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子を喰う親

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第四章

「十一時、そろそろよ」
「彼が帰って来る時間ね」
「そうだね」
「ええ、いつもふらふらになって帰って来て」
 つまり泥酔して帰宅してだというのだ。
「それからだから」
「じゃあその時にね」
「警察の人にも来てもらって」
「警察の方はスタンバイしてるの?」
「ええ、彼の家の傍にパトカーを出してもらってるわ」
「そこにいてくれているよ」
 二人にとってはいつものことだ、だからこのことも慣れていた。
「後はね」
「ことが起こった時にね」
 二人はシンディアに確かな顔で答案えた、そしてだった。112
 外で遂にだった、怒鳴り声と泣き叫ぶ声が聞こえてきた。
 三人は同時に顔を見合わせてそのうえでだった。
 家を出る、その斎パトカーに連絡をするのも忘れない。
 彼の家の前で警官達と合流する、警官達が先頭に立って家に飛び込み。
「動くな!」
「それ以上は止めろ!」
 家の二階、娘の部屋で小さな女の子を棒で殴る歪んだ人相の男にホールドアップをした、不意を衝かれた男はすぐに拘束された。
デヴィットは虐待、障害の現行犯で逮捕された。それから取り調べが行われその結果多くのことがわかった。
 リエはオフィスでヘンリーと向かい合いながら顔を見合わせて言った。
「お決まりだけれどね」
「嫌な話だね」
「ええ、お決まりの展開ね」
 リエは溜息混じりに言った。
「仕事がなくなって夫婦喧嘩が絶えなくなって」
「奥さんを殴ってね」
「それで離婚」
「けれど親権は無理を言って何とか持って」
 娘を育てようとした、この時点ではだった。
「愛情はあったけれど」
「仕事がなく離婚の慰謝料のこともあって」
「お酒に逃げてね」
 まさにお決まりの展開だ、リエは自分がステレオタイプのことを言っていることを自覚しながらヘンリーに述べていく。
「それでその愛している筈の娘を虐待する様になった」
「あのままいったらね」
「ええ、大変なことになっていたわ」
 虐待の行き着く先はバッドエンドしかない、それはだった。
「自分の子供を殺していたわ」
「彼にとっても娘さんにとってもよかったね」
「ええ、逮捕されたことはね」
「そうだね、最悪の結末も多いし」  
 ヘンリーもそれはよく見て来た、暴力や餓えの結果無残に死んでいった子供達は後を絶たない、その忌まわしい事実をだ。
「自分の子供を殺さなくて済んだよ」
「そうね。虐待は悲劇だけれど」
「虐待で自分の子供を殺すことはさらに酷い悲劇よ」
「自分の親に殺されることも」
 それもだというのだ。
「だからね」
「うん、今回はまだよかったよ」
「父親はアルコール依存症と暴力行為のカウンセリングを受けることになったわ」
 リエは逮捕の後のことも話した。
「後親権はね」
「父親からは離れるね」
「勿論よ。母親になったわ」
「じゃあ母親が引き取るのかな」
「そうなると思うかしら」
 リエは硬い面持ちでヘンリーに問い返した。
「この場合は」
「そうだね、この場合はね」
 ヘンリーもわかっている感じで答える。 
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