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ソードアート・オンライン~漆黒の剣聖~

作者:字伏
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フェアリィ・ダンス編~妖精郷の剣聖~
  第四十九話 予期せぬ邂逅

「さて、と・・・俺は領主館に顔出してから帰るが、お前らどうするんだ?」

コスモスから鞘を受け取り、【ザ・ネームレス】を納刀し腰に差すと代金を渡した。そこで今まで黙っていたルシフェルが口を開いた。

(ウチ)はここでログアウトさせてもらうつもりやで」

「俺はもう少しレプラ領を見て回るよ。それから領地に帰る」

「分かった。変に騒ぎを起こすなよ」

「ああ、わかってるよ」

それだけ言い残してコスモスの工房から出て行くルシフェル。それに続く形でソレイユも出て行こうとして、何かを思い出したようで足を止めた。

「そういや、コスモス・・・フレンド登録しようぜ」

「おっ、いいぜ!」

そういってフレンド申請を送るソレイユ。それをコスモスが了承したことを確認すると、今度こそ工房を立ち去っていく。その背中をじっと見つめるステラ。

「どうしたんだ?」

「な、何がや?」

行き成りのコスモスの問いかけに慌てながら応答するステラ。その姿にコスモスは苦笑する。工具を片付けながら口を開く。

「ソレイユの何かが気になっている様子だったからな。何時になく真剣な表情であいつの背中見てただろ」

「ばれてたんか・・・」

自分のことをお見通しな恋人に溜息を吐く。

「負けたことを気にしてんのか?」

「そうやない。ただ・・・」

「ただ?」

「・・・・・・」

圧倒的な実力はさることながら、剣にかける思い、自分を信じぬける強さ。そして、剣士としての気概。言葉では語っていなくとも剣を交えたからわかる。自分とは比べ物にならないほど“剣”に生きる“本物の剣士”を垣間見た。それがステラの心を占めていた。所詮はゲームの中の出来事と思う人もいるかもしれないが、ステラはそうは思わなかった。それを何とかコスモスに伝えようとするが、うまい言葉が見つからなかった。

「そっか・・・なんか嫉妬しちまうなー」

「ちょ、ちょう待ちぃ!そういう意味やあらへんって!(ウチ)の恋人はコスモスだけやで!!」

「くっくっくっ・・・そういう意味で言ったんじゃねぇよ。くくっ」

「うぅ~・・・」

盛大に勘違いをしたステラを笑いながらそう言うコスモスにステラは頬を赤くしながら膨らます。明らかに不機嫌です、と主張している。

「そう膨れなさんなって・・・お前がそこまで褒める奴なら俺も一戦交えとけばよかったな」

言葉にしなくとも通じたみたいで、コスモスはソレイユが出て行った工房の入り口をじっと見つめている。

「そのうちメッセージ飛ばして殺り合うのもいいかもしれないな」

何とも物騒なつぶやきだが、本人はいたって真面目である。静かだが、激しい何かをコスモスが纏ったが、すぐさまそれを引っ込める。とりあえず、当面の問題は機嫌を損ねてしまった愛しの姫君の機嫌取りだろう、と心の中でのみ思うことにした。



周りを見渡しながらレプラコーン領内を周るソレイユ。インプ領では見なかったアクセサリー店や上質な武器が置かれている武器店、防具専門店など数々の店が並んでいる。さすがは細工が得意な種族である。武器のカテゴリー一つとってもレパートリーが半端ではない。

「さすがは鍛冶妖精ってところ、か。それに人種ならぬ種族のるつぼって感じだな、この領地って」

改めて見ると先ほどの様にノームやプーカといった種族を多く見るが、それ以外にもケットシーやシルフ、サラマンダーといった比較的領地が遠い場所にある種族もちらほらと見える。此処で暮らしているわけではないだろうが、央都アルンを除けば一番多種族が集まる場所であろう。

「さて、と・・・目ぼしい物があったら買うが、とりあえずは冷やかしか・・・」

堂々と冷やかし宣言をするソレイユ。肝が据わっているというか、神経が図太いというか、なんと言えばいいか迷うところである。そして、いざ冷やかしへ行こうとしたところで声を掛けられた。

「おお、そこの旅人さんや・・・随分珍しいものをお持ちのようだ。へへっ」

いつの間にか近くにいた薄気味悪い笑みを浮かべた老人がソレイユに向かって話しかけていた。レプラコーンでも他の種族でもないことからNPCであることは間違いない。何かのクエストのフラグか、とかんぐるが老人の頭の上を見る限りそうではないことが判明した。ならば何かのイベントか、と思い一応は話を合わせることにした。

「珍しいものって・・・そんなものあったか?」

「へっへっへっ・・・とぼける必要もないでしょうに。雄鶏の尾羽など手に入れようとして手に入れられる代物じゃないでしょう?」

ここまで来てソレイユはこれがどんなイベントなのか察しがついた。ならば拒む理由はなくこのイベントに乗っかるだけである。

「そうはいってもな・・・なかなか使い道がなくて困ってるんだよ」

「それなら、いい情報がありまっせ。へへっ」

そういってどこかに歩いていく老人。このまま別れても得することはないので老人の後を追うソレイユ。しばらくすると誰も寄り付かないような裏路地に入りぼろぼろの家に入っていく。

