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真剣恋にチート転生者あらわる!?

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第6話

上杉錬side



俺は今、目の前で行われている手合わせに目を離せないでいる。
大佐と悠斗が互いに対峙しているが、未だに動きが無いのだ。
互いに放つ空気が只者では無いのだ。

ゴクリ

誰かが唾を飲み込む音がした。次の瞬間、大佐と悠斗が動いた。

「はあ!せい!」

ヒュンヒュンと大佐が拳を放つ。悠斗は身体を僅かにずらして回避する。

「はあ!せい!でゃあ!とりゃあ!」

更に大佐の拳の嵐が悠斗を襲う。悠斗はひたすら回避に徹している。

「す、すげえ!大佐の攻撃を全部避けてる!?」

「レン兄!どうなってるんですか!?僕には全く見えないんですが!?」

「く!さすが悠斗だ!田尻殿の拳の嵐を容易に避けている!」

そう。大佐と悠斗の戦いは、辛うじて俺の眼に見えている程のレベルなのだ。俺は大佐に鍛えてもらってるから、辛うじて見えているがハルには見えないだろう。小十郎には見えているのだろう。大佐が攻勢を更に強める。

「どうした!ただ、避けてるだけでは私は倒せんぞ!」

「・・・・・・ふ!」

大佐の右ストレートパンチに悠斗がカウンターパンチを放つ。大佐の右頬に悠斗の拳が食い込む。

「くっ!やるではないか!どうした!?もっと攻めて来んか!」

「分かった!ならば、更にスピードを上げるぜ!」

次の瞬間、大佐と悠斗の姿を眼で終えなくなった。互いの拳がぶつかり合う音が聞こえるだけだ。

「せいせいせいせい!!」

「はいはいはいはい!!」

ヒュンヒュンヒュンヒュンと風切り音がする。最早、人知を越えた闘いが繰り広げられている。

「な、なんて凄い戦いなんだ!これが、大佐のレベルなのか!?」

「え?え?ええ?」

「く!揚羽様と修行し続けたが、田尻殿や悠斗のレベルにはまだ、俺は到達出来ないのか!?」

二人の戦いは更に激しさを増し始めた。

「やるではないか!久々に血が騒ぐぞ!不動!」

「ああ!まさか、九鬼家侍従隊以外に手応えのある相手がいるなんてな!楽しいぜ!田尻殿!」

「ほざけ!まだまだ、行くぞ!」

「当たらんよ!」

二人を中心に竜巻が発生している。空も暗くなってきた。

「わあ!レン兄!空に雲が発生してますよ!さっきまで、あんなに明るかったのに!」

「おお!本当だ!田尻殿と悠斗の戦いは凄い次元だ!!」

「て!驚いてる場合か!!屋敷に被害が出ないように対策なんて、してないんだぞ!?」

空に暗雲が立ち込める。ポツポツと雨が降り始めて来た。雷もあちこちで鳴り始める。
両者が地面に着地して、対峙した。

「やるな!不動!ワシの必殺の一撃でケリを着けてやるわ!」

「ならば、迎え撃つだけだ!」

「はあ!」

「そら!」

両者が構える。そして、拳と拳が放たれる。次の瞬間、突風が俺達を襲う。

「うわぁ!」

「あわわわわわわ!?!?レン兄!飛ぶ、飛んじゃいます!?」

「くうぅ!これでは前が見えない!?」

大地を確りと踏みしめて、なんとか立っている俺と小十郎。ハルは飛ばされそうになったが、俺と小十郎の後ろで服を掴んで耐えている。
両腕をクロスさせてガードしているが、風が強すぎるのだ。

(やばい!俺も持たない?!)

