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真剣恋にチート転生者あらわる!?

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第10話

悠斗side



年が明けて一月が過ぎた。俺は電車に乗っている。九鬼家では新年明けて元日が揚羽様の誕生日だけあって、年越しパーティーと揚羽様誕生パーティーが続けて行われた。 まあ、侍従隊は会場の設営、来賓の方々の受付、パーティー時の警備体制、ウェイターやメイドなど多岐に渡る仕事をこなす事になった。
改めて感じたのは伊達に1000人も侍従隊のメンバーが入るわけでは無かった。小十郎を除けば皆さん非常に優秀な方々だった。中には俺より年配の人達も沢山居たが皆、若手の台頭に文句を言ったりせず笑顔で受け入れくれていた。
国籍も様々な方達だが、人は凄く良かった。
まあ、そんなこんなでパーティーが始まると結構大変だったな。年越しパーティーと揚羽様誕生パーティーが続けて行われる為、警備関係はかなり大変だった。
来賓の方々は大企業の重役や政治家、投資家、芸術家、スポーツ選手、等々本当に沢山の方々がいた。警備の穴を突いて、九鬼家の方々の命を狙う馬鹿どももいたが、速攻で鎮圧したりしたな。
まあ、仮にもヒュームさん、俺、あずみ、ステイシー、李、がいたのだ。来賓の方々にすら怪我をさせずに馬鹿どもを鎮圧するなんて、朝飯前の話だ。後、印象に有るのはある二人に会った事だ。


回想



揚羽様に誕生日おめでとうと、言いに来る来賓の方々。揚羽様は一人一人に丁寧な対応をされていた。そして、挨拶する人々の列の最後の方が来た。人数は3人だ。正面は、金髪で髪をポニーテールにした女性、右隣には青い髪でショートカットの女性。立ち振舞いからして武道を足しなんでるのが分かる。左隣には薄い紫色の髪を後ろで束ね、ケープを身に付けた女性だ。一見まともに見えるが、何故か彼女からは嫌な感じがする。たが、動きは普通の女性なので暗殺者の類いでは無いことが分かる。

「明けましておめでとう。それと、誕生日おめでとう揚羽」

「おお!霧夜殿か。明けましておめでとうございす!そちらも、誕生日おめでとうございます!」

揚羽様とキリヤと呼ばれた女性が挨拶を交わす。 どうやら、相手の女性も誕生日が同じらしい。

「久し振りだな、揚羽。誕生日おめでとう。それと、明けましておめでとう」

「鉄殿!お久しゅうございますな。明けましておめでとうございます!武道四天王の貴女とは、久しく手合わせしていませぬな」

(あ!思い出した!この3人は、つよきすのヒロイン達だ!)

揚羽様と鉄乙女さんが握手を交わす。初見で分からなかったのは単に俺が思い出せなかっただけだ。

「明けましておめでとうございます。揚羽さん誕生日おめでとうございます」

「ああ。明けましておめでとう。ゆっくりとパーティーを楽しんで行くがよい」

佐藤良美が揚羽様に挨拶をする。至って普通な感じだ。

「相変わらずね。所で、そこに控えてる貴方」

「ん?俺でしょうか?」

「そうよ。貴方初めて見るけど、立ち振舞いには隙がないしね。もしかして、揚羽の専属なのかしら?もし、違うなら引き抜こうかと思ってね」

いきなり揚羽様の目の前で俺を引き抜こうとする、霧夜さん。チラリと揚羽を見るとコメカミに青筋を立てて静かに切れている。正直笑顔なのが凄く怖いです。

「残念ですが、俺は揚羽様の専属執事の不動悠斗と申します。美人から引き抜きを受けるのは嬉しいですが、俺は揚羽様を慕っておりますので諦めてください」

「あら、残念。でも、私は欲しいモノは絶対に手に入れる主義だから」

明らかに諦めていない霧夜さん。何処から出したのか分からないが、名刺を俺に差し出した。

「もし、九鬼に見切りをつけたのなら何時でも電話してちょうだい。貴方の様な優秀な人材はキリヤカンパニーでは必要だから」

「霧夜殿。我の侍従を引き抜こうとするのは、止めていただきたいのだが」

今まで静かに事の推移を見守っていた揚羽様が口を挟む。霧夜さんは、不敵な笑みを浮かべていた。

「あら?たかが1人の侍従と話をしてるだけよ?それとも、九鬼の長女はいちいち侍従と話す事すら許さない程、器が小さいのかしら?」

「なに!?我を侮辱するつもりか!」

何時の間にか手に持っていた軍扇を強く握り締める揚羽様。俺は揚羽様の前に立つ。

「揚羽様。落ち着いてください。簡単に相手の挑発に乗ってはいけません」

「ぬ!悠斗!たが、我は許せんのだ!そこを退け!」

「クスクス。あらあら、大事な侍従にも止められてますよ?」

「姫!いい加減にしないか!揚羽。すまないな気を悪くさせて」

優雅に振る舞う霧夜の令嬢。鉄乙女さんが叱責する。

(まあ、此処等が落とし所だな。下手に拗らせると面倒な事になりかね無いからな。だが、霧夜には悪いが少しは肝を冷やしてもらうか)

