ソードアートオンライン VIRUS
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真の姿
前書き
ストック切れた……
しかもタイトルてきとうだな……
後ろから上がる雄叫びによって足を止めたキリトとゲツガは後ろを振り向くと今まで蛹のように動かなかったトンキーの胴体が割れて螺旋状の尖塔が飛び出していた。それは螺旋状のものが伸び上がっていたものが見上げえるほど大きくなると花が開くように広がっていく。尖塔ではなく四対八枚の翼だった。
「おいおい、なんかスゲーの出てきたぞ……」
「ああ、鬼が出るか蛇が出るかって感じだな……」
キリトとゲツガが呟くとにゅっと、以前と変わらないゾウっぽい顔を出して長い鼻を掲げ、高らかに声を放つ。その後、八枚の翼をはためかせて舞い上がる。
「なんか逃げたほうがよくねえか?」
キリトがそう言った瞬間、トンキーの翼が前触れもなく光りだした。
「やばっ……」
ゲツガは素早くその場を飛んで離れる。その時にリーファが動いていなかったので身体を抱え込んで雪の中に突っ込んだ。その後、トンキーの二十本もある肢から恐ろしい太さの雷撃が次々と降り注ぐ。その雷撃を食らったウンディーネのパーティーは轟音とともに吹き飛んでアバターが四散する。
「丘下まで後退!密集陣形で回復及び再支援!」
弓を持つ部隊長らしき男はすぐに指揮を取って二十名弱のプレイヤー再び陣形を組みなおさせる。そして音を立てながらタンクのプレイヤーが前に出て壁を作って後ろのメイジが魔法を唱え始める。しかし、宙をすべるようにウンディーネを追ったトンキーは翼を光らせ、純白の光芒に満たされた。その瞬間、幾つかの光の輪がウンディーネのパーティーに降り注ぐと魔法を使おうとスペルを唱えていたメイジの魔法がキャンセルさせられる。
「クソッ!」
リーダーらしき男が感情をむき出しにして叫ぶ。そして矢をつがえるとトンキーに向かって連射する。その矢の後ろからは黒い煙の尾を引いていて、空中からはウンディーネの姿を隠していた。
「撤退、撤退!!」
とその声とともに、ウンディーネの部隊は一直線に逃げ去っていく。ウンディーネのパーティーはものすごいスピードで雪の稜線に姿を消した。その後をトンキーは追うこともできただろうが勝利を確信したように声を上げたあとくるりと方向を変えてゲツガ達がいるほうに向かってくる。そしてゲツガ達の頭上で止まると象頭に付いた
六個の目玉で三人を見下ろした。
「………で、この後どうするの?」
「さっきも、聞いた台詞だな。っていうことはさっきと同じ展開に……」
キリトの呟きに答えたゲツガは苦笑する。もちろん、トンキーの答えは無造作に伸ばされた鼻でゲツガ達を地面から引っ張りあげた。
「やっぱりか!!」
「デジャブだな、おい!」
そう言ってゲツガは抱いていたリーファを上にしてトンキーの背中に着地した。
「ゲ、ゲツガ君!ゴメン!」
「いや、ゲームの中だからそんなに痛くないからいいって」
そう言って離すとリーファとゲツガは身体を起こす。リーファはトンキーの背中をなでながら言った。
「ほんと、一時はどうなるかと思ったけど、トンキーに助けられたね。ありがとー、トンキー」
そう言うとキリトの胸ポケットからユイが抜け出してトンキーの背中に降りるとすりスリとなでながら言った。
「ほんとにありがとうです、トンキー!お兄ちゃんたちも感謝するですよー」
「わかってるよ。ありがとな、トンキー」
ゲツガもトンキーの背中をなでていうと、トンキーは耳をわさわさと動かした、ようなきがした。
しかし、どこに向かうのだろうかと、思いキリトたちにも聞いてみると、わからないと、トンキーに任せると帰ってきた。まあ、わかるのはトンキーだけだよなー、とため息を吐いて、トンキーに任せた。トンキーはどんどん上に上昇していく。向かっているのは天蓋のようだ。
そしてトンキーが大きな螺旋を描いて高度が上がるにつれてヨツンヘイム全土が視界いっぱいに広がる。
「わぁ……」
