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ファイアーエムブレム~ユグドラル動乱時代に転生~【外伝】

作者:脳貧
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40.1話A

 
前書き
今回の話は最初四十話に2行目から36行目までまるごと入ってたのですが、書きながら読み直すと
これって外伝向けじゃん?ということで移植の運びとなりました。
「おなか、すかない?」の後からが増筆ぶんです! 

 
 レイミアに甘えに行った時、彼女とはこんな贅沢な時間の使い方をした。
 郷愁のような懐かしさを感じた肩を寄せ合う時間を過ごした後は


「なんだか少し眠くなってきたよ、いいかい?」

 彼女がそう言うので一緒にそのまま横たわった。

「今日はこういうのはどう?」

 俺はそう言うとぎゅーーっとされる前に彼女の頭を俺の胸の上に乗せてやった。

「あぁ、これもいいね……」

 彼女はそう言うと横抱きに近い姿勢となり、豊かな双丘を押しつけ、自分の両脚の間に俺の足を挟みこんで意味のならないような言葉をむにゃむにゃつぶやきながらすぐに眠ってしまった。
 その感触の余りの心地よさに邪な気持ちになり、一線を超えてしまいそうな衝動を必死に抑えた。
 今もきっと助けを待ってるアイツを裏切るような、そんなコトしちゃいけないよね、でもこの程度甘えるくらいならきっとわかってくれるはず……
 安らかな寝顔の彼女を見て頬を撫でたり髪をいじったりしている間にいつのまにか俺も眠りについていた。



 目を覚ますとまだ昼間であり、レイミアはときどきイビキをしていた。
 よほど疲れが溜まっていたのだろう、このことは自分の心に仕舞っておこうと決めた。
 再び眠ろうかと思ったがなかなか寝つけず、彼女が頭を預けている胸の部分には鈍いだるさを覚えた。
 部屋の前の廊下に足音が聞こえ、剣帯が鳴らす音にマズイなぁと思いつつも、気持ち良さそうな彼女を起こすのはやめておいた。
 ノックが何度か鳴り、返事を待たずに、失礼しますなんて言葉と共に入室して来た者と目が合った。
 空気が凍る……というやつを久々にやってしまった。

「や、やましいことはしてませんよ!二人ともちゃんと服を着てますし!」
「は、はぁ、で、では、またのちほど」

 目が合った相手、ジャコバンは書類をドア脇の花瓶台の上に置くと、しずか~にドアを閉め、剣帯や足音も訪れた時とは比較にならない静けさで去っていった。
 このやりとりや俺の出した声に目を覚ましもせず、彼女はぐっすりと眠り続けていた。



 さすがに夕焼けが窓から見えてきたのでレイミアを揺すって起こそうとしてもなかなか目を覚ましてくれず、くすぐったり軽く肩を叩いたりしても駄目なのでしっかりホールドされた足を引き抜いて帰ろうかと奮闘していると

「帰っちゃヤダよ……」

 俺の腕を掴んで懇願するように彼女は告げた。

「起きてたんだね」
「ん、ちょと前にね」
「ほれほれ、じゃあ起きた起きた」
「やだー、頑張ったんだしすこしはご褒美おくれよぉ」

 言われたことに嬉しくなってそのまましばらく時間を共にした。
 すっかり足が短くなった夕日は、すでに窓から部屋の中にはわずかにしか射さなくなっていた。


「おなか、すかない?」
「すいたかも」
「トイレ行きたいのが本音だけどね」

 俺がそう言うと彼女は俺に絡めた足をほどいてくれて

「アタシもそうかも、起きよっか」
 
 一緒に起きて、じんわりとだるい胸が解放されたのが心地よく、彼女の温もりから身を離すのが少し寂しく、自分の身勝手さをつくづく思い知らされた。
 そんな気持ちが表情にあらわれていたのだろうか

「んー? どうしたんだい? なんだか寂しそうな顔しちゃって」

 素直に思ったことを彼女に告げたあと

「でも、ほんと、あなたには感謝してます。たくさんたくさんありがとう、ずっと仲良くさせてもらえたらこんな幸せなことはないです」
「……急に改まっちまってどうしたんだい」

 彼女は俺を抱き寄せて、俺はそれに素直に身を任せた。
 つけてからずいぶん時間が経ったからだろう、香水の香りがすっかり薄れた彼女から匂い立つ女独特のすこし甘く酸っぱい芳香と、寄せ合う感触にやられて、俺の男を主張する部分はたちまち熱く、固く、猛ってしまった。
 彼女はすぐに気がついてしまったけれど、俺は素早く彼女の腕から逃げ出して

「そういえばジャコバンさんが書類置いて行ったから目を通しておいてね、トイレ行ってから入り口で待ってるからごはんいこーね」

 何事も無かったかのように笑顔で彼女にそう告げると、そそくさと彼女の部屋から逃げ出した。



 レイミア傭兵隊のアジト入り口そばのロビーで彼女を待っていると、俺の姿をみつけたジャコバンがやってきた。
 俺の方から挨拶をして内容も何も無い世間話をし続けた。

「……姐さんは不眠症なのか知らんが眠りが浅くてな、あんなにぐっすり寝ることもあるんだな」

 会話が途切れて先程の話を持ち出されてしまった。

「そうなのですか……まぁ、わたしのことなど男と思ってないから警戒してないんでしょう」

 敵意など一切無いと思ってもらえるような笑顔を浮かべてそう言ったつもりだった。

「あんたは姐さんにとっては特別なんだぜ、妬けちまうなぁ」

 ジャコバンは真顔でそう告げた。

「姐さんの寝込みを狙った奴はぶっ殺されるか、手下になるか、そのどっちかだったのになぁ」

 自分の両膝をばしっと叩いてから立ちあがると彼はそう言って立ち去った。





 身支度を整えた彼女とアジトを出てしばらく行くと、すこしこざっぱりした傭兵らしい男が話しかけてきた。

「これはこれは今をときめくマディノの英雄レイミア隊の隊長様じゃありませんかー」

 口角をイヤミったらしく吊りあげて両手を開いてから右手を左肩に当てて大仰な礼をしてくる。

「あー、どうも。 悪いけどアンタんとこの大将にも声はしっかりかけたんだけどね。 稼げなかったからって逆恨みはゴメンだよ」
「いやいや滅相もなーい、お気を悪くなされたらこの私の不徳の致すところ。 もっとも懐のあったかいあなた達ならば恨みなどという低俗な感情からは無縁でございましょうー」
「恐れ入りますがわたし達は先を急いでますので、もし、また今度がありましたらその時にでも」

 いい加減ウザイので俺はそう口を挟み頭を下げるとレイミアの手を掴んで引っ張った。

「いやぁ、このようなお稚児さん趣味でしたか、レイミア隊長どのは! なるほど、どんな屈強な男どもにもなびかなかっただけはある」
「なんでもいいからアタシらは先行くよ、アンタらの大将によろしくな」

 食事の前に胸やけみたいな気分になってしまったが、彼女としばらく話しながら歩いているうちにこんなつまんないことは記憶の底へと追いやった。
 


 ……ブリギッドと出会った日に襲ってきた身元不明の者達の一人はこの男が所属していた傭兵隊から三カ月ほど前に抜けた者だった。 
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