バカとテストと召喚獣 ~失った少年~
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第1章 僕と文月学園。
三時間目 観察処分者&お昼
前書き
かなり空いてしまい、済みませんでした。
えっと、作中でもう、蒼空がみんなのことを下の名前やあだ名で読んでますが、許してください。
Aクラスへの宣戦布告。
それはFクラスにとっては現実味の乏しい提案にしか思えなかった。
『勝てるわけがない』
『これ以上設備を落とされるなんていやだ』
『姫路さんがいたら何もいらない』
ん?なんかいまへんなのが―
「そんなことはない。必ず勝てる。いや、俺が勝たせてみせる」
誰からどう見ても戦力差は明らかなのに雄二はそう宣言した。
『何をバカなことを』
『出来るわけないだろう』
『何の根拠があってそんなことを』
確かに勝てるわけがない。
でも、雄二も何か考えがあるのだろう。
いくら、Fクラスでも勝てない勝負をやるほど雄二はバカじゃない。
そんな気がした。
「根拠ならあるさ。このクラスには試験召喚戦争で勝つことのできる要素が揃っている」
雄二の言葉を聞いてクラスのみんながさらにざわつく。
まぁ、そうだよね。
「それを今から証明してやる」
さて、なんだろうね。
「おい、康太。畳に顔をつけて姫路のスカートを覗いてないで前に来い」
.....え.........?
「................!!(ブンブン)」
「は、はわっ」
必死になって顔と両手を左右に振り否定する土屋くん(?)
あれ?なんか顔に畳の跡が...?
姫路さんがスカートの裾を押さえて遠ざかると土屋くんは壇上へと歩き出した。
あそこまで、恥も外聞もなく堂々と低い姿勢から覗き込むなんて、ある意味尊敬できる。
それに気付かなかった姫路さんもある意味凄いけど。
「土屋康太。こいつがあの有名なムッツリーニだ。」
なんかすごい特徴発見しちゃったよ。
『ムッツリーニだと.......?』
『バカな、ヤツがそうだというのか.....?』
『だが見ろ。あそこまで明らかな覗きの証拠を未だに隠そうとしているぞ.....』
『ああ。ムッツリの名に恥じない姿だ.....』
でも、なんでムッツリーニなんだろう。まさか....いやでも哀れすぎる...でも、さっきの行為からだと.....!
哀れだな。
「???」
斜め前では、姫路さんが多数の疑問符を浮かべていた。
「姫路のことは説明する必要もないだろう。みんなだって、その力はよく知っているはずだ。」
すんませ~ん僕わからないんですけど~。
「えっ?わ、私ですかっ?」
「ああ。うちの主戦力だ。期待している」
すんませ~んマジでわかりません。
『そうだ俺たちには、姫路さんがいるんだった』
『彼女ならAクラスにも引けをとらないな。』
『ああ。彼女さえいれば何もいらないな』
なんか今姫路さんに熱烈ラブコール送ってるヤツいなかったか?
確かに可愛いけども!
抱きまく...なんでもない。
「木下秀吉だっている」
あ~あの女のこね
『おお.......!』
『ああ。アイツ確か、木下優子の.....』
同じ苗字ってことは、姉妹がいるのかな。
...。
「当然俺も全力を尽くす」
と、今はこっちに集中しなきゃ。
『確かになんかやってくれそうな奴だ』
『坂本って、小学生の頃は神童とか呼ばれてなかったか?』
『それじゃあ、振り分け試験のときは姫路さんと同じく、体調不良だったのか』
『実力はAクラスレベルが二人もいるってことだよな!』
うおお!雄二って実はかなり頭がいいのか。
周りもいい雰囲気だった。クラスの士気がかなり上がっていた。
「それに吉井明久だっている」
.......シン―
そして一気に士気が下がった。
「ちょっと雄二!どうしてそこで僕の名前を呼ぶのさ!全くそんな必要はないよね!」
『誰だよ、吉井明久って』
『聞いたことないぞ。』
さっき自己紹介で超目立ってたじゃん。
「ホラ!せっかく上がりかけていた士気に翳りが見えてるし!僕は雄二達と違って普通の人なんだから、普通の扱いを―って、なんで僕を睨むの?士気が下がったのは僕のせいじゃないでしょう!」
「雄二...何も睨んだりしなくても(←超小声)」
「そうか。知らないようなら教えてやる。コイツの肩書きは《観察処分者》だ」
よかった...僕の言葉は聞こえてなかったようだ。
そういえば《観察処分者》って...
