なりたくないけどチートな勇者
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20*厨二がデフォルト
「では第三王女近衛隊特別名誉顧問ハセガワナルミよ、今回のそなたの功績を讃え上級騎士としての二つ名と地位、それと何かしらの褒美を授けよう。」
………ついにきました精神的死刑執行のお時間DEATH!!
そしていつのまにか“特別”名誉顧問って格上げされてるし。
ここは自分が最初に王様に会ったあのでっかい部屋である。
今この部屋にいるのは中央に立っている自分とその正面にいる王様&王妃様、そして左右に無数の貴族達。
ちなみにエリザとバリスはその貴族に紛れて、でもとっても目立つところで自分をみている。
エリザに至ってはなんか異常に誇らしい顔をしながら。
恨めしい、ああ恨めしい恨めしい。
「この事に異論がある者はおるか?いたら申してみよ。」
はい、ここにいます先生!
しかし辞退は出来ない、なぜなら
『王様からの申し出を断ったらですか?もちろん国家犯罪者として指名手配ですが……』
らしいのだ。
シルバちゃんいわくらしいのだ。
エリザならともかくシルバちゃんなら信用できる。
なので自分はこれを受け入れるしか無いのだ。
さぁ!自分に厨二のレッテルを貼るがよいわ!!
「いないようだな、ではまずそなたに授ける名を発表しよう。」
やっぱりヤメテェ!!
どこぞの痛い中坊がつけるようなアイタタタな名前を皆の前で付けられるのはイヤァァァァァ!!!
***********ミ☆
ふっ、燃え尽きたぜ、真っ白にな。
もはや大○炭18よりも燃え尽きたぜ。
何?灰と炭は違う?
知るか!!
「いやぁ、ナルミ。よかったではないか。素晴らしい名を貰えて。」
そう言いながらペシペシ自分の肩を叩くエリザ。
くそぅ、こいつ。
そんなに自分を泣かしたいか?
「少し…いえ、かなり異質ですけど確かに素晴らしい名ですよね。何たってき「やめてくれぇ。」…なんでですか?」
自分に貼られた厨二の証をリム副隊長が言おうとしたところを自分は止め、そしてふたたび崩れるように膝を抱え部屋の隅にて影を発する自分。
ちなみにここはエリザの私室。
無駄にはしゃぐみなさんを尻目に自分は負のオーラをプンプン放出してるのだ。
ちなみにみなさんがはしゃぐ理由は
「でも魔獣撃破の功績が私達近衛隊全員にも貰えるなんて、夢みたいです。」
そう、これである。
彼らがあのお城での大量魔獣大行進を撃破した事に対する功績が認められたのだ。
ちなみにエリザも。
これでお父様に顔むけできます~と、喜ぶシルバちゃんとか素直に給料アップに歓喜するテトラ君とかまぁ反応はいろいろだが、とにかくみんな喜んでいる。
あぁ、自分もこんな風に素直に喜びたい。
ちなみに、短時間で彼らをここまで成長さした事で自分についての評価もググッと上がったとか。
しかも自分が人間だとばれてたからなおのこと皆さん自分を過大評価して。
……なんかこれも国のドロドロネチネチプチプチした事に巻き込まれる原因になりそうでさらに自分は鬱々真っ盛り。
はぁ……イテテ。
やべっ、胃がキリキリしてきた。
しかし、そんな自分を気にもせず、むしろいきなりの昇格に頭が追い付かないと勝手に解釈した彼らはなおもさわぐ。
「…やっぱり先生は俺達には届かない存在ですね。先生に教えを請うことができて光栄です。」
ほんとに、君らは暢気だねぇ。
「本当だよねぇ、たしかそんな感じのコトワザがえっと……」
だれが誰かは推して知るべし。
「“雲の上の人”だよね。ナルミ君みたいな人をあらわす言葉は。」
むしろ自分は“世界の外の人”だよ。
何?上手くない?
知るか。
「ホントですね。さすがは“虚無の黒騎士”。」
!!!??
「テトラァァ!」
「うぉ!どうしたナルミ!」
嗚呼。
ついに呼ばれてしまったか。
虚無の黒騎士、これが自分に付けられた厨二成分MAXな名前である。
魔力が無いのと今までに無い魔法ってか技ってかまぁそんなのをつかったのが虚無の部分。
んで黒騎士は言わずもがな、容姿からである。
この二つの成分、共に用法容量を注意して使わなければならない超危険ワードであります。
使用時間、服用方法や分量、ましてや処方する患者を間違えると
「やめてくれぇー!自分は厨二ではない!断じて!」
こうなります。
正確には恥ずかしさが限界を超えて半分気が狂います。
そしてそうなった自分はテトラ君の肩を掴みユサユサガタダタガッタンゴットン。
もはや彼の顔が残像で二つに見えるレベルです。
「お、落ち着け!どうした!?なにがあった!?チューニとはなんだ!?」
「先生!気を確かに!」
はぁ、はぁ。
自分は、何を……
「せ、先生……どうしたんですか?」
「いや……自分は厨二病でない事を証明したくて、つい心を乱した。」
「チューニ病ってどんな病気ですか?」
……どんな?
