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第十二話 閃光と神父と弓兵と
前書き
今回は割と長く、かなりグダッた感があります。
キリトの時にあまりあの男が出せなかったので、アスナ編でけっこう出しました。
それでは投稿します。
私が今現在宿にしている部屋には私ともう一人、あの男がいた。
いや…正確には姿が見えないのだが。
男は私を宿まで抱えて入り口付近で下ろすと、
『とりあえず私は霊体化しておく。何か聞きたいことがあるのなら呼びたまえ。私の知っている限りの事であれば答えよう』
そう言うと私の目の前から細かい粒子を出しながら消えてしまった。
思わず辺りを見回してしまったが、私は自分を落ち着かせるように大きく息を吐くと、宿に入り体を休めることにした。
宿に入り今着ている制服を脱ぐと、メニューウィンドウに見慣れないアイコンを見つけた。
“SERVANT”と表示されていたそれを見つけると、私はいろいろと考えを巡らせ始めた。
規格外の力を持った男。“サーヴァント”と呼ばれたその男は、私が仕留めきれなかったあの巨大な狼をものの数分で倒したのだ。
まさにバグキャラと言っても過言ではない。
何故、開発者である茅場明彦はこのようなプログラムを組み込んだのか。
そんなことを考えながら私は部屋着に着替えていた。
とりあえずあの男に聞いてみるとしよう。
ベッドに腰掛けながらあの紅い外套の男を呼び出す。
「いるの?出てきて」
「呼んだか?マスター」
男は私が呼ぶと間もなく出てきて腕を組みながら私を見下ろしてきた。
「ふむ……。どうやら落ち着いたようだな。それでは、何か聞きたいことはあるか?知っている限り教えよう」
男は壁に背中を預けると私に視線を向けながら発言を待つ。
「…サーヴァントって一体何なの?」
私は一番気になっていたことを目の前の男に問いかける。
「ふむ、サーヴァントとは過去に何らかの偉業を成し遂げた英雄が聖杯によって“座”に招かれた者たちの事だ。まあ過去だけではなく未来から招かれた者もいるみたいだがな。その者たちは英霊となり、聖杯戦争が起こる際マスターとなった魔術師の従者となる。それがサーヴァントと言う存在だ」
……正直私は彼の言っていたことが半分近く理解できずにいた。
聖杯?座?魔術師?どれもこれもファンタジー染みている。
それに正直この男の話は若干嘘くさい。
私は理解できないといった表情で男を見ていると男は気にした様子もなく、
「まあ噛み砕いて言えば、マスターとなった人物の護衛役と思ってもらえれば良い」
そう言ってくる。
私は若干釈然としなかったが、それ以上聞くことを止めた。
聞いてもこの男に妙な言葉を羅列させて呆れたような表情をされることは何か目に見えていた。
なので、他の質問をこの男に問いかける。
「私、一度あなたと同じような存在とあったことがあるのよ。騎士のような格好をした少女だったわ。その時彼女は“セイバー”と呼ばれていたわ。あなたにもそんな呼び名はあるの?」
そう。黒き剣士の隣に立っていたあの少女。
彼女も彼と同じ“サーヴァント”であろう。
そして彼女は自ら“セイバー”と名乗っていたのだ。
ならば彼も彼女と同様に役割のような呼び名があるのであろう。
「……ふむ。どうやら私の前に召喚されたサーヴァントに君が接触していたのか。これが幸か不幸か定かではないが、まあ問われたのならば答えよう。私は“アーチャー”のクラスで現界した」
「アー…チャー……?弓兵なのに剣を?」
“アーチャー”つまり“弓兵”だ。
確かに彼は剣を使いながらも弓を引いていた。
“弓兵”でありながら剣を使っていることに私は疑問を抱いた。
「ん?これでなかなか捨てたものでもないぞ?弓兵でも必要とあらば剣を使うし、槍で突くこともあるだろうさ」
「……そうなの」
私はそんなアーチャーの話を聞いてるうちに一つの疑問が生じた。
「ねぇ…サーヴァントって何体いるの?」
そう、彼が言うサーヴァントは何らかの役割が与えられている。
つまり、最低でもその役割の数だけサーヴァントが居るということ。
…いや、もしかしたら役割が重複しているサーヴァントもいるかもしれない。
「ふむ、そうだな。基本的にはサーヴァントは全部で七体。それぞれ七つのクラスに分かれている」
