魔法大戦リリカルクロウcross【Z】‐無印篇‐
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第1話『それは出逢い…なの?』
鳴海市…
喫茶店、翠屋…
小綺麗なこの喫茶店は高町家が運営する人気の店で今ちょうど夜の閉店時間になり後片付けに追われていた…。
「よいしょ、よいしょ…」
「なのは、無理するなよ?」
「大丈夫、これくらい平気……あわわわわわ!?」
ガシャーン!!
今、店の中で積み上げられた皿を片付けようとした栗毛のツインテールの少女が兄に心配されると同時に盛大にコケ皿を落とし全て割ってしまった…。
「あーあ、やっちまったな…」
「うう…ごめんなさい…」
「しょうがないな…。片付けは俺がしておくからゆっくり休め。晩飯の時間になったら呼ぶから。」
「うう…わかったなの…。」
そして、少女、高町なのはは自室にとぼとぼとその場を後にし自室に戻る。
「はあ……失敗しちゃったなの。」
彼女はため息をつきながら窓に身体を寄せ夜空を見上げる…。
「あ!流れ星…。」
その夜空には流れ星が飛び交い幻想的な情景を演出している…。そしてちょうど、彼女の前に流星の1つが通り過ぎ…
「え?」
一瞬、彼女は目を疑った…。確かに…明らかに光輝く飛行物体が自分の視界を横切ったのだから。
「うわああああああ!?くそう!」
ソレは、クロウの制御を失ったブラスタであり、バランスを保てず不規則な飛び方と姿勢でもはや不時着は免れなさそうだ…。
「クソッタレがああああああああああ!!!!!」
ズドーン!!
やがて、ブラスタは翠屋の中にある中庭に凄まじい音を立てて落下。それに気がついたなのははバタバタと階段を下り中庭に出る。すると、そこには彼女の姉と兄、父と母の姿があり、クレーターの真ん中で目を廻して気絶している少年を囲んでいた…。
「これはいったい…」
「多分、地獄からきた蛍さんなの。」
なのはの兄はもはやあんぐりとしているが、なのははそこら辺に落ちている木の枝でクロウを突っつき、ううっ…と彼が呻くととっさに母の後ろに隠れる。
「おい、君!大丈夫か!!」
「ああ……チーフ、待ってくれ。ソレは無いって…。せっかくチャラになったのに100万Gに逆戻り…」
なのはの父がここで起こしてみると、どうやら何やらうなされるような呻きをあげる。
「仕方ない。桃子、この子を病院へ連れて行こう。それに、どうやら事情ありそうだしな…。」
「そうね。」
「俺もついてく…!」
「私も!」
ここで、父、母、兄がクロウを自家用車に乗せて病院へ向かおうとしたので彼女もついていこうとする。
「うう……嫌だ。金は欲しいが女は嫌…」
そんなことなど露とも知らず気絶しているクロウは車の後部座席に寝かされしかも、なのはに膝まくらされながら病院へ搬送されるのであった…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
どこかの竹藪…
「うう……」
船を襲撃した少女、フェイトは身体に打撲の痛みを訴えながら目を覚ました…。
「ここは…?」
「!目を覚ましたか!!アリシア!!」
彼女はまだ霞む視界で自分の近くで焚き火をしていることが分かり、そして、自分に心配そうに声をかける少年に気がついた。
「だ…れ…?」
「俺だ!竜馬だ!!わからないのか!?」
少年は竜馬と名乗り、黒髪に目もつり上がり人相はあまり良いとは言えない。見た目は中学生ぐらいだろうか…
「すいません…アナタとはお会いしましたっけ?」
「っ!………本当に…覚えてないのか?俺の事…」
「…はい。」
「そうか……」
少年は肩を落とすと背を向ける…。
「悪かっな。他人の空似だったようだ。俺の名前は流 竜馬。ただの通りすがりさ。お前の名前は?」
「フェ、フェイトです。早乙女フェイト…。」
「早乙女!?」
少年は『早乙女』という単語に反応すると、しばらく考えこみまた、口を開く。
「お前の母親は、プレシア・テスタロッサ…いや、早乙女プレシアか?」
「え?母さんのことを知っているんですか?」
フェイトは竜馬が自らの母を知っているようなので驚くが竜馬は顔を歪ませると微かにこう呟いた…
(プレシアのババア…何を考えてやがる!)
