【完結】剣製の魔法少女戦記
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第三章 聖杯大戦編
第七十三話 『二つの因縁の終わり』
前書き
今回でマスターはすべて判明しますけどちょっと敵なのにかっこいい名前にしてしまいました。
そして狂わされたものとの決着をつけます。
逮捕した後、ミゼ・フローリアンはすべてのことを隠さずに白状した。
「私は言峰綺礼という神父の言葉にのせられて聖杯大戦に参加したのよ。
でも、後悔はしていないわ。私ははじめて好きになれる人ができたのだから…」
そう取り調べの人に話す姿はとてもすっきりとしていたそうだ。
そして敵のアジトはどこかを聞き出すとミゼットは、
「ええ。いいわ。私は敗者…。だから聞かれる内容はすべて白状するわ」
それによって語られる敵のアジト。
協力者の数。マスターの居所。
しかしやはり言峰綺礼とギルガメッシュ本人達の居場所だけは分からないらしく語られることはなかったという。
そして語り終えた最後に、
「もし、またここから出られるのなら魔導師と魔術師の両方をまた一から学んで頑張っていきたいわ。
私みたいな落ちこぼれでも目指せば登っていけるんだっていう事を証明してみせるわ」
と、良い笑みでそう語ったという。
これならもう心配ないだろうと取り調べの人達は思ったという。
◆◇―――――――――◇◆
『と、いうのが今回の顛末よ』
「そう…」
レティとリンディが通信越しでそう語り合っていた。
『彼女に関してはサーヴァントともに言峰綺礼という人物に協力していただけ。
そしてこれといっためぼしい次元犯罪は犯していないから情状酌量の余地もあるということですぐに釈放できるでしょうね』
「よかったわ。彼女には魔術師の一人としてこれからも協力してもらいたいから」
『そうね。でも、これから魔術師による事件が増えていくと思うから管理局も余計取り締まりが強まるでしょうね…』
「そうね。もしかしたらシホさん級の魔術の使い手が生まれるかもしれないという予想は最低限しておいた方がいいでしょうね」
『恐ろしい世界になるわね…』
「そうね。だから前から考えていた『魔術事件対策課』というのも設立できたらいいと思っているのよ。
魔術に対抗するには魔導師でも大丈夫でしょうけど同じ魔術で対抗したほうがよりいいでしょうから。
でも、まずはこの聖杯大戦を乗り切らなくちゃいけないわね? でないと世界が滅びちゃったらそんなものも立ち上げることもできないから」
『そうね。それに今回の事件の戦闘映像をつい先日の映像も全部見させてもらったけどとてもではないけど私達魔導師では対抗はできないでしょうから。特にサーヴァントというものには…』
「ええ。くやしいけど真実ね」
『私も上に掛け合ってみるわ。管理局もバカじゃないんだからすぐに対応してくれるはずよ』
「そうね…。それじゃ報告ありがとうね、レティ。こっちでも頑張ってみるわ」
『ええ。頑張ってね。予言通りに事件が解決することを祈っているわ』
「わかったわ」
それでリンディはレティと通信を終了する。
そしてリンディはみんなのところへと戻り、
「皆さん、ミゼさんがすべてを白状してくれました。
よってアジトの場所や残りのマスターの情報をも掴むことができました」
『!』
それによって全員が顔の表情を引き締める。
「最後のマスターは管理局の官僚だった人物。
名前を『トーラス・スタリオン』。地上本部の二佐の陸官相当の人物だったそうです。
現在は管理局をとある事件で辞めさせられて行方が掴めないそうです」
「その事件というのは…?」
「裏金や密輸を色々なところに流していたそうでそれが発覚して退職させられたそうです」
「裏金に密輸か…」
「そんな男に魔術回路が宿るなんて…」
「そして今はキャスターのマスターだそうです」
「やっぱり…」
それではやてが声を出す。
「捕まえなければいけませんね…。そんな奴は野放しにしていたらなにをやりだすか分かりませんから」
「はい。それで今現在ひとつのアジトに管理局の魔導師が周りを警戒しながら監視しているようです。
ですが多分人質のフィアットさんを連れてそこからとうに脱出していると思います。
だからいるとしたら…」