七体…。つまり私はその七体のうちの一体を私が使役しているということになる。
そう、一万分の七の確率を私は手に入れたことになる。
「七つのクラスって?」
「そうだな…、一つは君のあったことのある剣士の英霊“セイバー”。その名の通り剣を最も得意な獲物として扱っている」
“セイバー”…。そのサーヴァントは私の知っている黒の剣士が使役している。
正直彼女に初めて会った時の衝撃は忘れようがない。
「次に槍兵の英霊“ランサー”。槍使いの英霊で全サーヴァント中最も高いスピードの持ち主だ。
そして“ライダー”。騎乗兵のサーヴァントで高い機動力が持ち味だな。
魔術師のクラスに“キャスター”という者もいる。基本このサーヴァントは陣地を作り、自分に有利なフィールドを作り出す。
暗殺者というクラスもあったな。“アサシン”と呼ばれるサーヴァントで気配を消し、相手マスターを殺すことに長けている。
そして“バーサーカー”。こいつは厄介でな、狂戦士として呼ばれているため理性がない。だが狂戦士として呼ばれると軒並みステータスを強化することが出来る」
こうやって聞いているとサーヴァントにもさまざまな特性があるのが分かる。
「最後に、私のクラスである“アーチャー”だが、名前の通り弓兵だ。射撃能力を保有し、マスターがいなくても単独行動というスキルを持っているため、何日かは生き延びることが出来る」
なるほどね、サーヴァントのクラスは全部で七つ。
それぞれのクラスでサーヴァントは一人までなのね。
私はその話を聞きつつ少し考えていた。
全部で七体のサーヴァント、セイバー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカー、そしてアーチャー。
私はこの内の一体を使役しているのだ。一万分の七というとんでもない確率の中で、私は選ばれてしまった。
そのことに他のプレイヤーへの罪悪感もあったが、何より強力な仲間が出来たことに喜びを感じていた。
サーヴァントという力強い従者、これで攻略も今までよりスムーズに進むであろう。
そんなことを私はこの時感じていた。
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私は一通りサーヴァントについてレクチャーを受け、アーチャーを召喚した昨日の夜の事を思い返してみた。
あの時、私に話しかけてきた声について。
あの声の主は私にサーヴァントを与え、そしてあの時こう言った。
“マスターに選ばれたプレイヤーよ「光あれ」”と。
正直、私は何故サーヴァントを召喚できたのか分からないし、それにアーチャーやあの声の主の言っていた聖杯戦争という単語も気になる。
目の前にいる当人に聞いてもいいのだが、どうもあの声の主が気になる。
「ねえアーチャー、あなたが召喚された時空から聞こえてきた声に何か心当たりはある?」
「声?ああ、何かと胡散くさそうなあの声か…。私は選定の声に応じただけなのでな、詳しくは私にもよく分からん」
そうアーチャーは呟く。
どうもあの声の主が気になってしょうがない。
そんな私の態度にアーチャーは、
「そんなに気になるのであれば教会に行ってみればどうだ?あの声の主も言っていたであろう。気になるのなら教会に来い、と」
そうだ。
あの時声の主の言っていた、第一層“はじまりの街”の西にある教会。
その場所に行ってみればあの声の主に会えるかもしれない。
「アーチャー、ちょっと出かけるからあなたも付いてきて」
「了解した、マスター」
私はそう言うと、今着ている部屋着から普段外で身につけている“KoB”の制服へと着替えようとする。が、
「……ねえ…アーチャー」
「なんだ、マスター?」
「…あなたさっき私が着替えた時何処にいたの……?」
「ん?何処と言われてもずっとマスターのそばにいたが、それがどうかしたのか?」
……アーチャーの言葉に私は急激に体中の体温が上昇してくるのが分かる。
「どうしたんだマスター、顔どころか手足まで真赤だぞ?」
目の前の“男”は何食わぬ顔で私になれなれしく話しかける。
「……もしかして私に着替えを見られたことが不満なのか?なに、心配しなくてもいい。私は男である以前にサーヴァントなのだ。たかが女性の下着姿を見た程度でh……」
「出てけーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
