英雄伝説 零の軌跡 壁に挑む者たち
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
10話
大陸屈指の大都市クロスベル市の地下には巨大な空間が広がっている。
ジオフロント。
1180年代に開始された都市計画により建造が開始された地下区画には多くの施設が存在する。
面積の少ない地上では大きく取れない大規模な施設の建造が可能であり、その中でもっとも巨大な建造物は都市計画の目的であるインフラ設備である。
上下水道と浄水施設、導力ケーブルの敷設、ゴミ処理施設、耐震設計と避難施設。
多くが組み合わさり区画分けされたジオフロントだが、その巨大過ぎる空間に管理が行き届かず魔獣が住み着き出入り口を封鎖することで地上には被害が出ていないが工事現場の作業員が襲われるなど度々問題となっている。
「ということみたいです」
「みたいですって、その、それは?」
ジオフロントに進入したロイドたちがジオフロントのあまりの巨大さに呆気に取られているとティオがリュックから取り出した小型のモニター付きの装置を操作し始めて解説し始めて違う意味で呆気に取られていた。
「これですか。市庁舎のデータベースに載っている内容です」
「いや、それもだけど、その機械は何?」
ティオは一瞬何を言われたのかわからず戸惑っているとはっと気付いて機材の簡単な説明を始めた。
「これは財団製の個人用端末です。出向するに当たって無理を言って持たせて貰ったもので、高いです」
ちょっと自慢げに機材を見せたティオにロイドやランディには個人用端末という言葉自体がよくわからず全く理解出来なかったのだが、エリィは思い当たる節があったのか頷いて質問した。
「もしかして市で導入が開始されたという導力ネットワーク計画というものかしら?」
「はい。元はZCFと財団本部で始めたものなんですが、クロスベル市でも本格的な運用が開始されまして」
「知り合いに詳しい人がいて教えもらったの。情報を効率良く大量にやり取りするシステムよね?」
「はい。概ねその通りです」
女性陣二人が通じ合っているのに対して男性陣は蚊帳の外。
ロイドが「今の説明で理解出来た?」とランディに聞いても「わからん」と答えるのみだった。
ロイドは概要を聞いてこの施設を探索させる意味は何なのかを考えたが、近々工事が始まるから魔獣退治でもさせるのかと思ったのだが、それも警察の仕事なのかと引っかかって答えが出なかった。
ともかく試験を終えて警察本部に戻れば答えが聞けるはずだからと探索を開始しようと号令した。
「ともかく試験なんだから探索を開始しよう」
「待ってください。進むのは地図を見てからの方がいいです」
ティオから抗議の声が出て、端末を開いたのはこのジオフロントの見取り図を探していたからだった。
第4期工事という表示が出ている見取り図でここがジオフロントAであるらしくほかのジオフロントへの空調空間らしいと。
「この第4期工事というのは都市計画のことね。今は第5期だからちょっとこの地図は古いのかしら」
「まだ更新されてないのでしょう」
ロイドはちょっと外して気まずかったが、二人が話してる、この地図があるという有用性だけは理解出来た。
すぐに手帳に書き写すとティオも端末をリュックに戻して、全員が準備が出来ていた。
改めてリーダーとして号令を出した。
「よし。行こう」
ジオフロントは工事中に使われた簡易昇降機がいくつも残されており、ここが未だ工事中の区画であることを印象付けたが、壁には導力灯が設置され明かりには事欠かないため魔獣は見当たらなかった。
元来魔獣は七曜石を好むが、その反面、導力器から出る動力波を嫌う性質を持っている。
このため導力化された都市部には魔獣が侵入しないこともあり、導力革命初期には導力器の利便性以上に魔獣に対しての安全を謳って導入を進めたこともある。
「しかし、いねえよな」
一行がジオフロントを進み、次の区画へ進む昇降機の前でランディが拍子抜けしたように言い出した。
それに合わせて全員が息がつく。
いつどこから魔獣が襲ってくるかわからない緊張状態のまま進んでいたのだ。地図があるので迷うこともなく精神的にはないより遥かにマシだったがそれでも行ったことのない場所の探索は進むだけで気疲れする。
途中いくつか工事途中で機材がそのまま放棄されている場所があったり中央広場に続くマンホールが開いていたりと想像以上に管理が杜撰で魔獣よりもそういう発見のほうがうんざりだった。
