ラインの黄金
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第二幕その十
第二幕その十
「これで話が終わる」
「何ならわしの力を測らせてやろうか」
ドンナーはフライアの悲しい顔に我慢できなくなりその右手の鎚を再び巨人達に見せてきた。
「それだけフライアを測りたいのならな」
「何っ!?」
「何だと!?」
巨人達もドンナーの言葉に敵意を露わにさせる。ドンナーは巨人族にとって怨敵なのだ。数多くの巨人の勇者達が彼に倒されているからだ。
「同胞達の仇が」
「今ここでもそのミョッルニルを振るうのか」
「貴様等が望むとあらばな」
実際に今まさに放たんとさえしていた。
「何時でもな」
「ならばだ。我等もだ」
「貴様を今ここで」
「止めよ」
しかしここでヴォータンが両者の間に入った。ローゲとフローはようやくその宝でフライアの姿を消そうとしてしまっていた。
「フライアは隠れた。これでいいな」
「もう宝はない」
ローゲもここで巨人達に告げる。
「これで丁度だ」
「いや、まだだ」
だがファフナーが文句をつけてきたのだった。
「フライアの髪の毛が見えているではないか」
「何っ!?」
見ればその通りだった。確かにその豊かな金髪の上の部分が見えている。しかしローゲはそれを見て顔を顰めさせて告げたのであった。
「こんなものいいだろうが」
「よくはない」
しかしファフナーはこう言って聞かない。
「約束は約束だ」
「では何を乗せろというのだ?」
「それだ」
丁度ローゲが持っていたその帽子を指差したのだった。
「その帽子を乗せろ」
「これもか」
「そうだ、それもだ」
ファフナーはこう言って聞かないのだった。
「いいな、早く乗せろ」
「何という欲の深い奴等だ」
これには流石に不快感を露わにさせるローゲだった。
「これまで持って行くとはな」
「何度も言おうか?約束だ」
「その通りだ」
ファフナーだけでなくファゾルトも言ってきた。
「早く引き渡してもらおう」
「いいか」
「ではいいだろう」
ヴォータンもまた忌々しげながら頷くのだった。
「それもな。やってしまおう」
「わかりました。それでは」
ローゲは舌打ちしながらもその帽子を置いたのだった。そうしてそのうえで不快感に満ちたその顔で巨人達に対して言うのだった。
「さあ、これでいいな」
「これで終わりか」
ファゾルトは少し残念そうに述べた。
「フライアは見えなくなった」
「まあこれだけの宝があればな」
ファフナーがその横で言った。
「満足してもいいか」
「これで手放すのか」
弟にそう言われてもそれでも彼はまだ未練を見せていた。
「これで・・・・・・むっ!?」
「どうした兄者」
「そこからフライアの目が見える」
微かに開いていたそのフライアの目を見ての言葉だった。その湖の色の瞳をだ。
「あれが見える。やはりここは」
「一つ言っておく」
ファフナーは兄の言葉に呆れながら神々に告げた。
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