体が少しずつ浮かび上がり始めた。だが、次の瞬間風が消え去ったのだ。 ガードを解いて顔をあげるとそこには、青く透き通った空に虹がかかり美しい風景の中に倒れている大佐の姿と、倒れている大佐に背を向けて口にタバコ?をくわえた悠斗の姿だった。

「田尻殿。貴方と手合わせ出来た事は、とてつもなく良かったよ」

「ふふ。私を上回る強さとわな。私も老いた訳よ」

何故か負けたのに嬉しそうに話す大佐。あの瞬間、二人にしか分からない事があった様だ。

「わわわ!大佐!無事ですか!?」

ハルが救急箱を持って、大佐に駆け寄って行く。俺と小十郎も急いで駆け寄る。すると、大佐が立ち上がった。

「大佐!怪我はありませんか!?」

「なに、少々身体は痛むが問題はない。不動の力量は私より遥かに上だった。見てみるがよい」

大佐が執事服の上着をめくる。するとそこにはアザひとつ無かった。

「ほ、本当だ!アザが無い!」

「なんでだ!?大佐が倒される位なんだから、最低でも内出血かアザが残るはずなのに!?」

「こ、これはいったいどういう事ですか!?田尻殿?!」

「なに、私と悠斗が最後に拳を交えた瞬間突風が吹いたであろう。あれは悠斗の拳が速すぎた為に起きた突風なのだ。私の腹に眼で追えない速さで拳を放ったのだ。それで私は倒されたのだ。しかも、私にアザひとつ付けない様にしてな」

俺が立っていられなくなるほどの突風の原因が、悠斗が放った拳らしい。

(すげえ!悠斗は生身で突風を起こせる程強いのかよ!)

悠斗の規格外の実力に驚きを隠せなかった。
悠斗の方を見ると、何時のまにかタバコ?は消えていた。

「さて、手合わせも出来た事だし中に戻りませんか?」

「そうするか。森羅様達も暇を持て余してる止も知れんしな」

「はい。戻りましょう!大佐、倒れた際に汚れませんでしたか?」

「なに。スペシャルな私の服は、地面に倒れても汚れたりしないのだ」

大佐が髭を整えながらいい放つ。いろいろと謎の多い執事服のようだ。小十郎が悠斗に話しかけている。悠斗はタバコ?を口にくわえていた。

「悠斗!どうすれば、田尻殿を倒せるほど強くなれるのだ!!」

「うん?まあ、日々努力するしか無いだろうな。強くなるのに近道は無いからな。後は、訓練以外に実戦で経験を積むしか無いな」

「あれ?なんだ、アドバイスは普通なんだな。てか、此所(久遠寺家)は禁煙だぞ!」

「ああ。それくらいは分かってるさ。だいたいこれはタバコじゃなくて、禁煙パイポだ。タバコは吸わないさ。揚羽様の成育に悪影響が出るかも知れないからな。だいたい、強くなるてのは本人の意志が重要だ。後は、才能が何処までついてくるかさ。まあ、努力が実を結ぶかは分からないけどな」

そう言って、禁煙パイポをポケットに閉まった。俺達はそのまま屋敷の中に戻るのだった。




上杉錬sideout



悠斗side



田尻殿との手合わせを終えた俺達は、久遠寺家の屋敷の中に戻りリビングで寛いでいる女性陣と合流した。田尻殿との手合わせの結果を久遠寺家の方々に報告したら、大層驚かれてしまった。
森羅様、未有様、夢お嬢様は信じられないと言った表情をされていた。
田尻殿も負けを認めていたので、俺の報告に同意してくれた。
それから、未有様に半ズボンを履かないか凄まじく勧誘されたが、丁重に断っておいた。
今は、リビングで久遠寺家の方々と談笑しているところだ。俺の隣には錬と小十郎と南斗星がいる。

