スパァァァァン!!!
グフゥ……。
後書き
ネタ解説
大事だから二回:皆様ご存知のこのセリフ。元ネタは実は知りません。
新人類:別の言い方をすれば○ュー・○イプ。最近では人間なのにロボットだと言い張る少年が出たり出なかったりする。
某海賊漫画の女好きコック:マユジ君ですねわかります。
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