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万華鏡

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第二十一話 夏休みのはじまりその十九

「一杯食べなさい、いいわね」
「うん、それじゃあね」
「後はね」
 それに加えてだった。
「チーズとかもよく食べなさい。今日は中華料理だけれどね」
「うちチーズもよく使うわよね」
「あれも身体にいいからね」
 これもだった。
「それに温めるとね」
「溶けてね」
「凄く美味しくなって」
 そしてこれもだった。
「身体が温まるから」
「だからチーズも」
「そう、身体にいいから」 
 それで食べろというのだ。
「特に女の子だからね」
「身体を極端に冷やしたらよくないのね」
「子供産むのよ」
 女ならではの言葉だ、話すその顔は本当に彩夏そっくりだ。
「それだとね」
「身体は極端には」
「冷やさないの」
「それで極端に熱くしても」
 これもだった。
「よくないのね」
「そういうことよ。何でも程々よ」
「夏ってそれが難しいのよね」
 クーラーの効いた部屋で薄着で言うがそれでもだった。
「本当に」
「彩夏ちゃんは特によね」
「神戸はましだけれど」
 大阪や盆地の奈良や京都と比べれば遥かにましではある、だがだった。
「それでもね」
「関西の夏はね」
「暑いわよね。東京よりもよね」
 彩夏は大阪の夏を念頭に置いて話す、母も大阪のその夏を念頭に置いてそのうえで娘の話を聞いている。
「もううだるみたいで」
「だからこそなのよ」
「余計に体調管理を」
「大阪に行くこともあるわよね」
「多分ね」 
 神戸と大阪は近い、八条鉄道も直通である。それでなのだ。
「電車で一直線だし」
「大阪市内の何処でも行けるしね」
「彩夏ちゃん難波好きでしょ」
 彩夏は梅田より難波の方が好きだ、そこに行けば。
「難波パークスもあるし」
「自由軒にね」
「蓬莱も金龍ラーメンもあるから」
「美味しいもの一杯よね」
「夏でもこうしたものはいいのよ」
 やはり身体を温めるからだ、だがそれでもだった。
「けれど。大阪の暑さはね」
「きついからよね」
「熱中症にも気をつけてね。大阪の悪い男と暑さにはね」
「悪い男にはどうするの?」
「一人だと急所攻撃よ」
 容赦がなかった。
「思いきり殴るなり握るなりしてね」
「潰すのね」
「殺すつもりでね」
 完全に本気の言葉である、ゲームをしながら真剣な声で語る。 
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