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剣の丘に花は咲く 

作者:5朗
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第七章 銀の降臨祭
  プロローグ 手紙

 
前書き
 遂に始まります第七章銀の降臨祭が……。

 プロローグは何時もとは趣を変えてます。

 それでは、始まります。 

 
『 あんたがこれを読んでいるってことは、オレはもう死んでいるってことだろう。

  あんたのことだ、オレが死んだことで、自分のことを責めてるだろうと思うから、はっきり言っとくが。

  その通りだ。

  オレが死んだのは、あんたのせいだ。

  まあ、だからと言って、別にあんたを恨んでいるなんてことはないからな。そこんところは勘違いしないでくれ。それどころか感謝していると言ってもいいぐらいだ。

  あんたに会ってから、もう一ヶ月が過ぎたのか。

  長いようで短かったな。

  いや、短いようで長い……かな?

  そう言えば、あんたが探している家族……マモルだっけか? 

  探すのを手伝うって言ったけど、すまん、無理になったな。

  だけど、まあ、大丈夫だ……なんて言わないが、あんたなら見つけられるさ。

  何の根拠もないが……。

  そうそう、人探しで思い出したが、あんたは随分オレが人探しを手伝う理由がわからないで不思議そうにしてたけど、どうせもう二度と会うことはないんだ、教えてやろう。

  まあ、何だ。

  色々理由はあるが、一番はあんたに興味を持ったってとこか。

  興味を持った切っ掛けか……まあ、そうだな、あんたが『正義の味方』になりたいって言ったからかな。

  オレの母親がついて行ったていう男と同じことを望むあんたについていけば、母親のことが少しは分かるんじゃないかって思ってね。  






  実はな、オレも自分の家族を探していたんだ。

  あんたも知っての通り、父親の方は絶対分からないから、母親の方だが。

  母親の方も、生まれてすぐに離されてから一度も会ったことないから顔どころか名前も分からない状況だったが、調べている内に色々分かったこともあった。

  母親の方もオレと同じように、ガキの頃から昼は兵士、夜は男どもの人形だったこととか。

  戦場で日本人の男に拾われ、どこかについて行ったってこととか。

  その男が『正義の味方』を目指す男だった……とかね。




  だからあんたに付いていくことにした。

  あんたに付いていけば、母親のことがもっと分かるんじゃないかって思ってね。




  最初は、本当にただそれだけだった。

  母親のことが少しでも分かるんじゃないかって。

  本当に……それだけだったんだけどね。

  何時からか、そんなこと忘れてたよ。

  あんたは本当に馬鹿だったからな。

  他のことに集中してたら、知らぬ間におっ死んじまってそうだったから。

  覚えてるかい? 
 
  あんたと初めて会った時、あんた今にも死にそうな状態だったよな。

  あんたの家族を探している時も、他に困ってる人を見つけると、自分の都合も考えず助けにいったり……村を襲う軍隊に向かって行った時は、正直肝を冷やしたぞ。

  だけど……楽しかったな。

  人を殺すことしか出来ないと思っていたオレが、まさか、人の命を救うとか……出来るとは思わなかったから。            

  『ありがとう』なんて、初めて言われたよ。

  あんたに付いていかなかったら、一生聞けなかっただろうからな。

  なあ、シロウ。

  長いようで短かい。

  短いようで長かったあんたとの旅で、あんたが本当に『正義の味方』を目指していることは分かった。   

  だから、さ、シロウ。

  怒ってもいい。

  悲鳴をあげてもいい。

  泣いても。

  立ち止まってもいい。

  逃げても……いい。

  怪我……しても……いい。

  だけど。

  絶対に死ぬな。   

  死ぬことだけは許さんからな。

  それだけは覚えとけ。



  あとな……最初にオレが死んだのはあんたのせいだって書いているが、あれは嘘でも冗談でもなんでもない。

  事実その通りだ。

  お前のせいじゃないって書いても、どうせあんたのことだ。自分のせいだと悔いるばかりだろうからな。手間を省かせてもらったよ。

  で、これも書いていたことだが、お前を責めてるわけでは、絶対にないからな。

  本当に、感謝してるんだよ。

  あんたに出会わなかったら。

  あんたに付いていかなかったら。

  オレはそう遠くない未来で、無意味に死んでただけだろうからな。

  あんたと出会えたおかげで、オレは色々なことを知った。

  人からお礼を言われると嬉しいこと。

  旨い飯があるということ。

  何気ない会話が楽しいということ。

  人を……愛する……ということ。




  なあ、シロウ。

  本当に感謝しているんだよ。

  お前のおかげで、オレは人になれた。

  オレは……さ。

  物心着く前から兵士として鍛えられ。

  戦場に出ては人を殺し。

  初潮が来ると、新たな兵士を作るためだと男たちの慰み者になり……遂には子供が出来ない身体 にまでされて。        

  そんな時だったな、オレがいた組織が何者かに潰されて、ただ一人俺だけが生き残ったのは。

  生きる理由も目的も何にもないまま、一人放り出され、死ぬことも出来ず。

  だから、唯一気になっていた母親のことでも調べようとあちこちまわってたんだ。

  そんなオレを……お前は救ってくれたんだ。

  これをお前が読んでるってことは、オレは死んでいるというわけだが。

  多分、オレが死んだ理由は、逃げなかったからじゃないかと思う。

  お前に会う前のオレならば、自分が死ぬような状況になる前に、さっさと逃げ出していただろうけど。

  お前のおかげで変われた今のオレなら、誰かを助けるため、例え自分が死んでしまうとしても、逃げることは決してないからな。

  お前に出会わなかったら。

  お前に救われなかったら。

  オレが変わらなかったら。

  オレが死ぬことはなかっただろう。

  だが、『私』は死んでいた。

  シロウ……オレは、お前のおかげで『私』として死ねたんだ。

  ……本当に感謝しているよ。     








  もし……あんたが、オレを死なせたことを後悔してるのなら……さ。

  強くなりな。

  誰よりも……。

  何者よりも……。

  あんたが良く言っているように……全てを救えるだけ強く。

  強くなりな。

  誰も彼も救えるように……。

  全てを救って……自分も救えるほどに……。

  強く……。

                                     ヒサウ  』


 
 

 
後書き
 ヒサウが誰のことかは明記しませんが、フェイトを知ってる人ならわかるかもしれませんね。
 
 一応オリキャラ? ですかね。

 その内過去編で出ると思います。

 それではご指摘感想お待ちしております。 
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