その答えを探すため(リリなの×デビサバ2)
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第33話 海鳴市に正義降臨!(1)
前書き
キリのよいところまで書けたので投稿。この後に付け加えるものが少なければ、後日この話を編集しなおして投稿しなおします。
その日は学校も午前中に終わり、すずかの家になのはとアリサを招いて、今までの事の説明会を行った。
なのはに背中を押され、しどろもどろながらも自分の口で今までの事と、これからの事を説明した純吾。大人にイタズラがばれた時のような、やけに落ち着かない鼓動を抑え込み、二人の反応を待った結果が、
「そう、そんな事情があったんだ」
「うん…、教えてくれてありがとう、純吾君」
そんな肯定の言葉であり
「けど、私達があんたを怖がるですってっ? バカ言ってんじゃないわよっ!」
「そうだよ! 純吾君、ほんっとうに自分の事になると鈍感なんだからっ!!」
すぐに追加されるお怒りのお言葉と、頭をひっぱたかれたり頬を引っ張られたりの大騒ぎだった。
怒ったようで、どこか安心した様子の2人にもみくちゃにされながら、純吾は笑う。改めて、この世界にも自分の居場所があるのだという事を実感することができたからだ。
「……で、具体的にはこれからどうするっていうのよ?」
ひとしきり八つ当たりして満足した後、そんな風にアリサが聞いてくる。普段どおりなつっけどんな言い方だったが、ひとしきり暴れた後だからか若干頬が赤い。
「ん…。あの子、フェイトに、本気でぶつかってみる」
「うん。フェイトちゃんは、私達の事遊びでやっているんだって思ってる。だから、こっちも本気でジュエルシードに関わってるんだって、伝えないといけないと思うの」
純吾がそう言いはじめると、すぐに言葉を継いで説明をするなのは。ぴったりと息のあったそれに、すずかは感心するとともに若干面白くなさを感じた。
「分かったよ。けど、純吾君もなのはちゃんも怪我しちゃ嫌だよ。私もアリサちゃんも、他の皆だって、それだけが心配なんだから」
けれども、それをぐっと抑え込んで純吾となのはに向き合う。自分ができる事は2人を何の迷いもなく送り出す事だけ、そう心の中で繰り返しながら、少しでも2人の気持ちを足止めないように努めた。
「ん…、ジュンゴ達大丈夫。ありがとう、すずか」
けれども、純吾はすずかの心を知ってか知らずか、そう返してくる。いつも通りのたどたどしい口調の、とても短い言葉だったが、それがすずかにとってはとても心地よかった。
「大丈夫って言ってもねぇ、何か秘策があるの?」
そんなどこか嬉しそうなすずかの様子を横目で流し見ながら、アリサはそう尋ねる。すると、待ってましたと言わんばかりに、純吾は目をキラリと鋭く光らせた。
それからひじを机の上につき、両手の指をからませた上にこめかみを置き、いかにも重大な事を言うぞといわんばかりの姿勢をとる。三人娘がなんだなんだと純吾に充分に注目したのを見計い、かっと目を見開きながら、純吾は重々しい声で言った。
「…【邪教の館】を使う」
「「「…じゃ、【邪教の館】ぁ?」」」
思わず、声を揃えて奇声をあげてしまったなのは達3人。
それからゆっくりと互いの顔を見合わせた後、胡乱げに純吾の方を向いた。
「ちょっと、何なのそれ? すっごい胡散臭いんだけど、てか、今からその館ってとこに行こうっての?」
「う~ん、ねぇ純吾君。それって、怪しい団体とかに繋がってるとかないよね? ほら、幸運の壺だとか、幸せになれるパワーストーンとか?」
ジトっとした目で純吾を睨みつけるアリサと、少しずれた心配をするなのは。“館”と聞いてまず思ったのが、どこか秘密の組織か何かだったからだ。
