リリカルなのは~優しき狂王~
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外伝その一~海鳴市・前編~
前書き
と言う訳で外伝です。一話でまとめるつもりが内容がかさばりました。(-.-;)
ちなみに作者はこのCDを持っていません。
海鳴市
海面が揺れ、波が壁に当たり返っていき再び波が押し寄せる。そんな風景が見える海に面した公園でライは1人佇んでいた。
ライ「………ハァ…」
潮風が頬をなでるように通り抜けライの銀髪を揺らす。その光景が神秘的にも見え、その公園にいた女性はもちろん男性もライに目を奪われた。
しかし当の本人はため息を突き途方にくれたような表情をしていた。ライがそんな表情をしている原因は数時間前と数十分前のことである。
機動六課・隊長室(数時間前)
今ライは朝早くからはやてに呼び出され、隊長室に訪れていた。
部屋に入ったライは最初にはやての机の上を確認した。そこにはこの前にように書類の山はない。そのことでライは安堵の息を吐く。
そして次に目に入ったのがはやてのデスクの横に立っている、なのはとフェイトであった。呼び出されたのが自分だけではなかったことに少し疑問を感じつつもライははやてに向き直った。
ライ「出張任務?」
呼び出されて挨拶もそこそこにはやてが本日の本題を切り出した。話によれば機動六課の後ろ盾になっている人物が所属する組織からの依頼らしい。だが今回はレリックには関係のないロストロギアの回収任務であった。
はやて「そや。それにライも一緒に同行してもらうで。」
ライ「………はやても分かっていると思うけど、僕は民間人だよ?機動六課の任務に同行したら不味いんじゃ……」
ライの言っていることはもっともである。先日本局から来た命令でライには交戦規定が課せられている。それに従うならば、レリックやナイトメアの関わらない任務に協力した場合、命令無視ということで処罰の対象になる可能性があるのだ。
もちろんそんなことは承知しているはやては笑顔で返す。
はやて「もちろん。今回はライに任務は手伝ってもらわんで?」
ライ「?それは――」
「どういうこと?」と続けようとしたところ、今まで沈黙していたなのはが代わりに答えた。
なのは「ほら、ライ君って書類上は私の親戚になってるよね?」
ライ「はい。」
確認の意味でなのはは質問し、それをライは肯定する。
なのは「そのことを私の家族に話したら『一度会いたいので連れてきなさい』っていわれたの。それに一度だけでも顔合わせしといた方がいいと思って。」
ライ「それは……」
自分をなのはの家族に紹介することが必要かどうか一旦ライは考える。だが現時点で、ライが優先したいのは未だ完成していないパラディンの制作であったため、一度断ろうとする。
しかしライは蒼月の時と同じく、ここしばらく休息を取っていないことを指摘されてしまう。今回のことで休暇とすると言われれば断るに断れなかった。
海鳴市(数十分前)
あれよこれよと準備は進み、現在副隊長を除くスターズ、ライトニングの両分隊とリィンフォースとライは海鳴市の土を踏んでいた。
しかしそこからがライにとっての想定外であった。ライは今回の任務に参加できない為、他のメンバーが任務をこなしている間が自由行動になる。任務の説明を終えて、行動に移す際にライはなのはの両親が経営する喫茶店『翠屋』で待ち合わせすることを話し合った。そしてなのはが「ライ君のデバイスにここに来る前にここのマップデータを転送しておいたから。」と言って、その場は一度解散となった。
その後、ライは皆と別れて歩きだしたのだがここで1つ思い出す。今回ライは民間人としてここに来ている。その為、管理外世界を訪れる際にはデバイスの持ち込みを申請しなければならないのだ。しかしライのデバイス、蒼月は完成したばかりでまだデバイスの携行許可申請をしたばかりなのだ。その為、今現在ライは蒼月を持っていない。
ライ「………しまった。」
自分が今、見慣れぬ土地で、何も持たずに、たった一人でいることに気付いたライはため息をつくようにそう呟いた。
海鳴市(現在)
ライ「ハァ……」
数十分前の自分の迂闊さを思い出しライは再びため息をつく。
ライはとりあず歩き回り、頭の中で地図を描いていっていた。だがいくら地形を把握しようと目的地が分からなければどうしようもないのだ。
ライ(少し気が緩んでたのかな?……それともルルーシュのうっかりが伝染ったかな?)