「ノアの可能性は低いと思います。彼は言峰綺礼に付き従っていると思いますから。だからいるとしたら…」
「アクア・アトランティークという事になるな」
士郎が声を出してその女性の名を出した。
それにほかのみんなも同意のようで、
「でしたらランスロットは、私に任せてください」
アルトリアが声を上げる。
「彼の心は私自身が救わなければいけない。かつての盟友の魂は私自身で決着をつけます」
「アルトリア、あなただけに責務を負わせないわ。一緒にバーサーカーを倒しましょう?」
「余も手伝うぞ。アルトリアよ」
「ありがとうございます。シホ、ネロ」
「だったら今回は私とキャスターも向かうとしよう。キャスターならば接近戦の心得もある。役立つだろう」
「はい! 不肖この駄狐、めいいっぱいご主人様の手助けをしたいと思います!」
「それじゃ、ライダー…私達もいこう?」
士郎が名乗りをあげ、そしてすずかも声をあげた。
「ですが、スズカ。魔術が使えるとはいえ危険な仕事には変わりありませんよ?」
「うん。わかってる。でも私もシホちゃんの役に立ちたいの!」
すずかは力強くそう言う。
それにライダーは頷き、
「わかりました。しかしあなたのことは私がしっかりと守ります」
「うん!」
それですずかとライダーも行くことになった。
「…シホ。昨日の戦闘の事があったけど私も行くよ…」
「フェイト…」
「ランサーはまだ傷が回復しきっていないけど、けどアリシアを救う手助けをしたいんだ!」
そこにまだ全快していないランサーが姿を現し、
「マスターの想い、かなり感じるぜ。シホの嬢ちゃん、安心しな。俺は戦わないがマスターだけは守るからよ」
「わかったわ…それじゃこのメンバーでいきましょう!」
それで行くメンバーが決まった。
今回はシホに士郎にフェイトにすずかの四人にサーヴァント達。
「すずか。危ないと思ったらすぐに帰ってくるのよ?」
「うん! お姉ちゃん、少し行ってくるね!」
それで四人とサーヴァント達は転送ポートを通り、かの世界へと向かっていった。
◆◇―――――――――◇◆
そして到着してみるとどうも魔導師達がシホ達が現れたことに関して色々な視線を浴びせてくる。
なかには士郎以外のシホ達を見て「あんな子供が…?」という声が多数聞こえてくる。
それは当然の反応であり、しかしシホ達は気にせずに魔導師達に話しかけた。
「サーヴァント対策で来たものです。状況を教えてもらっていいですか?」
「あ、ああ。今のところは膠着状態を保っている。中にサーチャーを送ってみたがいるのは一人の女性…アクア・アトランティークともう一人、そうだね。
そこにいる君に似ている少女が一緒にいるみたいだ」
「きっとアリシアだ…!」
フェイトはすぐにでも向かいたい気持ちを流行らせ、でもすぐに心を落ち着かせ、
「シホ…いこう!」
「ええ。士郎とすずかもいいわね?」
「ああ」
「うん!」
そしてサーヴァント達を実体化させる。
すると魔導師達は驚きの声を上げている。
やはりサーヴァントを見るのは珍しいらしく色々な表情を伺える。
「ネロ、任したわね?」
「うむ。まかせておけ奏者よ!」
「アルトリアもいつでもできるように…」
「そうですね、シホ」
『ユニゾン・イン!』
シホとアルトリアはユニゾンして聖剣を構えた。
「いきましょう!」
シホ達はアジトの中へと入っていった。
中にいるのは死霊魔術師のアクア・アトランティーク。
そして操られているアリシア。
最後にバーサーカー…ランスロット。
アルトリアとランスロット。
フェイトとアリシア。
今、二つの因縁の幕が開かれる。
全員は中へと進んでいき、そして…
「来たようですね…。ようこそマスターとサーヴァントの皆さん」
アクアは礼儀正しくスカートを摘み挨拶をする。
なるほど…お嬢様というのは本当らしい。
その顔に笑みを浮かべて、
「ですが私の願いのためにあなた達を倒させていただきます…バーサーカー」
「■■■………」
体に黒い靄がかかっているバーサーカーが姿を現した。
『ランスロット…今度こそあなたを救います』
「さぁ、いきましょうか…やってしまいなさい。バーサーカー!」
「■■■■■ーーー!!」
バーサーカーは命令を授かりアルトリアの格好をしているシホへと突撃してくる。
「奏者!!」
ガキッ!