言葉で説明しずらいな。
てかしたくないな。
「…………恥ずかしい発言を平気でしてしまうようになる心の病気。」
「なんで急に?」
「いや、まぁ……うん、いろいろあって。きにするな、もう過ぎた事だ。」
まさか王様がそうとか言えないべ。
てか風習なら仕方がない。
てゆーかなんであんなに乱心してしまったんだろうか。
やはり恥ずかしさと緊張と不安からかな。
心、弱いなぁ…
精神強いらしいのに。
「ところで、なんでナルミはあの時に褒美を要求しなかったのだ?あさつまえ後で王と直接、それも他に余計な者がいない時に話したいなど。」
そう、自分はあの時にご褒美を即座には要求しなかった。
理由は簡単、エリザとバリスがいたからである。
だがそれを彼女に話す程愚かではない。
「いや、それはまぁ…ちょっとね。」
なので言葉を濁す事にした。
「まぁ、今のお前の立場だから大丈夫だが、普通ならかなり問題だぞ。」
「まぁ、いいじゃん、問題なかったんだから。」
むしろお前達に聞かれる方が問題なんだよねぇ。
しかしいつまでもこのやり取りをする訳にもいかないので自分はとっとと切り上げる事にした。
「ほら、もうこの話しはおしまい!」
と、自分が無理矢理話しを切り上げたところで納得するエリザでは無い。
なので先手をうつことにする。
「ほら、じゃあ厨房にいこう。案内してくれ。」
すると不思議な顔をしながらエリザが
「なぜだ?」
とのたまった。
あり?
覚えてない?
これは意外。
「お菓子作ってやるって約束、覚えてないならつくんないけど……」
「覚えてる!!よし、厨房にいくぞ!!」
そう言って勢いよく飛び出すエリザ、そして他の近衛隊にも
「今回はみんなのお祝いとして凝ったのを作ってみんなで食べよう。」
そう言うとみんな一層パアッと明るい表情になった。
そしてみんなさっきまでのやり取りは頭からすっ飛んだようだ。
ふぅ、単純だなぁ、彼ら。
いろいろ心配だ。
王族とかそれを護るエリートがこんな単純に騙されるとか。
この国は大丈夫だろうか。
**********ミ☆
唐突ですが皆さん、皆さんは入院等をした時はいかがしてお過しになりますかな?
ベッドの上で何もすること無くただただ時間だけがすぎていく。
例外はあれど、それは苦痛な方が多いはずですね。
自分も例に漏れず、ベッドで一人でごろごろうだうだするのは暇すぎて苦痛だったのです。
もとの世界とは時間の流れに差があり、自分のポケットに新たな漫画やゲームが届くのにはまだまだ時間が掛かりそう。
いまあるものも全部制覇しちゃったからやる気にならない。
そんな時には興味はなくとも新しい本があればそれを読んでしまうのが自分である。
それとエリザとシルバちゃんとの約束があったので、一度は挫折したが地球料理大全でプリンを空で言える程度には覚えたのだ。
うれしい事に、食品代用一覧なるこの世界での代用できる食材がわかるものもある。
人間目的があると結構覚えるものである。
まぁそれでも時間は余るので、クッキーとかチーズケーキとか他にも少し……
話しがそれた、ついでに長くなった。
つまり、もう自分はプリンをなんも見ずにつくれるのだ。
そしてプリンはこの世界には無いものである。
つまり、これをふつーに厨房で作り始めると……
「なんと!ペププの粉を入れると砂糖水が膨らんだぞ!」
「魔法薬を料理に使うなど考えた事もありませんでした!」
まわりの調理師の方々が寄ってくるのである。
しかもバニラエッセンス(モムリの樹液)と重曹(ペププの粉)はなんか魔法薬らしく、最初使うと言った時にはみんなに引かれた。
なかでもモムリの樹液は、呪いにも使われる強力な魔力を持つ薬品らしく、自分が生でプリンのタネを啜るまでみんな戦々恐々してた。
なんかちょっと傷ついた。
あれだな、なんか気分は最初にトマト料理つくった人みたいだな。
最初トマトは猛毒と勘違いされていたんだが、実際は皆さんがおいしくいただいているあれである。
あれ?
