なりたくないけどチートな勇者
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3*パジャマの不審者
さて、今の自分の姿と今まであったことを振り返ってみましょう。
自分こと長谷川 鳴海は186センチの黒髪黒眼な17歳の純正日本微青年、ちなみにタレ眼。
ひょろ長い、とまでは行かないが、贅肉も筋肉もさほどついてないフツーの体型。
そして、いくら人がいないからって草原のど真ん中でストリップして着替えるほど堕ちちゃいないしする度胸もない。
なので恰好は、ここに来た時の初期装備そのまんま。つまり今のは、黒に白チェックの薄いパジャマの上下に裸足というわけです。
そして此処まで来る間に、ウサギに角が生えたようなでっかいのとか、キツネの六本足みたいなやつとかに遭遇してきた。
まぁ他にオッコトヌシ様モドキの類似品とかには御対面はしなかったので安心した。
つーか奴らはエンカウントした途端、我先にとソッコーで襲って来るから恐いのなんのって。
件のウサギは火とか吐いてくるし。
キツネに至っては六本足だし。
…まぁ会う度に色々試して蹴散らしてったけどね。
変態能力駆使して。
つーか中二の象徴だけでなく、手からレーザー出したりとか、口から毒ガス吐いたりとか…。
もう人間じゃないね、うん。
さすがに武器をいきなしなんも無いとこから造り出したりとかはできなかったけど。
まぁ錬金術は使えましたから不便はしません。
両手をパンッてやってやるタイプのあの錬金術です。
もうあれだ、この能力がESPを名乗るのもおこがましい、うん。
付けといてなんだけど。
つーわけで、改名。
この能力の略称はGSP(ご都合 主義 パワー)に決定。
…センス?
なにそれおいしいの?
そして落下地点から30分程歩いたところで自分、異変に気付いちゃった。
なんか岩山の方向からいっぱい来てるんですよ。
馬とか人とか鎧とか…。
…さあ。
もうこれ以上リアルエスケープ(現実逃避)出来そうにないので腹を括ります。
何を隠そう、自分は今まさに現在進行形で…
千人近くの鎧姿に槍を向けられております。
360度、余すとこなく。
正解には最前列の百人位に。
まぁその後ろの方々からも警戒やなんやらのオーラがムンムン来てます。
そう、彼らは前述の鎧軍団です。
彼らは自分を発見するや否やダッシュでこの状態にもっていきました。
所要時間30秒弱。
早いね、かなりの距離があったのに。
ちなみに自分は無傷です。
なんか雰囲気が殺すより牽制のつもりらしいので、抵抗せずに甘んじて両手を挙げてます。
…べつに怖いし勝てる気がしないからじゃないんなからね!!(ツンデレ風に)
まぁ実際にやり合ったら自分の串刺しが即完成は目に見えてますがね。
何たって自分、オタですし。
と、困惑しながら恐怖してるところに誰かが自分の前に、鎧を掻き分けやってきた。
とゆうか鎧が避けてできた道を歩いてきた。
そして来たのがなんか赤髪の怖そな兄ちゃん。
絶対200あるって位でかくて威圧感がある怖そな兄ちゃん。
つか怖い、怖そなじゃなく怖い。
だってめっちゃ睨むんだもん、しかもこっち来るとき剣抜きながらきたし。
…あれか、もしや自分は不法侵入者か。
自分はもしやアブナイ国に落ちてきて、裁判無しで極刑にされるのか?
いやまて、話せばわかる、うん。
いくら怖い兄ちゃんでも言葉は通じるらしいし、話せば解り合える。
よし、思い立ったが吉日、できるときに即決行。
「あの「貴様は何者だ」
被さった…
つか何者っつわれても、どう説明しろと。
神様にいきなりドロップキックでここに突き落とされた異世界人です、とか普通信じるはずもない…
「何者かと聞いている、質問に速やかに答えろ。」
…チッ
堪え性のないやつめ。
速やかに答えれたら答えてるっつの。
おまえみたいなやつが将来若禿に悩む事になるんだよ。
勝手な偏見だけど。
「答える気は無いらしいな…。
なら…。」
うわっ!
待て待て待て!
剣を向けるな、答えるからっ!
「ちょっ、まってって。
自分の名前は長谷川 鳴海、何者かって言われても自分の何が知りたいか解らないですし。
ちゃんと質問には答えるから。
だから剣や槍なんて危ないし怖から一回下げてください。」
すると兄ちゃんはしばらく何か考えるように黙り込んだ。
そして剣をしまい、手で合図して周りの鎧に槍を下ろさせた。
そして言った。
「それではハセガワ、貴様にいくつか質問をする。」
お、さっきよか質問の仕方が丁寧になった。
貴様ってとこが気にはなるが。
「はい、解りました。
あ、あと名前は鳴海の方です。」
多分日本とは名前と苗字は逆だろうしね。
「そうか、ではナルミ、単刀直入に聞く。
カームルを倒したのは貴様か?」
…は?
