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ヘタリア大帝国

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TURN62 太平洋経済圏その三

「それこそな」
「そうよね。歴史ある国だからね」
「日本に行くのは久し振りだな」
 アメリカは外交で何度か日本に行ったことはある。悪い印象は受けていない。
「何か楽しみだな」
「まああたしはね」
 キャロルはアメリカと正反対に微妙な顔になっている。
「あの国に行くのはどうもね」
「日本は嫌いか?」
「日本君は嫌いじゃないわよ」
 何故かここでは君付けのキャロルだった。
「それでもね」
「東郷長官のことだな」
「あいつが嫌いなのよ」
 この感情は否定できず眉を顰めて言う。
「理屈ではわかってるけれどね」
「感情ではだな」
「そうよ。姉さんのことはね」
「言っても仕方ないわよ」
 ハンナはあえて厳しい声でキャロルに告げた。
「だから言うのは止めなさい」
「ええ、そうした方がいいわね」
「とにかく日本に太平洋経済圏の全ての国が来るわ」
「そうね。凄い会合になるわね」
「確かに新しい時代がはじまるわ」 
 ハンナは少し遠い目になって話した。
「それがいい時代になるかどうかはこれから次第よ」
「あたし達の努力次第ってことね」
「そうよ。では今から出発の準備よ」
 日本へのだというのだ。
「ドレスの用意もいいわね」
「僕はタキシードだな」
「祖国さんの正装も新調しておいたわよ」
「あっ、悪いな」
「お礼はいいわ。この戦争では何かと助けて貰ってるから」
 ハンナは微笑んで己の祖国に述べた。
「だからね」
「そう言ってくれるんだな」
「是非ね。それじゃあ」
「よし、日本に行こう」
 アメリカが最後に威勢よく言った。そしてだった。
 太平洋諸国の全ての国と主だった面々が集まった。そこにはしっかりとカナダもいる。
 だが注目されることに期待している彼に誰も声をかけようとしなかった。それでも本人は期待している顔で相棒のクマ二郎にこう言っていた。
「誰が最初に僕に声をかけてくれるかな」
「ダレナンダアンタイッタイ」
「君の飼い主のカナダだよ、クマ一さん」
 お互いにこんな調子の二人だった。しかも。
 太平洋軍きっての真面目人間である平良もカナダを見てこう言う始末だった。
「貴殿は誰だ」
「えっ、誰って」
「何処かで見かけたが」
「カナダですけれど」
「カナダ?」
 平良の返事は真剣にいぶかしむものだった。
「どなたですかな」
「あの、本気ですよね」
「私は何時でも本気ですが」
「あの、アメリカの北にある」
「アラスカですね」
「いえ、アラスカとゲイツランドの横にある」
 カナダは己の存在感のなさにげんなりとなりながら平良に説明する。
「その国ですけれど」
「そういえば」
 ここでやっと思い出した平良だった。
「おられましたね」
「はい、宜しくお願いします」
「申し訳ありません、失念していました」
 平良はあらためて敬礼してからカナダに謝罪する。
「何と言っていいか」
「いえ、お気遣いなく」
 いつものことですから、とは自分では言えないカナダだった。 
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