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なりたくないけどチートな勇者

作者:南師
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19*何がいよいよだ

さてさて、ただいま時間はお昼時。
ここはグラディシアのお城の一室、つまりエリザの母国のお城。
自分は気絶してすぐに竜でここまで運ばれたらしい。

ちなみに今日はあの戦争が終わり6日、つまり自分が起きた4日後である。

なんでも、自分がヒューをぶった切った直後にあちらの王様が正式に降参したとか。
でもなんか話しによれば、むしろあれは戦争では無く王様救出のための革命的な位置付けになっているだとかなんだとか。
ちなみに名称としては救済戦争と名付けれたらしい。

まぁ、むつかしいことはわかりませぬ。
とりあえず全部の責任はヒューが背負い、ついでにこちら側のあの阿呆将軍(名前は知らん)も反逆罪として捕まったとか。
なんかこれから裁判にかけられるとかられないとかなんだとか。

やっぱりむつかしいことは自分にはわからんです。

とりあえず、そんなこんなで今あっちの国もこっちの国もごたごたがやがやしているのである。
これから向こう一週間、戦争の後始末やらなんやらで上の方々はてんやわんやなそうである。

しかし、それはあくまで上の話し。

自分ら下っ端には全く関係ない、むしろ一週間の長い休暇なとってもハッピーな事になっているのです。

まぁここまでつらつら言葉をならべて最終的に何が言いたいかと申しますと。

久しぶりに自分……

自由だぁぁぁ!!

そう自由!
エリザはそのてんやわんやに巻き込まれ、お医者さん(治癒師と言うらしい)からも歩き回りの許可が下りた今、自分の自由を邪魔する者は何も無い!!
この世界で初めて自分は自由に行動できる!!

てんやわんやバンザイ!!

と、自分は久しぶりに自由を手にした喜びを噛み締めながら意気揚々と今まで寝ていた部屋を飛び出し、廊下を練り歩く事へするのです。


***********せ☆


………なぁ、自分なんか悪い事したか?
なんですれ違う人みんなして自分を凝視する?
なんで目があうと急激に目をそらす?
なんで自分が近付くと話しをやめてしんとなる?

そろそろ心が折れそうなんすが。

と、皆さんから汚物を見るような目で見られていると、後ろから不意に声をかけられた。

「ナルミ、もう大丈夫なのか?」

ニメートル位の背がある吸血美男子、ゼノアである。

やべっ、マトモに話しかけてくれたのが嬉しくて涙出てきた。

「………どうした?」

「いや、なんでもない。」

慌てて目元を隠す自分。

いや、マジに泣いてはいないよ?
ふざけてるだけよ。

「まぁ、いいが……何をやっているんだ?」

それはこの行動に対してか、はたまた今ここをぶらついているのに対してか。
まぁ多分後者だろーが。

「久しぶりの、つか初めての休暇だからぶらぶらしてた。」

まぁ実際、行くあても無くぶらぶらしてたんだがね。
ちなみに半分迷子になっていたというのは秘密だ。

「そうか、だと。」

ん?
何が?

と、自分が疑問に思っていると、大柄なゼノアの後ろから小柄なシルバちゃんがぎこちなく出現した。

「あ、あの……この前教えて貰ったあれが……その…出来るようになって……あの…見て貰いたくて…」

そう言って顔を赤くし、再びゼノアの後ろに隠れるシルバちゃん。
このふたり兄妹仲いいねぇ。

ちなみに彼女が言うこの前教えて貰ったあれとは自分がベッドで療養中に………後でいーか。

しかし、自分が起きてこの三日、こんな感じに隠れられたりするとさすがに傷つくね。
たしかに起きた直後のあれが恥ずかしいのはわかるが、この嫌われ様は……ねぇ。

「あー、そうなん?なら見ます、はいみして下さい。」

とりあえず、ガラス細工の鶴を扱う並に気を使いながら返事をする自分。
すると、ロボットみたいな動きでシルバちゃんがまたもでてきた。

熱暴走するんでね?って位真っ赤になって。

「あ、ならあの、中庭…に…」

あぁ、中庭ね。
たしかにここから出たらすぐだわな。

「ん、じゃあ行こう。」

そう自分が言うと、ぎくしゃくしながらシルバちゃんが動き出し、自分はそれについて行こうとして

「あ、ちょいまって………ん、ゼノア、ほれ。」

途中で立ち止まり、ゼノアにあるものを渡す。
そのあるものとは

「な……これは…」

「教科書と日本語をポノノ語に訳す事典だ。貸すから自分で読んで。」

そう、日本史の教科書と和ポノノ事典である。

ぶっちゃけ文字を教えるのと教科書読み聞かせを約束した自分はめんどくさいのでこれらをゼノアに貸し出したのだ。
反応は予想以上の好感触。
目を見開き口がぱくぱく言っている。