リーファはその光景に声を上げる。それもそのはずだ。この世界は下はとても残酷な場所でしかなかったが上から見ると雪や氷がとてもいい感じのコントラストを成していた。その光景に見ているとある思いが芽生える。この景色をユキにも見させてあげたいと。しかし、彼女は今、どこにいるかはまだ分かっておらず、この木の根の上の天辺に行くしかない。
しばらく、その景色を見ていると急にリーファが魔法を使って結晶を取り出した。それが気になり聞いてみる。
「何だ、それ?」
キリトも気になったようで近づいてくる。リーファはそれを聞いて答えた。
「遠見氷晶の魔法よ。あのでっかい氷柱の先っぽに何か光ってるでしょ……」
そういわれたのでゲツガはその方を見ると何か小さいものが光っていた。形は剣のようだ。しかし、剣とはわかるが何の剣とはわからない。と、急に遠見氷晶を覗いていたリーファが急に声を上げた。
「うばっ!!」
「どうしたんだ?邪神でも来たのか?」
「ち、ちがうの……あの剣……」
そう言ってリーファは氷柱を指差して言った。
「せ……聖剣エクスキャリバーだよ。あれ。前にALOの公式サイトで写真だけ見たもん……ユージーン将軍の持つ魔剣グラムを超える、たった一つの武器……今まで所在も解らなかった、最強の剣」
「さ、最強……」
その言葉を聞いたゲツガとキリトは唾を飲み込んだ。
氷柱の先にある光る剣を見ていたゲツガは視線を引き剥がし、行く先を確認した。二つの物が視線に入る。一つは氷柱の中ほどからプラットフォーム上に飛び出したバルコニー。それはトンキーの飛行経路を掠める位置にあった。飛び移ることは可能だろう。そしてもう一つは、天蓋近くから垂れ下がる階段を刻まれた一つの根っこ。それは天蓋をも貫いてこの上にあるアルンに繋がっているだろう。この氷柱に飛び移るならもう、上にはいけないと思う。ゲツガは今の目的を優先して残ることに決めた。そして、キリトたちを見ると視線をバルコニーと天蓋を交互に見ていた。残り時間も少なくなってきたころ、ゲツガは二人に向かって言った。
「今はやめておいたほうがいいぞ。この人数と装備じゃ取りに行くのは難しいと思う」
「……わかってる。だけど、ネットゲーマーはああいうの見ると、つい行きたくなっちゃう衝動がさ……」
「うーん、確かにね」
そして、バルコニーの前に付くと二人はピクンと身体を動かしたが飛び移ることはなかった。
「ゲツガ君の言う通り、今回は諦めよ。そして、また来よ。仲間をいっぱい連れてきて」
「確かにな……。ああ、でも、行ってみたかったな~」
「あー、もう!未練たらしすぎだよ!!」
ゲツガは苦笑しながら遠ざかるバルコニーを見る。聖剣エクスキャリバーか……俺にはあわないと思うけど、冒険する分は構わないなと思った。そして、天蓋から垂れ下がる階段に辿り着くとトンキーは長い鼻を階段近くの根っこに巻きつけて停止した。ゲツガは立ち上がり階段に飛び移る。そしてリーファ、キリトも飛び移るとトンキーは鼻を解いて鼻をこちらに伸ばす。リーファはそれを握って言った。
「……また来るからね、トンキー。それまで元気でね。もう他の邪神にいじめられたら駄目だよ」
そして手を離すと今度はゲツガが握る。その後にキリト。最後にユイと握る。
「またいっぱいお話しましょうね、トンキーさん」
ユイが微笑みながら言った言葉に反応してかトンキーはふるるると喉声を出した。その後、翼を折りたたんでものすごい勢いで下降して行ってしまった。
ゲツガはトンキーを最後まで見送って言った。
「じゃあ、行こうぜ。この上に」
「うん!多分、この上はもうあるんだと思う!!」
「よし、じゃあ最後のひとっ走りと行くか。……なあ、二人とも。上に戻っても、聖剣を見つけたことはナイショにしとこうぜ」
「あーもう、なんか大事なものが台無しになったよ……」
「確かに。まあナイショにはしておくから別にいいだろ。はやく上行くぞ」
そう言ってゲツガは階段を登っていく。最初は二段飛ばしで行ったがそれでもまだ先は長いためゲツガは五段を一気に飛ばして駆け上がった。数十分はかかっただろうか、ようやく目の前に小さな光が見えてきた。そして後ろにいるキリトとリーファと顔をあわせて無言で頷く。そしてゲツガ達はさらにスピードを速めて木の扉を蹴り開けた。