「なあ?悠斗はどうして九鬼家に仕える事になったんだ?」

「あ!確かに僕も気になるな」

「それはな「それは、悠斗が九鬼家に仕える事が既に運命だったからだ!!」って、被せんなよ小十郎!」

俺が理由を話そうとした途端、まさかの小十郎が遮ってきた。いきなり訳の分からん事を言って、俺の台詞を潰すとかどんだけだよ小十郎。

「悠斗が揚羽様の侍従になることは、既に運命ずけられていたからだ!」

「喧しい!黙れ!」

「ゲフ!ギフ!ガン!ゴホー!グフォ!?」

小十郎に5発拳を打ち込む。小十郎は断末魔を叫びながら、リビングの床に倒れた。

「俺は・・・生きる!!揚羽様・・・」

「あ!ごめんなさいね。たまたま、見えなかったので」

倒れた小十郎は、未有様におかわりの紅茶を入れる為にポットを持った美鳩さんに、頭を踏まれて気絶してしまった。

「あははは?!流石に小十郎君は大丈夫かな?」

「まあ、小十郎なら大丈夫でしょう。ハルが一応手当てしてますし」

「まあ、簡単に死ぬような奴じゃないしな。生身で大気圏突入するとか、メガ粒子砲くらっても死ななそうだしな」

救急箱を持った千春に介抱される小十郎。千春は包帯を巻いてあげる辺りが優しいな。そんな二人を尻目に話を元に戻す。

「と、俺が揚羽様に仕えた理由だったな。まあ、簡単に言えば揚羽様に拾われたからだ」

「「拾われた?」」


「ああ。揚羽様に倒れている所を保護されてな。そのあと目が覚めてから手合わせして勝って以来、揚羽様専属執事になったのさ。実際、小十郎の方が遥かに先輩なんだが、何故か俺が上の立場になってしまったのさ」

「へえ~、そうだったのか。てっきり、昔から居るのかと思ってたからさ」

「うん。錬君の言う通りだね。僕も昔から居るのかと思ってた」

二人とも頷きならがそう言う。そんなに古くからいるように見えるのだろうか?
そんな、何気ない話をしていると森羅様が話を始めた。

「そう言えば、揚羽は忠誠の儀式を侍従にさせたりしてはいるのか?」

「む?森羅殿。初めて聞きましたが、忠誠の儀式とは何ですか?」

「ふむ。九鬼家ではさせてないのか。まあ、簡単に言えば使用人達に忠誠があるか、試す簡単なゲームみたいなものだ。試しにしてみよう。ベニ。忠誠の証を」

「はい。森羅様!手を失礼します」

先程まで、森羅様のお側で待機していた朱子が森羅様の左手の甲にそっと、唇を当てた。そして、すぐに離してまた側で待機する。

(ふむ。昔の騎士の真似事かな?まあ、ゲームみたいなものと言っていたしな。これは、単なる遊びの一種なのだろう)

俺は揚羽様の後ろで待機しながら、そんな事を考える。先程までいた、錬と南斗星はそれぞれの主の側で待機している。

「と、言った感じだな。ものは試しだ、やらせてみたらどうだ?」

「そうね。揚羽の侍従にも、やらせてみると面白いかも知れないわよ」

「あんまり深く考えないでやらせてみるのが、吉だよ揚羽ちゃん」

腕を組み考える揚羽様。少しして、口を開いた。

「久遠寺家の方々にこれだけ言われたのだ。我もしてみるとしよう。ゆ「はい!揚羽様ああああ!この小十郎に是非ともやらせてくださいませえええ!」チッ!小十郎か。まあよい。まずは、小十郎からしてみせい」

先程まで倒れていた小十郎が復活して、即座に揚羽様の正面に立つ。てか、今、揚羽様が舌打ちしたような気がしたのだが?聞き間違いだろうか?

「あ、揚羽様!て、て、手を、し、失礼します」

「うむ。苦しゅうない。良きに計らえ」

小十郎が揚羽様の右手を両手で持ち上げて、ゆっくりと顔を近付けて行く。

(揚羽様の手!揚羽様の美しい手!揚羽様の美白の手!)