俺は普段は押さえている殺気を解き放つ。無論、会場全体ではなく霧夜と鉄さんだけにぶつける。

「え!か、体が動かない!?」

「く!私より、遥かに強い殺気だ!」

死を直接イメージさせるほど強い殺気ではなく、本能的に勝てないと悟らせるレベルの殺気を放つ。案の定、霧夜は動けなくなった。鉄さんは動けるが、動きが格段と鈍くはなっていた。
俺は殺気を拡散させて二人を解き放つ。佐藤さんは終始頭に?マークを浮かべていた。

「お二人とも失礼しました。ですが、俺も自身の主を馬鹿にされて黙っていられる様な男ではありませんゆえ。それに、俺が九鬼家に見切りをつける事などまずありませんので、俺を引き抜く事は諦めてください」

「ええ。その様ね。下手したら、主を食い殺しかねないわね。貴方、一体何者なの!?私はともかく、乙女さんが動きが格段と鈍くなるなんてありえないわ」

「ああ。私も武道四天王の一員だ。普通の男に遅れを取るなどありえない事なのだがな」

「当たり前よ!悠斗は元は傭兵よ。越えてきた死線の数が違うのだ!」

そう言い切る揚羽。鉄さんが納得した表情になった。霧夜さんは、苦虫を食べた様な表情を浮かべていた。
それから暫く話し合いをしたら、鉄さんが対馬レオの恋人であることが分かった。そして、霧夜さんと佐藤さんは俺が同年であることに、かなり驚いていた。あと、俺が元竜鳴館の生徒で対馬ファミリーの一員であることを話したら、霧夜さんと佐藤さんはかなり驚いていた。鉄さんは、レオから聞いていたからあまり驚きはしなかったな。




回想終了



まあ、とにかくあのパーティーの後の拗ねた揚羽様の機嫌を治すには、かなり苦労したな。
拗ねた揚羽様は可愛らしかった。まあ、夜伽の際にじっくりと可愛がったけどな。
そんな事を考えていると、アナウンスが車内に響く。

「次は、松笠、松笠でございます。降りる際のドアは左でございます」

電車がホームに到着する。俺は電車を降りて改札口に向かう。改札を通って松笠駅の正面に出た。

(久し振りに来たな。今回は天王寺さんとのどかさん、なごみに報告する事があるからな)

4月から俺は海外に行くことを3人に伝える為に、松笠に来たのだ。
駅前から松笠商店街を目指して公園の中を歩く。

「ね~、彼女?俺らと良いことしない?」

「ウザイ!」

「おお~。怖いな。美人がそんなこと言うなよ。楽しもうぜ?」

「へっへへ。なあ?悪いようにはしないぜ?」

「消えろ。グズが」

「なんだと!?このアマ!ちょっと綺麗だからって舐めてんじゃねえぞ!」

「まあまあ山田さん。落ち着いてください」

公園内に声が響く。声がした方を見ると、5人組の男が女性をナンパしていた。後ろ姿しか見えないが女性は嫌がっている様に見える。

(しゃあない。馬鹿を少し叩き潰しますか)

俺は男達に向かって駆け出して行くのだった。




悠斗sideout



???side



買い物帰りに公園に寄ったら、キモイ男達が徒党を組んで私に近寄ってきた。さっきから汚ならしい目で私を見る。

「嬢ちゃん。いくら可愛いからってよ、あんまりお高く止まってると、犯すぞこら!?大人しく着いてきな!」

「ウザイ。私に近寄るな」

「な!このアマ!人が下手に出れば付け上がりやがって!」

私の周りを囲む男達。本当に線の外側の連中は汚い奴ばかりだ。

(本当、悠斗意外の男は汚ならしいかヘタレばかりだ)

私が内心で毒づく。この状況からどうやって抜け出そうと頭を働かせる。 すると、後ろから声が聞こえてきた。

「おいおい。兄さん方。女性相手に随分と強引なお誘いじゃないのかな?」

「ああん?なんだ、てめえは!?」

「ケッ!イケメンが、しゃしゃり出てくんじゃねえよ!」

「さっさと消えな!じゃねえと、痛い目見るはめになるぜ?」

私は後ろを振り向くが、馬鹿デカイ男が邪魔で助けようとした人が見えない。

(なんだろう?聞いたことがある声がした様な?)