飛び出して出てきた場所は苔むした石のテラスだった。勢いを翅を使ってうまく和らげて着地する。そして視界の先には積層都市の夜景が広がっていた。そして、その奥に一際大きな存在感を感じさせる樹を見てゲツガは呟いた。
「あれが……世界樹か」
そういった後リーファがゲツガの隣まで来て言った。
「間違いないよ。ここがALOの中心、アルンだよ。この世界最大の都市」
「ああ、間違いない」
そう言うとキリトが言った。
「ようやく着いたんだな……」
そして、ユイがキリトの胸ポケットから顔を出して笑みを浮かべる。
「わあ……!わたし、こんなに人がいる場所、初めてです!」
そして、あたりを見回していると、パイプオルガンのような重厚なサウンドが大音量で響き渡り、空に目を向けた。その後、ソフトな女性の声がメンテナンスをすることを告げた。
「メンテナンスが始めるみたいだから、今日はここまでだね。一応宿屋でログアウトしよ」
ゲツガとキリトは頷く。その後キリトはリーファに聞いた。
「メンテってのは、何時まで?」
「今日の午後三時までだよ」
「そうか……」
そしてゲツガは一度世界樹に視線を向けた。そして視線を戻してリーファに言った。
「さ、早く宿屋に入ってログアウトしようぜ」
「賛成。でも、俺もう素寒貧だから、あんま豪華じゃないところがいいな」
「……いいカッコして、サクヤたちに全財産渡したりするからよ。宿屋代くらいとっておきなさいよね!」
リーファはそう言うとキリトの胸ポケットにいるユイに話しかけた。
「パパはああ言ってるけど、近くに安い宿ある?」
ユイはしばらくゲツガと同じように世界樹に視線を向けていたようでリーファの方を向いて笑顔を浮かべ答えた。
「ええ、あっちに降りたところに激安があるみたいです!」
「げ、激安かぁ……」
リーファは顔を引きつらせるとユイが言った。
「それか、お兄ちゃんに奢ってもらって普通の宿に泊まるかです」
「そういえば、ゲツガ君もお金持ってるって言ってたよね?もしかしてキリト君ぐらい持ってるの?」
そう言ってリーファは詰め寄ってくる。
「あるはずないだろ。俺はそこまでお金を持ってないやつから譲ってもらったからな。ユイも余計なことは言わんでいい」
「はいです!」
ユイは敬礼してからそう言った。そしてキリトとともに激安の宿に向けて足を進ませる。そして最後に世界樹に視線を向けた。
『あの、上に手がかりが……』
「おーい、ゲツガ君。早く行くよ~」
リーファに呼ばれていたのに気付いたゲツガは、今行くといって歩き始めた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
黒い一室の中央にたくさんのノイズが入っている。その近くには老人の姿が見える。
「ふんっ、あの程度でくたばるようなやつだったとわな。生きる術はあいつが特化してるだろうと思って選んだが、正直人選を間違えた。適合率が高いやつがもう一人いたからもう一人の方がよかったかもしれん」
「いいえ、そのようなことはありません。あやつは、武器がまだ本命の両手剣ではありません。それに、本当に力を使うとしたら命がけの時のみでしょう。それに黒の剣士よりもあやつの方がいいです。頭の回転の速さや適合率ではなく力の扱い方は間違いなくこいつのほうが一枚も二枚も上手でしょう」
老人はノイズに向かって話しかける。
「そうか……。なら、そろそろ力も戻ってきたころあいだ。ペインアブソーバを」
「いや、その必要はありません。私の予想だとすぐにやつはあの世界の真実に辿り着くでしょうから」
「お前が言うならそうしよう、最適化。だが、早くしろよ。この狭い中じゃ力は半分しか戻らん。あの世界に早く根付かねばならん」
「もう少しなので辛抱してください」
「……わかった。なるべく早くしろ」
「わかりました。我が主」
そしてノイズは消えて、フィッティングと呼ばれた老人も消えた。
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