なにその質問。
自分がどこから来たかとかじゃないの?
つーかそもそも…
「あの?、カームルってなんですか?」
そう、自分の知識の中にはカームルなぞゆう単語はないのだ。
そしてこの質問をすると若禿候補の兄ちゃんは目を見開いた。
「…カームルを知らない、のか?」
「はい。」
外野(鎧)から信じられないやら有り得ないなど、困惑の反応。
わるぅごさんしたねぇ。
「…カームルとは、猪型の魔物で普通の猪の比にならないくらいの大きさの魔物だ。」
兄ちゃんが説明してくれた、なんかアバウトっぽいけど。
てか猪なら…
「あぁ、それなら一回倒しました。
あっちの方に残骸があるはずです。」
そう、多分彼の言ったカームルとは、自分がレー○ガンをぶっ放したあのオッコトヌシ様モドキの事だろう。
そう思い、自分が来た方向を指差しながら言った。
すると…
ザッ!!
槍円陣、復活。
皆さん、やめてください。
槍、怖いです。
どんだけぴったりのタイミングで槍向けくるんすか。
自分何か無礼な言動しましたか?
兄ちゃんこいつらどうにかしてください。
そして目の前の赤髪の兄ちゃんを見る、すると兄ちゃんさっきの3.5割増位の睨みを自分に向けている。
恐っ!
人間あそこまでなるともはや悪魔の領域だよっ!
この人も目からビームでてくんじゃね!?
とそこで赤髪兄ちゃんの後ろからなんかちっさいのがでてきた。
140センチ位の緑の髪のポニテな少女、つか幼女。
もちろん鎧装備で。
「隊長、確かに今確認したところ、ここから約6キノ程のところにカームルの死骸が発見されました。」
この兄ちゃんは隊長なのか。
どーりでエラソーなわけだ。
つかキノって、具体的に何メートルよ。
そして速い、自分の30分を返せ。
「…どのような状態だった。」
うん、さらに彼女の報告で睨みが2割増し。
この眼を使ったらバジリスクも返り討ち出来そうだ。
もちろん睨み合いで。
「それが…。
黒コゲで、バラバラでした、これがその一部です。
さらに直線距離60メノ程、幅は3メノ程がえぐれていて、そこを中心にカームルのかけらが飛び散っていました。」
そう言うと彼女は隊長に黒いカケラを渡した。
つかこやってみるとスゲー身長差。
「…これは、本当に貴様がやったのか?」
「はい…、そうですけど…。」
「どうやってやった。」
いやどうやってって言われても、説明に困る。
「能力を使いました。
自分の、能力を。」
…どうやってという質問の回答にはなってない気はするが、他に言いようがないしなぁ。
つかもともと自分のですらないし。
自分が答えたら今度は幼女が隊長の服を引っ張って、彼が屈むと彼に耳打ちした。
身長差やっぱすげー。
すると、隊長はしばらく考え出して、
「…何故だ。」
いきなり聞いてきた。
「えーと…、何故、とは。」
「何故カームルを殺した?」
…もしかして。
自分、護り神的なの殺しちゃった?
「いやっ、あの、襲われただけであって、他には何も殺してないってゆうか、やらなきゃやられるってゆうか、そもそも護り神とかし…」
「なら…
何故私達を倒そうとしない?」
…ハイ?
「それは…、どういう意味ですか?」
「自分の命を守るためにやったというなら、今此処で貴様は命の危機に直面している。
なのになぜ、貴様はあのカームルのように私達を消し炭にしない?」
…いや、なにいってんのさこの人。
つかいつの間に睨みでなくて真っ直ぐに真剣な目を向けているのさ。
というか答えは…
「…話せば、通じるかと思ったから。」
これしかないよね。
獣なら会話出来なもん。
「…そうか。」
そう言いながら隊長は合図をして、周りの鎧に槍をさげさした。
「それでは、最後の質問だ。」
やっとだよ。
というかなんか隊長の口調が柔らかくなった気がする。
「君は、何処の出身でどんな能力を持つ?」
やっぱりきたか、この質問。
下手に日本とか言ってこの世界にとっての日本の認識が「悪魔の住む国」とかならやだしな。
あのクソ女神ならそんな原因になりそうな人物放り込みそうだし。
でもなぁ…
「出身は…日本だ。
能力はGSPと自分は勝手に呼んでいる。」
悪魔の国ならそんときはそんときだ。
「…そうか。」
納得したのかしらんが、隊長は頷いた。
そして…
「私の名前はゼノア・ランドルフ、いきなり失礼なことをして申し訳なかった。」
握手を申し込まれた。
まぁ断る理由もないので応じておこう。
「はぁ、よろしくお願いします。」
しっかりと握手を交わした。
ランドルフさんはさっきまでの殺気のこもった阿修羅ではなく、いまは柔らかく微笑んでいる。
…クッパでもここまで百面相はできまい。
「ところで、君には今から城に来てもらいたいのだが、宜しいですかな?」
城って…
もしやランドルフさんは王子様とかか?