「おわっ…!?待ちたまえ!そんなに物を投げるな!!」
羞恥と怒りで頭がいっぱいだった私は、部屋にあるありったけの物をアーチャーに投げつけると部屋から追い出す。
あの男にデリカシーなんてものはない。
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『まったく、さっきからどうしたんだ?いくら話しかけても返事もしないとは』
「……」
『もしかしてさっきの事をまだ気にしているのかね?先ほども言ったが私はサーヴァントであり、君の……』
「うるさい!!少し黙ってて!!!」
私は思わずそう怒鳴ってしまった。
周りに他のプレイヤーはあまりいなかったが、たまたま居合わせたプレイヤーは何事かと私に視線を向けていた。
それもそうだ。
今アーチャーは霊体化という状態になっている。
サーヴァントは霊体化することにより、周りの人から存在を気付かれなくすることが出来るそうだ。
そのため、先ほど私は一人で怒鳴っていたことになる。
だが、今の私にはそんなことは気にもならなかった。
男性に下着姿を見られたのだ。
生まれてこのかた男性に見せたことなんて一度もない。
しかも当人はいたって気にしておらず、その態度がより私を苛立たせる。
『マスター、少しは落ち着きたまえ。あまりイライラすると冷静な判断が出来なくなるぞ』
「誰のせいよ!!!」
私は再び怒鳴るとそのまま歩を進める。
『やれやれ、第一層に来てからもずっとその調子じゃないか。そろそろ機嫌を直してもいいと思うのだが…』
「……ふんっ!」
私は鼻を鳴らしてアーチャーを無視しながら歩く。
現在私は第一層の“はじまりの街”に来ている。
あの空から聞こえた声の主に会うため、西の教会へ歩みを進める。
アーチャーと言い争っている内に、私は最西端へとたどり着いた。
そこは、明りがほとんどなく、薄暗い場所。
ふと視線を前に移すと、道の先にはポツンと佇む一軒の建物があった。
屋根には十字架が建てられており、一目で教会だと判断できる。
だが、教会と言うには若干無理があるかもしれない。
何故なら、その雰囲気だ。
まだ昼過ぎにもかかわらず、その教会の周りだけ妙に薄暗く不気味な雰囲気を醸し出している。
教会といえば、もっと明るいイメージがあり、正直私もそこに行くのを躊躇った。
「ほう、なかなか面白い所だ。このゲームの開発者はなかなかしゃれた趣味を持っている」
アーチャーはそう言いながら霊体化を解いて私の傍らに立つ。
「どうしたマスター、行かないのか?あそこに君の知りたかった声の主が居るのであろう?」
そう言うが私はこの不気味な雰囲気に気圧されてしまってなかなか一歩が踏み出せない。
“進みたまえ。私は君の目の前にいるぞ”
突如あの声が響いた気がした。
私はその声に一瞬驚きながらも、何度も聞いたその声に耳を傾ける。
“君の知りたい真実が目の前にある。知りたいと思うのならば進みたまえ”
再び声が響く。
聞き間違えじゃない。
「マスター、どうするのだ。進むのか、それとも引き返すか?」
アーチャーは私にそう問いかける。だが私の意思は既に決まっていた。
「進む。そこに私が知りたいことがあるのなら」
私はそう言うとゆっくりと歩を進める。
アーチャーは苦笑しながらも、私の後に続くように付いてくる。
正直あの教会には近づきたくなかったが、私はどうしても気になってしまったのだ。
私に付きまとい言葉を投げかける空の声の主を。
それを知るため私は教会の扉のドアノブに手をかけゆっくりと扉を開いた。
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そこはいたって普通の空間だった。
何の面白みもなく、かといって何もないわけではない。
広く開放的な空間の正面には祭壇がありそして周りを数本のろうそくが弱々しく照らしている。
それだけでここは教会であると認識させられる。
そして視線を前に移すと、祭壇があり、その前の空間に一人の人物が私に背を向けて立っていた。
私は思い切って祭壇の方へ歩いていく。
古びた床板がギシギシと音を立てる。
その音に気付いていないのかその人物は全く動かない。
近づくにつれてその影の持ち主が読み取れてきた。
性別は男性、細身だががっちりとした体格である。