「あ、それ僕もだ」
「「なにぃ!?」」
そんなに驚かなくてもいいんじゃないかな雄二と明久。
『......それって、バカの代名詞じゃなかったか?』
クラスの誰かがひどいことを言った。
「ち、違うよっ!ちょっとお茶目な16歳につけられる愛称で」
「そうなの?」
てっきりクラスの子のが本当なのかと思ってた。
「ああ、そうだ。バカの代名詞だ。」
あ、やっぱりそうなんだ。
「肯定するな、バカ雄二!」
「あの、それってどういうものなんですか?」
姫路さんが小首をかしげて聞いてくる。
ああ、いつ見ても癒される...
「具体的には教師の雑用だな。力仕事とか言ったそういう雑用を、特例として物に触れるようになった召喚獣がこなすといった具合だ。」
「僕のは、ちょっと特殊能力がついてるんだけどね。」
「そうなんですか?それってすごいですね。召喚獣って見た目と違って力持ちって聞きましたから、そんなことができるなら便利ですよね」
姫路さんが僕と明久を交互見ながら言う。
「あはは。そんな大したじゃないんだよ。」
明久が否定している。
「で、蒼空はどう特殊なの?」
「基本的には一緒だよ。痛みや疲れのフィードバックだってあるし。ただ、ちょっと戦闘能力が上がったくらいだよ」
明久に答える。
『おいおい。《観察処分者》ってことは、試召戦争で召喚獣がやられると本人も苦しいってことだろ?』
『だよな。おいそれと召喚できないヤツが2人いるってことだろ』
あ、バレっちゃった。
正直に言おう。僕は痛いのが嫌いです。やっぱり痛みって何度味わってもなれないよね。
「気にするな。蒼空は知らんが、明久は間違いなく役に立たないバカだからな」
「雄二。そこはフォローするところだよね。」
「まぁ、そっちに入らなかったから別にいいや。」
「蒼空もだよ!」
「とにかくだ。俺たちの力の証明として、まずはDクラスを落とそうと思う」
「うわ、すっごい大胆に無視された」
「(棒)ドンマイ、アキヒサー」
「うわ、今度は口だけで慰められたよ...」
まぁ、どうでもいいとして...
「みんな、この境遇は大いに不満だろう?」
『当然だ』
「ならば全員筆を執れ!出陣の準備だ!」
『おおーーっ!!』
「俺たちに必要なのは卓袱台じゃない!Aクラスのシステムデスクだ!」
『うおオーーっ!!』
「お、おー....」
はぁ。やっぱり姫路さんはかわいいなぁ~。
守ってあげたくなる。実際は僕が守られるんだろうけど。
「明久にはDクラスに宣戦布告に行ってもらう。無事大役を果たせ!」
「良かったじゃん。明久!大役だってさ!」
「.......下位勢力の宣戦布告の使者って大抵酷い目にあうよね?」
「大丈夫だ。奴らがお前に危害を加えることはない。騙されたと思って逝ってみろ」
「なんだか体の直感が100%ヤバイって伝えてるんだけど」
多分それは、本当だろう。
「(棒)ソンナコトナイゾ、アキヒサ。」
「本当に?」
あ、信じちゃった。
「もちろんだ。俺を誰だと思っている」
断言したよ...雄二....。
「大丈夫、俺を信じろ。俺は友人を騙すようなことはしない」
「わかったよ。それなら使者は僕がやるよ」
あ、信じっちゃったよ。
しょうがないなぁ...