迷子になっているのに本人が聞いたら即否定しているだろうことをライは考えていた。
頭の中でまとめた地図を確認しながらまだ歩いていない商店街を歩く。歩きながらライは周りの風景を見ながら物思いにふけっていた。
ライ(この世界の日本は………こうも平和なのか。)
元の世界の日本でライが求め、そして見ることが叶わなかった理想がそこにあった。
ただ無邪気に笑い合う子ども。
自分達の身近に死の気配が存在しないことを当たり前のように思っている大人たち。
それを不抜けているとライは思わない。これが普通の平和な世界と感じるのが正しいのだ。この世界では自分のような戦いに染まっている人間のほうが異端なのだ。そう考えるライは少し寂しさを感じると同時にこの世界のような存在を尊んだ。
ライは一度頭を振り、思考を切り替えながらこれからのことを考え始めた。
ライ(交番は……ダメだな。僕にこの世界の戸籍は無いし、そもそも今、身分を明かせるものもない。不審者として拘束されるのがオチかな。)
ライは自分の現状を再確認しながら思考をまとめていく。
ライ(魔力を辿って誰かに合流……いや、任務に関わった可能性を示唆する行動そのものが残るのがマズイ。なんとか六課のメンバーに頼らずに目的地に行くことが優先か……………この街に来てる時点で疑われてるかもしれないけど………)
さてどうしたものかと思っていると目の端に向かい側から来る1人の女性が映った。ライは一旦思考をその女性に向けた。
その女性は両腕に果物などの食材を抱えていた。その抱えている食材の量が『人間が持てるギリギリに挑戦しています!』とアピールしている程であった。
ライがその女性に思考を向けたのはその荷物の多さ………ではなく、その女性の足運びであった。ライの目を惹いたのは彼女の動きが自然体且つ一本芯の通った力強さを感じたからだ。
ライ(……彼女、それなりの手練かもしれない。)
手に抱えた荷物のせいで顔は見えなかったが、見た目がそれなりに若い彼女にそんなことをライは思った。
次に彼女の大荷物を運ぶのを手伝うかどうか一瞬考えたが動きにムダがないため、そのまま横を通り過ぎようとしたが………
女性「キャッ!」
何もないところで彼女がこけそうになっていた。
ライ「ハッ?…エッ!」
一瞬何が起こったのか理解できなかったライは呆けた声を出すが、直様彼女の前に回り込み荷物ごと彼女の体を支えた。
ライ「フゥ…危なかった。」
女性「え?え?あれ?」
自分の状況がわかってないのかキョトンとした声を発する女性にライは話しかけた。
ライ「大丈夫でしたか、危うくころぶところでしたよ?」
女性「え?あっ、ありがとうございました。」
状況を理解した彼女は慌てたように頭を下げようとしたが、そのせいでまたバランスを崩しそうになっていたので再びライは体を支えることになった。
その後、ライは荷物を運ぶ手伝いをすると言い荷物の三分の二を運ぶことになった。最初はこれ以上迷惑をかけたくないと言って遠慮していた彼女だが、最後は彼女の方が折れることになった。今現在は彼女と二人並んで荷物を運んでいた。
その女性は少し大きめの丸メガネをかけ、伸ばした髪を三つ編みにしていた。手荷物を受け取り初めて見えたその顔は少し幼く見えたが、ライはなんとなく彼女が年上の気がしていた。
女性「じゃあ、あなたは休暇でこの街に?」
ライ「まぁ、そんなところです。」
話せる内容を考えながらライは会話を進める。そしてある道の曲がり角に差し掛かるとそこで女性の方が立ち止まってライの方に振り返る。
女性「ここまで来れば後はもう大丈夫です。すぐそこなので。」
言いながら荷物を抱えた手とは逆の手を使い一件の建物を指差す。
ライ「そうですか。でも最後まで運びますよ?」
女性「いえ、そこまでしてもらうのは……あっ。」
ライ「?」
女性「そういえば名前を聞いてませんでした。私は“高町”美由紀です。」
ライ「………えっ?」
女性の苗字を聞いた瞬間、ライが連想したのは髪をサイドポニーにした女性。
美由紀「どうかしました?」
ライ「あ~、えーと、ライ・ランペルージです。………ちなみに美由紀さん、大変不躾な質問なのですが。」
美由紀「はい?」
ライ「喫茶“翠屋”という店を知りませんか?」
美由紀「私の家族が経営する店ですけど。」
取り敢えず、ライの問題が解消された瞬間であった。
喫茶店・翠屋
ライは美由紀と二人で店に入る。翠屋の店内は派手すぎず地味すぎずシックな雰囲気を出していた。
美由紀「お父さん、ただいま。」
男性「ああ、おかえり美由紀。」
