八条学園怪異譚
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第二十一話 ランナーその四
「そうなのね」
「そうだよ、そこにいるから会えばいいよ」
「ええ、ただ結婚してるってなると」
「雪男が旦那さんだよ」
「ヒマラヤの?」
「それナイスボケだね」
口裂け女は聖花の今のいぶかしむ声にすぐに笑って返した。
「日本の雪男だよ」
「そういう妖怪もいるのね」
「毛むくじゃらでね」
そしてだというのだ。
「生はげというかヒバゴンみたいな人だよ」
「ヒバゴンって」
「ヒバゴンが服を着てる感じだよ」
「そうした人なのね」
「で、二人の間には子供もいてね」
まだあった。
「その子は雪ん子っていうんだよ」
「完全に家庭ね」
「だろ?面白いだろ」
「ええ、まあね」
聖花もこう返す。
「妖怪に家族っていうのも」
「子連れ幽霊だっているじゃない」
口裂け女はこの話も出した。
「ほら、毎晩水飴を買う女の幽霊ね」
「その話は聞いたことがあるけれど」
「あれもなんだよ」
「家族なのね」
「人によるけれど妖怪も幽霊も家族があるんだよ」
人間と同じくそうだというのだ。
「鉄鼠の旦那なんか女房は五徳猫のおばちゃんだしね」
「鼠と猫の夫婦?」
「そうだよ」
「また変な組み合わせね」
「妖怪だとそういうのもあるんだよ」
そうだというのだ。
「犬と猫ってのもあるよ」
「どっちにしても普通に仲悪いわよね」
「そうよね」
「猫又もいれば犬の妖怪もいるしね」
この学園にだというのだ。
「動物園の犬猫コーナーに紛れ込んでるよ」
「ああ、あの寅猫よね」
聖花はその猫を知っていた。
「普段はもう一本は隠してるけれどね」
「見ればわかるでしょ」
「ええ、注意して見ればね」
わかると口裂け女にも返す。
「わかるわ」
「だろ?妖怪ってのはそうした動物の頃の仲の悪さも越えられるんだよ」
「それも凄い話よね」
「まあそうでない場合もあるけれどね」
こうしたことは所謂ケースバイケースだった、そうしたことを話していて愛実が聖花にこうしたことを言った。
「じゃあ今度行くのは」
「動物園?学校の中の」
「それか冷凍庫ね」
そのどちらかだというのだ。
「どっちかにする?」
「そうね、どっちにするかはまだ考えてないわよね」
「そこまではね」
愛実もそこまでは考えていなかった、それで聖花に返した。
「まだだけれど」
「そうなのね。けれどそれはこれから考えていいし」
「そう、とにかく次はどちらかにしましょう」
「それで今はだけれど」
聖花はあらためて愛実に言った。
「その工業科のランナーだけれど」
「その人よね。もう工業科の前にいるけれど」
その正門の前に来ていた、そこからだった。
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