「(明久、もしもやばかったら、この番号にかけて。僕の携帯の電話番号だから)」
「ありがとう、蒼空。」
そして明久は死者らしく、堂々と胸を張ってDクラスに向かって歩き始めた。
「騙されたぁっ!」
そんな声と共に明久が教室に転がり込んできた。
ちなみに制服はところどころ敗れている。
...まぁ、普通そうだよね。
なめられてるって思われるわけだし。
「やはりそうきたか」
平然という雄二ってすごいよね...
だって明久が殺意に満ちた目で雄二と僕を睨みつけ...ってちょっと待て!
「明久、なんで僕まで睨むの?」
「蒼空からもらった番号かけたら変なおばさんにかかって『まぁ、ナンパかしら』って言われたんだけど!?」
「だって、適当に書いたもん♪」
「...」
無言になる明久。
「吉井くん、大丈夫ですか?」
「あ、うん大丈夫。ほとんどかすり傷」
「吉井、本当に大丈夫?」
「平気だよ、心配してくれてありがとう」
「そう、よかった....ウチが殴る余地はまだあるんだ....」
「ああっ!もうダメ!死にそう!」
「よかったじゃないか、明久。こんなに心配してもらえて(ニヤニヤ)」
「僕たちのおかげだね(ニヤニヤ)」
明久があわてて転げまわるのを見ていう。
ほんとに明久をからかうのは楽しいな♪
華音じゃないけどSに目覚めそうだ。
「そんなことはどうでもいい。それより今からミーティングを行うぞ」
「ラジャー」
ふざけてそんなことを言いながらついていく。
後ろで明久たちが話しているのを聞きながら、校内を歩いていると先頭の雄二が屋上に通じるドアを開けた。
「わぁー♪」
屋上の眺めが予想以上に良かったので、素直に歓声を上げる。
眺めがいい場所はいいな。やっぱり。
「明久、宣戦布告はしてきたな?」
雄二ががフェンスの前にある段差に腰を下ろす。
「一応今日の午後にって伝えてきたけど」
明久の言葉と同時に僕らも腰を下ろす。
「それじゃぁ、先にお昼かぁ」
「ああ、そうなるな。明久、今日の昼くらいはまともなものをたべろよ?」
「そう思うなら、パンでも奢ってくれると嬉しいんだけど」
はて?
「明久って昼食べない派なの?」
疑問を口に出すと、
「いや、一応たべてるよ?」
「....あれは食べてるというのか?」
どういう事なんだろう?
「何が言いたいのさ」
「いや、お前の主食って水と塩だろう?」
え?
「きちんと砂糖だってとってるよ」
と、いうことは...!
ガシッ
「同士よ!」
「「「「何ィィィィィィ!!!!」」」」
こんなところで同士と会えるとは!
「本当に!?」
「きょうはちょっと違うけど、本当だよ!」
「じゃぁ、きょうは?」
パカっ(←鯵の塩焼き)
「.....」
「いやぁ、釣りに行ったらすごく釣れてさ!―ってどうしたの、明久?」
「....」
あれっ?どうしたんだろう?
「明久、声を殺してさめざめと泣くな」
なんだ、食べたかったのか...
「別に明久、欲しかったらあげるよ?今日2匹持ってきてるし」
「ホント!?」
立ち直り速っ!
「う、うん...」
明久に鯵の塩焼きを渡す。
1分と経たずに何もなくなっていた。
まさか...骨まで食べた、なんてことはないよね?
「あのよろしければ、私がお弁当作ってきましょうか?」
「ゑ?」
姫路さんの優しい言葉。
いいなぁ...明久....
「ほんとうにいいの?僕、塩と砂糖以外のもの食べるなんてひさしぶりだよ!」
おお~い僕の鯵はどうなった?
「はい明日のお昼でよければ」
「よかったじゃないか、明久。手作り弁当だぞ?」
「うん!」
いいな~
「....ふ~ん。瑞希って随分優しいんだね。吉井だけにつくるなんて」
まぁ、明久のご飯ってアレなんだし、別にいいんじゃ...