「い、いいのか!?」

「いいって別に、むしろ自分より有効活用できそうだし。」

「あ、ありがとう!さっそくつかわして貰う!!」

そう言うとゼノアは風の如く走り去った。
手には大事そうにニ冊の本を抱えながら。

いやぁ、歴オタは凄い。
自分みたいなアキバ系よりよっぽどパワーがある。

そう思いながら自分は廊下に立ちすくみながら自分を待っているシルバちゃんのもとへ歩き出す。

しかし、ゼノアよ。
君はたしか自分らみたいな一般兵士よかよっぽど偉いんと違いますか?
てんやわんやに巻き込まれてはいないのか?

そんな教科書読んでる暇あるのかね?

そして最後に、自分の横を通り過ぎる時に「妹をよろしくたのむ。』と聞こえたのは幻聴だよね?


************ん☆


さぁてさて、ここは中庭、つか庭園。

ここには自分とシルバちゃんとプラスアルファの計四人。
ちなみにそのプラスアルファとは何かと言うと……

「お久しぶりです。」

「ふん!」

シャール君とラルムである。
相も変わらず二人一緒だな。
セットか?二人合わせて398円か?それとも…

「BLか?」

「はい?」

おっと、つい思った事が口から。
と、くっだらない事を自分が考えていると、今回の主役シルバちゃんがすっげー嫌そうな、それこそ汚物にたかる蝿が産んだウジムシを見るような蔑んだ目で

「なんでいるんですか?」

プラスアルファにこう切り出した。
するとプラスアルファの駄目な(ラルム)

「問題あるか?チビ。」

やっぱりこいつ最悪だ。

「……」

「「ひぃ!」」

コワッ!
ここに般若が降臨している!
むしろシルバちゃんに憑依している!!

ちなみに悲鳴は自分とシャール君だ。

「お、落ち着こう。ね。」

とりあえずメダカの脳みそ程のかけなしの勇気を振り絞り、シルバちゃんをなだめてみる。

「……先生。」

すると落ち着いたのか、いつもの表情でこちらを見るシルバちゃん。
そして発した発言は

「あれをあの方に当てても良いですよね?」

うん、いい笑顔。
しかしあれねぇ……

まさか本当にできるとは……


************べ☆


自分が起きて次の日の朝、目の前にはエリザと近衛隊の面々が。
なぜかと言うと。

「カードかえせ。」

「……どうしても返さなければだめか?」

という事である。
つまり返してほしい自分と返したくないエリザ達。

「実はそれ、まだ未完成なの。それを使われると自分に負担がかかるの。」

「むぅ~。それは本当なのか?嘘では無いのか?」

あぁもう、こいつは。

「よし、じゃあこうしよう。自分がなんか使える技を教えてやるから返せ。」

「どんなのですか?」

真っ先に飛び付いたのは我らが隊長、ミミリィさん。
しかしどんなのと聞かれても…

ぶっちゃけ考えてなかったです。

「先生?」

「あぁ、ごめんごめん。ちょっとぼーっとしてた。」

しかし何を教えたらいいか…
魔力とかぶっちゃけ全くしらんしなぁ…
なんか…魔力的な……そだ!

とりあえず思いついた自分はいきあたりばったり的に試してみる事にする。

右掌の上に魔力が小型台風みたいに渦巻くイメージで。
所詮魔力版螺○丸さ。
いやぁ、やったら以外とできるもんだね。

そしてそれをやるとみんな目を丸くして驚いた。
いい気になった自分は意気揚々と説明しようとするが

「これはらせ「凄い!本物の“ニール”だ!実在したんだ!」……にーるってなに?」

説明出来なかった。
相変わらずハイテンションなミミリィ隊長に遮られたのだ。

そしてミミリィ隊長いわくニールとは、大昔にとある魔術師が造ったといわれる秘術で、魔力を球状にして爆発的な破壊力を持つ魔術なんだとか。
さらにその秘術についての情報が“魔力を球状にする”と言う事だけで文献等にも全く載っていないらしく、いままで何人も再現させようとして失敗してきただとか。
揚句、もはや伝説上の秘術としか扱われていないだとか。

