ソードアート・オンライン~漆黒の剣聖~
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フェアリィ・ダンス編~妖精郷の剣聖~
第五十一話 下層の世界
「ここがヨツンヘイムかー・・・」
見事巨人を打倒したソレイユたち御一行は無事にヨツンヘイムにたどり着くことができた。
「さて、中央大空洞を目指すんだったな」
「中央大空洞!?あんなところに何しに行くんだよ?」
「んー、まぁ、確証はないんだがイベントでちょっとね・・・」
レヴィアの問いかけに言葉を濁すソレイユ。さすがに確証も持てないうちに“あれ”が手に入りますなんてことは言えない。
「まぁ、いいじゃねぇか。巨人を倒せばまれにだがグリモワールが手に入るんだし」
「それってどれくらいの確率?」
「大体一%って噂だ」
「百体倒して一個の割合か・・・効率が悪いな・・・」
「まぁ、リアルラック頼みで行くしかないな、そればっかりは」
和気藹々と言っていいのかわからないが、とりあえず当面の目的は中央大空洞を目指すことに決まった。巨人を倒せばグリモワールが手に入ると聞いたソレイユは邪神狩りでもするかなー、なんて思っていたら先ほど闘った邪神よりここの邪神は数倍強いという事実を知った。だが、その程度で諦めるソレイユではなかった。
「そういや、ソレイユ。おまえこの前の複合魔法はセットしてんの?」
「してないけど・・・」
「なら、いい機会だし試してみればどうだ?」
「んー、それもそうだな」
そういってグリモワールで入手した魔法を使うことになったソレイユ。レヴィアはソレイユがグリモワールを手に入れたことに若干驚いていた。
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・・・
「うおりゃー!!」
なんて声を上げながら戦っているのはソレイユ。本気でやっていないのが一目でわかるほどの手の抜きようだった。人型の邪神級巨人の拳を避け、その腕を伝い顔面を切り裂いていく。邪神が振り払うように身をよじればソレイユは跳躍して魔法を唱える。
「ユディクト・ジニス・ペカトルム・トゥアロム」
放たれたのは火属性と光属性を携えた十二の球体の焔だった。その焔は十二発とも邪神の顔面をとらえ焼き尽くしていく。だが、さすがにその程度でやられる邪神ではない。そのことはソレイユはここに来て身をもって知っていたので手を抜くことはしない。
「エト・ムンダレット・シー・インセンディウム・アニマ・ポルータ」
詠唱を唱え終えると、大量の焔が邪神を焼き尽くしていく。それでも反撃してくる邪神だが、その拳がソレイユに届く前に爆音とも呼べるサウンドエフェクトを伴ってポリゴン片となった。
ソレイユが一人で戦っているとき、ルシフェルとレヴィアはというと、ソレイユの闘いを飲み物とつまみを持って観戦していた。ソレイユの強さは十分わかったので、まかせっきりにしているという訳である。普通のプレイヤーならここでそんな無茶ぶりをされたのなら抗議の声を上げるのだが、残念ながら、ソレイユは普通のプレイヤーではなかった。ちなみに蹴散らした数は今ので七体目である。
「ふぅー、こんなもんか・・・さてと、何が出るのやら」
辺り一帯に敵がいないことを確認したソレイユはアイテムウインドウを開き戦利品を確認する。
「おっ、ラッキー。“また”グリモワールがあった」
「「ちょっと待って!?」」
流石に聞き逃せない言葉を聞いた観戦者二人がソレイユの方へと詰め寄っていく。
「どうした?」
「いや、どうした?じゃねぇよ!!おかしいだろ!?何で七体倒して七体からグリモワールが出るんだよ!?」
「数値にして百パーセント、だな・・・」
物欲センサーも真っ青な数値である。ソレイユに初めてどうこうするレヴィアはこういったことに慣れていないようだが、ルシフェルの方はもう慣れたらしい。驚きではなく呆れに変わってきていた。
「どんなリアルラックをしてるんだ、お前は!?」
「年末ジャンボ宝くじで一等が当たるくらいだナー」
「はぁ!?」
どこぞの鼠口調で笑いながら言うソレイユにレヴィアだが、さすがにこれ以上騒がれて邪神ホイホイになられても困るので、ルシフェルはレヴィアを落ち着かせながらソレイユに向かって口を開いた。