「で、そのいい情報を知るにはどうしたらいいの?」

「いえいえ、どうもせずとも教えますとも。へへっ」

薄らと笑みを浮かべて老人は言えの中にあったぼろぼろの椅子に座る。ソレイユは腕を組み壁に背を預けるだけである。もちろん武装は解除していない。

「んじゃ、聞かせてもらおうじゃねぇの」

「へっへっへ・・・そう急がずとも情報は逃げやしませんって。へへっ」

「・・・・・・」

随分と勿体つける老人に若干の苛立ちを感じないわけでもないが、ソレイユは老人が言葉を発するのを待つ。

「実は、その雄鶏の尾羽を欲しがっているものがいるらしいのですよぉ。へへっ」

「またけったいな御仁がいたものだな。どこのどいつなんだ、それを言ったのは?」

その質問に老人は意味深な笑みを浮かべた後、答えた。

「炎の国に住まいし巨人の伴侶となりし女巨人でさぁ。へへっ」

抽象的に言う老人の言葉の意味を正確に理解していた。つまりは――

「(ヒントは与えた。その言葉が指すものは自分で探し出せってことか)」

ということである。それをソレイユは面倒だとは思わない。こういうものは色々楽しみ方があるものだし、頭を使って解くのは割と得意なことなのでこの情報をくれた老人には感謝しなければならないだろう。

「貴重な情報をありがとう。そういや、あんたの名前を聞いてなかったな」

「ロプトル。しがない老人ですよ。へへっ」

「なんでしがない老人がそんな情報知っているのか不思議でならないなー」

「それはお教えすることはできないんで、申し訳ありませんね。へへっ」

「いやいや、気にすることはないよ。本当に感謝してるんだ。ありがとう、“ロキ”」

老人が名乗った名前を言わず、北欧で有名な神の名前を口にするソレイユ。その言葉に今まで薄気味悪い笑みを浮かべていた老人はその笑みを凍らせたが、次の瞬間今までの老人の声ではなく、艶のある声が響いた。

「なるほど」

雰囲気を一変させた老人は光に包まれると今までの姿が嘘みたいな美しい顔立ちとなっていた。しかし、その顔に浮かんでいる表情は邪悪極まる笑みだった。本来の姿に戻ったロキはソレイユのことを見据えている。

「何がなるほど、なのか教えて貰ってもいいか?」

「いや、気にするな。単なる自己完結だ」

「あっ、そう」

特に気にした様子もなくそう言うソレイユ。そんなソレイユをロキは面白そうに見つめる。まるで値踏みされているような気分になり、その視線を受けるソレイユは不快な気持ちしか浮かんでこない。

「なかなか腕が立つようだな。それならば問題ないだろう」

「何が問題ないのか教えては・・・貰えそうにないな」

「その尾羽の使い道のヒントは与えたのだ。それ以上何を望む?」

「特に何も望みはしないさ。もう一つ言わせてもらえば、あんたが言っていたヒントはもう解けたぞ」

「ほう。それが真なら、随分と知恵のまわる妖精だな」

「褒め言葉、として受け取っておくことにするよ」

それじゃあね、とロキの方を見向きもせずぼろ家の扉から出て行こうとするソレイユ。そんなソレイユを見たロキは小さくだが笑い声をあげる。

「くっくっくっ・・・やはり妖精とは面白いものだな」

「・・・・・・」

背中越しにロキを見るソレイユ。その視線を受けてもなお、ロキは笑うことをやめようとはしない。

「かつては我が義兄オーディンと刃を交えた妖精がいたと聞いていたことがあるが・・・貴様のような者がいるのを見ると存外嘘ではないらしいな」

「・・・・・・」

初めて聞くことに若干驚きを覚えるソレイユ。まさか主神と刃を交えている者がいようとは考えもしなかった。いや、それ以前になぜ主神が妖精郷に?などと疑問は尽きないが今はどうだっていい疑問である。

「そう睨むな。今は何もしないさ・・・偽りの王が統べる世界などに興味はない」

「偽りの王、だと?」

聞き逃せかない単語が出てきたため、思わずソレイユは聞き返してしまう。

「なんだ、知らなかったのか?今この世界を統治している妖精の王は偽物だ。まぁ、我には関係のないことだがな」

そう意味深なことを述べるとロキは光に包まれる。その光が消えると、そこにロキの姿はなかった。そのことを確認したソレイユはふぅと溜息を吐く。

「まさかこんなイベントが起こるとはな・・・まぁ、なんにせよいろいろ面白いことが分かったな・・・偽りの王、か・・・」

それだけ呟くと、ボロ家から出てインプ領を目指して翅を羽ばたかせる。ルシフェルのこともあるのだが、まぁ、別行動をとっている以上おいて行っても問題ないだろう、と勝手に結論付けて帰ってしまう。その後は特に何かに巻き込まれることなく領に着き、宿屋でログアウトすることができた。
 
 

 
後書き
あー・・・ちょっとやりすぎた感がありますねー

ルナ「まさか神様がここで登場とはねー・・・これはブーイングが殺到かな?」

こ、恐いこと言うんじゃないよ!!(ガクガクブルブル

ルナ「だって、ねー・・・」

ま、まぁ、あれだ!感想などお待ちしております!!

ルナ「ブーイングじゃなくて?」

そんなのまちたくもないよっ!! 
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