DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 一~四章
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三章 トルネコおばさん
3-05狐に化かされに来ました
「あ、そうそう。女官さんていうのかしら、昼間、王子様のお部屋にいらした女性が、ずいぶん心配して探し回っておいででしたよ。熱心な方ですのね、労って差し上げてくださいね。では、ごめんくださいませ。」
あたしも早く帰らなくっちゃ、と、キメラの翼で急ぎ帰宅する。
翌朝、いつものように夫に起こされたトルネコは、いつものようにお弁当を受け取り、今日の予定を考える。
橋が直ったらなんていうけれど、放っておいたらいつまでも直らないんじゃないかしら。
ドン・ガアデさんていったかしら、ちょっと探しに行ってみようかしらね、狐にでも化かされてるかもしれないし。
狐狩りといえば犬よね、トム爺さんのとこにそんなのがいたわね。
と思い立ち、トム爺さんの息子に子守を頼み、狐狩りが得意だという犬のトーマスを借りて、狐が化かすという森に向かう。
森に入ってしばらく歩くと、同じところをぐるぐる回っているような感覚に陥る。
あらやだ、本当に化かされちゃったかしら。それなら、ドン・ガアデさんも、いるかもしれないわよねえ。
と思いつつ、いかにもといった脇道に入る。
脇道の先には村があった。
村に入った途端トーマスが、激しく吠えながら奥へと走って行く。
あらまあ、追いかけなくっちゃね、でも化かす狐の村だなんて、ちょっと気になるわねえ。
と周りを気にしているうちに、トーマスが駆け込んだ建物の中から悲鳴が聞こえた。
「うあー、助けてくれー!」
あらやだ大変。トーマスったら噛みついちゃったかしら、と急いで建物に入る。
「ごめんくださいませー。」
中では男性がトーマスに吠えかかられていた。
噛みついてなくってよかったわ、と思いつつ、トーマスに近寄る。
「あらまあ、ほんとにごめんなさいね。」
「犬は苦手なんだ!ああ、駄目だ……。私の神通力が……。」
「トム爺さんの息子さん、紐なんかいらないって、あら?」
視界が歪み、次の瞬間には、建物が村ごと消え失せていた。
目の前にいた男性は、狐に姿を変えている。
「あらあら。本当に狐さんだったのねえ。」
「こんこん、参りました。どうか逃がしてください。」
「まあまあ。狐さんのままでも喋れるのねえ。」
「二度と悪さをしませんから……。」
悪さって何をしてたのかしら、と思いつつ周りを見回すと、見知らぬ男性が、焦点の合わない様子で地面に座り込んでいる。
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