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万華鏡

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第二十一話 夏休みのはじまりその十一

「あれでも港があったからなのよ」
「ああした感じになったのね」
「そうなの、それで白虎社も」
「港の積荷をやって」
「テキ屋に土木工事も請け負っててね」
「それ今もよね」
「今はヤクザ屋さんじゃない健全な企業だけれどね」
 しかしそのはじまりは、というのだ。
「ヤクザ屋さんだったから」
「ううん、その白虎社がうちの町の出店とかを仕切ってるのね」
「昔からそうなのよ。だから今は」
 今はというと。
「ヤクザ屋さんじゃないから」
「その点は大丈夫なのね」
「だから安心してね」
「それだといいけれど」 
 琴乃はここまで聞いて安心した、そしてだった。
 景子は藤会についての詳しい話もしたのだった。
「あそこは違うのよ」
「今もヤクザ屋さんで、よね」
「ええ、それでね」
 景子は琴乃に応えながら話す。
「はじまりが酒場とかのカツアゲとか恐喝、あと詐欺とかをしてた」
「完全な犯罪組織だったの」
「戦争中にやりたい放題してたらしいのよ、強盗みたいなこともやって」
「そんな連中だから」
「そう、今もね」
 それこそ壊滅するまでというのだ。
「麻薬の売買とか」
「そういうことしてたのね」
「どうも日本人の系列じゃないって話もあったし」
「日本人じゃないって?」
「とはいっても中国系でもないっていうから」
 景子は琴乃に話していく。
「となると」
「イタリア系でもないわよね」
「イタリア系ね」
「マフィアだけれど」
 琴乃のイタリア系マフィアへの知識は漫画や映画で手に入れている、そうしたものからも知識は広く得られる。
「あれじゃないわよね」
「イタリア系も日本に来てるみたいだけれど」
 その本来のマフィアがだというのだ。
「それでもね」
「神戸にはいないのね」
「いないんじゃないかしら、そうした社会のことは知らないけれど」
 一介の高校生が知る筈もないことではある。
「それでもね」
「いないのね」
「多分だけれどそんなにね」
「そうなのね」
「それにネットで調べてると」
 難しい顔で言う里香だった。
「何か殺し方が異端審問っていうかね」
「魔女狩り?」
「そんな感じだから」
 それでだというのだ。
「ちょっと犯罪組織の殺し方じゃないんじゃないかしら」
「犯罪組織じゃないっていうと」
「一体」
「誰があんなことしてるんだよ」
「それって」
「本当に真相は不明だから」
 まさか実際に教会が関係していて彼女達が通う八条学園の生徒が実行犯だとは誰も思わない、琴乃達の世界とは別にそうした世界もあるのだ。
 そして琴乃達の世界はこのこともあった。
 琴乃は難しい顔でこのことを話したのである。
「テストだけれど」
「あっ、一学期の期末テスト」
「それね」
「どうなのかしらね」
 難しい顔での言葉だった。
「私成績はあがったけれど」
「よかったじゃない」
 彩夏はそのことを素直に喜んだ。
「成績上がったんなら」
「まあね」
「琴乃ちゃん元々そんなに成績悪くないし」
「けれどね」
「けれどって?」
「私皆程成績よくないから」
 比較しての言葉だった。 
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