転生者拾いました。
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霧の森
雷の巫女
「Donner・Magier!Blitzschlag!」
凛とした女声と共に天から一条の稲妻が落ちた。雷魔法に基本、落雷(そもそも雷魔法自体上級魔法なので大概の人は使えない。)だ。
その稲妻は結界を直撃し剰(あまつさ)え巨石にまでダメージを入れてしまった。後で聞いた話によるとあれでも威力抑え目だとか。
「うっ……。」
あまりに強い光で目がくらむ。
「「ぐああっ!?」」
「ぬぅ……。」
結界は跡形もなく消滅し、結界を生成した4人も雷の直撃を受けたのか倒れている。
一発で当てるとはなかなか筋がいいな。しかし司祭と呼ばれた男は辛うじて立っていた。
「いかに死神と言えど単身で乗り込んでくるほど馬鹿ではなかったか。」
「アンタ、大丈夫か?」
敵に情けをかけるなどバカのすることだが、雷を受けておきながなぴんぴんしている人を見たら大丈夫かこの人と思うだろう。
「し、司祭様……。」
「アルバード、帰るぞ。」
「し、しかし……。」
「よい、また来ればよいのだ。」
「はっ。」
「待て!」
「去らばだ、死神。」
オレの制止を聞かず見たことのない魔方陣を展開する、司祭とやら。
止めようと剣を振りかぶり突撃するが壁のようなものにぶち当たった。
「ナニコレ?」
「わからずとも良い。」
まるで結界のようだが硬度がけた違いに高い。オレの魔法剣で斬れないなんて久しぶりだ。
「貴様とはまた会うだろう。覚えておけ。必ずお前を斬る!」
「なにを!」
「時間だ。また会おう。」
魔方陣が光出し、目も当てられなくなるほどになり両腕で顔を遮る。
しゅぅぅぅぅぅ……。
一抹の風が通り過ぎあたりに静寂が訪れる。
「カズヤ……。」
「逃げられた。」
巨石の前にはオレとセリナ以外誰もいない。
「とんだ邪魔が入ったがとりあえずクエストだけでもクリアしとこーぜ?」
「うん。」
巨石に歩み寄り二人掛かりで虱潰しに異常がないか確かめる。幸いセリナの雷は巨石に影響を及ぼしておらずまずは一安心だ。
「んじゃ、帰るとしますか。」
「うん。」
来た道を戻りクレーターまで戻ると大勢の人が集まっていた。もちろん調査隊です。なんで分かるかって?「クスィー調査隊」って書かれた旗が立ってるんだもん。
「死神だ!」
「なにぃ!?」
「捕まえろ!」
オレが何をしたというんだ!そして槍を持ってこっち来るな!
「投げ縄だと!?」
「きゃぁ!?」
後ずさっていたところにどこからともなく投げ縄が飛んできてオレ達はなす術もなく捕まってしまった。魔法を使うヒマすらなかった。
縄で身動きが取れないオレ達を槍隊が囲む。
「お久しぶりですね、死神さん。」
「あんた……、だれ?」
「お忘れですか?レオンです。ドラゴン討伐を依頼した。」
「ああ、あの時の。」
「その節はお世話になりました。」
「いえいえ、それより縄ほどいてくれませんか?」
彼はオレにビッグな報酬をもたらしたクエストの依頼者だった。この国の有力者の一人でもある。
「そうはいきません。あなた方に事情聴取をしなければいけません。これはあなた方がヤったんてしょ?」
ヤったって……。別に悪いことはしてませんよ?不慮の事故ですよ?ホントですよ?
「やはりあなたですか。ダンジョン保護法違反で逮捕します。」
「そんな法律ありましたっけ!?」
「つい2か月ほど前に施行されました。連れて行きなさい。」
「そんなバカな~!」
冒険者の心得の一つ、縄抜けが使えず魔法も使えない。なすすべなくオレ達は馬車に連行されドナドナのごとく馬車に揺られて連れ去られましたとさ。めでたくないめでたくない。
後書き
Donner・Magier…読み方「ドンナー・マギーア」、意味「雷魔法」
理不尽な理由で連れ去られた二人
一人は牢へ、一人はスイートルームへ、
孤独と焦燥に駆られた二人は如何に
次回 無罪主張
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