「ようこそ少女とそのサーヴァントよ。私は君を歓迎する」
私がその人物からあと三メートル程というところで、急に男が口を開いた。
そしてゆっくりと此方に向き直ると私の目を見つめた。
外見は三十代半ばで身長も180cmを超えている。
私は見上げるようにその男の顔を見るが、正直あまり見たくはなかった。
泥水の濁ったような眼をしており、そして何やら嫌な笑みを浮かべている。
決していやらしくはないのだがなぜか不快感を覚える。
カソックを着ているのだがとてもじゃないが神父には見えない。
「私の名前は言峰綺礼。此度の聖杯戦争で監督役を務めさせてもらっている」
男は淡々とした口調で自己紹介をすませる。
男は私、そしてアーチャーの順に視線を動かしそして口を開き、
「ふむ、やはり最後の一体はアーチャーであったか。これでサーヴァントがすべてそろい、聖杯戦争の幕が上がったというわけだ」
男はそう言うと嬉しそうに口を歪める。
笑うとより一層この男の不気味さがにじみ出る。
男は私の眼を見ながら。
「君でようやく最後のマスターだ。ここまで時間がかかるとは私も思っていなかったが、君はこのたび聖杯に選ばれたマスターとなったのだ。私はそれを祝福しよう」
コトミネという男は両手を広げながらそう言う。
「さて、早速だがマスターとなった少女よ、何か私に聞きたいことがあったからここに来たのであろう?監督役である私が教えられる範囲内であるなら答えよう」
そう言うと私の眼を見て訪ねてきた。
そうだ、私はこの男の事も知りたかったが、他にも聞くべきことがある。
私はいくつか男に聞く事にした。
その時の私は、この男がどれほどの異常者か知る由もなかった。
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私は彼の話を黙って聞いていた。
彼曰く、聖杯戦争とは七人の魔術師と彼らが使役するサーヴァントの殺し合いのことであり、ただ一組勝ち残った者たちのみに万能の願望機、聖杯が与えられるのだという。
今回このゲーム内で起こった聖杯戦争は、魔術師ではなくランダムに選ばれたプレイヤーが参加者となるらしい。
正直この男の話はどれもこれも眉唾物だった。
聖杯やサーヴァントなど普段の生活からは考えられないほどファンタジーなものなのだ。
だが、現に私の隣には人智を超えた男がいる。
あの戦いを見せられては納得せざるを得ない。
そして、この男の話によれば私は魔術師ではないため、サーヴァントの力を十分に開放しきれてないのだという。
メニューウインドウにいつの間にかあったサーヴァントステータスの画面には、
【CLASS】アーチャー
【マスター】Asuna
【真名】―――――
【属性】中立・中庸
【ステータス】筋力E 耐久E 敏捷E 魔力E 幸運E
【クラス別スキル】対魔力D・単独行動B
【保有スキル】千里眼C・魔術C-・心眼(真)B
【宝具】
『――――――』
こう表示されていた。
真名や宝具のところは何故かよく見えないようになっている。
それより、ステータスのところだ。
話を聞くには最も優れているほど“A”に近づき、最低は“E”だそうだが、アーチャーは全てのステータスが“E”と表示されている。
つまり、全てのステータスが最低。
それなのにアーチャーはあの狼を傷つくことなく倒した。
私はここで改めてサーヴァントの滅茶苦茶さに唖然とするのであった。
私は様々な情報を聞かされて、しばらく混乱していたが、目の前の男は再び口を開き、このような事を言ってきた。
「そう言えば、君は私という存在を気にしていたな。よろしい、私についても少し説明しよう」
そう言い、再び語り始めた。
「私はプログラムという存在でこの聖杯戦争で監督役を務めている。
簡単にいえばマスターとなったプレイヤーをサポートする立場にある。右も左もわからず聖杯戦争に参加することになってしまったマスターは、どんな行動を取るか分からんからな。
そして、私は茅場晶彦によってこの聖杯戦争での全権は私に委ねられている。
所詮NPCであるためそこまでの権限はないのだが、何らかの問題があった場合は私に判断するよう指示されている。
万が一の事態にはプレイヤーのマスター権限を剥奪することもあるが、そう滅多には無いであろう」
この男が全権を握っている?
