転生者拾いました。
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霧の森
白光教会
前書き
魔法が登場しますがすべてドイツ語です。
後書きに注釈があります。
あといつもより長いです。
紆余曲折の末、ようやく目的地に着こうとした。が、
「なんだ?アレ。」
「私に訊いても知らないわよ。」
説明しよう。オレたちは古の龍が封印されている巨石のすぐ近くの茂みに隠れている。そしてオレたちの視線の先には背中に赤い十字架が描かれた白いローブを纏った人間がいる。それも大勢。
この世界に転生して今まであんな連中は見たことがない。
「あいつら巨石に何しようとしているのかしら。」
「分からんが少なくとも良いことじゃないな。」
因みにまだオレたちはロープで結ばれている。
「セリナ、オレが闇魔法を使って接近して調べてみる。ここに居てくれ。」
「良いけど、大丈夫?」
「まあ何とかなるよ。何かあったら放電してオレごと痺れさせろ。」
「わかった。」
「頼むな。」
腰に結ばれたロープを解き、精神を統一する。
「Dunkelheit・Magier!Tarnkappe!」
オレの得意魔法、「Tarnkappe」。英語に直すと「stealth」、すなわちステルス。誰からも見られることのない究極の透明化魔法だ。かなり上位の魔法で普通の人間なら習得に50年はかかるらしいが、オレは普通の人間じゃない。転生者だ。
ゆっくり連中に近づく。
「司祭様、準備を始めます。」
「うむ。」
準備?何をする気だ?
連中は巨石を中心に石灰のようなもので白いラインを引きだした。
「さて、始めるか。」
「はい。」
「古人が封ぜし水龍よ、いまこそその戒めを解き、我が面前に姿を現せ。」
司祭様と呼ばれた男が呪文を唱えるとただの白線が仄かに光り出した。
「止めろ!」
「!!」
俺はつい居てもたってもいられず飛び出してしまった。当然そんな派手なアクションを取ったため透明化魔法は切れてしまう。
「Flamme・Magier!Haubitze!」
手のひらに生成した火の玉が集結している白いローブの叩き込み、爆発させる。
おそらく今のでセリナが来るだろう。
「魔導兵!侵入者を排除せよ。」
「はっ!」
「くっ!Flamme・Magier!Maschinengewehr!」
「ぐあぁぁっ!」「強いぞ!こいつ!」
詠唱を中断した司祭が杖で武装した白いローブを呼び寄せて、侵入者たるオレに向かってくる。
しかしその白いローブたちはオレが放った機関銃のような魔法弾の嵐にもまれ脆くも崩れた。
「魔導兵!侵入者を逃がすな。私は大海龍の復活を行う!」
「させるか!」
魔導兵の攻撃に意を介さず司祭に手を向け、火の玉を生成する。
「結界だ!結界をはれ!」
「了解。」
4人の兵士が呪文を唱えると巨石の周囲に透明な膜ができた。それに俺の「Haubitze」は阻まれ司祭への攻撃にはならなかった。
「ちっ、なら!Flamme・Dunkelheit・Magier!Schwarz・Flamme・Schwert!」
腰に帯びていたブロードソードを抜刀するとたちまち刀身から黒い炎が上がった。俺はそれを振り回して周囲の敵を薙ぎ払い結界に迫る。
「うおおおおぉぉぉぉぉ!!!」
灼熱の炎を纏ったブロードソードが結界に当たり爆発した。
しかし……、
「無駄だ、死神。」
「くっ。」
実際には当たってなかった。オレと同じく魔法剣を持った者に剣は阻まれてしまった。
「お前ら何者だ!」
「我々は白光教会。人の人による人のための世界を作ることを命題としている。」
「人間至上主義者か!」
「いかにも。」
「巨石に何をする気だ?」
「質問が多いヤツだ。貴様に答える義理など、ない!」
剣が弾かれお互いに距離をとり再び切り込む。
「我々は貴様のような人間のために行動している。なぜわからない?」
「わからないね。人間だけでこの世界はできてないんだ。他の種族と共存しているから世界が成り立つんだ。」
「ふっ、押し問答か。仕方あるまい、貴様は斬るっ!」
「ぐぅ…。」
相手の魔法剣が纏う炎が強くなった。その炎は術者自身をも飲み込み次第に火柱へと変わっていく。何とか距離をとろうとするが意志があるように炎はオレを追いかけてくる。
くそ、このままでは。セリナはまだか?
「司祭様には近づけさせん。」
剣呑さ満点の兵士に気圧されたいると、聞きなれた声と共に世界が光で満たされた。
後書き
Dunkelheit・Magier…読み方「ドゥンケルハイト・マギーア」、意味「闇魔法」
Flamme・Magier…読み方「フランメ・マギーア」、意味「炎魔法」
ドイツ語が解る方なら「ん?」と思うところもあったかもしれませんが、お許しください。
人間至上主義を掲げる「白光教会」
多民族融和を求める「世界」
真理はどちらにあるか……
次回 雷の巫女
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