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100年後の管理局

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第二十二話 嫉妬、機械王

 
前書き
リアルの方が三月に比べて格段に忙しくなってきています。

そのせいで執筆速度が激減。

かなり不定期になっていきます。 

 
一方その頃、全力全開で逃走している和也達と言えば、
「ハァ!!」
迫りくる追手の中の一体をアリスが切り伏せていた。
「アリスちゃん。大丈夫?」
「はい。ただ、数が多すぎて対処しきれません。」
アリスが時折切り伏せているおかげで、追手の数は20を割り込んでいた。
ただ、それでも20近い数の追手がいるために迂闊な行動を取れなかった。
とはいえ、このまま逃げ続けるわけにもいかない。
誠也の応援に向かわなければならないからだ。
「バルディッシュ!」
『Yes, sir. Lancer set.』
「ファイア!」
アリスは走りながらもバルディッシュに呼びかけ、スフィアを生成。
そこから雷を帯びた魔力弾を追手めがけて打ち出していく。
追手の大半はこれに直撃する。
相手が機械であるために、雷を帯びた魔力弾が直撃したロボットはその場で崩れ落ちていく。
勿論直撃を免れたロボットたちも存在する。
それらはアリスを脅威と認識したのか、アリスに殺到する。
しかしすでにそいつらはアリスの敵ではない。
ものの数体しかいないのなら一体ずつ仕留めていけばいいからだ。
「ハァ!!」
アリスが自分に最も近いロボットを一撃で切り捨てる。
さらに背後から飛び掛かってきた敵は、一歩右にずれることで回避。
アリスはがら空きの背後から一刀を振り下ろす。
そして倒れた相手は無視して、和也達の方へ目を向けると、自分に向かってきていると思っていた相手は和也達を追いかけていた。
アリスはすぐさま一つの魔法を発動させる。
『Thunder move.』
バルディッシュの声が響くのと同時に、アリスの体が魔力光と同じ色に変化した。
直後、一瞬の閃光が煌めき、和也達を追っていた相手はそこに倒れ伏していた。
「い、いまのは……?」
「……。」
アリスの魔法を使う瞬間を見て呆然としてエリとりんか。
先ほどの魔法は目で追うことができていた分だけ驚かずにすんだが、今度の魔法は閃光が瞬いたその瞬間には全てが終わっていため、何が起こったのかなにも理解できなかったのである。
しかしアリスはそれに答えている時間も惜しいと思ったのか、りんか達の驚きには答えようともせずに、また駆け出す体勢を整える。
「和也さん!先に行ってます!」
アリスは和也の返事もまたずに駆け出す。
「エリとりんかは先にりんかの家に戻っていてくれ。俺も行ってくる。」
和也エリを下ろし、自らもアリスを追うように走り出そうとするが、その袖を掴まれる。
「あ………。」
つい思わずといった表情でりんかが袖を離す。
その表情には自分への嫌悪の表情が見てとれた。
りんかは普段、そんな表情をすることはない。
日頃は笑顔を浮かべていることが多く、その表情が負の感情に満ちることなど滅多にない。
そしてそれはりんかの大きな魅力の一つであった。
だからいつも近くに居ることの多い和也は、りんかが何らかの強い負の感情を抱いていることを感じ取っていた。
「りんか。どうかしたのか?」
だから、和也はりんかに問いかけた。
誠也の応援に行かなければならないのは事実だが、誠也が本気で戦うのなら自分よりも強いことは分かっているし、アリスもすでに応援に向かっている。
その事実から、和也は少しだけ誠也を後回しにし、目の前で辛そうな表情をしているりんかに気を配ることにした。
「………。」
りんかは自分を見てくる和也と目線を合わせることができなかった。
自分の中に渦巻いているのは嫉妬と嫌悪。
どうしてエリちゃんだけなのか。
私は除け者なのか。
そんな嫉妬が心の中を渦巻き、そして理性が現状と自分の感情を照らし合わせて嫌悪を吐き出す。
それがりんかの今の状態だった。
「………。」
だから何も言えなかった。
私は大丈夫だから。
そう言うには嫉妬の感情が強すぎて。
私のことはどうなの。
そう問うには嫌悪の感情が強すぎて。
りんかは口を開けなかった。
「りんか……?」
和也が心配そうに顔を覗き込む。
唇を噛みしめて悔しそうに俯くりんか。
正直和也にとって、りんかがこんな状態になっているのを見るのは、幼馴染として長い付き合いのはずなのに、初めてだった。
「りんか……、大丈夫?」
エリが心配そうに肩に手を置く。
しかしバッ!と手を置いたそばから手を払われる。
エリの顔に驚きの表情が浮かぶ。
小さなころから親友だと思っていたりんかからこのような反応を受けるのは、エリにとって初めてだったからだ。
一方、手を払ったりんかも、払った直後にしまったと言う表情をしていた。
りんかはさらに自己嫌悪する。
心配してくれた親友の手すら払ってしまったのだから。
「………。」
「りんか………。」
手を振り払われても、親友の声には心配という感情が溢れていた。
嫉妬。そんなものだとは無縁だとりんかはずっと思っていた。
和也の事を好きなのは自分とエリだけ。
いや、他にもたくさんいるにはいる。和也は顔もよく、体つきも良いのでとてももてるのだから。
ただ、和也はどんな可愛い子に、綺麗な子に告白されても断っていた。
だから、多くの子が脈なしと和也を諦めていたのだ。
諦めていないのはエリとりんかの二人だけだった。
だから、りんかはずっとエリだったら大丈夫。この親友だったら、和也と結ばれても嫉妬なんかしない。ちゃんと祝福できる。そう信じていたのだ。
ただ、現実は違った。
目の前で重なった唇。
それはりんかに痛烈な嫉妬の感情を植え付けた。
私のことは?エリちゃんだけなの?
そんな感情が心の奥底から這い上がってきていた。
改めて振り返れば吐き気がするほどの嫌悪感に見舞われる。
TPOをわきまえず、勝手に嫉妬の感情をむき出しにしてしまった自分に。
こんな醜い自分は誰にも見られたくない。
親友に。
そして、目の前の大好きな人に。
だから。
「「りんか!?」」
初めて逃げ出した。
大切な、大切な、幼馴染の二人から。


