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八条学園怪異譚

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第二十三話 犬と猫その十三

「悲しいね」
「戦争の犠牲っていうか」
「それはよね」
「うん、あの戦争についてはおいらも仕方なかったと思うよ」
 猫又は遠い目のままで語る。
「戦わないとどうしようもなかったからね」
「さもないと日本がどうなっていたかわからないわよね」
「凄く追い詰められていたし」
「負けるとわかっていてもね」
 それでもだというのだ。
「しないといけない戦争だったから」
「それで動物園の動物が薬殺されても」
「悲しいことだけれど」
「うん、仕方なかったんだよ」
 猫又は遠くに悲しいものを見続けていた、そのうえでの言葉だった。
「人間も一杯死んだし」
「動物も死んだ」
「そういうことになるのね」
「この動物園も実際危なかったんだ」
 動物達を薬殺処分しなければならないところだったというのだ。
「軍も何度も何度も言ってきたし」
「けれど私立だったし」
「個人のものとも言ったの?」
「そういうことも言ったし食べ物も自分達で工面出来てたし」
 最も懸念されていたその問題も何とかなっていたというのだ。
「まあそっちは不十分で皆痩せてたけれどさ」
「それは人間もだったし」
「食べられるだけでもね」
「うん、本当に食べられて生きられるだけでもだったから」
 戦争が苦しくなると徐々に食べるものがなくなっていっていた、それでは動物達が痩せていくのも当然のことだ。
「だからね」
「まあ戦争のことは置いておいて」
 ここで送り犬が後ろから言ってきた。
「泉の話ね」
「ああ、それだね」
「そうそう、多分だけれど」
 送り犬は話の相手を話しながら猫又から愛実と聖花にシフトさせていた、そのうえで二人にこう言ったのである。
「防空壕の中に入ったらね」
「それで若し泉なら」
「それで、よね」
「うん、多分だけれど」
 それでもだというのだ。
「只の防空壕の中じゃなくてその出入り先に行くことが出来るから」
「じゃあ今から」
「ちょっと中に入ってみるわね」
「そこだといいね」
 送り犬も二人に述べる。
「これで見付かったら」
「うん、何か段々これで見付かったらとも思いはじめてきたけれど」
「面白くないっていうか?」
「これで終わりかって思うとね」
「残念かしら」
「何でも終わりはあるよ」
 送り犬は少しだけ寂しさも感じだした二人にややシビアに述べた。
「けれどそれでもね」
「前に出る?」
「そうしないといけないのね」
「うん、そうだよ」
 こう言うのだった。
「まあとにかくね」
「ええ、それじゃあ」
「今から」
 二人は送り犬の言葉に頷きそのうえでだった。
 お互いに顔を見合わせて頷き合い防空壕の中に入った、すると。
 そこは何処まで行っても防空壕の中だった、奥は深いが。
 しかし中は何処まで行っても普通の穴だ、果てまで行き着いたが。 
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