ライが店を観察している横で美由紀はカウンターでコーヒーを入れている男性に声をかけている。その男性は美由紀の言葉通りなら父親ということになるのだが、見た目が若くとても美由紀やなのはのような歳の娘がいるようには見えなかった。
しかしそれ以上にライが気になったのは目の前の人物が自分の知る中でも、強者の雰囲気を醸し出していることであった。
男性「ん?美由紀、そちらの彼は?」
美由紀「えーと、この人は途中で荷物を運ぶの手伝ってくれた人で、たまたまだけど翠屋に用事があったみたい。」
士郎「へー、初めまして。この店の店長でこの娘の父親をしている高町士郎です。すまないね、荷物を運ぶのを手伝ってもらって。」
カウンターに荷物を置いているライの方に視線を向けて士郎はそう言った。
ライ「いえ、こちらも道に迷っていたので助かりました。僕はライ・ランペルージといいます。」
士郎「そうか、たしかこの店に用事があるとか………ん?ライ…ランペルージ?」
ライの言葉に何か引っかかりを感じたのか士郎は首をひねる。
士郎「もしかして君がなのはが言っていた?」
美由紀「え?」
ライ「はい、おっしゃる通りです。」
士郎「そうか、今君に一番会いたがってた人を連れてくるから待っててくれ。」
士郎はそれだけ言うと店の奥に消えていった。残された2人は立ったままでいたが美由紀が声をかけた。
美由紀「なのはが言ってたってどういう?」
ライ「その辺りの説明は士郎さんが戻ってきてから話すよ。」
そう言ってからすぐに士郎は1人の女性を連れて戻ってきた。その女性はなのはが髪をおろして、今よりも大人っぽくなったらこうなるんじゃないか?といった感じの人であった。
ライ(なのはのお姉さん……かな?)
士郎「お待たせ。」
桃子「初めまして、なのはの母親の高町桃子です。」
ライ「初めまして、ライ・ランペルージです。」
母親と言われて少し驚いたがライは挨拶を返した。
桃子「なのはからお話は聞いてます。会えて嬉しいわ。」
ライ「こちらもお世話になっています。」
お辞儀をする2人を見ていていい加減じれたのか美由紀が声をあげる。
美由紀「あの~、いい加減ライ君のこと教えて欲しいんだけどな~。」
それを聞いたライは自分の境遇を説明し、この世界での自分の扱いを説明した。
美由紀「じゃあ、ライ君はこれから私たちの家族ってこと?」
士郎「まぁ、そうかな。というより美由紀、この間その説明しなかったか?」
美由紀「あっ、えーと、あはははは。」
士郎「まったく……」
厳密には美由紀の言ったことは間違いなのだが、本人がそれで納得できるのならそれでいいかとライは思っていた。
桃子「そう言えばライ君はこれからどうするの?」
ライ「約束の時間にここで待ち合わせなのでそれまでは暇ですよ。」
ライは時計を確認するとその約束の時間まではまだまだ時間の余裕があった。
桃子「ならそれまではゆっくりして行ってね。」
笑顔でそう言われて、断る理由もなかったのでライは頷いて答えた。
その後、カウンターに座りコーヒーをご馳走になりながら時間が経つのを待っていた。そしてお昼に差し掛かる頃、お客が増え始め店の中が混雑してきた。今は高町家の3人が対応しているが見るからに手一杯といった様子であった。
見かねたライは声をかけるのにも少し気が引けたが思い切って切り出した。
ライ「桃子さん」
桃子「はい?」
ライ「よければ僕も手伝いましょうか?」
桃子「え、でも……」
ライ「手が足りなさそうですし、こんな僕で良ければですけれど。」
桃子「ライ君はお客様だからゆっくりしていていいのよ?」
そこまで言われたライは少し卑怯かな?と思いながらも言葉を続けた。
ライ「家族が困っていたら助けるのは普通ですよ?」
ライのその言葉に一瞬キョトンとしたあと、笑顔を浮かべて桃子は家族に頼み事をした。
桃子「う~ん、じゃあ頼んでもいいかしら?」
ライ「喜んで。」
喫茶店・翠屋(数時間後)
お昼を過ぎ、合流の時間が迫ってきた頃スターズ分隊の三人は翠屋の前にいた。今はピークを過ぎたのか店の前に行列はできていなかった。
ティアナ「ここがなのはさんのご実家ですか?」
なのは「違うよ。ここはあくまでお父さんとお母さんのお店で家の方はもう少し離れたところにあるよ。」
ティアナ「そうですか。」
そんな会話をしながらなのはは幼い頃から行き慣れている店の扉を開けた。
ライ「いらっしゃいませ。」
入ってそう言われた瞬間、三人はフリーズした。
店に入って三人の目の前にいたのは、白のワイシャツに黒のベスト、そして黒のズボンと蝶ネクタイを付けたライが営業スマイルでそこにいた。どこから見てもウェイターにしか見えない知り合いと、その笑顔に見とれて三人は再起動するのにたっぷり一分の時間を費やした。