「魔獣掃討という話だが、ここまで何も出てこないじゃテストにもならないじゃないか?むしろ俺たちに点検させたかったんじゃねーの?」
「それもあるか知れないけど、もしかしたらチームワークを計るためのテストなのかも知れない。ティオがいてくれたから順調に進めているけど、地図がないとあちこち迷っていたかも知れないからね」
ランディはロイドが問いに答えてくれて、そんなもんかねえ、と軽く応じたのだが、昇降機から下を覗いた瞬間に臨戦態勢に入っていた。
ロイドがそれを見て、ティオも何かを感じて、エリィは全員が武器を構えたことで戦闘態勢を取った。
「いよいよ来なすったぜ!」
気合を入った大声のまま飛び込んできた魔獣にスタンハルバートで踊りこんだランディは見事な棒捌きで魔獣にダメージを与えていく。
地下へ続く昇降機の乗り口の隙間から虫型やら蝙蝠型の魔獣が上がってきたのだ。
ランディが数匹の魔獣を相手にする中でロイドは後ろにいる女性陣を守ってこちらに向かってくる魔獣をトンファーで食い止めた。
2本のトンファーの長い刃で攻撃を防ぎ逆に魔獣を叩くが、刃が太く叩きつけるだけでは魔獣たちには致命傷は与えられない。
そのロイドが叩いて動きの止まった魔獣をエリィは導力銃を発射して、撃ち落された魔獣をティオの導力杖の導力波で止めを刺した。
「これで終わり!」
ランディがスタンハルバートを最後の魔獣に叩き込むと全ての魔獣は動かなくなり輝く破片、セピスの欠片が散った。
ランディは一番戦ったのだが、汗を少し掻いたぐらいだったが、ロイドもそうだったが、エリィやティオは平静を装いながら息が切れていた。
「任せちゃってすまない。でも慣れているけど、もしかして警備隊だった?」
「ハルバートの時点で気付いて欲しかったな」
ランディがハルバートを振り回して格好を決めて見せた。
「慣れてるはずだ」
ロイドが感心するようにランディは一人で突っ込んで囲まれながら攻撃を食らって怪我しつつも自力でほとんど倒してしまったのだ。
これに比べてロイドたちが相手をしたのはランディが倒し洩らした数匹の魔獣だったのだが、これを倒すのにもロイドの動きに慣れていないエリィとティオの援護が上手くかみ合わず時間が掛かってしまった。
「上手く出来なかったわね」
「はい」
エリィとティオが戦闘終了で安全が確認されて手摺に持たれて力不足を実感していた。
エリィは混乱して動いている的には上手く命中させられずランディの援護も出来なかった。
ティオは導力波の範囲攻撃は素早く動く相手や空中に浮いてる相手にはうってつけで叩き落せたはずがそこまで近付けず命中させることも出来なかった。
二人は足が動かずその場でロイドが叩いた魔獣に追い討ちを掛けるのが精一杯だった。
魔獣との実戦経験の差が如実に出た結果だった。
ロイドは実戦訓練という形で何度かあったが、エリィやティオはほとんどなかったのだ。それもここまでの接近戦は訓練では味わえない。
「おいおいに慣れていきゃ良いよ。俺の初陣はもっと酷かったぜ。ちびってないだけ立派だよ。腰も抜かしてないんだからさ」
「言い方があるでしょう」「下品です」
励ましを女性陣はキッと睨んだので、ランディは笑って受け流した。
女性陣もそう気を悪くしてはいなかったようですぐに表情が柔らかくなる。
ランディは傷付いた体を導力魔法で癒すロイドに戦闘評価を訊ねた。
「リーダー、どうよ?」
「もっと声掛けが必要だったかな。まだお互いに間合いが計れてないからこうして欲しいと伝え合わないと上手く戦えないだろうし」
「おお、良いじゃねえか。でもその余裕あるか、お前も戦うので精一杯だったみたいだけど」
「それは慣れるしかないと思ってる。俺も含めてだけど実戦経験がランディに比べたら足りない。だからそれが補えるまではお互いに頑張ろう」
ランディはロイドの答えに満足したのか導力魔法のエネルギー消耗をし過ぎないようにロイドと水のクオーツをオーブメントから交換して回復アーツを使った。
セルゲイ警部が用意してくれた戦術オーブメントのクオーツは最低限しかなくアーツを使うには交換が必要だったからだ。
後書き
戦闘回。軌跡シリーズの戦闘は導力だから弾切れにならないから圧倒的に飛び道具が優位なんだけど、導力弾は軽減出来るけど実弾やら接近戦は軽減出来ないから接近戦有利ぐらいの補正は必要かな。
アーツも非常に難しい。タメが必要な少し強い属性魔法で一撃必殺には出来ないぐらいにしないと。使ってる暇がないとかね。
もっと武器の射程、特性を書き込みたい。
ページ上へ戻る