こんな男が聖杯戦争を監視しているとなると、私は奇妙どころか、異常性を感じた。
私はそれについて聞きたかったが、それ以上問いを投げることを止めた。
一刻も早くこの場所からは立ち去りたかったからだ。
「ありがとうございました。……それじゃあ今日はこれくらいで失礼します」
弱々しく声を出す。
この男は危険だ。
そう私の中で警鐘している。
この男は私を見て心底嬉しそうに心の底から笑っている。
そんな感じがした。
私は彼から背を向けると、教会から出ていこうと扉へと足を運ぶ。
「帰り道には気をつけたまえこれより君の世界は一変する。君は殺し殺される側の人間になった。その身は既にマスターなのだからな」
私の背後にそのような言葉が投げかけられた。
だがその言葉だけで全身から鳥肌が立つような錯覚を覚えた。
私は一刻も早くその場を立ち去るため扉に手をかけると外へと飛び出した。
教会から離れるにつれて今まで感じていた気持ちの悪い感覚は幾分かマシになった。
正直もう二度とあの教会へは足を運びたくない。
そんなことを思いながら私は転移門に向かって歩いていた。
『…………』
すると、いつの間にか霊体化していたアーチャーの妙な気配に気づく。
アーチャーは教会にいる時、ずっと黙っていたのだが明らかにコトミネを睨むつけていた。
今も黙りっぱなしで正直雰囲気が悪い。
「どうしたのよアーチャー、なんだか怖いわよ」
私は意を決して尋ねてみた。
『…ん、いや何でもない。ただあの男についてな―――』
「何か気になったの?」
『―――――正直分からんが、何やら不穏な感じがしてな…。マスター、あのコトミネという男、あまり信用しない方がいい。十分に警戒しておけ』
アーチャーはそう言うと再び黙ってしまった。
あの男、確かに話していても良い気分はしない。
泥水の濁ったようなあの眼は私を品定めしているような、そんな感じ。
「うん―――とりあえず注意はしておく」
私は一応返事はしておくが、あの男とはまた会う気がする
二度と会いたくはないけど。
兎に角、あの男については今は考えないようにしよう。
私は彼を召喚したことで、奇妙な争いごとに巻き込まれてしまった。
だけど今は、このゲームを攻略する事が第一目標なのだ。
アーチャーがいるおかげで、今後攻略は捗って行くだろう。
正直プレイヤー同士で殺し合う聖杯戦争なんて私はさらさら興味がない。
また別のサーヴァントを呼び出したプレイヤーも、殺し合いをする気はないだろうと私は思っていた。
私は今後の方針を立てると同時に、アーチャーに声を掛ける。
「色々、あったけど……とにかくこれからよろしくね。アーチャー」
アーチャーはびっくりしたかのようにしばらく沈黙するが、
『ああ、せいぜい無駄な足掻きをするとしようか、マスター』
皮肉っぽく私に言葉を返してきた。
後書き
これでアスナ編は終了です。
次回は他の残っているサーヴァント達を少しづつ出していきたいと思います。
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