「あ、いえ!その、皆さんにも...]
なにっ!
「いいの!?僕達まで!?」
「はい。いやじゃなかったら」
なんていい人なんだろう。僕たちにまで!
でも...
「でも、姫路さん含むと7人分でしょ?大変なんじゃ...」
「はい大丈夫です」
「じゃぁ、僕もおかずを一品だけ作ってくるよ」
てか、多分一品しか作れない。
「すみません、ありがとうございます」
「いえいえ」
いや~やっぱり姫路さんはいい人だ。
「姫路さんって優しいね」
僕も心からそう思う。
「そ、そんな....」
「今だから言うけど、僕、初めて会う前から君のことを好き―って痛ぁぁ!」
ちなみにこの時、僕が逆海老反りの刑にしていた。
ふぅ~危ない危ない。
そして小声で明久に言う。
(明久、今振られると弁当の話はなくなるよ)
(そうか、ありがとう蒼空)
ふぅ~ギリギリ回避。
「好き―何ですか!?」
なぜか姫路さんの押しが強い。
まずい!!
「―にしたいと思ってました」
....は?
「明久。それでは欲望をカミングアウトしたただの変態じゃぞ」
「HAHAHAHAHA、明久は面白いことを言うなぁ(ギリギリ)」
「痛い痛い!!」
「さて、話がかなりそれたな。試験召喚戦争に戻ろう」
そういえば、そうだった。
僕は逆海老反りの刑をといて、明久を自由にする。
「雄二。一つ気になっていたんじゃが、どうしてDクラスなのじゃ?
勝負に出るならAクラス、段階を踏むならEクラスじゃろうに」
「そういえば、たしかにそうですね」
「まぁな。当然考えがあってのことだ」
雄二がうなづく。
「どんな考えですか?」
「いろいろと理由はあるんだが、とりあえず、Eクラスを攻めない理由は簡単だ。戦うまでもない相手だからな」
「え?でもボクらよりクラスは上だよ?」
ごもっとも、明久。
「ま、振り分け試験の時点ではたしかに向こうが強かったかもしれないな。けど、実際のところは違う。お前の周りにいる面子をよく見てみろ」
「えっーと」
雄二の言うとおり周りを見渡している明久。
「美少女2人とバカが3人とムッツリは1人いるね」
「誰が美少女だ!?」
「「ええっ!?雄二が美少女で反応するの!?」
どう考えても違うよね!?
「......(ぽっ)」
「「ムッツリーニも!?」」
名前からしてムッツリなのに!!
「ん?じゃあ僕がバカ...?って明久には言われたくないよ!」
「「今頃!?」」
言った瞬間に明久と雄二に言われる。
「まぁまぁ。落ち着くのじゃ、代表にムッツリーニ」
と、こちらは本物の美少女の秀吉。
「そ、そうだな」
「「......」」
「ま、要するにだ」
咳払いをしてから、会話を元に戻す雄二。
「姫路に問題がない以上、正面からぶつかり合っても、Eクラスには勝てる。Aクラスが目標の俺たちにとってEクラスと戦っても意味がない。
そして、初陣で慣れてない奴もいる。だからDクラスから行くんだ。
Aクラス打倒の作戦にも必要だしな」
「でも、それって、Dクラスに負けたら終わりなんじゃ?」
僕がそう問うと、
「負けるわけないさ。お前らが協力してくれるなら勝てる」
かなり強気の声。
「いいか、お前ら。ウチのクラスは―最強だ」
ふぅっ。こう言われると、信じるしかないじゃないか。
「いいわね。面白そうじゃない!」
「そうじゃな。Aクラスの連中を引きずり落としてやるかの」
「........(グッ)」
「が、頑張りますっ」
打倒Aクラスかぁ。
まぁ、勝てない可能性の方が高いよね。
でも...
勝てる可能性だってある!やってみなきゃ何も始まらない。
もう...何もしないで、後悔するのは嫌だから。
「そうか。それじゃ、作戦を説明しよう」
そう言って雄二は作戦を話しだした。
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