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恋姫~如水伝~

作者:ツカ
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八話

 
前書き
気がついたら一月も空いてた。 

 
 
 華琳が新たに州牧に任官し、一通りの庶務に区切りがついた為。一度自身の目で成果を見たいと思い、偲ぶ形で街の視察に向かう事を決めた、留守には新参の季衣と桂花を任せ春蘭、秋蘭、如水の三人を共に連れて華琳は街に行く事を決めた。
華琳らが街に下りる少し前に三人の大きな荷物を持った、女性達が居た
「ようやく着いたのー」
「ほんまに大変やったで」
「ここが陳留か」
三人の女性は荷物をひとまず置き、城壁から町を見上げた。
「とりあえず、街に入ろう。この籠を売って、村にお金を持ち帰らなければ村のみんなに申し訳が無い」
「せやな、早いとこ商売を始めようか。なんや、新しい州牧様はえらい立派な方やし、変な難癖付けられんと思うで」
「それなら、三人別々に売ったほうがいいと思うの。そうすれば、早く終わるかもしれないの」
「せやったら、一番、売れへん買った奴が今日の晩飯奢りにしようや」
「おい、せっかく村の人が出してくれた路銀を無駄にするな」
「でも、三人で一緒に売るより効率がいいと思うの」
「せやで、凪、固いこと言わんと、三人で競争した方が売れるかもしれへんやん」
「しかし、そんな事をして…」
「じゃあ、さっそく、籠を売ってくるの」
「せやな、じゃあ夕暮れまで売って、一旦、宿の前で待ち合わせようか」
「おい、まて」
「わかったの。早く売って、街を見回りたいし頑張るの」
「それじゃあ、行くで」
3人の女性は騒ぎながら陳留の街に入っていった

陳留城下

街に下りた華琳は、三つの通りを見て回る事を決め、右側を春蘭、左側を秋蘭に見て回るように指示し、自身は、如水と共に大通りを見る事に決めた。
しばらく歩くと、如水は町並みやその活気に感心し、また遠方からも行商人が多く来ている事に改めて、曹操の名声の高さに感心した。
興味深そうに街を見ている如水に、華琳が声をかけてきた。
「何か、変わった事でもあったの?」
「いや、改めて街並みを見て。私の知っている世界とは少し異なるようだな、と思ったのでね」
「なにが、違うの?」
「そうだな、人の生活も多少異なるが、これは大した差ではない。地方によって異なるのは当たり前だからな」
「そうね、何が一番気になったの?」
「そうだな…、やはり、石材を多く使っている事かな。」
「石材?」
「私の国では、建物は殆どに木材と粘土を使っていて、石を使うのは。建物の土台と外郭の一部や、庭の置物にくらいしか使わないが、ここでは、多く石材を使っているな」
「そんな建物だと、私の感覚だと、心もと無く思えるわ。」
「そうだな、私もここ世界の建物を見た後。故郷の建物と違い少し戸惑った。恐らく、この世界の採石技術が、優れているのだろう。それとやはり、気候や風土のせいかも知れないな」
「どう言う事?」
「私の住んでいた土地では、地震や台風がこの世界よりも多いのでな。その様な環境だと、石造りの建物は崩れやすい。その点、木造ならば揺れには強い。恐らくそのせいだろう」
「なるほどね、人の生活は環境に影響してくるのね」
「そうだな。自分達の生活をいかにして住みやすくしていくか、その点で言えばどこの世界も同じかも知れん」
「そうね。環境とは建物だけでなく、人一人の人生を左右するのかも知れないわね」
「確かに。今の生活が安泰なら、悪事を働かなくて済む者も居るのかもしれない」
華琳と如水が思いを語りながら歩いていると、カゴを売っている露天商を見つけた。
「華琳、済まないが少し待ってくれ。そこの露天商からカゴを買っておきたい」
「いいけど、貴方。少しは部屋を綺麗にする気になったの。」
「自分では部屋を荒らしているつもりは無いのだが。竹簡を纏めるのに必要だと思ってな」
如水の言葉を聞き、華琳はため息をつき呆れた。
「それだと、一つ二つの量では済まないでしょう。私も手伝ってあげる」
「いいのか」
「ええ、どうせ私にも必要な物になって来るでしょうから」