数秒後、竜馬は常人離れした速度でその場から姿を消し、フェイト1人だけがポツンと取り残された…。
「あの人…いったい何だっただろう…」
彼女は謎の少年、竜馬の思いつつも待機状態のバルディッシュを起動させ現在位置の確認をしだした…。
その上空を横切った影にも気づかず…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
只今、クロウは絶賛悪夢にうなされていた…。
最初の光景は…
「フラフラちゃ~ん♪」
翠髪の喪服をモチーフにしたゴスロリコスチュームの少女。
「うわああああああ!?」
クロウは逃げる為走る…走る…
しかし、その先には…
「おめでとさん!君の借金は1000万G+だよ!」
「さあ、早く耳揃えて返せやあゴラ!!」
「うわああああああ!?」
巨大な狐のお面を被った女性にスキンヘッドにちょび髭の人相の悪い大男。クロウは再び逃げる…だが…
「さあ、至福の悲鳴をあげろ!!!!」
「何だお前!!!!!?」
今度は妙な黒ずくめの紅い瞳の青年が待ち構えおりまたも逃げる…。
「はあ…はあ…流石にここまでくれば大丈夫…?」
散々、走ったクロウだがここで自分が奇妙な場所にいることに気がつく。
「…教会?」
そこは教会であり彼の目の前の先にはステンドグラスに十字架…さらに…
2人の花嫁…
片方は白に赤いレースが入っており、片方は白に桜色のレースが入っている。
「さ、クロウパパ!!早く!」
「へ?パパ?」
いつの間にか彼の横には自分をパパと呼ぶ金髪に赤と紫のオッドアイの少女。彼女に手を引かれ無理やり2人の花嫁のもとへ連れて行かれるクロウ…
「クロウ…」
「クロウくん…」
そして、クロウに迫る2人の花嫁…後ずさりするクロウだが何かに躓き、後ろに倒れこむ。
「なっ!ベッド!?」
その先はダブルより大きいサイズのベッドであり気がつけば周りは教会からホテルの一室に変わっている。
「ひいっ!」
逃げだそうとするクロウだがあっという間に2人の花嫁に押し倒され、拘束されてしまう。もがくクロウだが女性の2人の力は案外と強く思うように身動きがとれない。
「クロウくん…もうごまかしは効かないなの。」
「ここで、しっかりと決着をつけてもらうぞ。」
そのまま2人はクロウの服を剥いでいき…
「うわああああああ!?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ああああああああ…!?」
少年、クロウ・ブルーストは小綺麗な病室で悲鳴をあげながら目を覚ました…。服は自分のお気に入りのジャケットではなく、典型的な患者のアレ。ご丁寧にケガしたところ全てに包帯が巻いてあり、相棒のブラスタは待機状態のネックレス状態で手元の机の上にある。
「それにしても、ここはどこだ?」
今、彼が最も気になるのは自分の居場所。朝日が昇る景色から見える街並みをみればここは自分の通いなれた街、ミッドチルダではないことがわかる。まあ、あのワームホールに巻き込まれてそんな自分の慣れた世界に転移することなどまずありえないのだが…
「まず、現在位置を確認してみるか…」
「うう…」
「!」
待機状態のブラスタを取ろうとしたクロウの耳に入る突然の呻き声…
そういえば自分の股あたりあたりがやけに生暖かく重い…
さらに、何やらシーツが盛り上がっている…
「…」
そして、恐る恐るシーツを剥いでみると…
「すぅー…すぅー…」
1人の栗毛の少女がスヤスヤと寝息をたてていた…。
「うわあああああああああああああああ!!!?」
また、クロウはとんでもない悲鳴をあげた…
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アクシオン財団所属、
スコートラボ…
「一応、アンタの妹を助けた件については貸しにしとくからね兎。」
『ぐぬぬ…。』
金髪のボブに狐のお面をつけた和服姿の女性がモニターごしにある女性と話をしていた。狐のお面の女性の名はトライア。そのモニターに映る女性はクロウが助けた少女、箒の姉『篠ノ之束』であり心なしか箒とどことなく似ている。まあ、箒は機械的な兎耳を束のようにつけていないが…
『じゃあ、束さんがお礼として…』
「ISで儲けた金をこっちに回すのは無しだ。貸しの返し方は私が決めさせてもらう。」
『うう…ブラスタの設計のデータ分でチャラ…』
「馬鹿言うんじゃないよ!あの『打鉄』とか言うポンコツのデータがなんだってんだい!」
『と、言いながらブラスタの展開技術…束さんのISをベースにしてるよね?』
「はっ!展開技術だけだろ?たかがそれくらいで釣り合いがとれると思ったら大間違いだよ。」
何やら色々と交渉しているようだがことごとく束の提案をはねのけるトライア。束もトライアに貸しを作りたくない(作ると恐ろしいことになりかねないため)ため焦っている。
「じゃ、切るよ。今度、嫌がらせの無人機送りこんできたり、ハックしてきたらあんたの研究所を灰にしてやるからね。」
『あ、待っ…』
ブツン
トライアは半ば強引に話を切り上げると通信を切断し、モニター画面が消える。そして、ふぅー…と溜め息をつく。そして、電卓を取り出すと計算を始める。
「さて、うちの大事な稼ぎ手とブラスタは何処行ったんだが…。それに、船の修理やら人的被害の総額を足すと…」
チャリーン☆
「おめでとさん、クロウ!お前の借金は100万Gに逆戻りだ!」
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