でも確かその人って確か勘違いしたまま罪悪感で自殺したんじゃ……
そもそも作った理由が暗殺目的にお偉い様が『これで作んなきゃ君を殺すよ。』って脅したからな気が……
わすれよ。
細部まで覚えてないし、間違った記憶もあるかもだけどわすれよ。
「ナルミ!まだかかるか!」
「んー、プリンはもうそろ固まるかなぁ。ほれカルメ焼き。」
ちなみに今はプリンが固まるまで(魔法の氷の箱の中)の間に暇だったからちびっこい頃に婆ちゃんから教わったカルメ焼きをつくってたのだ。
さてさて、エリザの反応は。
「む……サクサク…甘い!旨い!」
うむ、いい笑顔だ。
ちなみにこの娘はすでにホットケーキを四枚平らげている。
なんとも末恐ろしい。
「師匠!上手く膨らまないのですがどうしたらいいのでしょうか!?」
「混ぜる速さとか棒を引き抜く頃合い、あと粉の分量を気を付けてやってみて。」
ぶっちゃけこれは慣れだからねぇ…
そんな教える事は無いよ。
てか師匠って……
……何、そのもっと具体的な事を期待する目は。
「…全部は教えないけど一回自分やったんだからそれを思い出して技術盗んで。悪いけどそれが出来ない調理師は三流だと自分はおもっちゃうね。」
とりあえず、エラソーにいってみた。
これで頑張って自分でやろうとするだろう。
怒る奴もいるかはしれんが。
しかし、自分の言葉で料理人達の眼に火がついた!!
そして料理長にあたる恰幅の良い角が生えたオッサンが
「わかりました!これは試練として調理師一堂乗り越えて見せます!!」
と、高らかに宣言した。
そして早速猛練習しはじめ、猛烈にカルメ焼いていった。
熱い!こいつら熱すぎる!
「ナルミ!プリンとやらはまだか!?」
「あー、はいはい。」
エリザにせかされ、とりあえずこの熱い漢たちはスルーしながら固まったプリンの入った容器をみんなの前に持ってった。
そして自分も一個とり。
「まぁとりあえず毒味。」
一応薬が入ってるので、安心させるために一個をペロリと平らげた。
うん、うまし。
「大丈夫そうか?」
「ん、問題無い。大丈夫大丈夫。」
「そうか。では」
そう言ってエリザが食べる。
次いで皆も一緒にたべる。
そして
「…………ナルミ。」
「ん?」
「お前本職は調理師か?」
「いやそれは無い、本職は高校生。」
何を言い出すこのムスメ。
すると今まで黙ってた近衛隊の方々も
「ですけどこれ!なんですか!」
「こんな蕩けるような甘さ初めてですよ!?」
「口触りも滑らかで…人間なら誰もが作れるんですか!?」
上からテトラ君、シルバちゃん、ミミリィ隊長である。
この好評価なら多めに作ったのもすぐ無くなるかな。
てかなんか、こーやって人間のイメージが段々変についていくんだな。
と、自分が少し困っていると。
「ハセガワナルミ様。」
「のうわっ!!」
上から忍者……ではなくツナギ姿のポニテな女性が降ってきた。
「魔王様が御呼びです。褒美についての話しを聞くと。魔王様の私室、謁見の間の左の部屋になります、そこへ。」
「あ、あぁそう、うん、行くすぐ行く。」
いまだにバクバク言ってる心臓を心配しつつ、自分は足早に厨房を後にした。
しかし、これが間違いだった。
厨房へ彼女を置いていった事を自分は激しく後悔する事になるのである。
**********ズ☆
「えーっと……失礼します。」
自分は異常にでっかい扉から二十メートルは離れた場所にある非常にでっかい扉をくぐり、なるたけ失礼のないよう入室した。
「硬くならなくていい、楽にしてくれ。」
「そうですよ、“英雄”さん。」
するとそこには何時もと違い、気のいい熟年夫婦がそこにいた。
「一応この場には私達しかいませんのでご安心を。でもさすがに近衛隊はいくつか隠れていますのでそこは許して下さいね。」
あなたを呼びに行ったのも近衛隊の子なのよ、と最初のような試す視線ではなく柔らかい視線を投げかける王妃様。
なんか印象かわったかも。
「では、早速だが君の要求を聞いてもいいかね?」
しばらくやんわりと和んだ空気を味わってた自分に切り出したのは王様である。
なので自分も単刀直入に答える事にした。
「実は自分、長い休暇が欲しいのです。」
すると二人の頭にハテナが浮かんだ。
そりゃそーだ、金や地位ではなく休暇、つまり休みを要求したのである。
普通は疑問に思うだろう。
なので自分はその理由を答える事にした。
「理由は自分がここに来た原因にあります。いくつか話せない事がありますが、そこはご容赦下さい。そして何卒この事はご内密に。」
そう切り出し、自分がこの国に来た理由を話した。
所々隠し、ちょっと嘘も織り交ぜて。
特に神とか神とか異世界とか。
そう、自分が休暇を注文した理由。
それはとっととあの疫病神にかせられた仕事を終わらせて心おきなく戻る方法を探すためである。
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