私を囲んでいた男達が全員、後ろから声をかけてきた人を囲む。

「うん?まあ、凡人相手に負ける気は無いな」

「なんだと!?クソが!ぎゃふ!」

ナンパ男(今、命名)が宙を舞う。そのまま冬の太平洋に落ちた。海から水柱が高く舞い上がる。

「な!?宏くんが!?テメ!生きて帰れると思うなよ!」

「御託はいいから、掛かって来いよ」

「舐めんじゃねえ!!ぎゃわ!」

「くらえ!!アベシ!!」

ナンパ男その2とその3が宙を舞って海に向かって行く。そのまま、海に落ちて2つの水柱が上がった。

「く、くそ!?だが、俺達にはまだこの人がいるんだ!山田さん!よろしくお願いします!」

「任せろ。俺はさっきの奴等とは違うぜ!覚悟しな優男の兄ちゃん!」

私の前にいた大男が動き出した。大男は指を鳴らしながら助けに入った人に向かって行った。

「くらえ!!黄金の!「正拳!裏拳!肘うち!」グハァ!」

大男が行きなり膝を着く。私からはどうなったのかが分からない。

「俺を倒したからっていい気になるなよ!いずれ第二第三の俺が現れて「水月!頚椎!」ぎゃあああ!!」

大男が浮かび上がり空高く舞い上がりそのまま海に落ちた。一際大きな水柱が立った。

「うそだ・・・・・・、うそだドンドコドーン!」

最後に乗っていたナンパ男は何か口走りながら逃げ出したが、案の定宙を舞って海に叩き落ちた。

「と、大丈夫でしたか?って、なごみか」

「え?」

私は吹っ飛ばされた男の末路を見ていたため、反応が遅れてしまった。
助けてくれた人を見ると、ジーンズにTシャツの上にパーカーを着て、煙草を口に銜えていた幼なじみの悠斗だった。

「ゆ、悠斗?なんで、松笠に居るんだ?」

「そりゃ、用事が有ったから帰って来たんだよ。なごみは・・・買い物帰りか?」

「ああ。そうだよ」

私の手に持っている買い物袋を見てから訪ねる悠斗。私は悠斗の左隣に移動する。

「あ、袋持つぜ」

「ありがとう。それより、用事ってなんなの?」

「まあ、なごみにも言わなきゃならないからな。それは、なごみの家でのどかさんや天王寺さんと一緒に話そう」

私から買い物袋を受けとり右手で持つ悠斗。口に銜えていたのは、煙草ではなくて禁煙パイポだった。私は悠斗の左腕に両手を絡めて抱き付く。

「うん?どうした?」

「悠斗は嫌だった?」

「別に構わない。それより、なごみはもう少し警戒しな。綺麗な女性なんだからさ」

「別に。私に関係のない人間には興味が無いからね。綺麗ってのには、素直に誉め言葉として受け取っておくね」

悠斗はやれやれと苦笑いする。それから、他愛の無い話をしながら自宅に帰る。悠斗も私の家に寄っていく。

居間に入ると、母さんと天王寺がのんびりとお茶を飲んでいた。

「ただいま母さん」

「なごみちゃん~。お帰り。お買い物は済んだのかしら?」

「なごみちゃん。お帰り。荷物が無いようだけど?」

「荷物は私が持ってるんじゃないんだ。それより、お客さんが来たよ」

「あらあら?誰かしら?町内会の会長さんかしら?」

「お邪魔します。のどかさん、天王寺さん。お久し振りです」

私と一緒に居間に入る悠斗。母さんと天王寺が驚いた表情になる。

「あらあら、悠斗君。久し振りね~。今日はお休みなのかしら?」

「やあ!悠斗君。帰って来るなら連絡の1つもくれれば良いのに」

「はは。すいませんね。何分、今回は皆さんに報告する事が有ったので来ましたので」

「そうなの~?まあ、座ってください。お茶を出しますから~」

母さんに進められて座る悠斗。テーブルを挟んで、母さん、天王寺、と向かい合う形で私、悠斗、の順で座る。
悠斗は母さんが入れたお茶を飲む。私は自分で淹れたコーヒーを飲む。
悠斗は湯飲みをテーブルに置く。

