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万華鏡

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第二十一話 夏休みのはじまりその十二

「五人のうちじゃ最下位じゃない」
「そんなの特に気にしなくていいんじゃないの?」
 彩夏は難しく深刻な顔になった琴乃に言った。
「それってね」
「そうなの?」
「だって。成績はね」
「成績はって?」
「自分のものだし」
 他人のものではないというのだ、決して。
「私の成績は琴乃ちゃんのものじゃないでしょ」
「ええ」
「琴乃ちゃん的にはどうなの?」 
 他ならぬ彼女がどうかというのだ。
「その成績で」
「頑張ったと思うし」
 それにだというのだ。
「この成績なら脂肪先にも行けそうだし」
「八条大学よね」
「そう、そこね」
 学部はというと。
「今は経済学部か文学部かって考えてるけれど」
「じゃあいいんじゃないの?」
 彩夏は志望先合格についても大丈夫と聞いて述べた。
「それでね」
「自分がどうかなのね」
「だって。百点でないと希望している場所に行けそうでない場合とね」
「百点でなくてもいい場合があるっていうのね」
「そう、だからね」
 それでだというのだ。
「自分の望む先に行けるかどうかだから」
「それでなのね」
「例えば里香ちゃんだけれど」
 彩夏は五人の中で最も成績がいい里香の話もした。
「里香ちゃんの希望先はあれじゃない」
「うん、八条大学医学部よ」
 そこだと里香自身が言う。
「あそこよ」
「この大学の医学部はとにかく凄いから」
「偏差値八十近いわよね」
「東大とか慶応並だから」
 そこまで凄いとだ、彩夏は琴乃に話した。
「それこそ里香ちゃん位の成績じゃないと」
「駄目よね」
「そう、あそこはね」
 そうなるというのだ。
「うちの大学でも特別だから」
「じゃあ私が若しもだけれど」
 その考えはないのでこの言葉を先に置いての話だった。
「医学部を受けようと思ったら」
「そう、成績はもっと上にならないとね」
 駄目だというのだ。
「偏差値八十位ね」
「理系でよね」
「琴乃ちゃん文系よね」
「元々そっちの方が得意だしね」
 それでだというのだ。
「そう考えてるけれど」
「医学部は言うまでもなくね」
「理系よね」
「そう、だから」
 それ故にだというのだ。
「もう求められるものが全然別だから」
「それで」
「そう、琴乃ちゃんには琴乃ちゃんの成績があってね」
「皆にもそれぞれなのね」
「比べること自体が間違いじゃない」
「そうなのね」
「というか琴乃ちゃんのお母さんも」
 景子もよく知っている彼女のことも話に出した。
「そういうこと言う?」
「どうとかって?」
「そう、成績がどうとかって言う?」
「努力しろとは言うけれど」
 琴乃も母の言葉を思い出しながら言う。
「それでも一番になれとかはね」
「言わないでしょ」
「志望先のことは知ってるし」
 このことは中学時代からである。 
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