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八条学園怪異譚

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第二十二話 雪男の一家その九

「だからね」
「あっ、それでなの」
「うん、自分で食べるにしたら輸入肉でいいし」
「安いしね、輸入j肉」
「オーストラリア産ね」
 この国の肉は確かに安い、長い間ご馳走jの代名詞だったステーキもこの国の肉が入って普通の料理になった。
「あれで十分だし」
「これ何処の国のお肉かしら」
「そのオーストラリアじゃないの?」
 その国のものではないかというのだ。
「それで羊のお肉もあると思うけれど」
「マトンでもラムでもよね」
「ニュージーランドだと思うわ」
 今度はこの国だった。
「オーストラリアの可能性もあろけれど」
「羊はその国ね」
「うちのお店でも牛j肉はオーストラリアで羊はニュージーランドだから」
 そこからの輸入肉を使っているというのだ。
「安くていいのよ」
「そうよね、オーストラリアよね」
「それかニュージーランド」 
 アメリカという選択肢もあるが二人が選ぶのはこちらだった。
「そっちよね」
「安いからね」
「味も大事だけれど」
 それでもだと言う愛実だった。
「やっぱりコストよね」
「そうそう、自然食だの国産だのばっかり言う料理漫画あるじゃない」
「ああ、あの百巻以上続いてるあれね」
「あれ全然駄目よね。新聞記者ばかり偉そうにして」
「あんな奴、あいつの親父もだけれど」
 愛実は嫌悪感を露わにして言う、それは聖花も同じで二人で話すのだった。
「うちのお店に来たら叩き出すわ」
「うちもよ。後で記事で何書くかわからないけれどね」
「発言とか行動携帯で保存しておいてユーチューブで流せばいいのよ」
 究極のマスコミ対策の一つだ。
「あれだけお店の中で暴れて偉そうに言ってたら立派な営業妨害だからね」
「2ちゃんに貼ればもう一発で広まるわよ」
「そうそう、あの掲示板碌でもない奴も多いけれどね」
 玉石混合がネットだが件の掲示板は特にそうだ、ただ質の悪い輩は何処までも悪くしかも類は友を呼ぶのでそうしたスレッドには行かないことが吉だ。
「それでもそんな奴は貼ればね」
「終わりね。あとああした新聞とか権力者には対立する出版社もあるから」
「そこに持って行けばいいのね」
「そう、そこからも攻められるから」
「とにかくああした奴は営業妨害だからね」
「絶対に何とかしないと駄目よね」
「二人共随分と考えているな」 
 日下部は二人の話を暫く横で聞いていたがここでこう言った。
「ああしたマスコミ程厄介な連中はないがな」
「はい、そもそも偉そうに食通ぶってる奴って嫌いなんです」
「ゴキブリと同じ位」
 料理を扱う店なら誰もが忌み嫌うこの虫に匹敵する存在だというのだ。
「お店のこと何もわかってないのに言いますから」
「自然食ってお金かかるんですよ」
「しかもコスト悪いしそれにこだわるとメニューも限られますから」
「お野菜や果物だと虫がつきますし」
「手間隙かけて作ってコストもかかって」
「おまけに栄養も味も大して変わらない感じですから」
「言うな。そこまでか」
 日下部は二人の話を聞いてまずは感心した。
「とにかく客商売はコストも大事か」
「衛生もですけれど」
「やっぱり大事ですよ」
 経営を考えればというのだ。
「お店潰す訳にはいかないですから」
「本当に考えていかないと」
「ううむ、軍以上に難しいのだな」
 日下部は今度は唸った。
「店の経営は」
「本当に必死にやって何とかですから」
「命賭けないと」
「二人共いい店の娘だな。さて」 
 日下部は吊るされて鍾乳洞の天井めいた風景を形成しているソーセージの束を見た、そのうえで二人にこう言った。 
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