「この辺の邪神は一掃されたし、今使ってみたらどうだ?」
「それもそうだな。んじゃ、遠慮なく」
そういってアイテムウインドウにあるグリモワールをオブジェクト化し使用するソレイユ。習得できた魔法は以下のとおりである。
複合魔法「燦々たる陽光の恵み」属性:火&光 割合5:5
複合魔法「幻影を生みし儚き夜」属性:闇&幻 割合5:5
複合魔法「吹き荒ぶ冷氷なる風」属性:風&水 割合5:5
強化魔法「暗き夜に住まう御魂」属性:闇&幻 割合5:5
複合魔法「永久に眠る氷結の棺」属性:風&水 割合5:5
複合魔法「闇夜に浮かびし夢幻」属性:闇&幻 割合5:5
強化魔法「悠久をもたらす雪風」属性:風&水 割合5:5
「「・・・・・・」」
もはや言葉が出ない二人。一番出やすい最上級魔法が一個も出ず、その六割が複合魔法、それも随分と偏った数値で出てきている。さらには最上級魔法を差し置いて稀にしかお目にかかれない強化魔法を習得したこともそれに拍車をかける。
「あー、火と光の強化魔法が欲しかったんだがなー・・・しょうがねぇ、もう少し邪神でも狩ってくるか」
「主旨が変わりすぎてるだろ!!当初の目的を忘れてんじゃねぇか!?」
「おっと、そうだったな・・・んじゃ、改めて中央大空洞を目指すとするか!」
とは言ったものの、結局は邪神と遭遇してしまい、傍から見れば邪神狩りをしているようにしか見えない。さすがにソレイユばっかりに任せてられないのでルシフェルとレヴィアも参戦する。
「そういばさ、さっき習得した魔法でさ、火と光の複合魔法が合ったんだけど・・・おれがすでにもってた魔法と属性の割合が一緒だったんだが、どう違うんだ?」
「ああ、それならおそらく今回習得したのは支援用魔法だろう。複合魔法は攻撃用と支援用に分かれているからな。あたし達が階段ダンジョンで使った支援魔法も複合魔法の支援魔法だ」
「へぇー・・・あと、さっきから使ってる複合魔法のスキル熟練度がなかなか上がんないんだけど・・・」
「それはそういう仕様だ。複合魔法は攻撃用と支援用の二種類あるが、その中に下級から最上級までの魔法がすべて入ってる。だからこそ、上がりにくい仕様になってんだろうぜ。ちなみに言っとくが、上がり難さでは複合魔法>強化魔法>最上級魔法だ。伝説級魔法についてはわからん」
「んー、了解っす」
近接同士(剣士かメイジかの違いはあるが)、熟練者が新人を鍛えるありふれた光景であるのだが、邪神の攻撃を避けながらレヴィアが魔法講義をしているので、微笑ましさに欠ける。そんな二人を叱咤したい気分になったルシフェルだが、叫ぶと邪神が寄ってきてしまいそうなのでやめる。
「なんつーか・・・」
「あん?どうした?」
「いや、なんでもないですよ」
「そうか」
そういって邪神から距離を置くレヴィア。ソレイユもそれに倣って距離を置く。そのとき、地底なのに邪神の上に立ちこめる暗雲を見ながらボソッと呟いた。
「ジェネシアスよりたいしたことなかったな」
この場に冥王がいたのならこう言っているだろう。「俺の作ったフィールドがこんなもんに負けるわけがないだろう」、と。そして、この場に精神ケアプログラムを携えた少女がいたのなら間違いなくこう言っているだろう。「比べるものが間違っています、にぃに」、と。だが、その呟きは誰にも聞こえることなく雷鳴と共に消えていくのだった。もっとも、その雷鳴が邪神ホイホイとなってしまい近くにいた邪神とエンカウントしたのは言うまでもないだろう。
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・・・
そんなこんなでエンカウントした邪神だけを葬り去りながら(その数、六体)中央大空洞の到着した三人。ソレイユが中央大空洞を覗いてみると暗い闇ばかりでそこが確認できない。
「どのくらいあるんだ?」
「さぁな。試す度胸のあるやつなんていないさ」
「まぁ、そうだろうな」
そう言いながら覗くのをやめ、アイテムウインドウから『雄鶏の尾羽』をオブジェクト化し、中央大空洞に向かってひらひらと見せつけるようにしている。しかし、これといった変化は見られなかった。
「何がしたいんだよ?」
