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久遠の神話

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第四十話 同盟結成その十一

「あまりに突拍子のないことなので」
「それはその通りですね」
「はい。しかし念の為にです」
 言わないで欲しいというのだ。どうしてもだ。
「このことはお願いします」
「わかりました。それでは」
 最初に大石が頷きだ。次にだった。
 上城もだ。確かな顔で頷いたのだった。
「僕も」
「君だね」
「はい、そうさせてもらいます」
「この作戦は書類も残さない」
 厳しい声でだ。また言う工藤だった。
「極秘故にだ」
「妙ですね」
 そう言ってだ。大石は工藤を見た。
 そうしてだ。こうも言ったのだった。
「自衛官、そして警察官は官公庁ですから」
「書類を残さないといけないというのですね」
「そうです。本来は」
「本来はですか」
「我々も官公庁、即ち官僚です」
 つまり役所であり役人だというのである。
「ですから何をするにも書類が必要です」
「えっ、そうなんですか?」
 上城はそれを聞いて目を瞠って驚きの声をあげた。
「自衛隊も警察も」
「そうだよ。だからお役所っていうのはね」 
 どうかとだ。その上城に高橋が話す。
「本当に何をするにあたってもね」
「書類がいるんですか」
「例えば。訓練で銃を撃つにも」
「あっ、よくドラマである」
「うん、標的を拳銃で撃つ訓練もね」
「書類が必要なんですか」
「そうなんだ。あれは簡単にはできないんだ」
 ただ撃ちたいと言ってもだ。それはできないというのだ。
「書類を書いて許可を得てからね」
「何か手間隙がかかるんだね」
「そうなんだ」
 こう話すのだった。
「官僚ってのはややこしいんだ」
「ううん、じゃあこうした作戦っていうのも」
「本来はサインが必要だよ」 
 お役所らしくだ。そうだというのだ。
「あくまで本来はね」
「そうなんですか」
「ただ。この作戦はあまりにも極秘だから」 
 それ故にだというのだ。
「書類も残していないんだ」
「ううん、じゃあ」
「そう。言葉でのやり取りだけだよ」
「若し書類に残せばどうなるんですか?」
「書類は永遠に残さないといけないんだ」
「永遠にですか」
「そう。例えばだけれど」
 高橋がここで出す答えは歴史からだった。
「ほら、従軍慰安婦って知ってるよね」
「あの日本軍が韓国人の女の人を強制的にそういう仕事に就けたっていう」
「あれが嘘なのは知ってるよね」
「はい、それは」
 知っていることだった。上城もだ。
「何処からどう見てもおかしいですよね」
「そう。まず当時は公娼制度があって」
「そんな必要なかったですよね」
「そう。まずそれがあって」
「しかもですよね」
「軍属の娼婦の給与はよかったから人気があったんだ」
「衛生管理もよかったそうですね」
「上城君はエイズになりたくないよね」
 高橋は笑ってだ。ここでも例え話を出した。 
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