なんか、歴代の魔術師の方々ごめんなさい。

「これを教えていただけるんですか?」

自分が心の中で会った事も無い偉人達に謝っていると、ムー君が自分を現実に引き戻した。
そして新たに問題がある事を自分は思い出した。

「あぁそうだね……とりあえずゴムボールはあるかい?」

水風船とゴムボール。
これがなければ修業出来ないのである。


***********い☆


とりあえず水風船とゴムボールは代用品(ラーヂの実とググの実とか言うの)があったっぽいのでそれを使って原作に忠実な修業をして貰う事にした。

そしてその修業の結果が

「うん、完璧だね。」

錐揉みしながら木にぶつかって行ったラルムである。
まぁ当然の報いか。

……当然、か?

まぁいい、それよか。

「なんで君らは自分達についてきたん?」

いまさらながら、気になった事を引き攣った顔のシャール君に質問してみる。
ちなみにラルムは動かない、ただの屍のようだ。

「………いえ、あの…なんか近衛隊の方々が凄い秘術を習得したと聞いたので……見せて貰えたらなぁって……ごめんなさい。」

「あぁ…まぁ、あーゆー感じに。」

「…ごめんなさい。」

うん、気持ちわかるよ。
ただ君は全く悪く無い。
悪いのはラルムだ、君に罪は無い。

「先生!どうでした!?」

気まずい空気が自分達に流れる中、その空気の発生源であるシルバちゃんが自分に駆け寄ってきた。

「ごめんなさい!!」

すると即座に彼女へと頭を下げるシャール君。
それはもう恐怖の大王と対峙するかのような表情で。

「……もう邪魔しないで下さいね。」

「はい!!」

もはやここで上下関係が出来てしまっている。
いやはや、なんつーか不憫だな、シャール君。

「で、先生。どうでした?」

そしてあらためて自分に向かい聞いてくるシルバちゃん。
なんでこの娘らの家系はここまで表情の差が激しいのだろう。

「んー、いいと思うよ。もうちょい発動早くできたらなおいいだろうけど。」

「はい!」

とりあえずテキトーに言っといた。
シルバちゃんには悪いけど、ぶっちゃけ自分も詳しく知らないんだもん。

「他の隊員もできるようになったの?」

「はい、ただ姫様は戦争の後始末のため練習する時間が無くてまだ習得出来てないそうです。」

ふーん、なんかナ○トよか習得早いな。
やっぱり近衛隊はエリート揃いか?

「でもやっぱり先生は凄いですよね。伝説の秘術を知っていたり魔獣を事もなげに倒したり。多分すぐにでも上級騎士としての二つ名が貰えますよ。」

……二つ名?
あの厨二成分MAXなかんじのあれの事?

「……本当に?」

「はい。先生の場合逆に貰えなかったら国の品位が疑われますので絶対に貰えるはずです。」

そう言うと今度はやけに嬉しそうにはしゃぐシルバちゃん。
なんか自分、この娘がよくわかんない。自分はこの娘に嫌われてるのかそうでないのかが特に。

「あ、あと国から他にご褒美が貰えるはずですので何がいいか聞かれた時に答えれるよう考えといた方がいいですよ。」

む、ご褒美。
なんとも魅力的な…

しかし、この場合は選択肢は一つしか無い訳で

「はぁ…やだなぁ。」

「?」

鬱になりそうである。

とまぁ、こんな感じに自分がメランコリッていると後ろから

「ハセガワナルミ様!」

誰かも知らない一般兵士にこう呼ばれた。

様って何、様って。
ゾワゾワする。

しかもあろう事かこの人、片膝ついて自分にひざまずきやがった。
そして彼が言った用件とは

「魔王様が御呼びです!至急謁見の間へ!」

あぁ、やっぱり。

「先生!いよいよですよ!」

いや、何が。
たしかに自分はいよいよ厨二的二つ名をつけられ、ご褒美としては不本意なものを自分から要求せにゃならんゆーのだが。

「……ハァ、仕方がない、行きますか。」

やだなやだなと内心思いつつ、自分は迎えにきた兵士の後について王様のところへと行く事にした。

ちなみに、いまだにぴくぴく痙攣しているラルムの後始末はシャール君へ丸投げした 
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