ライ「ああ、三人だったのか。桃子さん、士郎さん。彼女たちが来たので奥で着替えてきます。」
士郎「わかったよ。行っておいで。」
ライはそのまま店の奥に消えていく。
なのは「おおお、お父さん?あれはどういうこと?」
士郎「いや、店の手伝いを買って出てくれたんだよ。それよりも、おかえりなのは。」
なのは「あ、うん、ただいま。」
どういった経緯でそうなったのか全くわからなかったが、それが当然のように話す父親の様子を見てそう言うものとなのはは納得した。
桃子「おかえりなさい、なのは。」
なのは「お母さん、ただいま。」
桃子「元気そうね、安心したわ。」
その後、自分の家族とスバルとティアナがそれぞれ自己紹介した。それからライが着替えるのを待っていると自然と会話がライのことになっていった。
士郎「それにしてもライ君に仕事を手伝ってもらえてとても助かったよ。」
桃子「ええ、そうね。それにいつもよりもお客が増えていたみたい。」
なのは「そうなの?」
士郎「ああ、注文やメニューの値段もすぐに覚えていたし、立ち居振る舞いも無駄がなかった。」
ライは持ち前の記憶力や貴族としての振る舞いを最大限、活かしながら仕事をしていた。しかもライは見た目が誰もが認めてもいいほど良いのだ。その噂はすぐに広がり女性客がいつもより多く来店していた。
士郎「向こうでの生活が落ち着いたらウチで働いて欲しいくらいだったよ。」
桃子「あら、それならなのはか美由紀の夫になってもらえばいいんじゃないかしら?」
その桃子の言葉に娘2人は顔を真っ赤にしていた。士郎もその意見には賛成なのか自分の娘たちの反応を楽しんでいた。
その直後ライは着替えを終え戻ってきたのだが、なのはと美由紀が自分の方を顔を赤くしながら見ていることとそんな自分たちを笑顔で見ている士郎と桃子に首を傾げた。
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ここから以前、言っていた次回作の予告編です。作品のチョイスは完璧に作者の趣味です。
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「……モビル…スーツ?」
『聞こえますか?聞こえるなら、そちらの所属と名前を言ってください。』
「所属は……特にありません。名前はバナージ、バナージ・リンクスです。貴方は?」
『こちらは鋼龍戦隊所属、イングです。』
それがお互いに世界を超えてきたものの出会い。
「ごめん。まだ名前聞いてなかった。君は?」
「私は悠陽。」
自らが知る、国と人を背負う少女に似た女性との出会い。
「あんた達2人と同じで違う世界から来たやつもいるのよ。」
「それって………」
「……」
「夕呼先生、この2人が?」
この世界の『救世主』との邂逅。
「君は……」
「キミじゃなくてイーニャだよ。この子はミーシャ。」
「なんのよう?」
「イングに挨拶したくて。ユウヤとユイと同じで優しいから。」
人を超えるために創られた少年が出会うのは世界に振り回される少女達。
「クソッ!TYPE-97でここまでっ!こっちは94セカンドだぞ!」
『遅い!』
自らの生まれを受け入れた者とそれを一度拒んだ者。
「……あなたの中には星が………夜空が広がっています。」
「え?」
敵を知るために生まれてきた少女と分かり合う可能性を秘めた少年。
「彼女を政治の道具のようにするのなら、あなたが殺した大人と同じじゃないですか!?」
『子供がわかったような口をきくな!』
「俺が子供なら、彼女だって子供だ。子供を利用して恥ずかしくないんですか!」
真っ直ぐ純真な主張と背負う者があるからこその主張。
「俺はあの人達を……皆を助けたい。
ガンダム!俺に力を貸せ!」
守るために呼び覚まされる希望の象徴、可能性の獣。
「このエグゼクスバインなら!
凶鳥の眷属、その力を!」
運命を乗り越えるため振るわれる、受け継がれし凶鳥の力。
多くの想いを背負った2人と愛する1人の少女の想いを背負った救世主が世界を変えていく。
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後書き
という感じです。まぁ「狂王」の方が優先でいつになるかわかりませんけど。
あともう一つ考えているのがアニメ化する前から個人的に好きだった「デート・ア・ライブ」と「Fate」のコラボを考えています。その予告編は次回しようかと思います。
ご意見・ご感想をお待ちしております。
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