「まぁ、ちょっと・・・んー、これでもダメならいっそのこと飛び込むか・・・」
「俺らインプは暗中飛行のおかげでこういった閉鎖空間でも飛べることには飛べるがそう長くは飛べないんだぞ。飛び込んだ後どうする気だ?」
「何とかなるだろ・・・じゃ、いってくっから!」
そういって中央大空洞に飛び込むソレイユ。レヴィアが慌てて中央大空洞を覗き込むがすでにソレイユの姿は見えなくなっていた。対してルシフェルはアイテムウインドウからキャンプ用バーナーやテント、寝袋、さらには食材と調理用具と言ったものを取り出している。現実のようにわざわざテントを組み立てる必要はないので、楽に準備が終わった。この中央大空洞まで到着するのに四時間もかかった。現実では夕食時である。
「レヴィアー、なんかリクエストあるか?」
「いや、特にないが・・・って、そうじゃないだろ!あいつ、真っ逆さまに落ちちまったぞ!」
「ああ、そうだな。そのうちひょっこり帰ってくるだろ」
やけに落ち着いているルシフェルを見たレヴィアは毒気を抜かれてしまった。溜息を吐きルシフェルの向かいに胡坐をかいて座る。残念ながらスカートではないので覗くことはかなわなかった。
それから、ソレイユが戻るまで二人は氷のダンジョンで巨人に見つからないようにキャンプをする羽目になった。ちなみに夕食はカレーに似た何か。よくそんな食材を持っていたな、と領主を称賛する声があった。
◆
現在ソレイユはどこまで続くかわからない闇の中を落下中である。人がスカイダイビングの時に落下する速度が時速二百キロであることを前提に考えると、飛び込んでから三十分が経過している今、そろそろ地面が見えてきてもいいと思うのだが、と考えたところで氷の地面が見えた。
すぐさま翅を使って急停止を掛けるソレイユ。静かに地面へと降り立ったソレイユは周りを見渡しながら口を開いた。
「氷の世界・・・ニヴルヘイムで間違いなさそうだな・・・ヨツンヘイムの巨人より獰猛らしいからここは不用意な戦闘は避けるべきだな。つか、第三層って真っ暗なのな・・・」
自身の神話知識を頼りにこれからのことを決める。まず見つけるのはエーリヴァーガルという川である。
「こういう時にシェイド見たな魔法が使えたらなぁ、なんて思うが・・・そういや、あれからグリモワール手に入れたんだっけ・・・」
氷の陰に隠れながらアイテムウインドウを操作するソレイユ。あれから邪神を葬り去ったのは六回、手に入れたグリモワールの数は六冊だった。結局百%の確率でグリモワールを引き当てるソレイユの運に物欲センサーはかなわなかったらしい。
「さてさて、何が出るのかなーっと・・・」
そう言いながらグリモワールを使用するソレイユ。習得した魔法は以下の通りである。
最上級魔法「最上級火属性魔法」
最上級魔法「最上級水属性魔法」
最上級魔法「最上級光属性魔法」
最上級魔法「最上級風属性魔法」
最上級魔法「最上級闇属性魔法」
全てが最上級魔法だった。おまけに望んでいた最上級幻属性魔法は引き当てることができなかった。流石に今回は物欲センサーはしっかりと仕事をしているらしい。残るグリモワールはあと一冊。望みをかけてオブジェクト化したグリモワールを使用する。
『最上級魔法「最上級幻属性魔法」を習得しました』
メッセージウインドウを見た時、柄にもなくガッツポーズをするソレイユ。早速幻属性魔法と最上級幻属性魔法をスキル欄にセットする。どうやら初期のころから【インビンシブル・インビジブル】は使用できるらしい。ならば、使用する他ない。
「さて、と・・・いきますか」
流石にシェイドのように複数の幻属性魔法を今は使う必要がないので、【インビンシブル・インビジブル】のみを発動させる。準備が整えばあとは行動するのみである。
「(どこにあるのかな、っと・・・)」
なんて声に出さずにキョロキョロしながら歩いていると、目の前から巨人が歩いてくる。とりあえず保険もかけて物陰(氷の陰)に隠れるソレイユだが、それは杞憂に終わる。ズシンズシンと音を立てて通り過ぎる巨人。充分距離が離れたのを見計らってソレイユは物陰から出て再びキョロキョロと周りを見ながら目的のものを探す。
―――五分後
氷の国なのに泡が一緒に流れる川があった。間違いなくこれがエーリヴァーガルなのだろう。一説ではこの泡にある毒気から霜の巨人族が生まれたとされている。