ネロがシホの前に出てバーサーカーの持っている武器…鉄筋を剣で受け止める。
そこにキャスターが呪符を構えて仕掛ける。
「炎天よ、走れ!」
その言葉によってバーサーカーの地面から火柱が上がりバーサーカーを焼く。
だがそれは一瞬のことで体を振り回すことですぐに鎮火してしまった。
「私の炎を…!?」
「私が行きます!」
釘をバーサーカーの腕に巻きつけその怪力を発揮してバーサーカーを地面へと叩きつける。
バーサーカーはうめき声を上げるがすぐに立ち上がってきて鎖が巻きついている腕を強引に引っ張り逆にライダーを壁へと叩きつけた。
「ぐっ…! やりますね…!」
「■■■■■ーーー!!」
バーサーカーはライダーにそのまま走り顔をつかみ強引に壁に叩きつける。
それも何度も…!
ライダーは口から吐血する。
「ライダー!!」
ネロが剣を振るいそれでバーサーカーはライダーを離したがライダーは少しばかり消耗した。
すぐにシホが近寄り治癒魔術をかけ回復させている。
「今度は逃しません! 氷天よ!」
違う呪符を構え今度はバーサーカーを氷漬けにする。
そこには一体の氷漬けの像が出来上がるが、すぐにヒビが入ってきて中からバーサーカーは復活し今度の標的をキャスターに絞ろうと走る。
しかしそこにシホが前に出てエクスカリバーを構えてバーサーカーの足を止める。
「四人がかりでこうも圧倒されるなんて…!」
「奏者よ。今行く! さぁ、踊ってもらうぞ! 喝采は万雷の如く!!」
ネロの技がバーサーカーの各所の体に傷を刻む。
それにともなって衝撃が加わり一度バーサーカーは大きく吹き飛ばされる。
「バーサーカー!」
アクアが叫びを上げる。
だがすぐに、
「バーサーカー! 令呪によって命じます。あなたの真の宝具を開放するのです!」
「■■■■■ーーー!!」
バーサーカーが雄叫びを上げ、その体から靄が消え失せ腰に下げられている剣を引き抜く。
これこそバーサーカーの真の宝具。
『騎士は徒手にて死せず』と『己が栄光の為でなく』の二つの宝具を封印することによって発動する剣。
エクスカリバーと起源を同じくする神造兵装、『無毀なる湖光』。
バーサーカーはそれを構える。そして力を溜めてそれを一気に引き抜いた。
それによる衝撃波でアジトの天井が吹き飛ばされ空の光が差し込んでくる。
「空間があけた! チャンスです!!」
ライダーが場所が広がったことを好機と感じ、目の前に幾何学の魔法陣を形成する。
そしてライダーは光となりその光は晴れると空にライダーはペガサスに跨っていた。
「バーサーカー! 勝負を決めます!」
そしてまた光となって何度も旋回しバーサーカーの下へと突っ込んでいき、
「騎英の………手綱!!」
「■■■■■ーーー!!」
宝具を解放しバーサーカーへと突貫を決め込む。
しかしバーサーカーは避けるどころかその両手を広げ、なんと受け止めてしまった。
「■…■■■■■ーーー!!」
ライダーの攻撃は確実に通っている。しかし、それでもまだバーサーカーにはいま一歩届かないのかその威力はどんどんと落ちていき、ついに宝具の効果が切れるまで耐え切ってしまった。
「バカなっ!? ぐっ…!?」
そしてライダーはペガサスごと持ち上げられてまたもや壁へと叩きつけられてしまった。
それによってペガサスは消えて、衝撃でライダーは気絶してしまった。
「ライダー!!」
すずかが叫ぶが今のライダーには反応する術がない。
「ランサー!」
「おう! わかっているぜ!!」
すぐにランサーが駆けてライダーを回収する。
それで息をまだしている事をすずかは確認すると安堵の息を漏らす。
「ライダー…霊体化して体を休めて…」
「…お役にたてず、申し訳ございません…」
「ううん、ライダーが無事なだけでよかった…」
「すみません…」
悔しそうにライダーは霊体化して姿を消した。