だが、忠誠のキスをするはずなのに途中で小十郎の顔が止まってしまった。しかも、中腰のままでだ。

「どうした小十郎?早くせんか?」

揚羽様の問いかけに反応しない小十郎。なにやらブツブツ言っているのが聞こえる。

「揚羽様の手にキス!揚羽様の手にキス!」

「ええい!気色悪いは!バカ者が!」

「も、申し訳ございません!揚羽様あああああああ!」

小十郎の呟きを聞いた揚羽様が切れた。アッパーで打ち上げられた小十郎は、地面に落下してくる途中で横腹に蹴りをくらい窓に向かってぶっ飛んで行く。窓の側に居たベニスが窓を開けるとそのまま、外に放り出された。そのまま、植木に突っ込んで刺さって止まった。

「全く!小十郎めが!仕切り直しとさせてもらいたいが、よろしいですか?」

「ふふふ。構わんよ。なかなか、面白かったしな」

「まあ、キチンとした方も見てみたいしね」

「ファイトだよ!揚羽ちゃん!」

久遠寺家の方々は、再度させる事に賛成らしい。 再び、忠誠の証をやることとなった。

「ゆ、悠斗!我に忠誠の証を示すのだ!」

「はい。かしこまりました」

俺は揚羽様の前に立つ。そして、忠誠の証であるキスをする場所を考える。

(さて、何処にするかな?)


1・唇(セーブ推奨、CG取得)


2・唇(セーブ推奨、CG取得、君主エンド)


3・唇(揚羽エンド、牡丹がポロリと散る、結婚式、子育て)



まて、明らかに選択がおかしいだろ!てか、選択が唇以外に無いのかよ!

(もっとしっかり考えるんだ俺!)

頭を振り、今の選択を選んだ場合の結果を考えてみる。

(1と2なら、多分ヤバイことになるな。いろんな意味で。3は多分触れちゃいけない気がする。具体的には、俺の貞操が危ない!てか、最悪結婚式まで行くかも知れん!)


そんな事を考えていると、揚羽様から声をかけられる。

「どうしたのだ?悠斗よ。早く我に忠誠を誓うのだ」

「は!分かっております」

揚羽様に催促される。久遠寺家の方々は皆、俺を見ている。改めて考えてみる。


1・髪


2・額


3・唇


俺はどうやら、頭部関係以外は思い浮かばない出来ないらしい。

「(ならば、此処にするか)では、決まりました。揚羽様。失礼します」

「うむ。悠斗は何処にしてくれるのか、楽しみだ!」

俺は一歩踏み出して揚羽様に近寄るのだった。




悠斗sideout



揚羽side



我は今、心臓が早鐘の如く動いている。今、我は悠斗に忠誠の証を示させている。
久遠寺家の方々に相談した結果、こうすれば良いと言われたのだ。流石は森羅殿だと感心させられた。我に無い発想だった。

(さあ、悠斗よ。早く我に忠誠を誓うのだ!そうすれば、我は、我は!)

そう。悠斗が忠誠のキスをしてくれれば、我に理由が出来るのだ!悠斗にキスをする理由が!
先程から我の正面に立って、考えている悠斗に催促をした結果、遂に悠斗が動き出した。

(さあ!何処にしてくれるのだ!?我の胸のドキドキが止まらぬ!今、我はきっと頬が紅くなっておるに違いない。は、恥ずかしい!だが、これも悠斗に我が本気であることを伝えるための作戦なのだ!失敗は許されん!)

悠斗が我の髪を撫でる。悠斗のゴツゴツした左手がそっと我の髪を撫でてくれる。

(ああ。悠斗の手は落ち着くな。悠斗は紋白は割りと撫でるくせに、我を撫でてはくれんからな)

悠斗を見て見ると、互いの視線が重なった。互いの距離は本の僅かしか開いてない。息がかかる程の距離だ。

(悠斗はまさか、我の唇にキスをしてくれるのか!?そ、想定外ではないか!)

我は最早、今まで考えていた対処の仕方など既に頭に無かった。ただ、悠斗の唇に視線が集中してしまったのだ。
そして、悠斗の唇が近付いて来る。
我は目を閉じて悠斗の唇が重なるのを待つ。
だが、我が悠斗の唇が触れたと感じたのは、唇では無く額のキズであった。目を開けて見ると、悠斗が我の額のキズに忠誠のキスをしていたのだ。 悠斗の暖かさを額に感じる。

(ああ。悠斗め!我を期待させておいて、わざと外したのだな!なら、考えがある!)