「ね、ねぇ純吾君。もしかしてそれって私の家の事なのかなぁ? 最近、妙に純吾君の仲魔の皆をこの家で見るんだけど、それ以外にも何か隠し事ってないよね? ねっ?」
すずかに至っては、思い当たる節のある事が喫緊の問題すぎる。口角を引きつらせ、じりじりと純吾に詰め寄りながら確認する。
けれども、それも仕方のない事だろう。
現に今だって、裏庭では恭也と青い退魔神マハカーラが嵐の様な剣劇を繰り広げ、
「うぉぉぉぉぉおお!」
「はっははは! 人の身でよくぞここまで練りあげたものだっ、恭也ぁ!」
それを尻目に忍がロシアの家憑き妖精であるキキーモラが淹れたロシアン・ティーを飲み、
「よくもまぁ、ついていけるものねぇ。あっキキーモラさん、今日の付け合わせは何かしら?」
「ヒヒヒ、今日ははちみつさね。ジャムもママレードもこの前試しちまっただろう?」
「こ、こんなに頭に本なんて乗せられませんよぅ~」
「「「だいじょ~ぶ、落としてもぼく達が何回でも拾ってあげるから」」」
「ふ、ふえぇぇぇ~」
そしてファリンがポルターガイスト3兄弟に特訓と称したイタズラに付き合わされているからだ。
正直、今の月村邸はビックリするくらいの魔窟ぶりだ。
そんな3人の反応に、「あれぇ~」と言った感じに首をかしげる。はじめて自分がアプリを受け取った時にはなんて格好いい響きなんだと少し興奮したものだが、ここまで心配などをされるとは思ってもいなかった。
と、そこで純吾は実物を見せていないことを思い至る。慌てて、ごそごととズボンから携帯を取り出し画面をすずか達に見せる。
「んん、家の中、何もしない。【邪教の館】、アプリの中。……ほら」
「あぁ、なるほどねぇ」
画面の中に表示される【邪教の館.exe】という文字を見て、ようやく3人の顔に理解の色が浮かぶ。
「何よ、じゃあ初めっからまどろっこしい名前じゃなくて、使ってない昨日を使うとか何とか言いなさいよ。すっごい分かりにくいんだから」
「にゃはは…、館、って名前つけられると、どうしても外に出ないといけないのかなぁ、って思っちゃうよね」
そしてさっきまでの自分の勘違いを思い出し、照れ隠しに顔を背けたり逆に純吾に文句を言ったりした。純吾もそれに「ごめんね」と謝り、一旦場をしきりなおす。
「うん。でもそれ、結局は何をする事なの、純吾君?」
「ん…。これ使うと、悪魔を合体できる。みんな、強くなれる」
「が、合体? 合体って、そんなことして仲魔のみんなは納得してくれるの!?」
唐突に出てきた“合体”という言葉になのはが激しく動揺する。ほかの二人にしても同様だ。それが何をもたらすのかは見てみないと分からないが、“合体”という言葉からある程度は推測できる。
本当にそれをして良いのか、三人の心の中は疑問で一杯だった。
「ん…。じゃあ、仲魔から話、聞いてみる?」
そんな三人の疑問を察して、純吾がそう提案した。同時に、純吾が向けた視線の先を辿り、3人はそれぞれ廊下の方へ顔を向けた。
◆
「う~、ジュンゴジュンゴ」
今、ジュンゴを求めて全力疾走している私はジュンゴの部屋に通うごく一般的な女の子。
強いて違うところをあげるとすれば、ジュンゴに興味があるってことかナ――
名前は鳥居リリー
そんなわけでジュンゴとその友達がいる、月村邸のテラスへとやってきたのだ。
ふと見ると、部屋の中に一人の若いジュンゴ(と、すずちゃん&その友人たち…チッ)がいた。
「うほっ! いいジュンゴ…」
そう思っていると、突然ジュンゴは私の見ている目の前で、彼の手からこぼれんばかりの大きくて、硬いそれを見せつけたのだ。
「(悪魔合体を)やらないか?」
