| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

万華鏡

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二十二話 夏休みその十五

「そんなものだよ。だからな」
「だからか」
「御前その、森鴎外な」
「ああ」
「授業で習っただろ」
 まず言うのはこのことだった。
「それに塾でもだよな」
「問題集に出てるよ」
「だよな、それで鴎外の話したんだな」
「一学期の授業でも先生が話してくれたんだよ」
 その時は脚気の話だった。
「それでわかったんだけれどな」
「まあな、脚気もな」
「あれ白米食ってばかりだとなるんだよな」
「ビタミン不足でなるからな」
 白米にある栄養は澱粉だけだ、そればかりを食べていれば栄養が偏ってしまうのも道理だ。
「後な」
「後はか」
「おかず食わないとな」
 白米だけであるのと同じ意味だった。
「駄目なんだよな」
「おかずもか」
「白い御飯って美味しいけれどな」
 兄もそれは言う。
「けれどそれだけだとなんだよ」
「栄養が偏ってか」
「よくないんだよ」
 こう妹に話す。
「だから御前もな」
「ああ、脚気以外もな」
「気をつけろよ」
「わかってるさ。じゃあな」
「それじゃあ牛乳も飲むか?」
 妹に今自分が乗っているものも勧めた。
「そっちもな」
「ああ、悪いな」 
 美優も兄のその言葉を受けた。
「じゃあ一杯な。それじゃあな」
「そっちもか」
「野菜ジュース飲むよな」
 微笑んで兄に問う。
「あたしの」
「貰えるか?」
「ああ、お互いだからな」
 だからだと返す兄だった。
「じゃあ交換してな」
「飲もうな」
 二人で話して乃見合いだった。美優は牛乳も一杯飲んでからその上で夏休みについて言ったのである。
「この夏休み楽しいものにするか」
「ああ、頑張れよ」
「絶対にそうするからな」 
 こう笑顔で言ったのである。五人の高校生活最初の夏休みははじまったのだった。


第二十二話   完


              2013・2・3 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