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ドラゴンクエストⅢ 勇者ではないアーベルの冒険

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第46話 そして、ラダトームへ・・・

「準備はいいか」
「はい」
俺達は、出発前に必ず装備の確認をする。
「皆さん、まんげつそうはありますか?」
「大丈夫です」
まんげつそうは、マヒ攻撃を回復してくれる。
「キメラの翼もありますか?」
キメラの翼は移動魔法ルーラと同様の働きをする。

今回は初めて地下世界アレフガルドを本格的に冒険する。
普通であれば、魔王バラモスを倒してから訪れることになっている世界。
ゲームでも、これだけ低いレベルで冒険したことがないため、少し心配はしている。

キメラの翼があれば、戦闘中でもパーティ全体が脱出できる。
全滅の危機から脱出するための最終手段だ。
絶対に忘れてはいけない。

俺達は、ドムドーラを出発すると、北にあるラダトームを目指す。
結構距離があるが、俺は最初から全力でモンスターの殲滅を考えていた。
なぜ俺はここまで、ラダトーム行きを目指すのか。
この町にある装備品を入手するためだ。

「いくぞ、みんな」
「はい」
「了解です」
「今日は、張り切っているわね」

しばらく進むと空を飛ぶモンスターが俺達に襲いかかる。
「これが、キメラか」
「初めて見ました」
「そうね」
無理もない。
上の世界にはいない、モンスターだ。
だが、知名度は高い。
なぜか。

キメラの翼の存在だ。
俺達は、倒したキメラから入手したアイテムを眺める。
そして、自分が所持しているキメラの翼と同じようだ。

「ところで、キメラの翼はどうやって店頭にならんでいるか知っているかい?」
「さあ」
「知らないです」
「このキメラから、作られるのではないの」
タンタルとセレンは首をかしげ、セレンは商人として学んだ知識を披露する。

ちなみに、キメラは俺が覚えた火炎呪文「ベギラゴン」で丸焦げになっている。
肉の焦げたにおいが漂っている。
「俺もその話は知っている。でも疑問におもわないかい?」
「なにが?」
「俺達は、初めてキメラを見たよね」
上の世界で一度も見たことがなかった。
「たしかに」
「偶然見なかっただけよ」
「でも、この本には載ってないよ?」
セレンは父親の本を取り出した。

セレンの父親の著書「モンスターを食す」がベストセラーである理由の一つに、世界各国のモンスターの生息分布を乗せていることがある。
簡単なイラストの他に、モンスターの特殊攻撃なども示されており、冒険者必須の書であるからだ。

セレンの父親は既に引退しているが、人気が高いため、数年に一度モンスター分布図等を再確認した、改訂版も出ている。
これらの仕事は、世界中の冒険者ギルドが協力して行っている。

つまり、この本に記されていないモンスターは、まず存在しないだろう。
仮に存在していたとしても、生息地が知られていないのであれば、キメラの翼がここまで安価に購入できるはずもない。

「では、どうやってキメラの翼が道具屋に入荷されるのか考えてみよう」
毎日1人ずつ、自説を披露し、最終的にキセノン商会のキセノンに答えを確認してもらう。
発表の順番はじゃんけんで決めることにした。

「公正なるじゃんけんの結果、1日目はタンタル、2日目はセレン、3日目はテルル、4日目は俺に決まりました」
ようやく、俺のじゃんけんの強さをここで示すことが出来た。

あれこれ話しているうちに、ラダトームの町が視界に入ってきた。
キメラ以上のモンスターには遭遇しなかったのは幸いだった。


「これこれ、これがいいのだよ」
俺は、自分の頭をこつこつ叩く。
身につけた兜により、衝撃は伝わらない。
「さすがミスリル製。なんともない」
俺は、魔法使い最強の兜ミスリルヘルムの性能に満足していた。
一人旅なら、はんにゃの面が最強なのだが、あれは例外だ。
僧侶や商人も装備可能なため、セレンとテルルにも購入を前提に試着させているのだが。

「・・・」
「・・・」
あまり、気に入らないようだ。
「どうした、ふたりとも。サイズが合わないのか?」
「やっぱり、これを売らないといけないの」
セレンとテルルは、それぞれ銀の髪飾りを俺に見せていた。
新しい装備品を買えば、これまでの装備品は売り払う。
ゲームでの原則であり、このパーティでの原則でもある。

「気に入っているのか」
「うん」
「はい」
「だったら、いいじゃないか」
みかわしの服の例外もある。
あれは、イシス周辺の砂漠地帯を歩いたりするときに重宝した。
銀の髪飾りも同様だ。
ミスリルヘルムは、冒険の時だけ身につければいい。
町の中ならば、銀の髪飾りのほうがいいだろう。

「俺も、ミスリルヘルムで顔を隠すより、髪飾りの方が似合っていると思うし」
「アーベル、ありがとう」
「お世辞を言っても何も出ないわよ」
セレンは素直に礼を言い、テルルもまんざらでもないような顔をしていた。

タンタルは、俺が出した宿題に頭を悩ましていた。
タンタルはそれほど乗り気では無かったが、俺が
「正解すれば、セレンから「さすが、タンタルさん。すてきです」と言われるかも」
と小声で吹き込んだおかげで、真剣に頭を働かせていた。 
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