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八条学園怪異譚

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第二十二話 雪男の一家その四

「ふつうのおうどんより売れてるかな」
「そんなに売れてるのね」
「きし麺って美味しいから」
 細かい理由は不要だった、売れる理由はそれで充分だった。
「だから売れるのよ」
「理由はそこね」
「美味しいものは売れるの」
 愛実はマカロニを食べながら聖花に語る。
「詳しい理由は抜きでね」
「そうね。美味ィしいものは売れるわね」
「そろそろお素麺もはじめるし」
 今度は夏季限定メニューだった。
「それも売れるのよね」
「そっちのお店も夏忙しそうね」
「忙しいのはいいことよ。本当にね」
「同感ね」
 二人で笑顔で話しながら家庭科のマカロニを食べたのだった。それが終わってから男子にも振舞うとクラスの中は。
 授業で入って来た先生は苦笑いになってこう言うのだった。
「ちょっと、これはね」
「大蒜臭いですか?クラスの中」
「やっぱり」
「家庭科の授業でかなり使ったわね」
 先生もその原因を察して言う。
「それでよね」
「はい、かなり使いました」
「もうこれでもかっていう位に」 
 女子が笑顔で先生に答える。
「マカロニに使いましたんで」
「もうそれぞれ何個も」
「そうよね。大蒜って身体にいいけれどね」
 先生もその辺りの事情はわかっていた、だがだった。
 その独特の匂いには困ってこう言うのだった。
「匂いがね。自分も食べない限りは」
「じゃあお昼パエリアどうですか?」
「それかスパゲティか」
「焼肉定食とか」
「キムチラーメンもありますけれど」
「パエリアにするわ」
 先生が選んだのはこちらだった。
「そっちにね」
「スパゲティじゃなくてですか」
「そっちですか」
「ドミンゴ先生と一緒にね」
 先生はここでこの名前を出した。
「食べるわ」
「八条大学の先生とですか?」
「スペイン語学科の」
「丁度大学の方に用事があってね」
 それでその人と一緒に食事を採るというのだ。
「そうするわ。あっちの食堂でね」
「ドミンゴ先生って格好いいですしね」
 女子の一人が笑って独身の先生に言った。
「もう如何にもラテンって顔で」
「あら、そうきたのね」
「けれぞ失際に格好いいですよね」
「まあね。ドミンゴって名前のせいかも知れないけれど」
 ドミンゴといって最も有名な人物といえばやはりこの人物だった、それは誰かというと。
「プラシド=ドミンゴのね」
「あのテノール歌手の?」
「あの人ですよね」
「そう、あの人ね」
 三大テノールのこの人物の名前が笑顔で出される。
「あの人そっくりだし」
「兄弟じゃないですよね。実際」
「そうじゃないですよね」
「多分ね」
 先生の返事は今一つはっきりしないものだった。とにかくその人とプラシド=ドミンゴがあまりにも似ているからだ。 
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