「これで――」
『Photon smasher』
「終わりだ!!」
最後に残った三体をまとめて砲撃で吹き飛ばす。
現在誠也の放つ魔法は物理的な攻撃力を持つため、ロボットは再起不能な状態まで破壊される。
「ふぅ。やっと終わりか。」
最後のロボットたちも倒し、誠也を取り囲んでいた全てのロボットの駆逐が終了した。
誠也の周りにはロボットの残骸らしきものがそこら中に散らばっていた。
できる限りの魔法を使い尽くして、駆逐したその結果である。
「あぁあ………。穴があったら入りたい………!」
しかし、誠也はそんな光景に目もくれず悶絶していた。
その理由は戦闘前にあったりする。
「何が『全力全開!推して参る!!』だよ………。恥ずかしすぎる……。」
誠也は戦いとなると自身のテンションを挙げて臨むということが多く、それによってテンションのままに周囲に多くの被害を及ぼし、減給もしくは無給を喰らうことが多々あるわけだがそれは割愛する。何にせよ、上げ過ぎてしまったテンションのままに何かをやらかすことはままあるのだが、今回のそれは特別恥ずかしいものであった。
「ああ………。恥ずかしい………。」
『No problem, master.(問題ありませんよ。)』
「ん?なんでだよ、レイジングハート?」
『I recorded it without mistakes.(間違いなく記録しましたから。)』
「よかねぇよ!?」
思わず突っ込みを入れてしまう。
我が相棒は一体いつからこんなお茶目になったのか。
「というか消せよ!」
『………Sorry, Master.』
「なんでそんな苦渋の決断みたいな反応するんだよ!?しかもダメなのか!!」
レイジングハートの間が、その葛藤を感じさせる。
その上、悩んだ挙句にデータの消去を断った。
誠也はハァとひとつため息をつく。
本当に一体いつの間にこんな感じになってしまったのか。誠也は疑問でしかなかった。
『Master.』
「分かってる……。」
とはいえ、レイジングハートといつまでも戯れているわけにはいかない。
流れてきている魔力の方向、そっちに意識を向ける。
「後で必ず消してやるから覚えてろ……!」
『Sorry. Protecting complete.(保護してあります。)』
「っち!」
消す気の全くないレイジングハートに思わず舌打ちが出てしまう。
誠也は苛立ちを首を振って消し去り、魔力の源の方へ向かうことにした。


魔力の流れてくる方向に向かっていくと、徐々にその魔力の濃度が増していく。
誠也にはその魔力は何らかの指向性を帯びているように感じるが、その内容を読み取ることはできない。
「レイジングハート。解析できるか?」
『Now analyzing……. Analyzing failed.(解析中……。解析失敗です。)』
魔力の持つ指向性の解析を試みたものの、失敗に終わってしまう。
『Sorry, Master.』
「気にしなくていい。」
解析できない以上、現状漂う魔力の正体を知ることはできない。
ならば元凶そのものを探し当て、その正体を見た方が早い。
誠也は走る速度を上げる。
謎の魔力の元凶を早く突き止めるために。
『聖域ヲ汚ス者ニハ死ヲ!!』
『聖域ヨリ排除スル!』
けれども道中、多くの敵が誠也の道を塞ぐ。
アクセルシューターやショートバスターを駆使しながら、それを一つ一つ確実に排除して先に進んで行く。
徐々に進んで行く先、見えたのは不自然に開いた場所であった。
その大きさは一キロメートル四方と言えば伝わるだろうか。かなり広い空間である。
開いた場所というのは様々な目的が存在するはずである。
特に、森林の中に作られている以上、そこには公園なり広場なりの使い方がされるはずである。
けれど、ここにはそれがない。
不自然なまでに何もなく、ただ広いだけの場所である。
誠也はそれを不自然に思い、あたりを見回す。
すると、視界の端に巨大な影が映る。
『我ガ聖域ヲ汚スノハ貴様カ?』
機械の声が響き渡る。
その声は機械音声の無機質さを持ちながら、威厳と力強さを兼ね備えている不思議な声だった。
誠也は声の聞こえてきた方へと振り向く。
そこに居たのは鋼鉄の体を持った巨人だった。
 
 

 
後書き

恋愛は物語に必要なんだ。きっと。 
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