「(あとはこれを南に進むだけ、か)」
凍りながら北に流れているとされる川であるエーリヴァーガルである。ならば流れに逆らっていけば自ずと南に着くのは自明の理だった。そして、歩くこと三十分。巨大な裂け目を見つけた。
「(これがギンヌンガガプ、か・・・)」
氷の国ニブルヘイムと灼熱の国ムスペルヘイムを隔てる世界の創造より前に存在していたと言われる裂け目である。周りを見渡しても橋らしい橋は見えない。飛行可能時間はまだあるし、暗中飛行という特性のおかげで真っ暗なこの場所でも飛べることには飛べる。
「(まぁ、今は考えていても仕方がないか・・・)」
そういって助走をつけるソレイユ。何回か掛けなおした【インビンシブル・インビジブル】はつい今しがた効果を失った。もう一度唱えるのも面倒なので、さっさとこの氷の国からおさらばすることにする。
全力で走り、ギンヌンガガプを飛び越えるように地を蹴るソレイユ。そこからは無駄に上昇することはなくそのままの勢いを利用して翅を羽ばたかせる。半分くらい過ぎたところで、ありえないほどの熱気がソレイユを襲った。少しづつだが、HPの減少もみられる。
「ちっ!」
らしくない舌打ちをして飛行中でもあるにもかかわらずウインドウを操作して耐火の保護があるマントを羽織るが気休めにしかならない。思った以上にムスペルヘイムという場所は熱い場所だった。さすがは灼熱の国、などとソレイユは心の中でへんに賞賛するあたり、ああ見えて結構余裕があるソレイユだった。
裂け目を渡りきると更なる暑さがソレイユを襲う。早く目的を果たさなければHPが全損してしまうだろう。とりあえずまっすぐ歩いていくソレイユ。
“なぜ妖精がここにいる?”
不意に聞こえた声があった。その方向に顔を向けると青白い巨人がそこにいた。体に起伏が見られるので女性ということがわかる。
“もう一度聞こう。なぜここに妖精がいる?”
「シンモラって女巨人に用があってきた」
“ほう、妾に用とな。ここまで来た度胸に免じて話ぐらいは聞いてやるぞ?”
どうやらシンモラご本人だったらしい。ならば好都合といった様子でソレイユはアイテムウインドウを操作して、ある一つのアイテムをオブジェクト化する。
「これと“あるもの”を交換してほしいんだ」
『雄鶏の尾羽』をシンモラに見せつけるようにするソレイユにシンモラは得心がいったというように頷いてた。
“・・・よかろう。まさか妖精がそれを持ってくるとは思いもしなかったが・・・”
何やら見下された感が半端ないが面倒事を増やしたくない今は黙っておくことにするソレイユ。シンモラは厳重に鍵のかかった箱を取り出した。それを見たソレイユは顔を強張らせるが、シンモラは何気なくソレイユに言った。
“案ずるな、妖精。ここまで来れた褒美として特別に鍵は妾が開けることにしよう”
「ふぅ・・・感謝するよ、シンモラ」
ソレイユの礼に特に答えることもせず、シンモラは匣に掛けられた九つの錠を外していく。錠を外し終わった匣の中から出てきたのは、ドデカい何かではなくソレイユでも装備できるサイズのガラスの飾り紐だった。燃えるように紅いガラスでを持って造られているそれは魅入るほど鮮やかなものだった。それをシンモラはデカい指でつまむとソレイユの方に差し出してくる。
“受け取るがよい、妖精よ”
その言葉通り、紅いガラスでできた紐飾りを受け取るソレイユ。早速その装備の名称を確認してみると、思うとおりの名前が出てきたので思わずにやけてしまう。
「ありがとう、シンモラ」
“礼は要らぬ。用が済んだのなら早々に立ち去るがよい。この国はこの国で生まれたものしか住まうことができぬ”
「ああ、そうするよ。縁があったらまた会おう」
そういってシンモラのもとからギンヌンガガプに向かって全力疾走するソレイユ。その背中をシンモラは唯々じっと見守るだけだった。
◆
シンモラのもとから離れたソレイユは現在ギンヌンガガプを飛行しているところだった。もう間もなく飛行制限がかかるころなのでさっさとニブルヘイムに降り立とうとするソレイユ。無事に氷の国に降り立つことができたのだが、ムスペルヘイムとの急激な温度差をうけ、思わず呟いてしまう。
「さぶっ!」