「(純吾と合体を)やらいでかっ!! うぉぉーーーっ!!!」
◆
純吾が不用意にリリーに声をかけた後、何を勘違いしたかリリーが机を飛び越えて突撃をかます。
飛び散るお菓子、飲み物。床に押し倒される純吾。そして机に肘をついてたり、お菓子を持ってたりと直前の動作のまま呆気にとられるすずか達三人。
「って、馬鹿! 真っ昼間から何しようとしてるのよっ!?」
すぐに我に返ったアリサが罵声をあげ、残り二人もはっと意識を取り戻す。それから純吾から何とか引き剝がし、すずか達は事情を説明した。
それを聞いてのリリーの反応が、これである。
「うぅっ、ぐずっ。ジュンゴに弄ばれた、私の純情を弄ばれちゃったよぅ~」
「えぇ~…」
いつも彼の純情を試すような事ばかりしているリリーが何を言うか、そう言いたくなるような反応だ。思わずなのは達から「ないわー」と声があがった。
「もうっジュンゴの意地悪っ、鈍感っ、サディステックお預け上手! でもそんな所が素敵、抱いてっ!!」
けれどもそんな事はお構いなし。リリーがそういってもう一度純吾に抱きつく。それを構って欲しい合図と捉えたのか、押し倒されたまま純吾は「お~。よしよし」と髪を梳くように頭を撫で、リリーをあやしはじめる。
「ちょっ、ちょっと二人とも! 話が進まないから早くはなれてくださいっ!」
そんな2人に対して、珍しくすずかが純吾とリリーを引き剝がしにかかった。むすっとした顔でぐいぐいと2人の間に割り込み、両手を伸ばして二人を引き離す。
そしてリリーとすずかが文句の応報をしている間にアリサとなのはが机を元に戻し、純吾をずるずると引っ張っり上げて椅子に座りなおさせた。
そんな、ちょっとした喜劇があったが、ようやく本題に入る事ができそうだ――
「あら、そういえば私って何でこの部屋に来たんだっけ?」
「そ、そこからですか…」
――ったのだが。のぞき見をしていたのに純吾まっしぐらで、全く話を聞いていなかったリリー。すずか達はため息を一つつき、今までの経緯をもう一度説明した。
「あぁ、そういうこと。確かに私たち悪魔にとって、合体っていうのは忌避するようなことじゃないわよ」
「えっ、どうしてそんな」
「だって、私達は仲魔だから。そして仲魔が何のために呼ばれたか? それは、契約した人間と共に戦い、その人間を生かすため」
あっさりと合体を肯定したリリーに、すずかは思わず声を漏らす。そんな彼女にリリーは居住まいを正した後、淡々と語り始めた。
「戦うために、戦いをより有利にするために、私達は手段を選ばないわ。例えそれが、私達の存在が消えてしまう事だったとしても。ただ、それだけの事よ」
「そんな…」
自分の事を全く厭わないリリーの言葉に、すずかは両手を胸の前で握りしめた。そんなこと、あんまりにも悲しいと思う。せっかくこうやって出会えたのに、こんなにも早く、あっさりと別れがやってくるなんて。
そんなすずかを見て、ふっとリリーが微笑んだ。
「突然だけどここで問題っ。私達悪魔の身体を構成してるマグネタイトって、何から生まれてくるのか? 分かるかしら」
穏やかな声でそう問われ、なのは達は困惑しつつも頭をひねる。
けれども検討がつかず、再度リリーへと視線を戻す。その視線の意味を理解したリリーが一つ頷き、「そこよ、そこ」とすずかの胸を指差した。
「マグネタイトとは、人の心。喜び、悲しみ、怒り、そして、思い。そんな人が生きようとする時に溢れてくるエネルギーを指すの。
そして、2体の悪魔をマグネタイトの状態に還元し、それを依り代に新たな悪魔を呼ぶ。それが悪魔合体」
そう言いながら、すずかの頭へ手を伸ばし撫でる。ゆっくりと自分の髪を撫でる温かな手に、すずかは自分のざわめいていた心が落ち着いていくのを感じた。