「ふふふ…さすがバーサーカーですね。さぁ、残りの者も倒してしまいなさい!」
「■■■■■ーーー!!」
そして残りのものに目を向けた。
次の標的は今度こそキャスターだった。
「私を傷つけられると思っているんですか!? 呪層・黒天洞!!」
それによってキャスターの前にある鏡からなにかの膜が展開しバーサーカーの剣を防ぐ。
その隙にキャスターは宝具を開放する。
「出雲に神在り。審美確かに、魂に息吹きを。山河水天に天照す。是、自在にして禊の証。名を玉藻の鎮石。神宝宇迦之鏡也! なんちゃって☆」
最後はおふざけが出たがマジメに宝具である鏡が輝き出し、そしてキャスターの魔力が倍増していき、
「受けてください! 炎天、氷天、密天! 三呪相、入り乱れ攻撃!!」
「■■■■■ーーー!!?」
三つの攻撃が入り乱れながらバーサーカーを襲い、その体に様々な傷を与えていく。
「とどめです! いざや散れ、常世咲き裂く怨天の華―――ヒガンバナセッショウセキ!!」
最後に猛毒が大量に込められた大呪術がバーサーカーへと放たれそれはバーサーカーに直撃した途端、何度も雄叫びを上げ体を仰け反らせる。
大量の怨念が込められた猛毒の塊をくらったのだ。
さすがのバーサーカーでも耐えられるものではないだろう。
しかし、バーサーカーは生存本能を働かせてその兜を無理やり脱ぎ捨てることによって通常の空気を吸い出す。
しかし、それで変わり果てた素顔が晒される事になる。
「うっ…これは!」
さすがのキャスターもそのバーサーカーの形相に恐れを抱く。
そこには狂化で歪み変わり果てた騎士の顔があった。
「■■■■■ーーー!!」
バーサーカーは兜を取らざるを得なかったことに対して怒りを持ったのか体が傷ついていることも気にせずにキャスターへと向かって走り出す。
その剣は打ち込まれればキャスターの首は確実に飛ぶ。
そう直感した士郎は令呪を使った。
「下がれ! キャスター!!」
「ご主人様!?」
それによって令呪が一画消える。
そしてキャスターは霊体化して士郎の後ろに下がることになった。
《ご主人様! まだ私は…!》
「すまない、キャスター。しかしお前を失うよりはいい…」
《…はい。ありがとうございます。ご主人様…》
これによってキャスターも撤退したことになる。
残りはネロとサーヴァント級の力を持つシホのみだった。
「残りは私とネロだけね…」
「うむ。しかしこの逆境、見事駆け抜けて見せよう!」
「同時に仕掛けるわよ!」
「了解した!」
それによってシホとネロは左右から同時に切りかかり、バーサーカーは剣を横にすることで二人の剣を防いだ。
ギリギリと音を鳴らせ二人と一人の力の押し合いは続く。
「さぁ! バーサーカー! もっとこの子の魔力を吸いなさい! あなたはもっと強くなるのよ!」
「ううぅ…あぁー!?」
アクアがそう叫ぶ。
それによってアリシアから魔力を吸い取りさらにバーサーカーは力を増していく。
それに比例してアリシアが虚ろな瞳だというのに苦しみのうめき声を上げ出す。
「アリシアを開放して! もう苦しませないで!!」
「私の願いのためにこの子は尽く使わせてもらうわ! さぁ、もっと吸うのよ!」
「黙りなさい!!」
そこでシホが大声を上げる。
「黙って聞いていればあなたは何様のつもり!? 人の魂を操るというのは冒涜行為にも等しいわ! そんな事…!」
シホの魔力がどんどんエクスカリバーへと溜まっていき、
「許す…ものかーーーーー!! 約束された勝利の剣ーーー!!」
シホの咆哮と同時にエクスカリバーの真名が解放されバーサーカーは切り裂かれていく。
そうしてバーサーカーは体を両断され地面へと転がる。
「はぁ、はぁ…ユニゾン・アウト…」
シホはアルトリアと融合を解除する。