「氷の国なのだから当たり前であろう」
「っ!?」
誰かに向かって言ったのではないのだが、ソレイユの呟きに反応する者がいた。【エクリシス】に手を掛けながらその方向を向くと昨日知り合った顔がそこにあった。
「ロキ?」
「あの時の言葉に偽りはなかったらしいな。まさかこんな早くにこの場所に来るとは、な。まぁ、いい。その知恵に免じて今回は我が手助けすることにしよう。乗れ、妖精よ」
そういって後ろを差すロキ。その方向を見てみると八本脚の軍馬がいた。その正体がわかったソレイユであるが、なぜそれがここにいるのかがわからなかった。
「義兄から少々拝借してきた我が子だ。案ずるな。ただ上層へと送ってやろうという我の気まぐれだ」
「・・・そういうことなら、その気まぐれに感謝することにするよ」
そういって軍馬に跨るソレイユ。それを確認したロキは軍馬を空中に走らせる。見る見るうちにニブルヘイムが小さくなって、やがて見えなくなる。軍馬に跨りながらソレイユはロキに問い掛けた。
「なぜ、あんたはおれに手を貸す?」
「気まぐれだ、と言ったはずだ」
「・・・・・・」
その言葉から読み取れる真意は何もなかった。本当に気まぐれなのか、それとも何か裏があるのか、ソレイユでもわからなかった。
◆
「―――と、いうわけなんだ」
「「・・・・・・」」
あれからロキの手によってヨツンヘイムに戻る事が出来たソレイユであったのだが、ルシフェルとレヴィアにばっちりとロキといられる所を見られ、挙句の果てにロキが去り際に――
『ではな、知恵のまわる妖精よ』
などというものだから、ロキとの関係をはぐらかしようが無かった。観念して、有りのままの事を話す羽目となったソレイユ。ウィドフニルとの遭遇から始まり、レプラコーン領でのロキとの邂逅。そして、中央大空洞の先に有ったものから、そこで起こった出来事まで、ソレイユの考察を含めて話す羽目となった。
「なるほど、な・・・」
「なんつーか、お前ってすごいのな・・・」
賞賛されているのだが、素直に喜べないソレイユ。褒め言葉の中に呆れが混じっているのがその最たる理由であるだろう。
「で、手に入れられたものってのは?」
「それは秘密だ、と言いたいんだが、ここまで付き合ってくれたんだから見せるよ」
そう言ってメニューウインドウを開き、件のもののステータスを表示させる。それを見た二人の表情は面白いぐらいに驚いていた。
「「はぁ!?」」
今までにない大声量。邪神が来ないか不安になったソレイユであるが、その心配は杞憂に終わった。
「ちょっ・・・おまっ・・・それって・・・!?」
「・・・もう、お前ってなんなんだよ・・・」
レヴィアは驚きのあまり言いたいことをはっきりと言えなくなり、ルシフェルはもう呆れるしかなかった。それほどまでにソレイユが手に入れたものはすごいものらしい。
「さーて、用も済んだし帰るとすっか」
一番疲れているはずのソレイユが一番元気だ。対して、ソレイユのはちゃめちゃに振り回された二人は意気消沈中である。
「なぁ、ルシフェル・・・」
「・・・どうした、レヴィア?」
「あたし達の苦労ってなんなんだろうな・・・」
「・・・言うな、虚しくなる」
「ここまで無茶苦茶な奴なんて・・・あの人たちぐらいしか知らないぞ?」
「ああ、俺もだ・・・」
そして二人同時に溜息を吐く。この会話はソレイユにも聞こえているはずのだが、話の中心であるソレイユは特に気にした様子を見せない。
かくして、ソレイユの目的は無事に果たされ、三人はヨツンヘイムを後にする。その後、インプ領に着いたのは五時間後のことだった。色々と振り回された領主とその側近は何もやる気が起きずログアウト。ソレイユもとくにすることがなかったのでログアウトして眠りについた。
後書き
あー、もうなんか・・・
ルナ「やりすぎだね」
ぐはっ・・・改めて言われるとグサッと来る・・・
ルナ「だってねぇ・・・いくらなんでも、これはないでしょ」
し、仕方がないじゃないカ!これはこれで重要なんだゾ!!
ルナ「口調がアルゴになってるよー」
ま、まぁ、そんなことはさておき、感想などありましたらお願いします!
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