「だから、そんな思いから生まれる仲魔には、それまでの私達の記憶や力を一部とは言え持っているの。
だから大丈夫、そんなに悲しまないで。例え姿が変わっても、あなた達の事を忘れたりしない。こうやって出会った事は無駄になんてならないの。この思いは、受け継がれるんだから」
髪を撫でる手を止めずに、柔らかな春の日差しのような温かい笑みをリリーはする。
それは、母が子を安心させるために心を砕くかのようであり。これからいなくなる自分を心配しなくてもよい、と、なのは達に言っているようだった。
だから、なのは達はリリーが去るものなのだと考えてしまう。そんな寂しい気持ちを何とか抑えつけ、なのは達も笑顔でリリーを送り出そうと――
「まっ! そんな事言っても今回私は合体する気さらさらないんだけどねーーっ!!」
――決心した瞬間、楽しげなリリーの声がテラスに響きわたった。
「きゃああああっ! ぐるぐるするぅぅぅ!?」
それからすぐに、ぐわんぐわんと盛大にすずかの頭を撫でまわされるすずかの悲鳴が重なる。
余りのテンションの変わり様に、なのはとアリサはポカンとそれを見ることしかできなかった。ちなみに純吾は何故か「うんうん」と頷いている。
「おーっほっほっほ! どうだったかしら、リリーさんのぷわぁーふぇくと悪魔合体教室は? 合体に臨む仲魔の気持ちがばっちり! 理解してもらえたかしら~?」
「確かに分かりましたけどっ! リリーさん、合体するんじゃないですかっ!?」
ひとしきりすずかの頭を撫で回して満足してお嬢様笑いをするリリーに、いち早く再起動したアリサが机から身を乗り出して喰ってかかる。
それを見て、さっと雰囲気を変えるリリー。高笑いから一転、ヨヨヨと顔をそらして泣き始める。
「酷いわアサリンっ! そんなに私に消えてほしいだなんて…。はっ、だ、ダメよ! 私が消えたからってジュンゴは渡さないんだからっ!!」
「な、なな何言ってるのよ! っていうかジュンゴ! あんた、その合体するためにこの色魔呼んで話しさせたんじゃなかったの!?」
「合体? ジュンゴと合体するーっ!」と、再び純吾に飛び込もうとするリリーを抑えつけながら、アリサは純吾に矛先を向ける。彼が彼女を呼んだのだから、ちゃんと説明をしてほしかったからだ。
「? ジュンゴ、話聞くしか、言ってないよ」
しかし、純吾は不思議そうに首をかしげる事しかしない。
「だ、だって合体しない? ってリリーさんに聞いてて」
「あら、ちゃんと言ったじゃない。戦いを有利にするためにするものだって。
雷効かなくて、ジュンゴとしっかり合わせられる仲魔って、今のジュンゴだと結構貴重なのよ?」
わたわたと純吾の話との矛盾を質問したなのはに、リリーがさも当然といった風に答える。
そしてまったく余談だが、そんなやり取りの裏で自分の言動を思い出した純吾は「…あぁ」と納得するのだが、もう後の祭りだ。
「じゃ、じゃあ何であんなにいかにもな雰囲気だしながら……」
もう予想がついてるのか、最後に目の付け根を指で揉みながらそう確かめるアリサ。
それに対して、待ってましたと言わんばかりに、にんまりとイイ笑顔浮かべるリリーは高らかに言い放った。
「だって、そっちの方が楽しいじゃないっ!」
「あーもうっ! 少しは話進めましょうよっ!?」
後書き
アニメ版デビルサバイバー2、3話予告にリリムさんちょびっと出てましたねっ! ここで出ちゃうんだったら、純吾君の仲魔は何になるんでしょうね!?
ウベルリなりゴズキメズキのパワー馬鹿タイプだと予想しますが、なんにせよ、次回以降も楽しみです。
ページ上へ戻る