乙女の心を弄だ代償を払ってもらうと、我は心の中で決めた。やがて、悠斗は離れ我の正面で方膝を着いた。

「ふーん。額か。また、面白い場所だな。何故、悠斗は揚羽の額に忠誠のキスをしたんだ?」

「理由ですか?単純ですが揚羽様の額のキズはわざと付けられたものです。 普通の者ならキズを嫌がりして隠したりします。ですが、揚羽様はそれを気にせず堂々とされています。そんな揚羽様だからこそ、俺は仕えたいと思ったのです。たかが、キズごとき気にする必要すら無いと。其れ故、揚羽様の外見的不利になりえるキズに忠誠のキスをしたのです。そんな、キズなど気にせず、真っ直ぐに進んで行く揚羽様を側で見ていきたいと思ったからです。それが、理由です」

「そうか。悠斗なりの考えがあったのだな」

そう言って森羅殿は、紅茶を飲む。我は、今、悠斗に言われた事が頭の中で繰り返されている。

(側で見ていきたい。側で見ていきたい。側で見ていきたい。ふははは!既に我と悠斗は相思相愛だったのではないか!ならば、我からも言わねばな!)

我は頬が緩むのをなんとか抑える。そして、方膝を着いて忠誠を誓うポーズをしている悠斗を見る。

「悠斗。貴様の忠誠は良く伝わった。故に我から褒美を取らせたい」

「は!ありがたき幸せです。揚羽様に忠義が伝わり良かったと思います」

「悠斗。我の側に寄るのだ」

「は?はい!」

悠斗を手招きする。悠斗は立ち上がり我の側に来た。我の側で再び片膝を着いた。高さが我の座ってる位置とほぼ同じ位になった。
我は手を伸ばし、悠斗の後ろ頭を抱き締めて我の顔に近付ける。

「あ、揚」

何か言おうとした悠斗の唇を奪う。我の唇と悠斗の唇が重なりあう。
ただ、互いの唇が重なりあうだけの軽いキス。
我の身体はまるで炎に包まれたかの如く、熱くなった。

(これが、悠斗の唇か。熱く、それでいて柔らかい。不思議と落ち着く)

「ほう!やるな」

「あらあら。お暑い事で」

「あわわ!揚羽ちゃん、大胆だよ!?」

「へぇ~、やるじゃないさ」

「錬ちゃんと熱い抱擁をしましょうかしら?錬ちゃん!お姉ちゃんの胸にいらっしゃい~」

「あはは。おめでとう」

「え!?鳩ねえ!」

「はー。す、凄いです」

「うむ。青春だな」

久遠寺家の方々が、様々な反応をする。我は悠斗の唇をそっと話す。だが、頭を押さえている手は離していない。

「ふはははは!悠斗よ!貴様の唇はこの九鬼揚羽が頂いた!そして、これが我の悠斗に対する気持ちだ!伝わったであろう!」

「ええ。とても強く感じました。ならば、俺の返事も伝えます」

「うむ。来てみよ」

今度は悠斗が我の唇を奪う。更に、悠斗は我と違い舌を入れてきた。

「ち・・・ちゅ・・・ちゅぱ・・・ん!んん!!・・・ちゅ」

悠斗の舌は我の歯を1本1本丁寧に舐める。そして、僅かに歯と歯の開いた隙間から我の舌を軽く叩いてきた。我は恐る恐る舌を動かす。

「ちゅぱ!・・・ちゅ・・・くちゅ・・・ん・・・ち・・・あ・・・ん」

最初は我はぎこちない動きしか出来なかったが、悠斗が舌に舌を絡めてリードしてくれる。段々と我も動かし方が分かってきた。

(ゆ、悠斗はキスが上手いのだな。そうすると、我以外にも経験があるのだな。だが、そんな事などどうでもよい。今は、このキスが気持ちいいのだ)

漸く悠斗と気持ちを通じさせた事による、幸福感が我を包み込んでいる。久遠寺家のリビングに粘着質な水音が響く。

(ああ。このまま、キスを続けたい。ずっと、繋がっていたい)

