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万華鏡

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第二十話 蚊帳その十一

「カトリックだから」
「ええ。それでもね」
 景子は彩夏に応えながら話す。
「でもプロテスタントの人とも仲いいのよ」
「ふうん、そうなの」
「牧師さんともお付き会いがあって」
「喧嘩もしないのね」
「ええ、全然ね」
「平和でいいわね」
 彩夏もそう聞いてしみじみとして言う。
「そういうjのって」
「そう思うわ、私もね」
「で、プロテスタントもキリスト教だから」
「ワインよ」
 酒はそれになるというのだ。
「赤ね、キリストの血の」
「やっぱりそうなるわよね」
「そうよ。それでだけれど」
 ここで景子は蚊帳の中を見た、そこにはだった。
 一升瓶が三本あった、それを見ながら四人に話すのだった。
「丁度おつまみもあるし」
「蚊帳の中で一杯?」
「今から」
「そうしない?」
 にこりとして四人を誘う。
「蚊帳の中で飲むのもいいわよ」
「そうね。じゃあ今から蚊帳の中に入って」
「そうして」
「そうしよう。じゃあ今から中に入るけれど」
 その際にだというのだ。
「コツは必要だから」
「蚊帳の中に入るのも」
「必要なのね」
「大事なことは中に蚊を入れないことよ」
 それが大事だというのだ。
「蚊を防ぐ為のものだからね」
「蚊を入れたら本末転倒よね」
「やっぱり」96
「だからなの」
 それでだというのだ。
「入るにもコツが必要だから」
「具体的にどうするの?」
「どうやって中に入るんだよ」
「まずはね」 
 景子は四人に実際に実践でやって見せた、まずは。
 蚊帳の下の端を持ってそこを何回もばたばたとした。
「ああ、それでまずは蚊を追い払う」
「そうするのね」
「そうなの」
 最初はそれからだというのだ。
「で、こうしてね」 
 少し上にあげる、そしてだった。
 すぐに潜り込んだ、前転の要領で。
 そして緑の蚊帳の中から四人に身体を向けて言った。
「こうするのよ」
「前転なのね、つまりは」
「その要領で入るのね」
「そうなの」
 実際にそうだと言う景子だった。
「要するに蚊帳の中に大事なのはね」
「蚊を中に入れない」
「それが大事なのね」
「そう、そうすればいいから」
 だから今の様にして中に入るというjのだ。
「隙を見せたら駄目よ、隙間もね」
「じゃあ私達も今からなのね」
「隙を見せないで」
「そう、ただ一度には入らないで」
 景子はこのことも注意した。
「一度に入ったらそれだけ隙間が出来るから」
「蚊帳が開く分余計によね」
「そうなるから」
「だからよ」
 まさにそれが為にだった。
「一人ずつ慎重にね。まあ蚊帳の中に蚊が入っても」
「部屋の端に蚊取り線香焚いてるから」
「大丈夫よね」
「そう、二重にしてるから」
 蚊帳の中に入られてもそれでもまだ安心していいということは確かだった、とにかく蚊には慎重な景子だ。 
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