いや、隊長いわれてたし、それはないか。
でもまあ、草原放置プレイに比べたら雲泥の差だ。
「…わかりました、じゃあお願いします、ランドルフさん。」
こういうとランドルフさんは困った笑顔を作りながら言った。
「そっちではあまり呼ばれ慣れてないから、ゼノアと呼んでくれないか。
別に呼び捨てでも構わないから。」
…すいませんでした。
若禿候補とか言って、まぢ、すいませんでした。
あなたは立派な人格者です。
「わかった、じゃあゼノア、よろしく。」
「こちらこそよろしく、ナルミ。」
そして自分たちは城に向かうため馬車に乗った。
?ゼノアサイド?
『なんだ、こいつは。』
それが第1師団隊長であるゼノア・ランドルフが目の前の青年に抱いた感想である。
先ずは恰好、彼は20年生きてきて黒髪黒眼の者を見たことが無いし聞いたことも無い。
しかも恰好が珍妙にも程がある。
薄い黒地の服にズボン、それだけ。
彼の来た方向からなら大陸有数の砂漠を越えなければここにはこれない。
それを靴すら履かず、この恰好でわたるのは不可能だ。
そのうえ荷物すらない。
さらに砂漠にはカームル並の魔物がうじゃうじゃいる。
なのに服には草が多少ついてる程度で破れていたり、穴が開いてすらいない。
そんな珍妙な者だからこそ、彼は警戒した。
何者かと聞いたら、名前は教えられたが、何が知りたいか解らないといわれ、槍と剣を下げるよう要求してきた。
少し考えたが、問題ないと判断し、要求通りにするよう兵士たちに合図を送った。
そして、1番知りたかった事を質問した。
「単刀直入に聞く。
カームルを倒したのは貴様か?」
すると、彼の予想を超えた返答が返ってきた。
「あの?、カームルってなんですか?」
これには驚いた。
カームルを知らない者がいるという事に、彼は愕然とした。
「…カームルを知らない、のか?」
「はい。」
即答。
普通カームルくらいの高レベルな魔物は一般の市民でも知っている。
それをしらないとは、何処の田舎から来たのだろうか。
とりあえず、奴に丁寧にカームルの特徴を教えてやると、予想通りの返答がきた。
「あぁ、それなら一回倒しました。あっちの方に残骸があるはずです。」
それからの兵士たちの動きは称賛に値するものだった。
一瞬で槍を構え、奴の行動範囲を狭め、威嚇した。
これをうけ、奴もかなり動揺してるようだ。
そこで、奴の言っていた方向へ偵察に言っていた副隊長のノアが報告に戻ってきた。
「隊長、確かに今確認したところ、ここから約6キノ程のところにカームルの死骸が発見されました。」
やはりカームルを倒したのは奴だっと確信し、彼はさらに警戒を強めた。
「…どのような状態だった。」
カームル程の魔物がやられたなら、その方法によって死体の状態も変わってくる。
それにより、奴の手口が解るかもしれない。
しかし
「それが…。」
ノアが困惑した声で放った次の言葉でその期待は脆くも散った。
「黒コゲで、バラバラでした、これがその一部です。
さらに直線距離60メノ程、幅は3メノ程がえぐれていて、そこを中心にカームルのかけらが飛び散っていました。」
渡された黒い塊からは確かにカームルの魔力が感じられた。
しかも、ほぼ完璧な状態で。
普通、魔物の魔力は魔物自身が疲れたり、傷ついたりすると弱っていく。
しかしこの塊は、そんな様子は全く無い。
つまり、一撃でこの状態にされ、葬り去られたことを意味する。
彼はこの者が予想より、遥かに危険であると判断した。
そして、質問を続けた。
「…これは、本当に貴様がやったのか?」
「はい…、そうですけど…。」
嘘ではない、そう判断した。
そして核心をつく質問をした。
「どうやってやった。」
すると奴は
「能力を使いました。
自分の、能力を。」
当たり前である。
一人しかいないのに他人の能力を使える訳がない、というか、他人の能力を使う能力なんて存在しない。
そこで、ノアからあることを耳打ちされた。
「あの、隊長、実は現場に行く途中にもいくつか、それこそカームルのところ程ではないですが、同じような跡が残っていた所があったんですが、死体が何にも無かったんです。
なので私には彼がそんなに危険な者には感じられないんですけど…。」
だからどうした。
普通ならそういわれる言葉だが、今の彼にはとても重大な事な気がした。
何故なら彼は、焦っていたのだ。
