八条学園怪異譚
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第二十三話 犬と猫その二
「八条製菓の新製品だけれどね」
「ああ、あそこの」
「私達の学校のグループの」
「そう、あそこのね」
彼等が通う八条学園を経営しているグループだ。明治の頃からある財閥系の世界的な企業グループだ。八条製菓はその八条グループの食品メーカーの一つだ。
「あのグループ?」
「あそこのなの」
「そう、新製品なの」
こう話す聖花だった。
「あそこのね」
「いや、あそこのアイスって美味いけれどさ」
「この味か」
「いや、凄い進歩だよな」
「そうだよな」
皆で話す、そしてだった。
聖花はその中でこうも言った。
「こんなアイス作れるってね」
「そうないよな」
「そうよね」
「アイスは専門じゃないけれど」
聖花はまた言った。
「これだけ美味しいとお店で売りたくなるわね」
「お店ね。そうね」
愛実もここで言う、勿論アイスを食べながらだ。
「このアイスならね」
「愛実ちゃのお店って甘いものは」
「扱ってるけれどね」
「アイスはあるの?」
「なかったわ。ずっとね」
愛実の今の言葉は過去形だった。
「それはね」
「そうyね。愛実ちゃんのお店ってそもそも甘いものは」
「食堂だからね」
あくまでメインは定食や丼、うどんの系列だというのだ。
「デザート系ってメニューも少ないし」
「売れない?」
「あまりね」
実際そうだというのだ。
「かき氷はやってるけれど」
「夏限定よね」
「冬にかき氷はね」
それはだというのだ。
「絶対にないから」
「そうよね。雪女さんじゃないから」
「ちょっとね」
愛実とい聖花は二人で話す、妖怪の話が出たがそのことで二人の怪談のことに気付いたクラスメイトはいなかった。
それで二人はさらに話す。
「けれど冬のアイスって意外と人気あるわよね」
「そうそう、暖かいお部屋でこたつに入ったりして食べるのよね」
「あれ美味しいわよね」
「後であったかい紅茶とか飲んでね」
「それじゃあ」
ここまで話して愛実は笑顔で決心した。
「ちょっとお父さん達にお話してみるね」
「それいいわね。じゃあうちもね」
「アイスはじめるの?」
「アイス入れる冷凍庫お店に置いてね」
駄菓子屋、昭和の趣きの店の店頭によくあった開閉式のボックスを置くというのだ。
「それでどうかなって思うけれど」
「いいんじゃない?うちもそれでいこうかしら」
「アイスってコンスタントに売れるからね」
「夏は特にね」
「特に今からさらに暑くなるし」
「いいわよね」
こうした話を二人でしているとクラスメイト達が笑顔で言ってきた。
「ちょっと、二人共お店の話はそれ位にしてね」
「お家の仕事もいいけれどね」
「そればかりになってるから、今」
「クラスに戻ってね」
「あっ、御免。つい」
「こうしたことになるとね」
ついつい熱中してしまうと言う二人だった、それでだった。
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