そしてアルトリアはバーサーカーへと…。シホはアクアへと歩いていく。
アルトリアはバーサーカー…いや、もう消える前だということは狂化の呪縛から解放され通常の言葉を喋れる。
よって、
「…アーサー王…」
「ランスロット…」
「私を、裁いてください…」
「なにを…?」
「私はギネヴィアの手を取り脱走してあなたと戦う事になってしまい、それはどんどんと大きくなり戦が始まり破滅を招いた…」
「………」
アルトリアはただ無言でランスロットの言葉に耳を傾ける。
「…あなたがモードレッドと相打ちになったと聞いた時、私は絶望した…。
どうして私はこんな愚かな戦いを引き起こす引き金を引いてしまったのかと…。
…ギネヴィアとも最後は悲恋の定めを迎えてしまった。
そして死して残ったのは後悔のみ…。それで狂う獣になれればと招かれて前回の戦いに身を投じた時、あなたと会い、王はまだ責務に苦しめられていると分かった」
「ランスロット…それは…」
「ええ…。わかっています。あなたはもう解放されているのでしょう。
だからこそそんな王に私は裁かれたい…」
ランスロットは泣きそうな顔になりアルトリアにそう告げた。
しかしアルトリアから出てきた言葉は謝罪の言葉だった。
「すみません、ランスロット…。
ギネヴィアの件に関してですがむしろ私はあなた達を応援していたのですよ?
どのみち私にはギネヴィアを本当の意味で幸せにすることはできなかった…。
王としてあなたを追いましたがそれでも私は、あなた達の事を心では祝福していたのです」
「王…」
「そして、あなたを許しましょう…。
もうあなたは解き放たれてもいいのですよ? 過去に縛られることなくまた先へと進んでいってください」
「ですが…」
「私があなたを許すのです。だから…」
アルトリアはもう消えかかって首しか残っていないランスロットの顔を持ち、その胸に抱き、
「あなたは私にとって最高の無双の騎士でした。だからもう心安らかに眠りなさい。そしてもう狂うことなく座に戻っても立派な騎士でいてください」
「王よ…感謝します。まだ、私を無双の騎士とお呼びしてくださって…また、いつか会いましょう。私の最高の王よ…!」
そしてランスロットは消滅した。
アルトリアはその目から一滴の雫を垂らした。
◆◇―――――――――◇◆
Side シホ・E・S・高町
アルトリアとランスロットの方は決着ついたようね。
アルトリアも満足そうに笑みを浮かべている。
さて、それじゃ最後のけじめをつけましょうか。
「アクア・アトランティーク…これであなたはサーヴァントを失ったわ。その子を…アリシアを開放しなさい」
「まだよ! まだ終わっていないわ!!」
アクアはアリシアを抱きしめるとその首を絞め出す。
それによってアリシアは苦しそうな顔になる。
「やめなさい。そんな事しても罪を重ねるだけよ」
「うるさいわね! あなたに私の気持ちがわかるものですか!!」
「ええ。わからないわ。でも、あなたがしている事は魂を苦しめているということだけは分かるのよ。
あなたが何を願って聖杯大戦に参加したのかは知らない。
でも、魂を弄んでいいというわけではない…いいわけがない!」
「私は、ただお友達と会いたいだけなのよ!!」
「それがあなたの願い…?」
「そうよ! それの何が悪いって言うのよ!」
「そのお友達はあなたがそんな事をして喜ぶと思っているの…?」
「ッ!!」
そしてアクアはアリシアの体を抱きしめている力を緩めて離す。
それからヨロヨロと後退りをする。
「あ、あぁ…嫌だ。会いたい…! お友達に会いたい! でも、こんな事をしていた私は許されるの!? あの子は許してくれるの!?」
どうやら錯乱したらしい。
「……………そうか。あの子は死人だった。なら私も死人になれば…」
アクアはいきなりナイフを取り出した。
これはいけない!
