ヘタリア大帝国
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TURN62 太平洋経済圏その十一
「確かバリア装備してるのよね」
「普通にかなりの性能のバリアがあるみたいよ」
クーはこうキャロルに答えた。
「キャロルも知ってる通りね」
「ええ、諜報部が密かに調べてくれたデータがあるわ」
「じゃあビームは効かないわね」
「相当なもの以外は」
「宇宙怪獣も相当生息してるみたいだけれど」
そこにいるのは埴輪だけではないというのだ。
「普通の人間もいるわよね」
「いるわ。アステカ帝国は多民族国家だから」
「どうなんだろうな、あそこは」
ダグラスもアステカについては微妙な感じだった。
「ケツアル=ハニーだったよな、あっちの皇帝」
「そうだぞ」
アメリカがダグラスの疑問に答える。
「僕もよく知らないが変な奴だぞ」
「変な奴なのは間違いないな」
それはダグラスも直感的にわかっていた。
「埴輪なうえに変態だな」
「その通りだ」
「こっちに来るなら倒すがな」
「クーちゃん、ちょっと中南米の星系とかわかる?」
アメリカ妹はクーに顔を向けて尋ねた。
「色々とね」
「はい、今から調べますね」
「頼むよ。メキシコにキューバに」
「ブラジル、アルゼンチン、ペルーですね」
「あとアマゾンだね」
アメリカ妹はこの星系の名前も出した。
「確かこれだけだったね」
「その六つの星系です」
「何処もよくわかってなかったんだよね」
「秘境です。特にアマゾンは」
クーはアマゾンについてとりわけ言う。
「噂によると巨大な幻獣もいるとか」
「幻獣!?」
「はい、それがいるそうです」
「幻獣ねえ」
「巨大怪獣と同じだけの大きさと戦闘力だそうです」
「厄介な奴みたいだね」
「そして巨大怪獣、エアザウナはあの場所に巣があるそうです」
時折星系に出て来て暴れ回る、人類にとって大きな災厄の一つだ。
「宇宙台風やイナゴ、うぽぽ菌と」
「おい、災厄のオンパレードかよ」
ダグラスはここまで聞いて思わず突っ込みを入れた。
「埴輪に宇宙怪獣でも厄介そうだけれどな」
「何か攻め入りたくない場所ね」
キャロルは本心から言っている。
「出来れば」
「攻めて来て欲しくないな」
ダグラスの口調はしみじみとしたものになっている。
「本当にな」
「全くだ。しかし向こうがやる気だったら仕方ないな」
ダグラスはアステカ帝国が攻め込んでくることを前提にして言う。
「戦争だ、奴等ともな」
「訳のわからない連中だけれどね」
キャロルもアステカ帝国にはどうしてもそうした感情になるのだった。そうした話をしている中でまたアメリカが言う。
「じゃあドロシーも呼び戻すぞ」
「カナダだったな」
「そうだ、そこの何処かにいるぞ」
「俺が言って来てもらうか」
ダグラスは大統領としてそうしようかと考えた。だがその彼にハンナが言う。
「駄目よ。貴方は大統領だから」
「そうそう行くのは駄目か」
「戦場に行く時以外は基本的にワシントンにいてもらわないと」
「駄目か」
「ええ、出来るだけいてね」
「わかった、じゃあここはどうする」
「僕が行こう」
アメリカが名乗り出た。
「それでドロシーを見つけだして探すぞ」
「祖国さんが行ってくれるか」
「カナダもいるしすぐに見付かる筈だ」
カナダにいるのなら彼なら何処でもすぐに見つけられるからだ。
「何人か連れて行って来る」
「わかった。じゃあ頼むな」
「吉報を待っていてくれ」
アメリカは陽気に笑ってダグラスに応える。そうしてだった。
彼は仲間達と共にドロシーを見つけに行くことになった。彼女の運命もまた再び動き出そうとしていたのである。
TURN62 完
2012・10・16
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