カームルを一撃で粉砕する力をもつ者が、自分達の護るべき城、ひいては街へとむかっていたことに。
しかし、冷静に考えみると、ここからならあの街が1番近い。
砂漠を超えたなら、そこを目指して次の旅の準備をするのが道理。
荷物もなく服装や外見が奇怪だからといって旅人でないとはいいきれない。
いや、だからこそ旅人であるということなのだろう。
しかし解せないことがある。
「…何故だ。」
それが疑問となり自然と口からでた。
「何故カームルを殺した?」
そう、何故カームルだけ殺し、他の魔物は殺さなかったのか。
聞く限りでは、魔物に遭遇はしたのだろう。
しかし、カームル以外は殺さなかった。
それが不思議だった。
そして、奴は慌てて言った。
「いやっ、あの、襲われただけであって、他には何も殺してないってゆうか、やらなきゃやられるってゆうか…」
そこまできいてわかった。
そして、今1番聞きたい事を質問した。
「なら…
何故私達を倒そうとしない?」
しばしの沈黙。
「…それは…、どういう意味ですか?」
「自分の命を守るためにやったというなら、今此処で貴様は命の危機に直面している。
なのになぜ、貴様はあのカームルのように私達を消し炭にしない?」
そう、彼らはいま、この者に全方位から槍を向けているのだ。
カームルと正面からやり合うよりはマシかもしれないが、かなりのプレッシャーと危機感を感じるはずである。
しかし、彼は当然のように言った。
「…話せば、通じるかと思ったから。」
そう、話せばよかったのだ。
奴はカームルを倒す程の力をもつ、それだけの普通の青年なのだ。
言葉を使い、話し合える。
1番平和な、当たり前のことを1番最初に放棄してしまったのだ。
しかし、このたった一人の青年はそれをしなかった。
この軍団を前にして、最後まで諦めなかったのだ。
「…そうか。」
この青年は争いを好まない、彼はそう判断した。
そして、兵士達に武器をおろさせ、最後の質問をした。
「それでは、最後の質問だ。
君は、何処の出身でどんな能力を持つ?」
彼が聞いたのはここにいる皆が知りたがっていること。
簡単に答えてくれるかは解らないが、彼自身も知りたかった。
「出身は…日本だ。
能力はGSPと自分は勝手に呼んでいる。」
案外簡単に返答された、しかし、どちらも聞いたことが無い。
しかし、聞けただけ今はいい。
「私の名前はゼノア・ランドルフ、いきなり失礼なことをして申し訳なかった。」
はっきりとした謝罪の言葉。
隊長が謝罪をする、つまりこれは、今までの行為は不当だったと認めたということである。
そして、握手をもとめた。
これは正式な自己紹介である。
「はぁ、よろしくお願いします。」
しどろもどろしながら相手も応じる。
「ところで、君には今から城に来てもらいたいのだが、宜しいですかな?」
もちろん謝罪の正式なお詫びのために。
というのが面目上だが、実際は彼がこの者に激しく興味を持ったのだ。
「…わかりました、じゃあお願いします、ランドルフさん。」
ランドルフさん。
そう呼ばれたが、余り呼ばれた事がないので、違和感があった。
「そっちではあまり呼ばれ慣れてないから、ゼノアと呼んでくれないか。
別に呼び捨てでも構わないから。」
なので訂正を促しておいた。
しかし、本音は彼に友達として名前で呼ばれたかったからだ。
あんなことの後であるので、高望みかも知れないが。
「わかった、じゃあゼノア、よろしく。」
しかし、彼はそれに応じてくれた。
それがとてもうれしかった。
「こちらこそよろしく、ナルミ。」
そして彼、ナルミを馬車に乗せ、自分は馬に跨がり、先頭を行った。
ニホンていう国や、ジィエスピイなる能力がどんなものか、そんなことはどうでもよくなっていた。
彼と友達になれるかもしれない、そんな期待を胸に込めながら彼は城に、ウェンノルス城へと駆けていった。
後書き
こんにちは南師です。
みなさんいかがお過ごしでしょうか。
私は元気です。
さてさてここまで読んでいただいた皆さんに朗報です。
私はこの前ガンスリンガーストラトスをはじめました。
おじいちゃん使いです。
見つけたらフルボッコにしてください。
あと、評価等ありがとうございます。
こんな古いものにポイントを入れていただいて、感謝感謝です。
これからもよろしくお願いいたします。
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