「待ちなさい!!」
私の静止の声もむなしくアクアは自分の喉にナイフを深く刺してしまった。
「なんてことを!!」
「ふ、ふふ…これでお友達のところにいける…待っていてね? すぐに、会いにいくから…」
そしてアクアは目を開けたまま息を引き取った。
「くっ…。止められなかった…」
私の心に後悔の念が襲う。
だがそこにフェイトの「アリシア!」という叫ぶ声が聞こえてくる。
見ればアリシアは体が少しずつ崩れてきていた。
おそらく魔力を限界以上に大量に吸われて体も耐え切れなかったのだろう。
「…あなたは、フェイトだね…?」
「私が、わかるの…?」
「…うん。魂になって見ていたんだと思う…。ずっと、見ていたかった…でも、もうダメみたい…。フェイト、強く、生きて…」
「あなたはまだ終わらない! 終わらせない!!」
私の言葉にアリシアは目をこちらに向ける。
「あなたは…?」
「あなたを救うものよ…。待っていて。今、助けるから…大師父!」
「うむ」
私の叫びに大師父が現れてその手にはフェイトと同じ姿の人形が持たれていた。
そして私は前からデバイスに登録しておいたある衣装を展開する。
《ヘブンズフィールフォーム、展開します》
アンリミテッド・エアの声と共に私の格好は天のドレス姿になる。
「魂の物質化! 執行!!」
それによって私はアリシアの魂を物質化してそれを用意してあった体に宿す。
そしてどうやらもう少し遅かったらアリシアの魂も根源に帰っていた…。
体は崩れていたようだったらしく魂を移し終わった後、アリシアの元の体は崩れて灰と化してしまった。
でも、もう魂は新たな体に宿り、しばらくしてアリシアは目を開けた。
「…フェイト?」
「…うん!…うん! 私だよ、アリシア…! アリシアは、生きているんだよ!」
「フェイト…!」
フェイトとアリシアの抱きつく姿を見て、私はよかったと素直に思った。
でも、やっぱりアクアの事は救う事ができなかったのは痛かったわ。
「シホ…。彼女の事は残念じゃったが、今はアリシア嬢を救えた事を素直に喜ぶことじゃな」
「はい。大師父…」
それで私達はアリシアも連れて月村邸に帰るのだった。
こうして二つの因縁は終わりを告げたのだった。
後書き
アリシアを救う事ができました。アルトリアとランスロットの会話内容は賛否両論あるでしょうがこんな結末もありだろうということで。
今回モードレッドの名前だけ出ました。
でも、モードレッドの宝具名はなんというかすごいですよね。
『我が麗しき父への叛逆』。
名前にアーサーが入ってくるあたり恨みがこもっていて狂気も見えてぶっちゃけもしかしたらクラス・バーサーカーでもいけるんじゃね?とか、ないかと思ったり…。
兜でステータスを隠蔽できるあたりとかランスロットと似ているし。
宝具開放する時だけ素顔を晒すモードレッドに驚くアルトリアが是非見てみたい。
ランスロットとギネヴィアの浮気現場を暴いたり、ガウェインも倒したりと色々と逸話もありますし…。
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