如水と華琳は露天商に近付き声をかけた。
「済まない、カゴを貰いたいのだが」
声に答えたのは若い女性だった。
「へい。毎度、お二人さん、おおきに」
「二十程欲しいのだが、良いかね」
如水の注文に少し驚いたが、すぐに気を取り直した
「お兄さん、太っ腹やね。ありがとうな」
明るい性格で、このような商売に向いている女性だった。
「少し、見せて貰っても良いかな」
如水がそう言うと、女性の方が喜んで見ていってくれと言った
「なかなかしっかりした物ね。これは誰が作った物かわかる?」
華琳がそう言うと、女性の方が更に喜んだ。
「これは、うちの村のみんなで作った物なんや、ここの領主様はえらい立派な方らしいから、売りにきたんや。他の土地では、えらい金が掛かるし、大人しく商売も出来んらしいからな」
「そうか、ところでこれは何に使う物だろうか」
変わった物を見つけ、如水は女性に聞いた
「お兄さん、目が高いな。これはうちが発明した、全自動カゴ編み装置や」
「全自動カゴ編み装置?」
華琳が首を傾げていると、如水はそれを手に取り見ていたが思いついた事を言った
「もう少し、竹のしなりを押さえる為に細工した方が良さそうだな。このままだと、竹のしなる勢いで壊れてしまう。」
「え、なんやお兄さん、わかるの?」
「ああ、そうだな。…留め具にネジを使えば良いいと思うが」
「ネジ?なんやそれ」
「渦のような溝を巻いている留め具だ、それを使うと安定するかもしれない」
如水がそう言うと、女性の方は興味深げに聞いてきた
「渦のような溝。それって、どんな物なんや」
そう問われた如水は、地面にネジの図を書き出して説明した。
それと、他にも質問してくる、女性に一つ一つ教えてあげていった。
「お兄さん、ありがとう。えらい参考になったわ」
説明を聞いた女性は、お礼の換わりに籠の代を半分でいいと言った
「いや、構わない。いいのか、こんなに安く買って」
「ええんや、うちの授業料ちゅうことで」
「それなら、その好意はありがたく受け取っておこう」

華琳はそれを黙って見ていてたが、そろそろ集合場所に戻ろうとして若干険を含んで声を掛けて来た。
「ずいぶんと熱心に教えてたわね」
「そうだな、彼女が満足してくれて、教え甲斐があってね」
それを聞き、華琳は別の興味を持った
「それにしても、あなた絡繰にも詳しかったのね」
「昔、暇なときに教わっただけさ、知識はあったが彼女のように自分で作った事は無くてね」
それを言う如水は懐かしむ様に話しをしていた。
その顔を横目に見ていた華琳は先ほど険を含んだ事を忘れ、その事に興味を持った。
「どんな者に教わったの」
華琳が聞くと、如水は話し出した
「遠い異国から来た者に聞いたんだ。先ほどの技術の話の他には、薬や天候の事を教わったりしたな」
「そう、これからその知識を私の為に役立てなさい」

集合場所に行くと、春蘭と秋蘭の二人と合流し華琳は後に視察の報告するように命じた。
城に帰ろうとしている所に、一人の薄汚れた装束の者が近寄ってきて、華琳を占い乱世の奸雄と言った。
秋蘭は怒りを露にしたが、春蘭は占い師の暴言を理解していないようで首を傾げていた。
華琳は秋蘭を制し占い師に褒美を与えた。
「乱世の奸雄大いに結構。その程度の覚悟もないようでは、この乱れた世に覇を唱えるなど出来はしない。そういうことでしょう?」
それ聞いた後、如水に向き直った
「それから、そこのお主」
「いかがかしましたか」
「大局の示すまま、流れに従い、逆らわぬ事だ。でなければ身の破滅を招く。…くれぐれも用心なされ」
それを聞いた如水は占い師をに笑いかけた。
「そのような生き方は私にはつまらないな、自身の成すことで破滅に怯えていては大した事も出来ないだろう。自分の才を示す事が身の破滅なら、私は喜んで我が才を天下に披露しよう」

占い師の去り、城に戻った華琳らは各々の仕事に戻っていった。
その最中に華琳は如水に声を掛けた。
「先ほどの事、ただの広言でないことを祈るわ」
そう言って面白そうに笑った。

 
 

 
後書き
技術の事は秀吉の御伽衆をしていた時に、宣教師から教わった事にしています。 
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