我はそう思っていたが、永遠に続くと思われたキスに終演がきた。悠斗がそっと唇を離す。互いの口に唾液で出来た糸が1本だけ出来たが、悠斗が指でそっと拭き取った。

「揚羽様。これが俺の返事です。伝わりましたでしょうか?」

「うむ。しかと伝わったぞ!でも、出来れば口にして言ってくれぬか?」


「はい。揚羽様「あー、ゴホン。一応、他人の家なのだ。それ以上は勘弁してもらえないか?」と、そうでしたね」

まさに悠斗が言おうとした瞬間、森羅殿が言葉を遮った。我は悠斗の頭を解放する。周りを見ると、田尻殿を除く全員が顔お紅くしていた。

「まあ、なんだ。まずは、おめでとう。良かったな揚羽。悠斗から良い返事がもらえて」

「そうよね。まあ、ここまで見せ付けられるのはちょっと、頭に来るけど幸せにね」

「ありがとうございます。森羅殿。未有殿。やはり、久遠寺家の方がに相談したのは正解でした」

我の勘は間違いでは無かったのだ。やはり、我より年長の者に相談したのは正解だった。

「なに。気にする事は無いさ。夢の大事な親友なのだからな。また、何時でも相談しにくるが良いさ」

「そうね。何かあったら相談なさい。私は姉さんと違って確実に力になるから」

「ありがとうございます。そうだ!我友夢はどうされたのだ?」

「あー。うん。夢とハルには衝撃が大きすぎた様だ。そこでダウンしてる」

森羅殿が指を指す。そこには南斗星に介抱されてる夢と、田尻殿に介抱される小十郎と千春がいた。錬と美鳩が濡れたタオルを額に当てるなどしている。

「まあ、後は二人でゆっくり話しなさい。私達は、静かにしてるわ」

「重ね重ね感謝致します。悠斗。先程の言葉を言ってくれぬか!?」

悠斗は苦笑いしながら、我の耳元に寄ってきた。

「では、揚羽様。お慕い申しております。好きです揚羽様。一人の男として」

我は一気に心臓が止まりそうになった。嬉しくてたまらなかった。顔が再び熱くなる。
我は再び悠斗の頭を抱き締める。

「悠斗。我も好きだ!大好きだ!ずっと、側にいてほしい。だがら!我に付いてまいれ!」

「はい。揚羽様。付いて行かせて参ります」

悠斗はそう言って我の唇を塞ぐ。我は本日3度目のキスをするのだった。




揚羽sideout



おまけの久遠寺家



九鬼揚羽一行が帰宅したあと、長女森羅と次女未有はリビングで酒を酌み交わしていた。

「ふぅ。揚羽の相談事が上手くいって良かったよ。まあ、あれだけ面白いものを見れたしな」

「そうね。一人の女としては羨ましいわね。悠斗なら、揚羽を大事にするでしょうにね」

互いにワイングラスを傾けながら、話をする。
森羅と未有はそれぞれ、ワインを口にする。

「はぁ。私にもいい男が現れないかな?流石に私より、年下に恋人が出来たのを見せ付けられたら羨ましかったぞ」

「あら?最近姉さんは、錬にちょっかい出してるじゃない。てっきり、錬狙いかと思ったのだけど」

「さてな。それに、ミューたんだって錬にちょっかい出してるじゃないか」

「姉さん程じゃ無いわよ。しかし、悠斗か。いい男だったわね」

ワインを飲んでいた森羅は、グラスを口から離して答える。

「そうだな。もし、悠斗が揚羽のところで拾われていなくて、家に来ていたら今頃誰かと付き合ったかも知れないな」

「そうね。否定できないわ。まあ、ifはあくまでifでしか無いわ。まあ、あの二人に祝福があることを祈るだけね」

「それもそうだな。なら、二人の記念に」

「「乾杯」」

チンとグラスを当ててワインを口にする二人の女性がいた。だが、それを見ていたのは空に浮かぶ満月だけだった。




おまけの久遠寺家sideout 
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