「それで悠斗君。話とはなんなんだろう?雰囲気から察すると、かなり重要な話だと思うんだけど?」

「天王寺さん。もしかしたら、悠斗君はなごみちゃんをくださいと言うのかも知れませんよ!?」

「な、なんだって!?のどかさん!こうしちゃいられないよ!早速お寿司やさんに出前を頼まなくちゃ!」

「そうですね。後は、式場選びですね。ああ!なごみちゃんはウェディングドレスか着物のどっちが好きかしら!?」

私の目の前で繰り広げられる、夫婦漫才に私は呆れてため息が出てきた。

(まあ、もし悠斗がそう言ったら私は構わないけど、せめて先に私に告白して欲しいな)


私からしたら決して悪い話じゃないと思いながらも、悠斗をチラリと見ると凄い真剣な表情をしていた。案外母さんが言った事は間違いじゃないのかも知れない。

「ゴホン。お二人とも聞いてください」

「ああ!ゴメンゴメン!悪かったね。それで何かな?」

「悠斗君。なにかしら?」

漫才を止めて真面目な表情で悠斗を見る二人。私も悠斗を見る。居間にはかなり真剣な空気が漂っていた。悠斗が口を開く。
「実は俺、4月から海外勤務になるんです」

「なんだって!?まあ、九鬼財閥に就職してるから不思議じゃないんだけど、またえらく急な話だね」

「そうですね~。それでどちらの国に行くのかしら?」

天王寺が言う通り、悠斗が海外勤務になるのはあまり気にならなかった。まあ、また会える迄に時間が掛かるのは凄く嫌だけど、仕事だから仕方がない。私は黙って悠斗の話を聞く。

「すいません。転勤先はまだ知らされていないのです。来月になれば分かるのですが、それだと皆さんに報告するのが遅れますから」

「そうなんだ。じゃあ、悠斗は暫く日本には居ないんだね」

「なごみ。そうなんだ。それでだ、済まないがまた暫くの間実家の管理をお願いしたいんだが・・」

「構いませんよ~。鍵は預かっていますからね」

母さんが鍵を悠斗に見せる。今、鍵を何処から取り出したんだろう?
私には少なくとも持っている様には見えなかった。

「すいませんが、また暫くお願いします」

「分かった。悠斗任せておいてね」

「なごみ。すまないが頼む」

悠斗が私の頭を撫でてくれる。ゴツゴツしていて男らしい逞しい手だ。

(悠斗の撫でかたは、相変わらず落ち着くな。また、海外に行くのは寂しいけど悠斗は必ず帰ってくるしね)

悠斗に撫でられながらそんな事を考える。
悠斗が泊まっていくと分かったので、その日の夕飯は腕によりをかけて料理を作るのだった。




なごみsideout



揚羽side



我はふと目が覚める。時計を見ると時刻は午前2時を過ぎた所だった。

(ふう。悠斗が居ないとなんとも落ち着かんな。やはり、1人で布団で眠ると寂しく感じるな)

普段は悠斗が共に眠っているため、広く感じる事は無かったが今は悠斗が帰省しているため、我は久し振りに1人で眠っておるのだ。
無論、悠斗の代わりに小十郎が我の専属の任を続けているため問題は何もないが。まあ、襖の向こうで小十郎は待機しておるがな。

(あと、一月か。我が死合に望むのは。我は体調を整ているし、最近の修行で更に強くなってきている。故に、川神に負ける可能性は低いが向こうも1ヶ月後の死合に向けて修行をしているはずだ。どうなるかは、拳を交えてからでしか分からないか)

会場は川神院。警備に万全を期すと川神院側が言っていたから、今回の死合に邪魔が入る可能性は無い。死合に完全に集中出来るのだ。

(次の死合はまさに我にとって最後の死合になる。我は4月から九鬼財閥に就職する故、恐らく川神と拳を本気で交える事は無くなるだろう。後は、後悔しないように全力で挑むだけよ!)

我は拳を強く握る。我の気合は充分だった。


(たが、悠斗は4月からいなくなってしまうのか。いくら、試練とは言え本気で寂しくなってしまうな。せめて、見送る直前まで悠斗の温もりを感じる様にせねば!後は、悠斗と夜伽を頑張らねば!早く、稚児(ややこ)が欲しいからの。ああ!今、悠斗が居ないのが悔やまれる!)

我はため息を吐く。悠斗が居ない夜は温もりを感じれないくて嫌だ。
悠斗の顔を、手を、胸板を、唇を、全身を我は感じていたいのだ。

(く!いかん!我がこの程度を我慢出来ずにどうするのだ!こう言った時は精神統一をするのだ!)

我は布団の中で目を閉じて精神統一を始める。
暫くすると、我に睡魔が襲ってきた。我はその睡魔に身を委ねて眠りにつくのであった。




揚羽sideout 
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